2019年7月19日金曜日

ソーシャルメディア利用ガイドライン(3)

ソーシャルメディア利用ガイドライン(2)からの続き)

googleで検索したものからは,短大や高専や専門学校や大学の学部単位のソーシャルメディアガイドラインを省いてきた。ここで,日本大学法学部のソーシャル・メディアポリシーをみてみよう。これは,公式ソーシャルメディアの運用ガイドライン,教職員のソーシャルメデイア利用のガイドライン,学生・大学院生のソーシャルメディア利用のガイドラインの3つから成り立っている。よくできている。さらによいのが表現の自由の項がトップに来ていることである。下記の例は教職員のガイドラインであるが,学生のガイドラインにも同様の項がある。大学のソーシャルメディアガイドラインはこうでなくてはね。他の大学では,足利大学のソーシャルメディアガイドラインも表現の自由が最初にきている。
表現の自由
 日本大学法学部は,ソーシャルメディアにおける教職員の職務上及び私生活における表現の自由を尊重します。ただし,社会におけるさまざまな法令,ルール,マナーを遵守し,公序良俗に反しないことが大前提です。
昔の(今でもか)中学校や高等学校の生徒手帳に書かれている校則のように考え,授業中のソーシャルメディアへの発信を厳に慎めというようなばかげたソーシャルメディアガイドラインを作っている大学は,これを参考にしてはどうだろう。

大阪府立大学の例では,ソーシャルメデイア活用ガイドラインとして,個人使用編と団体活用編に分けて,pdfリーフレットを作っており,具体的な注意事例の説明やトラブル時の相談窓口を案内している。学生の安全を守りながら活用を進めるという方向性に好感が持てる。大阪市立大学の学生案内の中では,通信販売やインターネットオークションやネットワービス等のトラブルを含めて注意喚起しており参考にできる。リーフレット形式のものとしては,立命館大学の「SNS利用にあたって知ってもらいたい5つのこと」も学生の視点に立ちよくできている。


日本の大学のソーシャルメディアガイドライン(その3)
(google順2019.7 ソーシャルメディア ガイドライン +site:ac.jp

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大阪大谷大学:ソーシャルメデイアガイドライン
https://www.osaka-ohtani.ac.jp/socialmedia/

久留米大学:ソーシャルメディア公式アカウント一覧(ポリシー)
https://www.kurume-u.ac.jp/soshiki/3/socialmedia.html

国際教養大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー)
https://web.aiu.ac.jp/about/sns_policy/

松山大学:ソーシャルメディア利用ガイドライン
https://www.u-tokai.ac.jp/enrolled/sns/

国際基督教大学:ソーシャルメディア公式アカウント(ポリシー)
https://www.icu.ac.jp/about/public/sns/

梅花女子大学:ソーシャルメディア利用のためのガイドライン(学生向け)
https://www.baika.ac.jp/assets/pdf/aboutus/approach/socialmedia_guidelines.pdf

× 大阪大学:ソーシャルメディア私的利用ガイドライン
http://daleda.law.osaka-u.ac.jp/~lecture2018/SNS-G.pdf

愛知工業大学:ソーシャルメディアガイドライン(学生向け)
https://www.ait.ac.jp/guide/responsibility/social-media/

芝浦工業大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー)
https://www.shibaura-it.ac.jp/educational_foundation/compliance/social_media_policy/index.html

静岡大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー)
https://www.shizuoka.ac.jp/outline/vision/social/index.html

足利大学:ソーシャルメディアガイドライン(表現の自由がトップ)
http://www.ashitech.ac.jp/campuslife/guidelineFiles/socialMediaGuideline.pdf

甲南女子大学:ソーシャルメディアガイドライン(ガイドライン+ポリシー)
https://www.konan-wu.ac.jp/social/guideline.php

中村学園大学:ソーシャル・メディアガイドライン
http://www.nakamura-u.ac.jp/outline/pr/socialmedia.html

西南学院大学:ソーシャル・メディア・ガイドライン
http://www.seinan-gu.ac.jp/about/activity/sns_guideline.html

甲南大学:ソーシャルメディア公式アカウント一覧(ポリシー+ガイドライン)
https://www.konan-u.ac.jp/life/sns/

立命館大学:SNS利用にあたって知ってもらいたい5つのこと(学生向け)
http://www.ritsumei.ac.jp/rs/sns/

東北福祉大学:ホームページ及ソーシャルメディアの利用に関するガイドライン(学生向け)
https://www.tfu.ac.jp/students/arpn890000001r7l-att/arpn890000004pjc.pdf

独協医科大学:ソーシャルメディア利用に関するガイドライン
http://www.dokkyomed.ac.jp/assets/files/dmu/news/3429-003.pdf

福島大学:ソーシャルメディアポリシー(ガイドライン)
https://www.fukushima-u.ac.jp/university/efforts/social.html

西九州大学:ソーシャルメディア利用ガイドライン
https://www.nisikyu-u.ac.jp/information/detail/i/719/faculty/101/

一橋大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー)
https://www.hit-u.ac.jp/SNS/s_policy.html

大阪学院大学:ソーシャルメディア公式アカウントコミュニティガイドライン(ポリシー)
https://www.osaka-gu.ac.jp/guideline/index.html

沖縄大学:ソーシャルメディアポリシー
http://www.okinawa-u.ac.jp/campuslife/u-life/sns-policy

沖縄キリスト教学院大学:ソーシャルメディア利用ガイドライン
https://www.ocjc.ac.jp/gakuin/kouhou/facebook_guideline/

東北福祉大学:ホームページ及びソーシャルメディアガイドライン
https://www.tfu.ac.jp/students/hp_guideline.html

常磐大学:ソーシャルメディアポリシー
https://www.tokiwa.ac.jp/snspolicy/

広島女学院大学:SNS公式アカウント運用に関するガイドライン(ポリシー)
https://www.hju.ac.jp/info/inc/pdf/officialsns_guideline.pdf

九州大学:ソーシャル・メディア公式アカウント一覧(ポリシー)
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/university/publicity/social

帝京科学大学:ソーシャルメディア・ポリシー
https://www.ntu.ac.jp/docs/sns_policy.pdf

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2019年7月18日木曜日

ソーシャルメディア利用ガイドライン(2)


ソーシャルメディア利用ガイドライン(1)からの続き)

大阪大学ソーシャルメディア私的利用ガイドライン」の謎が少しとけた。法学部の田中規久雄先生の平成30年度「法の世界(火曜5限)」全学部対象のページからリンクされた資料のようだ。2018.7.27に「本部から,SNSの利用に関する注意事項を学生さんに広報するよう依頼がありました。見といてください 」とあるので,阪大の学内でサーキュレートされている公式文書のようだ。

しかし,阪大のキャンパスネットワークの利用に関してはサイバーメディアセンターネットワーク利用者ガイドラインが基本になるはずである。そこには,ソーシャルメディアの私的利用ガイドラインをカバーする事項はほとんど網羅されている。一方,私的利用ガイドラインは,サイバーメディアセンターからも大学のトップページの「在学生の方」からもリンクされていない。なんなのでしょうね。

SNSについての注意喚起や啓発が目的ならば,大阪府立大学のようなリーフレットにしたほうが良かったかもしれない。ネットワーク利用者ガイドラインとの最も大きな違いは,大阪大学ソーシャルメディア私的利用ガイドラインにある次の項目とトラブル対応や調査協力に関する項目だけである。
(8)授業時間中や勤務時間中の情報発信 授業時間中や勤務時間中に私的にソーシャルメディアへ情報発信すること、及び授業時間外や勤務時間外であっても、修学上や業務上支給されている端末を用いて私的にソーシャルメディアへ情報発信することは厳に行わないでください。
十日遅れの七夕のお願い:「これが他の大学へと拡散しませんように・・・」



日本の大学のソーシャルメディアガイドライン(その2)
(google順2019.7 ソーシャルメディア ガイドライン +site:ac.jp)
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静岡県公立大学:ソーシャルメディアガイドライン(教職員向け)
https://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/guide/public-relations/sns/guideline/

昭和女子大学:ソーシャルメディア活用に関するガイドライン(学生向け)
https://univ.swu.ac.jp/student/service/sns/

大阪府立大学:ソーシャルメディアガイドライン(学生向けリーフレット形式)
https://www.osakafu-u.ac.jp/info/publicity/sns_guideline/

神戸学院大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー+ガイドライン)
https://www.kobegakuin.ac.jp/socialmedia_policy/

桃山学院大学:ソーシャルメディア・ガイドライン(学生向け)
https://www.andrew.ac.jp/students/guideline_sns.html

名古屋経済大学:ソーシャルメディア利用のためのガイドライン
https://www.nagoya-ku.ac.jp/support/sns/sns_mobile_guideline.html

群馬大学:ソーシャルメディア利用に係るガイドライン(ガイドライン+ポリシー)
http://www.gunma-u.ac.jp/outline/out009/snsguideline

大阪電気通信大学:ソーシャルメディアガイドライン
https://www.osakac.ac.jp/campuslife/guide/social-guideline/

京都ノートルダム女子大学:ソーシャルメディア利用ガイドライン
https://www.notredame.ac.jp/social_media.html

大阪経済大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー)
https://www.osaka-ue.ac.jp/information/socialmediapolicy/

九州栄養福祉大学:ソーシャルメディア・ガイドライン
https://www.knwu.ac.jp/socialmedia/

順天堂大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー+ガイドライン)
https://www.juntendo.ac.jp/corp/news/sns_policy.html

共立女子大学:ソーシャルメディア利用ガイドライン
https://www.kyoritsu-wu.ac.jp/univ/policy/socialmedia_guideline/

関西福祉科学大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー)
https://www.fuksi-kagk-u.ac.jp/utility/socialmediapolicy.html

東京家政大学:ソーシャルメディアガイドライン(ポリシー)
https://www.tokyo-kasei.ac.jp/about/disclosure/info_system/sns_guideline.html

福岡女子大学:ソーシャルメデイアポリシー(簡潔なポリシー)
http://www.fwu.ac.jp/media_policy/

明治国際医療大学:SNSガイドライン(学生向け)
https://www.meiji-u.ac.jp/sns/

創価大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー+ガイドライン)

京都文教大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー)

横浜市立大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー)

花園大学:ソーシャルメディアガイドライン

津田塾大学:ソーシャルメディア利用ガイドライン

横浜美術大学:ソーシャルメディア利用ガイドライン

岩手大学:ソーシャルメディア公式アカウント(ポリシー+ガイドライン)

東京工業大学:ソーシャルメディア公式アカウント運用ポリシー(ポリシー)

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2019年7月17日水曜日

ソーシャルメディア利用ガイドライン(1)

 キクマコでおなじみの阪大が,ソーシャルメディアの私的利用ガイドラインを出したとの噂が伝わってきた。菊池誠さんはこれを無視するとしている。そこで,他大学も含めて調べてみると次の3パターンに分類できる。

(1) ソーシャルメディアポリシー:組織の公式SNSの紹介とそれらの運用方針
(2) ソーシャルメディアガイドライン(教職員):教職員向けのSNSガイドライン
(3) ソーシャルメディアガイドライン(学生):学生向けのSNSガイドライン

各大学では,これらをひっくるめて,ポリシーやガイドラインなどとよんでいるので,以下のURLリストでは,()内にどのパターンかを示した。断り書きがないものは,大学の構成員全体に対するガイドラインもしくは,教職員ガイドライン+学生ガイドラインの両方が含まれているものである。

いずれも,法令遵守(特に著作権),守秘義務,プライバシー保護,人権尊重,倫理と態度,大学の名誉保護などの一般的な事項が並んでいる。が,注目したいのは,×印で示した,島根大学,岡山大学,大阪大学である。授業時間中や勤務時間中の私的利用を厳に謹めということが書かれている。時間順序からは,岡山大学が震源地のようだが,さらに調査が必要である。国立大学を中心にこれが広がりそうなのでこわい。

ところで,大阪大学のソーシャルメディア私的利用ガイドラインのURLをみてほしい。法学部の怪しいURL(daleda.law.osaka-u.ac.jp/~lecture2018/SNS-G.pdf)が発信元になっている。日付や連絡先も記載されていない不完全な公文書?であり,これが阪大公式の文書かどうなのかは判別できない。daleda.law.osaka-u.ac.jp/~lecture2018/ は,「のぞき見禁止」となっていて,法学部の授業の教材の一部である可能性も否定できない。阪大のトップページやサイバーメディアセンターからのリンクは存在していない。


日本の大学のソーシャルメディアガイドライン(その1)
(google順2019.7 ソーシャルメディア ガイドライン +site:ac.jp)
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中央大学:ソーシャル・メディア・ポリシー(ポリシー+ガイドライン)
https://www.chuo-u.ac.jp/aboutus/communication/social_media/

× 島根大学:ソーシャルメディアガイドライン(2017.9.7)
https://www.shimane-u.ac.jp/introduction/information_solution/social_media_guideline/

神奈川大学:ソーシャルメディア利用のためのガイドライン
https://www.kanagawa-u.ac.jp/sns/guideline/

東京大学:ソーシャルメディアポリシー(広報室のポリシー)
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/general/sns_policy.html

東京経済大学:ソーシャルメディア利用ガイドライン
https://www.tku.ac.jp/SNS-guideline/

学習院女子大学:ソーシャルメディアガイドライン
https://www.gwc.gakushuin.ac.jp/campus_life/social_media.html

日本赤十字看護大学:ソーシャルメディアガイドライン
https://www.redcross.ac.jp/campus/guideline/social_media

文化学園大学:ソーシャルメディアガイドライン(学生向け)
https://bwu.bunka.ac.jp/campus-life/sns.php

神戸親和女子大学:ソーシャルメディアガイドライン(学生向け)
https://www.kobe-shinwa.ac.jp/campuslife/social/

名古屋工業大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー+ガイドライン)
https://www.nitech.ac.jp/intro/mediapolicy/index.html

駒沢大学:ソーシャルメディアガイドライン(学生向け・教職員向け)
https://www.komazawa-u.ac.jp/campuslife/student-life-support/socialmedia-g.html
https://www.komazawa-u.ac.jp/about/compliance/socialmedia-k.html

東洋大学:ソーシャルメディアポリシー
https://www.toyo.ac.jp/ja-JP/about/effort-activity/policy/

大阪国際大学:ソーシャルメディアポリシー
https://www.oiu.ac.jp/socialpolicy/

関西医科大学:ソーシャルメディア利用ガイドライン
http://www.kmu.ac.jp/snsguideline/index.html

聖心女子大学:ソーシャルメディア扱いのガイドライン(学生向け)
https://www.u-sacred-heart.ac.jp/life/files/socialmedia.pdf

× 岡山大学:ソーシャルメディアガイドライン(2014.6.18)

東京情報大学:ソーシャルメディア・ガイドライン
http://www.tuis.ac.jp/university/privacy-policy/5_53378cec855dd/

熊本大学:ソーシャル・メディア・ガイドライン
https://www.kumamoto-u.ac.jp/daigakujouhou/katudou/guideline

亜細亜大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー+ガイドライン)
https://www.asia-u.ac.jp/information/socialmedia/

広島国際大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー+ガイドライン)
http://www.hirokoku-u.ac.jp/student/support/socialmedia_guideline.html

東海大学:学生を対象としたソーシャルメディア活用ガイドライン(学生向け)
https://www.u-tokai.ac.jp/enrolled/sns/

明治大学:ソーシャルメディアガイドライン
https://www.meiji.ac.jp/koho/social_media/guideline.html

浜松医科大学:ソーシャルメディア・ガイドライン(ポリシー+ガイドライン)

日本大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー+ガイドライン)
https://www.nihon-u.ac.jp/about_nu/effort/socialmedia_policy/

広島大学:ソーシャルメディアガイドライン
https://www.hiroshima-u.ac.jp/koho_press/sns/smguide

摂南大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー+ガイドライン内部)
https://www.setsunan.ac.jp/social/

東北大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー+ガイドライン内部限定)
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/site/socialmedia/01/socialmedia0101/

神戸松蔭女子学院大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー+ガイドライン)
https://www.shoin.ac.jp/guide/publicity/sns/policy.html

慶応義塾大学:ソーシャルメディアの利用に関するガイドライン
https://www.itc.keio.ac.jp/ja/itc_socialmedia_guideline.html

滋賀県立大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー+職員のガイドライン)
http://www.usp.ac.jp/campus/publicity/socialmediapolicy/

和洋女子大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー)
https://www.wayo.ac.jp/social_policy/tabid/695/Default.aspx

東京理科大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー)
https://www.tus.ac.jp/info/socialmedia/

富山大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー+ガイドライン)
https://www.u-toyama.ac.jp/about/socialmedia_policy.html

国士舘大学:ソーシャルメディア・ガイドライン
https://www.kokushikan.ac.jp/socialmedia/

聖マリアンナ医科大学:ソーシャルメディアガイドライン
https://www.marianna-u.ac.jp/houjin/disclosure/socialmedia.html

大阪工業大学:ソーシャルメディアポリシー(ポリシー)
https://www.oit.ac.jp/japanese/contents/sns.html

仏教大学:ソーシャルメディアの利用に関するガイドライン
http://www.bukkyo-u.ac.jp/social.html

北里大学:一般教育部SNSガイドライン
https://www.kitasato-u.ac.jp/clas/snsguideline/

京都産業大学:ソーシャルメディア運用ガイドライン(ポリシー)
https://www.kyoto-su.ac.jp/outline/approach/sns/

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× 大阪大学:ソーシャルメディア私的利用ガイドライン(2018 公式版なのか?)
http://daleda.law.osaka-u.ac.jp/~lecture2018/SNS-G.pdf


ソーシャルメディア利用ガイドライン(2)に続く)

2019年7月16日火曜日

トリニティ実験

74年前の今日,1945年7月16日に,アメリカのニューメキシコ州アラモゴードで人類初の核実験(トリニティ実験)が行われた。マンハッタン計画の最終段階である。長崎に投下されたファットマンと同じプルトニウムタイプのTNT火薬20kt相当の原子爆弾である。

これにまつわる様々な逸話がある。
ロバート・オッペンハイマーが,ヒンドゥー教の聖典バガヴァッド・ギータの一節「我は死なり,世界の破壊者なり」を思い浮かべた。
エンリコ・フェルミが,実験場で落とした紙片が爆発の衝撃波によって動いた距離からそのエネルギーを概算(フェルミ推定)した。
リチャード・ファインマンは,支給された遮光グラスを使わず,トラックの風防ごしに爆発を観察した。

2019年7月15日月曜日

分断と中庸

7月14日の東京新聞の参議院選に関する記事「選挙ツイート受信に偏り 無党派ユーザー「1党だけ」63%」は,2017年の衆議院議員選挙に対する豊橋技術科学大の吉田光男助教(計算社会科学)と東京大の鳥海不二夫准教授(同)の研究を紹介している。衆議院選挙前後の1ヶ月くらいの政党の発信を受け取ったユーザ1600万人のうち,政党の公式アカウントを直接フォローしたりリツイートするユーザ(政党支持層)以外の受信者1300万人を無党派的なユーザとして分析した。このうち6割が1党だけからしか情報を受け取っておらず,分断(エコーチェンバー現象)が進んでいるとしたものだ。

佐々木俊尚がこれを受けて,解説している。ネット上ではエコーチェンバーによって左右の過激な極論が拡大しており,中庸な意見をすくい上げる必要がある,というものだ。佐々木自身が左派に暴力的なものいいはやめたほうがよいといったところ,トーンポリシング(抗議内容ではなく態度を問題にして批判をそらす行為)だという返信が殺到したとのこと。図星をさされたので,東京新聞で反論している。佐々木も主戦場のミキ・デザキにもう一度学んでほしいところである。

大学時代に読んだ岩波新書の「現代の神話(B.ダンハム)」では,第五章の「どんな問題にも二つの面があるものだということ」,が一番印象に残った。大学に入学したのは1972年で,キャンパスには70年安保前夜の大学闘争の余熱が少しだけ残っていたが,いずれにせよ我々は遅れてきたのであった。それでも,キャンパスの中で生ずる様々な問題に対して,意思決定を迫られる場面はあり,どのような態度をとり行動をするかを迷い続けることになる。そんな中で読んだアメリカの進歩的哲学者ダンハムの新書本は非常に読みやすく納得しやすかった。もちろん,ドイツ・イデオロギーや経済学・哲学草稿や弁証法的唯物論入門(モーリス・コーンフォース…)などの友人との勉強会もあったのだが,素人にはちょっとハードルが高すぎた。

ダンハムは,次のように書いた。
最後に,重大問題に関しては,中立ということは1つの幻想にすぎない,ということをのべておかなければならない。一たび実際に問題に関して二つの立場ができてしまえば,なにをやろうと,やるまいと,どちらかの側を助けることになる。かような時代になっても民主主義を助けようとしなかったはみかみ屋の紳士たちは,ファシズムを助けたものとみなさなければならない。こういう紳士たちの「科学的」な無為こそは,ヒットラーが一番あてにしたものの一つであって,それで相当な成功をおさめたのである。
(「現代の神話」−正しいものの考え方− (上)岩波新書168aより引用) 

いまでは,ネット上で活躍し,社会的な発言をする科学者たちのある部分(主に反ニセ科学派から構成される)は,「科学的」で中立な立場などとっておらず,強者の論理が貫徹する「科学」の立場に立って堂々と自説を展開し,弱者たちの「非科学的」な言説を,「科学的でない」ことに加えて「倫理」や「人権」の名目でもって退治しようとしている。もちろんかつても政府や企業の立場に立つ御用学者はたくさんいたが,インターネットの言説空間は新しい種類の集団を生み出した。これをエア御用と名付けたのは秀逸だったと思うが,かえって問題がややこしくなるだけだったかもしれない。

さて,佐々木俊尚は水平社宣言をどう評価するのだろうか。中庸性からの逸脱の先駆者であり,実際に様々な副作用を発生したではないかとして,真っ先に否定すべき対象だと認識するのかもしれない。

2019年7月14日日曜日

キャリア・パスポート

読売新聞が報道した内容。「文部科学省は,小中高校生が学習や学校生活の,目標を設定し,達成度を自己評価する教材「キャリア・パスポート」を2020年4月から全国の小中高校で導入する方針を決めました。自己肯定感,学習意欲の向上を目指します。」

文部科学省に設置された調査研究協力者会議(初等中等教育)のひとつに,2018年の8月にスタートした,「キャリア・パスポート」導入に向けた調査研究協力者会議がある。2019年の1月に第3回の会議を開催したところまで公表されているので,その後の進展があったのかどうか。

よくわからなかったのは,高大接続にかかわる,Japan-e-portfolio(またベネッセか・・・orz)との関係。あるいは,学習ポートフォリオ一般との関係。サンプルをみたけれど,なんだか面倒くさいことになってきた。確かに学習指導要領に書いていることを現実化するとこうなるのだろうけれど。

twitterの部分空間では批判の嵐だったが,文科省のページをみると,なんというか無駄な面倒くさいことに貴重な国の教育政策のエネルギーを使ってしまっているなあという感想しかない。

2019年7月13日土曜日

韓国と日本

A谷君から電話あり。韓国の件どう思う,ひどくないかと。いや,世間はみな韓国を批判しているけど,自分は文在寅支持だと答える。自分の周りの友達もみな韓国が悪いと思っているようだ。いや,日本人の大半がそうなのだろう。安倍政権は参議院選挙のために反韓国を持ち出した。前回の2016年参議院選挙では反北朝鮮だった。慰安婦問題徴用工問題貿易管理問題と続く一連の流れで,NHKのニュースや民放のニュースバラエティを見続ければ,必然的に日本人の大半の意見が形成されるのだと思う。これが,日本の強みとしての高度素材産業の優位性を失う階段を降りるきっかけになりそうだ。

P. S. 7/25/2019「対韓輸出規制」,電子機器メーカーの怒りの矛先は日本に向く?
https://eetimes.jp/ee/articles/1907/10/news027.html

2019年7月12日金曜日

Society 5.0

文部科学省の最近のペーパーはみな,Society 5.0というキーワードからはじまっている。なんだか気持ちが悪い。官僚があるキーワードを取り上げると,その傘下の利害団体は一斉にそのキーワードを使った申請書を大量生産し,そのキーワードがバズりだすことになる。そういう自分もさんざんそのような仕事をしてきた。Web2.0というタームを使って科研費を獲得し,チーム学校という言葉を駆使して大学設置審向けの書類を積み上げた。なんとも悲しくてむなしい話である。なので,人のことはいえない。

さて,日本政府のSociety 5.0は,狩猟採取社会を1.0,農耕牧畜社会を2.0,産業工業社会を3.0,情報化社会を4.0としての5.0である。当初は超スマート社会としていたが,Society 5.0と呼び習わすのが普通になってきた。第4次産業革命とも書いてある。第1次は蒸気機関+鉄道,第2次は内燃機関+車・航空機,第3次は半導体+コンピュータ・インターネット,そして第4次はAI・IoT+バイオ・ナノテクノロジーらしい。

経済産業省的な背景のもとに内閣府が作り出したと思われる。第五期科学技術基本計画(2016-2020)では,超スマート社会(Society 5.0)とある。また,総合科学技術・イノベーション会議が策定した統合イノベーション戦略2019では,Society 5.0が前面にでてきている。日本政府の政策ビジョンであるが,Wikipediaでは,日本語以外ではロシア語版のみ存在しており,英語版はない。一方,第4次産業革命ということばは,2016年のダボス会議から使われており,国際的にはこちらが通用している。Society 5.0 は日本ローカルなコンセプトであるが,産業革命というよりその結果として生ずる社会のほうに焦点を当てたということはそれなりに意味があるのかもしれない。

テイヤール・ド・シャルダンならば,叡智圏(ノウアスフィア)の段階にSociety2.0以降は含まれてしまう。アルビン・トフラーならば,第一の波:農業革命,第二の波:産業革命に対して,第三の波:情報革命(=脱産業社会)の第三波に包括されているものだ。ただ,それがこうして精密に分析されて行くのは現実に世界の相転移が見えはじめているからかもしれない。もう少し考えてみる。

2019年7月11日木曜日

新しい時代の初等中等教育の在り方について

教育再生実行会議に仕事を奪われて,中央教育審議会がお休みなのかと勘違いしていたが,やはり利権に直接からみにくい話題の方は,従来のように中教審で議論されていた。うかつなことに見落としていたのが,今年の4月17日に文部科学大臣が諮問した「新しい時代の初等中等教育の在り方について」だ。初等中等教育分科会のもとに,新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会が設置され,6月27日から議論がスタートしている。いつものメンバーであるが,兵庫教育大の加治佐学長,プロップステーションの竹中ナミさん,東北大の堀田さんが入っている。臨時委員には京都教育大学の浜田麻里さん(日本語教育)やキャリアリンクの若江眞紀さんの名前もみられる。新しい時代の高等学校教育の在り方だけは,ワーキンググループが設けられている。

諮問理由は,「今後の社会状況の変化を見据え,初等中等教育の現状及び課題を踏まえ,これからの初等中等教育の在り方について総合的に検討」ということだ。社会状況の変化とは,いわゆる経産省的Society 5.0と,人口減少があげられている。初等中等教育の現状と課題とは,読解力+汎用基礎力的な内容と特別な配慮が必要な子どもの増加と教員の働き方改革×教員採用倍率の低下のことらしい。

そこで,次の4項目が取り上げられ,まず1と4から始め,その後2,3へと進むようだ。
1 新時代に対応した義務教育の在り方について
2 新時代に対応した高等学校教育の在り方について
3 増加する外国人児童生徒等への教育の在り方について
4 これからの時代に応じた教師の在り方や教育環境の整備等について

答えはある程度書いてあって,1は小学校教科担任制の導入と習熟別指導の導入,障害をもった子どもとギフティッドなどの個別対応の推進,2は普通科の解体とSTEAM教育の推進(でもこれは別のところで議論する),3は外国人児童生徒の就学支援と日本語・日本文化教育,4は教員の多様化を目指す免許制度改革,うーん,学校のブラック労働環境をなんとかして教員志望者を増やそうというような話は完全に後方に退いてしまっていた。

結局,すけてみえるのは多様性を旗印にしながら,階層社会化をさらに進めるということのようだ。

2019年7月10日水曜日

第25回参議院議員通常選挙

第25回参議院議員通常選挙の投票日は7月21日(日)だが,期日前投票のため市役所まで往復した。今回の目玉は,山本太郎がひきいる「れいわ新選組」。自動車のラジオからは,トランプ政権が有志連合の軍をホルムズ海峡に派遣して,イランに圧力をかけようとしているというニュースが流れてきた。日本への踏み絵だ。憂鬱な時代の変わり目がきてしまった。そして,日本もまた,トランプに倣うかのように,国際捕鯨委員会から脱退しただけでなく,韓国への貿易制裁まではじめてしまった。

こわいものみたさで,自民党の政見放送を見る。内容はまったくひどいのだが,三原じゅん子のしゃべり方は悪くはない。そのため,安倍晋三の滑舌の悪さが際立ってしまう。いつもはNHKのニュースの「神」編集で見ているのでそこまで感じないことが多いのだけれど,通しで聞くとこれだ・・・orz。やはり,国会審議はいずれかのチャンネルでノーカットですべてを放送すべきである。しかし,この聞き苦しさが,とんでもない話を良く噛まずにスッと丸飲みさせるための秘訣なのかもしれない。あれ,アベノミクスといわず三本の矢の経済政策といったのはなぜだ。その後,アベノミクスの果実を生かしてとのお言葉あり。後半は野党批判でまとめ,三原じゅん子の,先の国会演説を褒めるシンゾー。

2019年7月9日火曜日

ノウアスフィア

新国立劇場で,テイヤール・ド・シャルダンの生涯を描いた「骨と十字架」の公演が,7月11日から始まる(7月6・7日にプレビュー)。矢島道子さんがMLで紹介しており「ノースフェーラを提案し」と書いていたのでなんだろうと思った。

さて,テイヤール・ド・シャルダンの「現象としての人間」を買ったのは大学生の頃だ。その頃の愛読書の文学や理工書以外で印象に残っているのは,コリン・ウィルソンの「アウトサイダー」,エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」,ディヴィッド・リースマンの「孤独な群衆」,バローズ・ダンハムの「現代の神話」と並んで,ティヤール・ド・シャルダン(ティと発音すると思い込んでいた)の「現象としての人間」だった。

調べてみると,ノースフェーラ(ヴェルナツキー,ロシア文化界隈,叡知圏)は,noosphereの訳語だった。訳語は1つに定まっておらず「ノウアスフィア(山形浩生,オープンソース界隈)」,「ヌースフィア(怪しい系界隈,精神圏)」などもある。テイヤール・ド・シャルダンやヴェルナツキーがいうには,物質=精神進化の段階により,ジオスフィア(地質圏)→バイオスフィア(生物圏)→ノウアスフィア(叡智圏)が形成されるということだ。

テイヤール・ド・シャルダンは神学者・科学者として,キリスト教と相容れないキリスト教的進化論を提唱した。宇宙の進化は叡智の究極としてのオメガ点を目指しており,その完成がコスミック・キリストの誕生を意味するというストーリーは,小松左京の「神への長い道」などのコンセプトと一致する。小松左京はピランデルロを専門としていたが,テイヤール・ド・シャルダンについてどこまで語っていただろう。いや,自分が「現象としての人間」を手にとったのも,SF界のどこかでそれを目にしたからに違いないとは思う。

テイヤール・ド・シャルダンのオメガ点やノウアスフィアは,科学のフレーバがただよっている論考ではあるが,これはもちろん科学ではなく,あくまでも思弁(スペキュレーション)の一つである。しかし,その概念は今となっては,傾聴に値するものに近づいてきているのではないか。

バイオスフィアとほぼ並行に,世界は意識を持った人であふれ,未だ意識をもたない電子脳(コンピュータ)や電子感覚器(センサー)や電子神経系(インターネット)の大群が,世界中の意識を持ったヒトと,ヒトが作り出した人工物の生態系を網目のように繋ごうとしているのを見て,このグローバルな複雑系を,バイオスフィアに対応するノウアスフィアと呼ぶことには全く抵抗がない。果たして,そのノウアスフィア上に一つのあるいは複数の人工的な意識=神が誕生するのだろうか。

2019年7月8日月曜日

新聞記者

リタイアすると,平日の昼に映画を見ることができるようになった。新ノ口のシネマ橿原で「新聞記者」を上映していたのでいってきた。はい,朝から老人ばかりです。東京新聞の望月衣塑子が原作を書いていおり,東京新聞が映画の製作にも協力している。この映画は「シン・ゴジラ」のようにカタルシスを与えるものではなく,「この世界の片隅に」のように現実のディテイルからなにかを紡ぎ出すものでもなく,「主戦場」のように課題を照射するものでもなかった。抽象的で抑制的な画像と演出の中で,現実の世界のできごとと相似な世界が描かれていく。

登場するのは,新聞記者と官僚とそれらの家族三組だけであり,安倍晋三も加計孝太郎も,政治家や企業家はまったく登場しない。それはそれでありだと思う。物語の構造は非常に単純であり深みはない。いや,小説より奇な現実の非常にうまい写像になっているために,見慣れた風景にしか見えないといったほうがよいかもしれない。気がつかなかった視点を新たに提供するものでもない。南彰と前川喜平とマーティンファクラーと望月衣塑子の対談が埋め込まれているのだが,映画のストーリーと完全にシンクロして矛盾しない。そしてひたすら,現実世界の少し裏側にすけてみえる内閣調査室のカラクリを提示してくる。

主演女優のシム・ウンギョンはとてもよかったが,松阪桃李は努力賞といったところか。映画で重要な役割を果たした多田の田中哲司が,尾美としのりにしか見えなかった自分の識別力に問題があったのかもしれない。というわけで,菅野完にいわせれば望月衣塑子の世界観が間違っとるからということになるのかもしれない。家族のドラマのところでもっとドロドロしたものが出てくるのかと思っていたら,そうではなく定型的なパターンだった。原作の問題なのか監督や演出の問題なのか。

もうひとつ引っかかったのが,加計学園のモデルにダグウェイ羊事件をからめたところである。内閣府主導の軍事目的施設というのはちょっとどうかと思う。現実の加計学園はそれどころではない,グダグダの施設でほとんど学園の資金計画ありきの間に合わせの計画だったように報道(マスコミではない)されているので,なかなかリアリティを持つことができなかった。

P. S. ニューヨーク公共図書館の映画の予告編がよかった。

2019年7月7日日曜日

記述式問題の問題

大学入試に記述式問題が必要であるというロジックはどうなっているのか。まずは,教育再生実行会議の中から, 第四次提言高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について(平成25年10月31日)をみなければならないだろう。

要約
○グローバル化とイノベーションに対応する人材の質が重要であり教育がその要
○大学入学者選抜が教育の在り方を大きく左右する。知識偏重の一点刻み試験や,学力不問のAO入試はだめ。高校教育+大学教育+入学者選抜の一体的改革が必要
○高校教育:生徒の多様性を踏まえた特色化+主体的に学び社会に貢献する能力
○大学教育:厳格な卒業認定及び教育内容・方法の可視化+人材育成機能を強化
○入学者選抜:能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価・判定するものに転換

大学入試センター試験の改革は,当初,複数回実施の達成度テストという話のはずだった。しかし,現実と折り合わせた結果は,大学入試共通テスト(記述問題+英語民間試験)というところに落ち着いてしまった。面接や活動の重視と生徒の多様性を踏まえた高等学校の特色化という主張から見えるのは,色濃く漂う社会階層の分離政策である。なんだかなあ。

記述式テストは個別学力検査において,これまでも十分実施されてきた。一方,アルバイトを含む1万人の採点者が標準化された採点基準で公平な(提言元は,一点刻みを否定しており,公平性や公正性なんかクソ食らえと思っているかもしれないが)試験をするためには,マークシート並のレベルの問題に落とし込まなければならないだろう。今のセンター試験は十分工夫されていて,単純な知識偏重問題ではない。なんだかなあ・・・orz

ミクロにみるとこの大学入試改革で得をするのは,教育関連産業とそのロビーであり,御用学者であり,システム開発企業であり,それらに力を及ぼすことができる政治家だろう。また損をするのは,振り回される側の受験生・家族や,高校・大学教員ということになる。それはそれとして,この結果,当初のもくろみのように,高校や大学の教育が改善されて,質の高い人材が本当に育成されることになるのかどうかだ。この国の文部科学省や財務省はエビデンス・エビデンスと口を酸っぱくして畳みかけてくるが,彼ら自身が,政策の効果を測定した結果を公開し,それによって政策担当者を評価しているという話はあまり聞いたことがない。

2019年7月6日土曜日

大学入学共通テストの採点

大学入学共通テストの採点に学生アルバイトを使うことがNHKで報道され,波紋を呼んでいる。既に実施されたプレテストでは,ベネッセが学生アルバイトを使って採点している。本番で必要な採点者数は約1万人ということだ。採点時期も通常の大学の授業期間であり,その他さまざまな懸念が示されている。

こんなに拙速に物事が進められているのはなぜか。一つは,インターネットの普及を契機として,世界全体が大きく変貌しつつあることだ。先進国の中で日本社会だけがイノベーションに取り残されかけているので,なんとかしなければならない,そのためには教育を変える必要があるというわけだ。これに,自民党右派による戦後民主主義に対する反動的な動きが加わることで,「教育改革」の推進に拍車がかかっている。

従来であれば,中央教育審議会が教育政策の方向性を決めていたはずなのだが,いまでは,政策のベクトルは自由民主党の教育再生実行本部を発信源としてあらかじめ設定され,それを官邸主導で廻す教育再生実行会議でブーストしてただちに実行するという作戦がとられている。

最近の日本の教育政策の実現度には非常に目覚ましいものがある。教育基本法が改定され,国立大学が法人化され,道徳が特別の教科となり,日本の教育はほぼ回復不能な形に切り刻まれつつある。特に問題なのが,新自由主義的な考え方の浸透であり,公教育は私企業の営利活動の草刈り場に変貌しつつある。それは,道徳教育の推進や教育委員会の解体と変貌によってもたらされる権威主義との間で微妙なバランスをとられている。

その象徴的な事態として,大学入学共通テストにおける英語民間試験の導入と,記述式問題の採点の民間委託があげられる。政策担当者が主張する本来の目的と,彼らが実践している真のねらいとの間に大きな矛盾が噴出して混乱している。政策を主導する側は,このまま突っ走るのであろう。多くの教育関係者は,これはまずいと思っているが,すでに大学にはこれに抵抗するエネルギーが存在していない。2045年を迎える前に,大学入学試験に関るシンギュラリティが発生するかもしれない。

P. S. 自由民主党の教育再生実行本部は,なぜ,党組織の中できれいに位置付いていないのだろうか。少なくとも,自民党のホームページではぐずぐずになっている。提言の文書ファイルが散発的にニュースに埋め込まれているが,全体を通覧できるまとまったページは存在しないし,自民党の「政策ページ」の下にも他の本部のようなバーナーすらない。あたかも,下村+安倍ラインが私的にマネジメントしているかのように。

[1]教育再生会議(2006-2008)
[2]教育再生懇談会(2008-2009)
[3]自由民主党教育再生実行本部(2012-)
https://www.jimin.jp/news/policy/130290.html
第一次提言 https://www.jimin.jp/news/policy/130321.html
第二次提言 https://www.jimin.jp/news/policy/130323.html
https://www.jimin.jp/news/policy/130322.html
https://www.jimin.jp/news/policy/124927.html
第三次提言 https://www.jimin.jp/news/policy/124911.html
第四次提言 https://www.jimin.jp/news/policy/127697.html
第五次提言 https://www.jimin.jp/news/policy/127748.html
第六次提言 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/dai36/sankou2.pdf
第七次提言 https://www.jimin.jp/news/policy/133741.html
第八次提言 https://www.jimin.jp/news/policy/134987.html
第九次提言 https://www.jimin.jp/news/policy/136348.html
第十次提言 https://www.jimin.jp/news/policy/137394.html
第十一次提言 https://www.jimin.jp/news/policy/138660.html
第十二次提言 https://www.jimin.jp/news/policy/139621.html
[4]教育再生実行会議(2013-)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/teigen.html

2019年7月5日金曜日

Numba

奥村さんが,奥村さんに,Numbaを勧めていたので,調べてみた。Pythonの関数を実行時にJITコンパイルして最大200倍高速化するとのこと。具体例がMyEnigmaのブログ記事にあった。検証用コードは次のようなものだ。自分の環境では,pip3 install numbaでインストールできてしまったが,上記記事を参考にしたほうがよいかもしれない。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
#! /usr/local/bin/python3
# -*- coding: utf-8 -*-

##from numba import jit
from numpy import arange
import time

##@jit
def sum2d(arr):
    M, N = arr.shape
    result = 0.0
    for i in range(M):
        for j in range(N):
            result += arr[i, j]
    return result

start = time.time()
a = arange(100000000).reshape(10000, 10000)
print(sum2d(a))
elapsed_time = time.time() - start
print ("elapsed_time:{0}".format(elapsed_time) + "[sec]")
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

##の2行をオン(test2.py)にするか,オフ(test1.py)にするかで次の結果を得た。
マシンは非力な,MacBookAir 13-inch Late2010

 ./test1.py
4999999950000000.0
elapsed_time:75.88523197174072[sec]
 ./test2.py
4999999950000000.0
elapsed_time:5.047018051147461[sec]

うーん,200倍ではなくて,25倍だった。

2019年7月4日木曜日

フッ化水素酸

たいへん残念なことには,いつの間にか韓国バッシングがこの国の作法となってしまったようだ。韓流ドラマにはまったときは(いまでもそうだが),50年前と比べてなんとすごい世界に変貌したのかと思っていたのだが,いつの間にか逆コースである。政権側が率先してあの調子だから,ネトウヨだけでなく,多くのマスコミやインテリ層が安心して叩きにかかっている。これというのも日本が余裕をなくすほどの衰退の坂を下っているからだろう。それに反比例するように,日本スゴイと中国+朝鮮半島 disの合唱が聞こえてくる。

その制限品目のフッ化水素,常温では気体で扱いにくそうなので,フッ化水素酸として使いそうなものだけれど,よくわからない。大阪の2つの中小企業が国内生産シェアのほとんどを握っているようだ。高等学校の化学で,細心の注意を払いながらフッ化水素酸を取り扱い,ガラスに文字を書いて腐食させる実験を行った。何やら意味ありげにKの文字を書いたのだった。

理数科に在籍していた当時の金沢泉丘高校の理科では,生物や化学はそれぞれの実験室で授業があり,ごくたまには生徒実験もあった。地学は教室だったが,プリントを使った地質図の作業などがあった。ほとんど受験問題対応であった物理だけはまったく実験がなかった(一度だけ,光の実験があったかもしれない)。数学の時間でさえ,プログラム電子式卓上計算機やアナログ計算機でのプログラミング実習があったのだが。今はSSHに指定されているので,当時とは大違いだと思われる。さて,それにもかかわらず,物理に興味があって,物理学科に進学することになってしまった。たぶんSFの影響だ。

当時,物理の次に興味を持ったのは生物である。これもSFの影響だ。遺伝と進化の未来を夢見てこれからは生物学の時代だと思った。阪大の受験でも第2志望は生物学科だった。そんなわけで,受験科目でもないのに定期試験で生物の勉強に集中していたため,医学部に進学するのかと思われていたことあるが, 生まれつきの臆病者で血を見ると卒倒するので医者にはなれない。

2019年7月3日水曜日

TOEIC撤退

独立行政法人大学入試センターによる大学入学共通テストが2020年度(=「2021年度入試」)から実施される。英語における民間試験の導入については,利用中止を求める国会請願が出され,TOEICが離脱するなど,予断を許さない状況である。例えば,日本英語検定協会をみるとかなり複雑なことになっているようだ。試験会場としては全国にテストセンターを設けるようだが,一方,某B社のGTECは高等学校を使うとかいうとんでもない話もあって,なにがなんだかよく分からない。

2019年7月2日火曜日

地には平和を

今月のNHKの100分 de名著は,小松左京スペシャルだ。ナビゲーターは宮崎哲弥。この番組のMCの伊集院光は,これまで見た回では,かなり的確なコメントをしていておもしろかった。ただ,彼はSFについてはあまり知らないような様子だった。初回の昨日は「地には平和を」,第1回のハヤカワ・SFコンテストの努力賞である。ちなみにこのときの入選は該当作なしで,佳作として,眉村卓の「下級アイデアマン」など3作が選ばれている。また,1962年の第2回には小松左京の「お茶漬けの味」が,半村良の「収穫」とともに,入選(第3席)になっている。

「地には平和を」を含む小松左京の第一短編集は,ハヤカワ・SFシリーズ(銀背)から出ており,自分が中学生のときに読んでいる(ちなみに小松左京の短編集で最初に購入したのは「日本売ります」)。番組の中では,「戦争はなかった」という短編についてもふれられていた。小松左京には他にも戦争と関係した作品が多い,というか1960年代の日本SFシーンに出てくる作品群は,高度経済成長の躁状態を支えると同時に,その裏側にどこか重いテーマが秘められている。もちろん,一般の日本文学はほとんどそんなトーンだったわけだが。

星新一の「白い服の男」はそういう戦争テーマSFの主要短編の1つであるが,「戦争はなかった」と同じような発想が含まれている。星新一の多くの短編の中でも強く印象に残ったものの一つだ。小松左京の「戦争はなかった」は読んでいたのだろうか,こちらのほうは,はっきりした記憶がない。

2019年7月1日月曜日

「神への長い道」と素粒子

神への長い道とツイッターからの続き) 

高校時代に読んだ小松左京の「神への長い道(1967年)」でもう一つ記憶に残った文がある。当時は,素粒子の標準理論が成立する前夜であり,小松左京の頭にあった素粒子といえば,光子,ニュートリノ,荷電レプトン,ハドロン(重粒子+中間子)であったはずだ。その段階で次のような文を書いている。
—物質の相互作用の間に,現在のような量子的関係が発生したのは,彼らにいわせれば,この宇宙に素粒子が生じてからだ,というんだ。われわれのいう,プランク恒数が,非常にマクロな時間の中では,かわってくると考えている—とにかく,その素粒子のスペクトルの中で,安定な素粒子がくみあわさって,原子が生じてくる。—きわめて巨大な量のエネルギーが,きわめて小さな空間に閉じ込められる,という現象が,ここでまた起こる。…彼らは,それが可能になる秘密は,秩序にあると考えている。ある秩序でもって,整理してつめこめば,非常に小さな時空容積内に,非常に巨大な量がつめこめる—この関係は,ずっと高次な情報段階までつづいているというのだ。 (引用:世界SF全集35 日本のSF(短編集)現代編 神への長い道 より)
プランク定数をプランク恒数という表現にしているところに1960年代を感じるが,物理の基本法則の成立の中核が秩序=情報(今日の言葉での対応物)と関係しているという説明に何ともいえないセンスを感じる。

2019年6月30日日曜日

「神への長い道」とツイッター

小松左京の中編「神への長い道」は高校時代に読んで,影響されたSFの一つだ。米島君にも銀背のハヤカワSFシリーズの短編集を貸したのだが,評価はなかなかよかった。しばらく前に,これが Twitter をかなり正確に予言しているとして話題になった。その部分を取り出してみよう。
五十六世紀人たちのしゃべる言葉は,長い場合は猛烈にはやかった。—まるで昆虫の翅音のようにしかきこえない。(中略)というよりは,大脳前頭葉が二十一世紀人に比べて極度に発達した彼らは,ほんの短い,感投詞(ママ)のような言葉を投げかけあうだけで,ほとんどの意味がつうじてしまうらしかった。しかし,長い議論になると,鳥のさえずりのような,せせらぎのようなせわしない声があたりにみちた。—彼が発見しておどろいたのは,五十六世紀人たちは,会話が熱をおびてくると,しばしば二人ないし,それ以上の人たちが,同時にしゃべりまくるということだった。最初はそれが受け答えになっているのかと思ったが,そうではないらしく,めいめいの人間は,相手のいっていることなどきかず,猛烈なスピードで自分の考えをしゃべりつづけ,相手のしゃべりつづけている話のうち,ほんの一つ二つの単語なりフレーズなりでなにかこちらが展開している思考にヒントとなるようなものがあれば,それが相手方の展開している思考系列のなかで,どういう順序,または意味で組みこまれているかということとは関係なく,それをこちらの思考の流れにとりいれて,また新たな方向へ,自分の考えを展開していくらしかった。—つまり,彼らの議論とは,めいめいが相互に情報発振源になってのべつ発振し,何かめいめいにとってそのなかで,瞬間的に共鳴する情報だけがコミュニケートすればいいのであって,相手の考えを全面的に理解する必要はなかったのだ。にもかかわらず,そのやり方は,相互に共鳴し,コミュニケートする情報が,ある確率でもって整理されていうことによって,りっぱに—むしろいちいち言葉の厳密さをたしかめて,煉瓦のように論理を構築していく古いやり方より,よっぽど効率良く—相互の思考を進展させ,同時にめいめいがちがった側面において,新しい問題に達することによって,ひろがりを深めていくのだった。
(引用:世界SF全集35 日本のSF(短編集)現代編「神への長い道」より)

今だと「情報発信」なのだろうが,この文脈では「発振」のほうがふさわしいようだ。たぶん,Twitterやその他のSNSの本質的な側面を非常にうまく表現している。実現したのが五十六世紀ではなく,二十一世紀だったが,我々は思考を進展できずにフェイクを撒き散らかし続けるという残念な段階にとどまったままである。人と人のコミュニケーションは山羊さんゆうびんのように原理的に困難なものなのかもしれない。