ラベル 科学 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 科学 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年2月10日水曜日

鐵腕 天野皎(あきら)

 牧野由里さん(美術教育)と有賀暢迪さん(科学史)が,「教育掛図《小学用博物図》の研究 ―天野皎と明治初期大阪の教育・出版文化―」という論文を出していて,有賀さんがTwitterで紹介していた。

天野皎(あきら)(1851-1897)[1]は,博物学を専攻した東京師範学校の一期生として1873年に卒業した。その後,官立の大阪師範学校(1873-1878)の教師となっている。やがて奈良五條師範や兵庫神戸師範の校長を経て,1878年には教育職を辞している。以下,1880年,大阪商法会議所の書記,1881年,大阪府御用掛・大阪測候所長,1885年,府立大阪博物場長および教育博物館長,1891年,大阪朝日新聞社編輯部,1897年,47歳で死去となっている。

天野が著した小学校の教科書や有賀さんらが議論している教育掛図(国立科学博物館で見つかった新出資料)についてはさきほどの論文に譲るとして,大阪つながりで近隣の大学の附属図書館に収集されている資料がないか調べてみた。

1982年に雄松堂書店から復刻された,明治初期教育稀覯書集成 / 唐沢富太郎編集「下等小學教授法略解 乙」と「博物小学金石篇」の2冊が,京都大学,京都教育大学,大阪大学,大阪教育大学,奈良教育大学の各附属図書館に収蔵されていた。CiNiiでは,アマノ・コウとかアマノ・キヨシになっているが違うんじゃないの。さらに,京都大学には,「商法會議所要覽(天野皎編 -- 鹿田靜七,1880)」,「入清日記その他 (鐵腕天野皎著;天野徳三編纂 -- 壺外書屋,1929)」の2冊があった。天野の号が「鐵腕」なのである。

一方,大阪教育大学には先の2冊の他に,「小學博物書天野皎譯 ;動物學第2,動物學第3 -- (天野皎,1877)」「師範學校掛圖童子訓 5巻 /井出猪之助, 天野皎輯 ; 巻之1 - 巻之5(文敬堂, 1875)」の2冊の教育書が所蔵されていた。後者は実際には,巻之2巻之4巻之5だけがあって,これらはデジタル資料として公開されている。

なお,国立国会図書館のNDLオンラインを調べると,こちらには17件の資料がみつかった

[1]「大臺原紀行」の作者である天野 皎あきらについてき坊のノート

【天野皎】(1851~1897)天野氏、名は皎、幼名祐太郎、別に鐵腕と号す、江戸の人、世々徳川幕府に仕ふ、幼より学を好みて業を長谷部甚弥に受け又書法を石川潭香に学ぶ、明治6年東京師範学校を卒業して大阪師範学校本科教師を命ぜらる、後ち奈良県五条師範学校校長・神戸師範学校校長等を歴任し、13年大阪商業会議所書記となる。14年大阪府御用掛となり大阪測候所長・大阪商業講習所長等を兼ね、明治18年「府立大阪博物場長」に専任せらる。是に於て専ら心を美術の奨励に致し、兼ねて薀蓄せる智職を以て「美術館」を創設す。又率先唱導して城南今宮村に「大阪商業倶楽部」の開設を企画する等大に浪華文化の発展に力を尽くせり。24年「大阪朝日新聞」に入りて編輯の事務に従い、25年臨時博覧会事務局監査官となり、26年閣龍世界博覧会事務の為に米国シカゴに赴き其博覧会の審査官に任ぜらる。27年日清戦役の起るや第ニ軍に従うて能く其任務に務む。30年遂に朝日新聞社を辞し、更に日本製鋼株式会社長となり、幾もなく病を獲て武庫郡住吉村の客舎に歿す。人と為り堅忍剛毅博学宏識、能く詩文を属し尤も書法に長ず。殊に美術に関する造詣深く斯道の為に貢献する所蓋し鮮少ならず、嗣子徳三嘗て職を大阪朝日新聞社に奉ぜり。著書:入清日記その他。歿年:明治30年10月16日47歳。(大阪人物誌続編より)

2021年1月10日日曜日

人工血液

 新型コロナウイルス感染症の蔓延にともなって,献血機会が減少し,日本の医療活動に必要な血液が確保できないのではないかというニュースが流れていた。そこで,人工血液というのはまだ開発されていないのかどうか調べてみた。

日本血液代替物学会が存在するくらいなので,研究は進んでいると考えられる。学会誌の「人工血液」は会員以外の誰でも自由にpdfファイルで読むことができるのがありがたい。奈良県立大学の酒井宏水先生が現在の学会長だ。

人工血液の1つとして,赤血球の酸素運搬機能を代替する人工の微粒子である人工赤血球がある。日赤や医療機関で発生する期限切れ非使用赤血球(検査済み)から,酸素を結合するタンパク質ヘモグロビン(Hb)を精製分離し,これを濃度高くリポソームに封入した微粒子であり,ヘモグロビンベシクル(Hb-V)とよばれるものがその一例だ。

また,血小板輸血に関しては,室温保存による細菌繁殖に起因する感染症を防止する目的で,法制上,血小板製剤の保存期間が4日以内に限定されており,血小板輸血に対する抜本的な供給システムの構築が喫緊の課題である。このため,iPS細胞から血小板を大量に生産するための方法が研究されている。

白血球は難しいのではないかと思ったが,逆にこれは薬で代替することができて,赤血球や血小板の方が残念ながら今の医療技術では作れないので献血してほしいとのことだった。

2021年1月9日土曜日

パルスオキシメーター

ついこの間まで,パルスオキシメーターのことを「パルスオキシメーター」 とよぶのだと勘違いしたままだった。テレビのニュースで,ようやく誤った知識が訂正された。

パルスオキシメーターは光を使って血液の酸素飽和度を測る装置である。新型コロナウィルス感染症において,無症状の段階でもその兆候を捉えるために用いられるというニュースだったような気がする。

酸素飽和度(SaO2)は,血液中のヘモグロビンが酸素と結合している割合を表す量であり,ヘモグロビンをHbと書くと,[HbO2] = HbO2 / (HbO2+Hb)として,実際には,(HbO2) = [HbO2]/ [HbO2]max で与えられる。maxは最大酸素飽和度の場合の値を意味しているので,(HbO2)の最大値は100%になる。なお,酸素飽和度には,SvO2(静脈酸素飽和度),StO2(組織酸素飽和度),SpO2(末梢酸素飽和度)があって,パルスオキシメータで測定されるのはSpO2である。

パルスオキシメータの原理については,コニカミノルタのページが詳しい(1977年に世界で最初に商品化した)。Hbは赤色光をよく吸収するが,HbO2は赤い光を透過するので血液が赤く見える。一方,HbとHbO2はともに赤外光はあまり吸収しない。そこで,赤外光IRを基準とした赤色光Rの強度,R/IRがわかれば,HbO2/Hbがわかることになる。パルスオキシメータでは脈動する血液についてのR/IRの変化成分を測定するため動脈血を見ていることに対応する。

SpO2が95%以上であれば正常,90-95%で注意,90%未満ではなんらかの処置が必要となる。ただ,新型コロナウイルス感染症の低酸素症では,よくわからないことが起きているようだ。

なお,ヒトのヘモグロビンは,ヘムとよばれる鉄原子を中心とした錯体をかこむ4ユニットから成る分子量64500のタンパク質分子である。

2020年12月26日土曜日

レゴ(2)

レゴ(1)からの続き

LEGO組み立て説明書」アプリをダウンロードすると(アプリ名称が「の遊び方」になるのはなぜだ),これまでの製品の詳細がわかる。また,製品についているマニュアルのpdf版もあるので便利かもしれない。

LEGO Classic 11717 1504 (2020) ブロックブロックプレート
LEGO Classic 11911 1500 (2020) アイデアパーツ〈動物セット〉
LEGO Classic 10717 1500 (2018) ブロックブロックブロック
LEGO Classic 10697 1500 (2015) アイデアパーツ〈XXL〉
LEGO Classic 10705 1000 (2016) アイデアパーツ〈XL〉
LEGO Classic 10704 900 (2017) アイデアパーツ〈スペシャルセット〉
LEGO Classic 11002 900 (2019) 作ってあそぼう
LEGO Classic 10698 790 (2015) 黄色のアイデアボックス〈スペシャル〉
LEGO Classic 10705 583 (2016) アイデアパーツ〈エクストラセット〉
LEGO Classic 10695 580 (2015) アイデアパーツ〈スペシャルセット〉
LEGO Classic 10703 502 (2017) アイデアパーツ〈建物セット〉
LEGO Classic 10698 484 (2015) 黄色のアイデアボックス〈プラス〉
LEGO Classic 11004 450 (2019) 創造力の窓
LEGO Classic 11003 451 (2019) アイデアパーツ〈目のパーツ入〉
LEGO Classic 10715 442 (2018) アイデアパーツ〈タイヤセット〉
LEGO Classic 11009 441 (2020) アイデアパーツ〈ライトセット〉
LEGO Classic 11008 270 (2020) アイデアパーツ〈お家セット〉
LEGO Classic 10712 244 (2018) アイデアパーツ〈歯車セット〉

2020年12月15日火曜日

レゴ(1)

 クリスマスプレゼントにレゴをと考えて,探してみたものの,自分の考えていた昔のレゴは,LEGO CLASSICの中にも見つからなかった。単純な白,赤,黃,青,黒の5色の基本ブロックだけであらゆるものを作り出すという考えはもう古いのかもしれない。レゴ社のコマーシャルフィルムによれば,単純なものから複雑なものという戦略をやめて,最初から複雑な多様なブロックを組み合わせて,よりリアルで定まった完成品を作るという商品系列が主流になってしまった。レゴユーザーのメイキング動画をYouTubeでみているとそれなりに引き込まれてしまうので,戦略としては正しいのかもしれないが,全ての物質は素粒子から成り立っていて,世界は単純な基本法則で説明されるという世界観はもう古びてしまったのかもしれない。

2020年11月27日金曜日

日本学術会議Q&A

 11月26日に日本学術会議の記者会見があったようだ。野尻美穂子さんのtwitterコメントしか見ていないので,詳しい状況はわからないが2点。

(1) 第25回幹事会の記者会見の資料が公開されている。地道にこれまでの活動を説明しようとしている。内閣府特命担当大臣(科学技術政策)の井上信治はこれらを完全に無視しながら,政府機関からの離脱を迫っている。

(2) 日本学術会議に関するQ&Aが公開されている。誠実に疑問に答えているが,攻める側はむちゃくちゃなフェイク言説で負の感情を掘り起こしながら,側面や背面から攻撃を仕掛けてくるので,有効な反撃になっていない。一部(ほとんどの?)マスコミは,その側面や背面からの攻撃を煽り立てて,生贄ショーを盛り上げることを主眼としているため,残念な状況は続く。

2020年11月16日月曜日

科学技術・学術審議会

戦後,日本学術会議がスタートしてから政府自民党によってその実態が骨抜きにされる過程が続いてきた。そのための別機構とは,内閣府の総合科学技術・イノベーション会議だと思っていたけれど,実はそれだけではなかった。もうひとつが文部科学省の科学技術・学術審議会である。こちらのほうは,「中央省庁等改革の一環として,科学技術・学術関係の6審議会(海洋開発審議会,航空・電子等技術審議会,資源調査会,技術士審議会,学術審議会,測地学審議会)の機能を整理・統合し,平成13年1月6日付け(2001年)で文部科学省に設置されたもの」ということだ。

「イエスマンの集まりになったら国は滅びる」(毎日新聞)の中島秀人・東工大教授によれば,

当初の学術会議は、学術政策や予算の分配に強い影響力を持っていました。当時は権威がある組織だったので、代わりの団体を作る方策が取られました。59年に科学技術会議(現総合科学技術・イノベーション会議)、67年に学術審議会(現科学技術・学術審議会)が作られたのです。政策決定は科学技術会議が、予算配分は学術審議会が担うようになり、学術会議は権限を奪われていきました。学術会議には、提言、報告、政府の諮問に対する答申などの機能もありますが、これらを含め70年代から、社会的な発信力や影響力がほとんどなくなってきたと思います。

ということなので,問題の根は深い。そもそも,政府から独立して国を代表する科学アカデミーと政策推進のために抽出された科学者集団としての審議会等の性格は大きく異る。しかも実効的な力のなかった組織(科学アカデミー)を生贄として血祭りにあげ, 権力(人事)掌握のための機会として利用しようということなのだ。新型コロナウィルス感染症対応でもわかるように,客観的,合理的な事実から離れた(場合によっては法制度を無視した)政策遂行による日本の劣化がとどまるところをしらない。

2020年10月31日土曜日

学会声明

 津田大介さんが日本学術会議問題での学会声明をまとめていたが,500学協会(会長,理事会等からのものを含む)くらいから声明がでているとのことだ。インターネットでざっと検索したところ,250くらいは見つかった。しかし,工学系学会,医学系学会,スポーツ系学会からごく一部を除いて全く出ていなかった。日本天文学会([0]の97学協会には含まれている)にも学術会議批判派がいたため,産経新聞やネトウヨメディアなどでさっそく重用されていた。以下は完全なリストではないので注意すること。

日本学術会議 第25期 幹事会 記者会見資料(2020.10.29) http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo302-kaikenshiryo.pdf 

[0]日本学術会議 第25期推薦会員任命拒否に関する緊急声明(97学協会,2020.10.21)
https://www.jps.or.jp/information/docs/seimei_scj20201021.pdf
[1]日本科学史学会 会長声明「日本学術会議新会員候補6人の任命拒否について」
https://historyofscience.jp/blog/2020/10/13/会長声明%E3%80%80「日本学術会議新会員候補6人の任命/
[2]日本18世紀学会 政府による日本学術会議新会員任命拒否についての声明
https://www.jsecs.jp/post/20201007
[3]日本イスパニヤ学会 第25期日本学術会議新規会員の任命拒否に抗議し、同会議の要望を支持する声明
http://www.gakkai.ne.jp/ajh/sobre_nosotros/25.html
[4]科学技術社会論学会 内閣総理大臣による第25期日本学術会議会員候補の任命拒否について
http://jssts.jp/content/view/313/70/
[5]イタリア学会 日本学術会議会員任命拒否についてイタリア学会による声明
http://studiit.jp/pdf/声明文(理由付き).pdf
[6]ジェンダー法学会 緊急声明:日本学術会議第25期新規会員任命に関する要望を支持する
http://jagl.jp/?p=1055
[7]人文地理学会 日本学術会議第25期新規会員任命にかかわる声明
http://hgsj.org/news/20201012seimei/
[8]日本社会福祉学会 「日本学術会議の新会員推薦6名の内閣総理大臣による否認」に関する会長声明文
https://www.jssw.jp/activity/statement/
[9]社会政策学会 日本学術会議会員候補の任命拒否に対する声明
https://jasps.org/wp/wp-content/uploads/2020/10/学術会議問題学会声明文20201024.pdf
[10]美学会 日本学術会議会員任命拒否に関して
http://www.bigakukai.jp
[11]「女性・戦争・人権」学会 日本学術会議会員候補の任命拒否に対する抗議声明
https://www.war-women-rights.com/アピール/2020年/日本学術会議会員候補の任命拒否に対する抗議声明/
[12]日本特別ニーズ教育学会 日本学術会議新規会員候補の任命拒否に関する抗議声明
https://www.sne-japan.net/gakujutukaigi-seimei
[13]日本教育学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する緊急声明
http://www.jera.jp/20201007-1/
[14]日本教育経営学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する声明
http://jasea.jp/news/「日本学術会議第25期新規会員任命に関する声明」/
[15]日本教育方法学会 日本学術会議の新会員候補者6名の否認問題に関する声明
https://www.nasem.jp/site/wp-content/uploads/2020/10/d6ddb2f07092cbf61249eeb0ae399f4d.pdf
[16]日本生命倫理学会 日本生命倫理学会は、日本学術会議の要望書の趣旨に賛同いたします
https://ja-bioethics.jp/news/2226/
[17]日本学校教育学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する緊急声明について
http://www.jase.gr.jp/日本学術会議第25期新規会員任命に関する緊急声明/
[18]社会主義理論学会 菅内閣の第25期日本学術会議の一部会員任命拒否に対する抗議声明
http://sost.que.jp/myweb_004.htm
[19]教育史学会 日本学術会議への政治介入に関わる教育史学会理事会声明
http://kyouikushigakkai.jp/info/2020/1005112318
[20]日本教師教育学会 日本教師教育学会声明
https://jsste.jp/index.php/download_file/view/551/515/
[21]日本宗教学会 日本学術会議新規会員の任命拒否問題に関する声明
http://jpars.org/archives/4510
[22]日本建築学会 日本学術会議に関する緊急声明
https://www.aij.or.jp/jpn/databox/2020/201013Seimei.pdf
[23]日本アフリカ学会 JCASAによる日本学術会議第25期新規会員任命に関する緊急声明
https://african-studies.com/jaas-news/20201021/
[24]日本経営学会 日本学術会議会員候補の任命拒否に対する声明
http://keiei-gakkai.jp/wp-content/uploads/2020/10/201014seimeibun.pdf
[25]経済理論学会 政府による日本学術会議への介入強化に対する抗議声明
https://jspe.gr.jp/ja/node/187
[26]日本平和学会 日本学術会議会員任命拒否に関する緊急声明
https://www.psaj.org/論説-声明/日本学術会議緊急声明/
[27]日本時間学会 第25期日本学術会議新会員任命拒否に対する声明
http://timestudies.net/?page_id=1459
[28]日本認知心理学会 日本学術会議の推薦会員任命拒否に関する声明
http://cogpsy.jp/wp/wp-content/uploads/gakujutsukaigi_seimei_cogpsy.pdf
[29]日本地理学会 日本学術会議会員推薦者の任命拒否に関する声明文
https://www.ajg.or.jp/wp-content/uploads/2020/10/b0cded3345db9cfe01571ff9b13026b0.pdf
[30]法制史学会 日本学術会議第25期新規会員任命問題に関する声明
https://www.jalha.org/jimukyoku/
[31]仏教文学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する声明
http://bukkyoubun.jp/statement/2020.html
[32]説話文学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する声明
http://www.setsuwa.org/announcement2.html
[33]明治維新史学会 日本学術会議問題に関する明治維新学会理事会声明
http://www.ishinshi.jp/wordpress/?p=1153
[34]日本EU学会 日本学術会議第25期新規会員6名の任命拒否に関する声明
http://www.eusa-japan.org/?p=3337
[35]日本フランス語教育学会 日本学術会議会員任命拒否に対する日本フランス語教育学会声明
https://sjdf.org/blog/2503
[36]社会事業史学会 内閣総理大臣による第25期日本学術会議会員候補の任命拒否に対する抗議声明
http://shakaijigyoushi-gakkai.com
[37]日本女性学会 日本学術会議会員任命拒否に関する声明
https://joseigakkai-jp.org/appeal/1569/
[38]日本家政学会 第25期日本学術会議新規会員任命拒否に対する声明
http://www.jshe.jp/oshirase.html
[39]日本美術教育学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する緊急声明
http://www.aesj.org/nc2/htdocs/?action=common_download_main&upload_id=486
[40]こどもと自然学会 日本学術会議第25期 新規会員任命に関する緊急声明
https://kodomotosizen.jimdofree.com
[41]幼児教育史学会 日本学術会議 第25期新規会員任命に関する緊急声明
https://youjikyoikushi.org
[42]日本福祉教育・ボランティア学習学会 会長声明「第25期日本学術会議の会員任命にあたって」
http://www.jaass.jp/archives/1181
[43]日本生活指導学会 菅首相による日本学術会議会員の任命拒否に関する声明
http://jasg.m47.coreserver.jp/main/2020/10/05/菅首相による日本学術会議会員の任命拒否に関す/
[44]日本教育社会学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する緊急声明
http://www.gakkai.ne.jp/jses/2020/10/07190000.php
[45]日本環境教育学会 日本環境教育学会会長声明
https://jsfee.jp/general/message-from-president/436
[46]日本カリキュラム学会 日本学術会議新規会員任命拒否に関する声明
http://jscs.b.la9.jp/news/doc/201006_statement.pdf
[47]大学評価学会 菅首相による日本学術会議会員の任命拒否に関する声明
http://www.unive.jp/seimei/seimei_20201012.pdf
[48]大学教育学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する大学教育学会からの緊急声明
https://daigakukyoiku-gakkai.org/site/wp-content/uploads/2020/10/urgent_statement2020.pdf
[49]教育哲学会 「日本学術会議第25期新規会員任命に関する緊急声明」について
http://pesj.matrix.jp 
[50]教育思想史学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する緊急声明
http://www.hets.jp/seimei20201006.pdf 
[51]教育史学会 日本学術会議への政治介入に関わる教育史学会理事会声明
http://kyouikushigakkai.jp/info/2020/1005112318
[52]日本アニメーション学会 第25期日本学術会議新規会員6名の任命拒否に関する抗議声明
https://www.jsas.net/archives/906
[53]日本歴史学協会 菅首相による日本学術会議会員の任命拒否に強く抗議する(声明)(日本歴史学協会他 38学協会)
http://www.nichirekikyo.com/statement/statement20201018.html
[54]日本社会学理論学会 日本学術会議新規会員任命拒否についての声明
http://sst-j.com/?p=681
[55]工業経営研究学会 日本学術会議会員候補の任命拒否に対する声明
http://asimj.jp/wordpress/?p=2800
[56]日本教育法学会 日本学術会議会員候補者任命拒否問題に関する会長声明
http://jela1970.jp/statement20201017.pdf
[57]日本生活学会 第25期日本学術会議新規会員任命拒否に対する声明
http://lifology.jp/2020/10/17/202010statement/
[58]日本弁護士連合会 日本弁護士連合会 日本学術会議会員候補者6名の速やかな任命を求める会長声明
https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2020/201022.html
[59]日本障害者協議会 日本学術会議への人事介入に対する声明
http://www.jdnet.gr.jp/opinion/2020/201013.html
[60]萬葉学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する声明
http://manyoug.jp/news/日本学術会議第25期新規会員任命に関する声明
[61]日本オーラル・ヒストリー学会 日本学術会議会員任命拒否についての理事会声明
http://joha.jp/council/1050
[62]日本自然保護協会・日本野鳥の会・世界自然保護基金ジャパン 自然保護の観点から日本学術会議会員の任命拒否に抗議する声明
https://www.wbsj.org/inform/info-20201013-2/
[63]日本オリエント学会 日本学術会議会員の任命問題に関する声明
http://www.j-orient.com/info/seimei_20201015/
[64]日本中央アジア学会 日本学術会議会員任命拒否問題に関する声明
http://www.jacas.jp/seimei2020.pdf
[65]日本学校ソーシャルワーク学会 日本学術会議の新規会員候補の任命拒否に関する学会声明
https://www.jssssw.jp/images/20201016.pdf
[66]日本有機農業学会 第25期日本学術会議新規会員任命拒否に対する声明
https://www.yuki-gakkai.com/2020/10/第25期日本学術会議新規会員任命拒否に対する声明/
[67]日本キリスト教史学会 日本学術会議推薦拒否問題について
http://www.kirishin.com/2020/10/13/45656/
[68]日本基督教学会 日本学術会議第25期新規会員任命拒否に関する声明文
http://www.kirishin.com/2020/10/13/45656/
[69]日本リメディアル教育学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する緊急声明
http://www.jade-web.org/info/「日本学術会議第25期新規会員任命に関する緊急声/
[70]日本村落研究学会 第25期日本学術会議新規会員任命拒否に対する声明
https://www.rural-studies.jp/seimei20201009.pdf
[71]社会文化学会 日本学術会議新会員に対する任命拒否に抗議し撤回を求める
https://japansocio-culture.com/declaration/declaration_20201008/
[72]国際ジェンダー学会 日本学術会議第 25 期会員候補者 6 名の任命見送りに関する抗議声明
http://www.isgsjapan.org/pdf/201006_protest.pdf
[73]日本フェミニスト経済学会 日本学術会議会員候補の任命拒否に対する声明
http://jaffe.fem.jp/statement2020
[74]女性労働問題研究会 「日本学術会議」への学問の自由を侵害する政府の介入に抗議します
http://ssww.jp/wp-content/themes/hpb20S20191212172431/img/file7.pdf
[75]日本スポーツとジェンダー学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する要望を支持する
https://jssgs.org/archives/3182 
[76]日本ジェンダー学会 緊急声明:日本学術会議第25期新規会員任命に関する要望を支持する
https://jp-gender.jp/wp/
[77]日本土壌肥料学会 日本学術会議「第25期新規会員任命に関する要望書」を支持する声明
http://jssspn.jp/info/secretariat/20201015.html
[78]日本昆虫科学連合 日本学術会議第25期新規会員任命に関する要望書の内容を支持する声明(17学協会)
http://www.insect-sciences.jp/ja/
[79]日本社会学会 第25期日本学術会議新規会員任命拒否に対する声明
https://jss-sociology.org/news/public/council/20201005post-10909/
[80]日仏社会学会 第25期日本学術会議新規会員任命拒否に対する声明
https://nichifutsu-socio.com/news/post-1438/
[81]日本青年心理学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する意見表明
https://www.jsyap.org/post/日本学術会議第25期新規会員任命に関する意見表明
[82]国際芥川龍之介学会 日本学術会議会員任命拒否に関する声明
https://akutagawagakkai.web.fc2.com/seimei.pdf
[83]日本政治学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する声明
http://www.jpsa-web.org/2020/10/25.html
[84]日本森林学会 第25期日本学術会議新規会員の任命に関する声明
https://www.forestry.jp/activity/dir-info/25.html
[85]経済学史学会 日本学術会議会員候補6名の任命拒否に対する経済学史学会幹事会声明
https://jshet.net/news/whats/seimei/
[86]日本地域福祉学会 会長声明
http://jracd.jp/file/20201001_kaityoseimei.pdf
[87]日本図書館情報学会 声明
https://jslis.jp/2020/10/21/statement/
[88]日本言語学会 日本学術会議「第25期新規会員任命に関する要望書」についての声明
http://www.ls-japan.org/modules/news/details.php?bid=589
[89]経済地理学会 日本学術会議第25期新規会員推薦者の任命拒否に対する声明
https://www.economicgeography.jp/20201011/2575/
[90]比較経済体制学会 日本学術会議会員任命拒否に抗議する緊急声明
http://www.jaces.info/info_files/201019_seimei.pdf
[91]日本協同組合学会 日本学術会議会員候補の任命拒否に対する声明
https://www.coopstudies.com
[92]日本社会教育学会 ⽇本学術会議第25期会員候補者任命に関する声明
https://www.jssace.jp/blogs/blog_entries/view/42/972830da350c1798e59d8bde627e9016?page_id=958
[93]表現文化論学会 第25期日本学術会議新規会員の任命拒否に抗議する学会声明
https://www.repre.org/news/2020/10/6/
[94]昭和文学会 日本学術会議推薦候補任命拒否に関する学会としての対応について(第二報)
http://swbg.org/wp/?p=1773
[95]社会思想史学会 日本学術会議推薦者の任命拒否についての声明
http://shst.jp/gakujutsukaigi-ninmei-seimei/
[96]全日本民主医療機関連合会 日本学術会議会員候補の任命拒否に抗議し撤回を求める
https://www.min-iren.gr.jp/?p=41288
[97]日本映像学会 日本学術会議会員推薦者の任命拒否に関する抗議声明
https://jasias.jp/archives/7609
[98]政治経済学・経済史学会 日本学術会議第 25 期会員候補の選任に関する声明
https://seikeishi.com/wp-content/uploads/2020/10/日本学術会議第25期会員候補の選任に関する声明.pdf
[99]関西社会学会 日本学術会議会員任命拒否に対する声明
https://www.ksac.jp/2020/10/05/日本学術会議会員任命拒否に対する声明/
[100]日本地方自治学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する緊急声明
http://www.jaslg.org/06/kinkyu_seimei_20201008.html
[101日本ポピュラー音楽学会 第25期日本学術会議新規会員任命拒否に対する声明
https://www.jaspm.jp/?p=3213
[102日本NPO学会 第25期日本学術会議新規会員任命拒否に対する日本NPO学会理事会声明
https://janpora.org/news/201006.html
[103日本フランス語フランス文学会 政府による日本学術会議新会員任命拒否に対する声明文
http://www.sjllf.org/jokrhybjo-261/
[104日本犯罪社会学会 第25期日本学術会議新規会員任命拒否に対する会長声明
http://hansha.daishodai.ac.jp/topics/seimei.html
[105ジェンダー史学会 日本学術会議第25期新規会員任命拒否に関する声明
http://ghaj.jp
[106]日本労働社会学会 日本学術会議会員候補の任命拒否に対する抗議声明
https://jals.jp/blog/?p=743
[107日本パグウォッシュ会議 日本学術会議会員任命拒否に関する声明
https://www.pugwashjapan.jp/seimei-20201004
[108日本文化人類学会 第25期日本学術会議新規会員任命拒否に対する緊急声明
http://www.jasca.org/news/scj.html
[109]日本法哲学会 日本学術会議会員任命拒否問題に対する声明
http://www.houtetsugaku.org
[110日本宗教系諸学会連合 日本学術会議新規会員の任命拒否について(18学協会)
http://jfssr.jp
[111日本哲学系諸学会連合 日本哲学系諸学会連合(JFPS)共同声明(10学協会) http://philosophy-japan.org/wpdata/wp-content/themes/child/file/jfps_joint_statement.pdf
[112]上代文学会 抗議声明
[113]日本近代文学会 「日本学術会議」に対する政治介入に抗議し、会員任命拒否の撤回を求めます
[114中世文学会 日本学術会議第25期新規会員任命に関する要望
[115日本近世文学会 日本学術会議会員任命拒否に関する見解
[116]日本社会文学会 「日本学術会議」に対する政治介入に抗議し、会員任命拒否の撤回を求めます
[117日本文学協会 日本学術会議第25期新規会員任命拒否にかかわる緊急声明
[118全国大学国語国文学会 日本学術会議第25期会員任命に関する声明
[119]日本思想史学会 日本学術会議会員任命に関する声明
[120]民主主義科学者協会 日本学術会議会員の違法な任命行為に抗議し、直ちにその是正を求める
http://minka-japan.sakura.ne.jp/main/wp-content/uploads/2020/10/e2924bfbbdbab1b6ab381f716da0c11a.pdf
[121]現代歌人協会 日本学術会議の新会員任命拒否に反対する声明
[122]日本考古学協会 日本学術会議会員任命をめぐる問題に関する声明

2020年10月24日土曜日

科学技術・イノベーション基本法

 10月23日の日本外国特派員協会の記者会見において,菅首相により日本学術会議会員への任命を拒否された6名がそろって意見表明を行った。記者会見に参加したのは芦名定道・京都大教授(宗教学),岡田正則・早稲田大教授(行政法学),及びオンラインで,小沢隆一・東京慈恵会医科大教授(憲法学),松宮孝明・立命館大教授(刑事法学)。また,宇野重規・東京大教授(政治思想史)と加藤陽子・東京大教授(日本近代史)はメッセージで意見を明らかにした。

加藤陽子さんのメッセージは東京新聞の記事になっているが,これを引用しておく。

 今回の任命拒否を受けて感じたのは第1に,2011年施行の公文書管理法制定まで有識者として関係してきた人間として,法解釈の変更なしには行えない違法な決定を菅義偉首相がなぜ行ったのか,意思決定の背景を説明できる決裁文書があるのか、政府側に尋ねてみたい。

 任命拒否の背景を考える際に留意すべきなのは,拒否された6人全員が学術会議第1部(人文・社会科学)の会員候補だったこと。日本の科学技術の生き残りをかけるため1995年に制定された重要な法律に科学技術基本法というものがあるが,この法は今年25年ぶりに抜本的に改正され「科学技術・イノベーション基本法」となった。改正前の法律では「人文・社会科学」は,科学技術振興策の対象ではなかった。つまり法律から除外されていた分野だった。しかし,新法では人文・社会科学に関係する科学技術を法の対象に含めることになった。

 世の中のSNS上では「役に立たない学問分野の人間が切られた」との冷笑的な評価があったが,真の事態は全く逆で,人文・社会科学の領域が,新たに科学技術政策の対象に入ったことを受けて,政府側が改めてこの領域の人選に強い関心を抱く動機づけを得たことが事の核心にあると,私は歴史家として考える。新法の下では,内閣府の下に「科学技術・イノベーション推進事務局」が司令塔として新設されるという。自然科学に加えて,人文・社会科学も「資金を得る引き換えに政府の政策的な介入」を受ける事態が生まれる。

 日本の現在の状況は,科学力の低下,データ囲い込み競争の激化,気候変動を受け「人文・社会科学の知も融合した総合知」を掲げざるを得ない緊急事態にあり,ならば,その領域の学術会議会員に対して,政府側の意向に従順でない人々をあらかじめ切っておく事態が進行したと思う。

 「科学技術」という日本語は,意外にも新しい言葉であり,1940年8月,総力戦のために科学技術を総動員した際に用いられ始めた言葉だった。このたび,政府は「科学技術・イノベーション」という新しい言葉を創ったが,国民からの負託がない,官僚による科学への統制と支配は国民の幸福を増進する道ではない。私は学問の自律的な成長と発展こそが,日本の文化と科学の発展をもたらすと信じている。

ここで登場する科学技術・イノベーション基本法2021年4月1日施行,1995年施行の科学技術基本法を改正したもの)がまさに日本学術会議法にとってかわるものとして措定されている。
総合科学技術・イノベーション会議は内閣総理大臣を議長として,6名の関係閣僚,7名の有識者(うち6名は非常勤議員),1名の関係機関の長(これが日本学術会議会長=梶田さん)から構成されている。つまり日本学術会議の実質はすでに換骨奪胎されてこちらに奪われている。

[1]内閣府設置法(2000年改正で総合科学技術会議を内閣府に設置)

2020年10月10日土曜日

村上陽一郎

学術会議(4)からの続き

菅首相は,ついに「会員任命を最終的に決裁したのは9月28日,会員候補リストを拝見したのはその直前だったと記憶している,その時点では最終的に会員となった方(99人)がそのままリストになっていた」(時事通信より抜粋)といい出してしまった。しかし,まともにその論理矛盾を質せるマスコミは皆無の有り様。

そして,村上陽一郎が,「学術会議問題は「学問の自由」が論点であるべきなのか?」などとして,政権擁護(=学術会議批判)発言をはじめたので,ネトウヨや御用学者が大喜びでエサに飛びついている。特に「七期も連続して務めたF氏を中心に,ある政党に完全に支配された状態が続きました」というフレーズが適当に解釈されて拡散されている。F氏が憶測をよんでいるが,伏見康治は7年会長を務めたが,公明党の参議院議員(1983-1989)だったし(日本共産党ではない),福島要一という名前もでてきているが,彼は11期会員を務めている。まともに相手しないほうがよいのだろうけれど,影響力が残存しているので面倒だ。

歴代会長一覧
第1期(昭24.1~昭26.1) 亀山直人
第2期(昭26.1~昭29.1) 亀山直人
第3期(昭29.1~昭32.1) 茅誠司
第4期(昭32.1~昭35.1) 茅誠司
第5期(昭35.1~昭38.1) 和達清夫
第6期(昭38.1~昭41.1) 朝永振一郎
第7期(昭41.1~昭44.1) 朝永振一郎
第8期(昭44.1~昭47.1) 江上不二夫
第9期(昭47.1~昭50.1) 越智勇一
第10期(昭50.1~昭53.1) 越智勇一
第11期(昭53.1~昭56.1) 伏見康治
第12期(昭56.1~昭60.7) 伏見康治
     (昭57.10~昭58.5) 久保亮五
     (昭58.5~昭60.7) 塚田裕三
第13期(昭60.7~昭63.7) 近藤次郎
第14期(昭63.7~平3.7) 近藤次郎
第15期(平3.7~平6.7) 近藤次郎
第16期(平6.7~平9.7) 伊藤正男
第17期(平9.7~平12.7) 吉川弘之
第18期(平12.7~平15.7) 吉川弘之
第19期(平15.7~平17.9) 黒川清
第20期(平17.10~平20.9) 黒川清
第21期(平20.10~平23.9) 金澤一郎
第22期(平23.10~平26.9) 大西隆
第23期(平26.10~平29.9) 大西隆
第24期(平29.10~令2.9) 山極壽一
第25期(令2.10~令5.9) 梶田隆章

村上陽一郎はブルーバックスの「新しい科学論」を大学院時代に読んでいたが,もうひとつわかったようなわからなかったような印象があって,他にも何冊か買ってしまった。しかし,その評価を決定づけたのは,藤永茂先生の「ロバート・オッペンハイマー −愚者としての科学者」などでの,シラードやオッペンハイマーに関する見方である。詳細は,黒木玄さんのまとめ「藤永茂による村上陽一郎批判」に詳しい。それやこれやで,村上陽一郎はほとんど信頼していないのだが,今回更にそれが強化された。

2020年10月9日金曜日

学術会議(4)

学術会議(3)からの続き 

学術会議の在り方問題に話を捩じ曲げてしまおうとする政府与党。在り方問題についてはこれまでも一定の議論がなされてきた。

(1)2003年7月の学術会議国際協力常置委員会による各国アカデミー等調査報告書では,旧7部制時代の各国アカデミーの比較であり,日本学術会議の予算は14億円だが,女性会員比率は3%にとどまっていた(現在は40%を越える)ころだ。科学アカデミーの設置形態は,欧米ではほとんどが非政府・非営利組織であるが,アジアは政府機関に位置づけられている。そうはいっても,例えば全米科学アカデミー(日本の20倍の予算・人員規模)でも設置には法令的根拠があり,年間予算のほとんどは,連邦政府機関から来ている。

(2)同じ2003年の2月には,総合科学技術会議(現在の総合科学技術・イノベーション会議)の専門調査会が「日本学術会議の在り方について」をまとめている。中央省庁改革の一環として当時総務省におかれていた日本学術会議の在り方を検討することになった。これを受けて7部制が3部制になり,会員選出方法も学会推薦から現行のものに変更され,連携会員が導入された。そこでは次のような提言がされている。

日本学術会議が、科学的水準の高い提言等の活動を行い、その権威を高め、社会に貢献していくためには、優れた研究者が科学的業績に基づいて会員に選出されることが重要であり、欧米諸国のアカデミーのco-optation方式(現会員による欠員補充)による選出を基本とすることが適切である。

 政府は,総合的・俯瞰的というのをこのあたりから引いているのかもしれないが,これは学術会議全体として実現されるべき要件であり,会員選出過程の要件としては明文化されていない。なお,設置形態については「 最終的な理想像としては、国家的な設置根拠と財政基盤の保証を受 けた独立の法人とすることが望ましい方向であると考えられる」としている。

(3)これを踏まえて,2015年3月には「日本学術会議の将来展望を考える有識者会議」の報告書が出ている。2005年改革で(2)の大きな課題がクリアされていたため,ここではマイルドな提案しかかでてきていない。例えば,会員選考については次の記述がある。

その会員・連携会員は,自らの専門分野において優れた成果をあげていることに留まらず,様々な課題に対し,自らの専門分野の枠にとらわれない俯瞰的な視点をもって向き合うことのできる人材であることが望ましい。

菅政権を支える官僚はこれから,6名を排除した言い逃れの文言を編み出したようだが,抽象度が高すぎ,これを用いればすべての人事に介入する道を開いてしまう。予算の話も同様だ。

2020年10月8日木曜日

ネイチャーの論説

 どうしてこんな世界になってしまったのか。

10月6日号のネイチャーが,"Why Nature needs to cover politics now more than ever" という論説を掲載した。政治が科学を蹂躙している例として,アメリカのトランプ大統領,ブラジルのボルソナール大統領,インドのモディ首相にならんで,日本の菅首相の学術会議の問題も取り上げられている。

その結論を引用すると次のようになる。

国が学術の独立性を尊重するという原則は、現代の研究を支える基盤の一つであり、この原則が侵食されると、研究と政策立案における質の基準と完全性に重大なリスクが生じる。政治家がこの誓約を破れば、人々の健康、環境、社会を危険にさらすことになります。

これが、ネイチャーのニュース特派員が、世界中の政治と研究で何が起こっているのかを見て報告するための努力を倍増させる理由です。それは、私たちの専門家の解説の著者が開発を評価し、批判し続ける理由です。

そして、本誌の編集ページでは、政治家に対して、学習と協力の精神を受け入れ、異なる視点を大切にし、科学的・学術的自治へのコミットメントを尊重するよう、引き続き呼びかけていきます。

科学と政治の関係を導いてきた慣習が脅かされており、ネイチャーは黙って見ているわけにはいきません。

ネイチャー 586, 169-170 (2020)

そして,Scienceにもとりあげられた。"Japan's new prime minister picks fight with Science Council By Dennis Normile Oct. 5, 2020" 

2020年10月6日火曜日

学術会議(3)

学術会議(2)からの続き

安倍政権時代の2017年の前回の学術会議の105名の交代会員の推薦過程で,官邸が介入し110名超の名簿を出させたという話が出てきた。

菅首相は,記者会見を開くかわりに少数のマスコミに対するインタビューという形式を使って,逆宣伝を始めている。(1) 10億の予算を使った組織の,(2) 特別公務員に任命するが,(3) 現行の会員推薦過程は現会員が推薦できる仕組みになっている。という話を組み立てて,違法行為の正当化を図ろうとしている。

予算については,前回眺めたので,今回は会員推薦過程を調べてみた。

(1) 現会員及び現連携会員(特任の連携会員を除く。以下同じ。)は, 幹事会が定めた様式により,新たな会員候補者及び連携会員候補者を合わせて5人 以内(うち会員候補者は2人以内)推薦する。ということは,全分野に渡って,(210+2000)  × (2+3)人以内の会員+連携会員の推薦が出るということか(*)。

(2) 上記の推薦書は選考委員会にあがる。選考委員会は,会長+副会長(3名)+各部の4名(×3)=16名で構成される。各部の4名のうち1名は役員(部長,副部長,幹事)。

(3) 選考委員会の下に3部(人文・社会科学,生命科学,理学・工学)の選考分科会が設けられる。各選考分科会は,各部の会員のうち,副会長,役員,委員会の委員並びに分野別委員会の委員長及び副委員長で構成される。委員会は,関連法規集に20余りあるがどの範囲なのだろうか。なお,この任期は改選前の9ヶ月間くらいである。

(4) 分野別委員会は,言語・文学,哲学,心理学・教育学,社会学,史学,地域研究,法学,政治学,経済学,経営学,基礎生物学,統合生物学,農学,食料科学,基礎医学,臨床医学,健康・生活科学,歯学,薬学,環境学,数理科学,物理学,地球惑星科学,情報学,化学,総合工学,機械工学,電気電子工学,土木工学・建築学,材料工学の30分野からなる。

(5) 選考委員会の結果は,幹事会に伝えられる。日本学術会議法の「第十二条 各部に、部長一人、副部長一人及び幹事二人を置く」と「第十四条 日本学術会議に、その運営に関する事項を審議させるため、幹事会を置く。2 幹事会は、会長、副会長、部長、副部長及び幹事をもつて組織する」から,幹事会は16名で構成される。

(6) この原案が総会で承認された後,改選会員が会長から内閣総理大臣に推薦される。菅政権の説明が匂わせようとしている委員の「世襲」的な恣意性が入る余地はない。

そうこうしているうちにも,研究者の分断は進んでいる。

(*) 改選期の会員が次期の会員を選ぶという話もみかけたので,上限はこれよりもかなり少ないのかもしれない。また,会員と連携会員は推薦数の計算はそれぞれ独立なのかもしれない。

[1]日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議(2015)
[2]日本学術会議における連携会員の主な活動について

2020年10月5日月曜日

学術会議(2)

学術会議(1)からの続き

制御されたネトウヨ(とその周辺のカスケード集団)や新自由主義的な御用学者による直接的な攻撃だけではなく,若手の科学者を中心として,今回の問題に対する冷笑的なあるいは反学術会議的な意見がめだつような気がする。

この問題は香山リカが指摘しているように,杉田水脈が先鞭を切ったヘイト側の科研費攻撃や国立大学攻撃と一続きの問題である。また,安富歩が指摘しているように,軍事研究への道(閉じた科学への道)を開くかどうかの分水嶺の問題でもある。あるいは,学術会議の担ってきた大学教育の分野別質保証の問題などを踏まえれば,高等教育への介入の先駆現象といえるのかもしれない。

令和二年度の日本学術会議の予算は,令和2年度内閣府所管一般会計歳出予算各目明細書の71pから見ることができる。総額は,10億4千9百万円で,日本学術会議の運営に必要な経費が5.5億円,科学に関する重要事項の審議等に必要な経費が5億円だ。小規模な単科大学の1/7程度のたいへん慎ましい予算である。一般職の職員が50人はりついており,庁舎費や情報処理業務庁の1億を除いた職員の人件費が約4.5億ということか。

業務遂行のための費用は,国際学術組織への分担金が1.1億円なので,会員や委員の手当てと旅費などが3.4億円ほどになる。残り0.5億円は国際会議関係と庁費だ。学術会議の会員自身は210名だが,連携会員が2000名おり,学術会議の会合や各種委員会への出席における旅費や手当てをイメージすればひとり平均20万円オーダーの簡素な運用を行っていることになる。

会員の構成をみても女性がかなり多いことがわかる。まあ,政権側には意図的に不正確な情報を流し,それを自発的に増幅する取り巻きがいるわけで,まともな科学アカデミーを維持できない国が滅びへの歩みを進めていくのは必須と思われる。

2020年10月3日土曜日

学術会議(1)

85万人の日本の研究者から選ばれる日本学術会議の210名の会員は,6年の任期で3年ごとに半数改選される。第25期がこの10月1日から始まったが,菅内閣は日本学術会議から推薦された105名のうち6名の任命を拒否した。これまでは,学問の自由を踏まえるという政府の国会答弁に基づき,学術会議から推薦された会員をそのまま内閣総理大臣が任命してきた。菅内閣はこの慣行を破ったうえに,その説明をまったく放棄している。

 「日本学術会議法」では,学術会議の目的や職務が以下のように規定されている。

日本学術会議法(前文があることに注意)
 日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、 わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与する ことを使命とし、ここに設立される。

第一章 設立及び目的
第一条 この法律により日本学術会議を設立し、この法律を日本学術会議法と称する。
2 日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。
3 日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする。
第二条 日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする。

第二章 職務及び権限
第三条 日本学術会議は、独立して左の職務を行う。
一 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。
二 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。
第四条 政府は、左の事項について、日本学術会議に諮問することができる。
一 科学に関する研究、試験等の助成、その他科学の振興を図るために政府の支出する交付
金、補助金等の予算及びその配分
二 政府所管の研究所、試験所及び委託研究費等に関する予算編成の方針
三 特に専門科学者の検討を要する重要施策
四 その他日本学術会議に諮問することを適当と認める事項
第五条 日本学術会議は、左の事項について、政府に勧告することができる。
一 科学の振興及び技術の発達に関する方策
二 科学に関する研究成果の活用に関する方策
三 科学研究者の養成に関する方策
四 科学を行政に反映させる方策
五 科学を産業及び国民生活に浸透させる方策
六 その他日本学術会議の目的の遂行に適当な事項
第六条 政府は、日本学術会議の求に応じて、資料の提出、意見の開陳又は説明をすることが できる。
第六条の二 日本学術会議は、第三条第二号の職務を達成するため、学術に関する国際団体に 加入することができる。
2 前項の規定により学術に関する国際団体に加入する場合において、政府が新たに義務を負 担することとなるときは、あらかじめ内閣総理大臣の承認を経るものとする。

参議院議員の小西洋之は,twitterで,「現時点で内閣府が認めた事実。確信犯だ」
として,以下の経緯を明らかにしている。
・H29(2017) に学術会議の軍事研究(抑制的解禁)声明
・H30(2018) に内閣府と内閣法制局で「総理が任命拒否可」の解釈を作成
・本年(2020) 8/31に105名推薦名簿を受理
・9月上旬に上記解釈を再確認
・9/16の菅政権発足後,9/24に6名除外した99名の任命起案を起草し,9/28決裁
また「仮に説明しても任命拒否は違法であり,許されない。なぜなら,日本学術会議法において,総理には推薦に対して形式的任命権しかなく実質的任命権がないからである」としている。

6名が任命されないことが新しい委員の任期がはじまる10/1の2日前に,学術会議側に伝えられたようだが,その結果,時間の猶予もなくこの事態を招くことになった。 

追伸:毎日新聞によれば,2016年の第23期の補充人事(定年70歳によるもの)の際にも「学術会議が候補として挙げ,複数人が首相官邸側から事実上拒否された」とのこと(官邸周辺に生息している日本会議人脈の影響が強く疑われる)。|

[1]国立アカデミー
[2]日本学術会議
[3]日本学術会議の設立と組織の変遷

2020年7月7日火曜日

領空の定義

しばらく前に,東北地方の上空を未確認飛行物体が通過していった。未確認ではあるが,その形は捉えられていて,白い気球に太陽電池やプロペラが付随したものらしい。高度10〜50kmの成層圏を通過していたが,国内からの報告がないことから,日本の西側にあるいずれかの外国からジェット気流に乗って東に進んできたものと推測される。で,これが領空侵犯であると断定的に書かれた記事があったので,領空とはどこまでのことを指すのかと調べたところ,一筋縄では行かなかった。

平成28年には逢坂誠二さんが第192国会の80番目の質問主意書で「一 領空とは、国家が領有している領土もしくは領海上の空域と認識しているが、政府の認識はどのようなものか。見解を示されたい。二 日本の領空とは、国家主権が及ぶ領域と政府は認識しているのか。見解を示されたい。」と尋ねているが(この質問もあいまいなのだけれど),安倍総理によるその回答は,「一般に,領空とは領土,領水の上空であり,我が国の主権が及ぶと認識している」なので,結局わけがわからない。まあ,はっきり定義を述べないことは政治的には正しいのかもしれない。しかし,質問主意書答弁書のpdfファイルが擬似縦書きになっているのは許せない。素直にテキスト化できないのだ。こんなことだから,ITで百年遅れをとる。

そこへ行くと名和小太郎先生の説明はていねいで理路整然としていて救われる「領空か 宇宙空間か(情報管理第50巻(2007)5号)」。ただし,結局,領空の定義に関する結論ははっきり定まっていない。名和先生は,1996年から2001年まで,関西大学総合情報学部に在席していらっしゃった。そのとき,同じ学部の水越敏行先生をリーダーとする高等学校の教科情報の教科書を初めて作るということで,会議でお隣に同席させていただいたことがある。名和先生も出身が東大物理なので,おっしゃることや書かれたものは飲み込みやすかった。その縁で著書を1冊恵贈していただいた。


写真:仙台市天文台が撮影した白い物体(引用)

2020年6月30日火曜日

「役に立たない科学」が役に立つ

エイブラハム・フレクスナーロベルト・ダイクラーフによる『「役に立たない科学」が役に立つ』が,初田哲男さんの監訳によって近々東京大学出版会から登場する。著者は,プリンストン高等研究所の初代および現在の所長である。この本は,この二人のエッセイ,明日の世界(ロベルト・ダイクラーフ),役に立たない知識の有用性(エイブラハム・フレクスナー)を中心に構成されている。後者は1939年にHerpars Magazine に掲載されたものでありすでに著作権が切れており,2013年の3月にあの山形浩生によって「役立たずな知識の有益性」として訳出されている。このタイトル比べただけでも,山形大丈夫かと思ってしまいそうだ。本は読んでいないけれど,2017年12月のダイクラーフの講演資料をみるとその趣旨がとてもよく理解できた。

図 The Usefulness of Useless Knowledge 原著の表紙(引用)


2020年6月28日日曜日

THE MATH(S) FIX

THE MATH(S) FIX スティーヴン・ウルフラムの弟のコンラッド・ウルフラムによる数学教育革新のための青写真についての本である。

ウェブサイトのはしがきを訳すると,こんな感じだった。

 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
AI時代の教育の青写真

なぜ私たちは皆,生涯のうち何年にもわたって数学を教えられているのか?それは本当に役に立っているのだろうか,あるいは,ほとんどが失敗であり多くの人に学びの力を与えられていないのか?それはAI時代に不可欠なものか,それとも時代遅れの通過儀礼なのだろうか?

"The Math(s) Fix: An Education Blueprint for th AI Age" は,なぜ数学教育が世界的に危機的状況にあるのか,また,どうして根本的に新しい主流科目を創るのことが唯一の解決策なのか,を明らかにする画期的な本だ。

この本は,今日の数学教育が,現代的な計算・データ科学・人工知能(AI)が必要とされる現代社会を発展させるための機能を十分果たしていないということを主張する。その代わりに,学生はコンピュータが得意とするものと競争することを強いられて負けてしまっている。

本書は,「数学が苦手」であることが,学習者のせいというより,科目の失敗が原因であること,すなわち,教育のエコシステムが行き詰まり,学生・親・教師・学校・雇用者・政策立案者が,現実世界の要求に追いつこうと間違った方向に走っていることを説明する唯一の本である。

しかし,この本はさらに先を行くものである。問題を解決して,AI時代の教育の普遍的な改革の種を蒔くために,学校における中核的な計算思考科目としての完全に代替的なビジョンを初めて提示しているものだから。
 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

これがたぶんコンピューテーショナル・シンキング(計算論的思考)の王道なのだと思われる。でも,GIGAスクール構想にみんな出払ってしまっており,プログラミング教育とその周辺の話題はすっかり霞んでしまっていた。


図:THE MATH(S) FIX の表紙(Wolfram Media から引用)



2020年3月26日木曜日

パーセク

天文学における距離の単位に,光年とならんでパーセクがあるが実感としてわかっていなかった。もちろん定義も。

どこかで,1天文単位(太陽地球間の距離)を見込む角が1秒になる距離がパーセクであるという定義をみかけた。散歩中に暗算してみたが,その過程で太陽半径(地球半径の100倍,64万km)は地球−月軌道半径(38万km)より大きいことに驚いてしまった。まあ,いわれてみればそうである。で,太陽を見込む視角と比較しようとしたが,暗算力が落ちていてよくわからなかった。

まず,1秒をラジアンに直す。1秒 = 1/3600度 = 1/3600 * π/180 ラジアン = 1/(6^3*10^3) ラジアン ≒ 1/(2*10^5) ラジアンかな。1パーセク× tan 1秒 = 1天文単位なので,1パーセク =
1天文単位 ÷ {1/(2*10^5)},1天文単位は1.5×10^8 kmなので,1パーセクは3×10^13 kmだ。1光年は 3×10^5 km /s * π×10^7 s = 10^13 km なので,1パーセクは3光年くらいかな。しらんけど。


2019年10月15日火曜日

台風の運動エネルギー

台風の重さからの続き)

前回は台風の質量と並進運動エネルギーを求めた。次に,台風の重心に対する風の回転運動エネルギーを見積もってみる。そのために,台風の風速分布を調べてみると,中心から50kmあたりをピークとして台風の外側に向けて緩やかに,中心側にむけて急速に減少している。そこで,半径 $R$[m],高度 $h$[m]の台風の平均風速を中心からの距離$ r$[m] の関数として,$v(r)=60(1-r/R) $[ m/s]とモデル化する。中心では過剰に,周辺では過小に評価している。

これを用い,空気の密度を $\rho = 1$ [ kg/m^3] とすると,回転の運動エネルギー$T_R$は,$\int_0^R \rho \pi h r v(r)^2 dr = 5 \pi h R^2 $[J]より,R=500km  h=10km の場合,$T_R$=4×10^16 [J]となり,前回求めた並進運動エネルギー5×10^16 [J]と同じオーダとなった,というかかなり粗い見積もり。これらを加えた台風の風の運動エネルギーは 10^17[J]である。

さて,インターネットでこれがリーズナブルかどうか調べてみようとしたが,台風の運動エネルギーについてのわかりやすい情報はほとんどない。どういうことか。日本科学協会立方体地球には台風ができるの?に,台風の運動エネルギーは10^18[J]とあった。まあまあ正しかった。

Wikipediaにはエネルギーの比較というページがある。日本語版には地震の記述はあるが,台風はない。しかし英語版の Orders of magnitude (energy) には,"Energy released in 1 day by an average hurricane in producing rain (400 times greater than the wind energy)" が 5×10^19 [J]とあるので,風のエネルギーは 10^17 [J] でほぼほぼあっているのかもしれない。