2019年10月15日火曜日

台風の運動エネルギー

台風の重さからの続き)

前回は台風の質量と並進運動エネルギーを求めた。次に,台風の重心に対する風の回転運動エネルギーを見積もってみる。そのために,台風の風速分布を調べてみると,中心から50kmあたりをピークとして台風の外側に向けて緩やかに,中心側にむけて急速に減少している。そこで,半径 $R$[m],高度 $h$[m]の台風の平均風速を中心からの距離$ r$[m] の関数として,$v(r)=60(1-r/R) $[ m/s]とモデル化する。中心では過剰に,周辺では過小に評価している。

これを用い,空気の密度を $\rho = 1$ [ kg/m^3] とすると,回転の運動エネルギー$T_R$は,$\int_0^R \rho \pi h r v(r)^2 dr = 5 \pi h R^2 $[J]より,R=500km  h=10km の場合,$T_R$=4×10^16 [J]となり,前回求めた並進運動エネルギー5×10^16 [J]と同じオーダとなった,というかかなり粗い見積もり。これらを加えた台風の風の運動エネルギーは 10^17[J]である。

さて,インターネットでこれがリーズナブルかどうか調べてみようとしたが,台風の運動エネルギーについてのわかりやすい情報はほとんどない。どういうことか。日本科学協会立方体地球には台風ができるの?に,台風の運動エネルギーは10^18[J]とあった。まあまあ正しかった。

Wikipediaにはエネルギーの比較というページがある。日本語版には地震の記述はあるが,台風はない。しかし英語版の Orders of magnitude (energy) には,"Energy released in 1 day by an average hurricane in producing rain (400 times greater than the wind energy)" が 5×10^19 [J]とあるので,風のエネルギーは 10^17 [J] でほぼほぼあっているのかもしれない。

2019年10月14日月曜日

台風の重さ

台風とは,熱帯の海上で発生する低気圧(熱帯低気圧)のうち
(1)北西太平洋(赤道より北で東経180度より西の領域)または南シナ海に存在し,(2)低気圧域内の最大風速(10分間平均)がおよそ17m/s以上のものを指す。

気象庁の台風の大きさと強さの解説ページによれば,最大風速の大きさの範囲によって,台風は,無印(17m/s以上33m/s未満),強い(33m/s以上44m/s未満),非常に強い(44m/s以上54m/s未満),猛烈な(54m/s以上)の4段階に分類される。また,風速15m/s以上の半径を基準とする大きさは無印(500km未満),大型=大きい(500km以上800km未満),超大型=非常に大きい(800km以上)の3段階に分類される。

そこで,台風の半径を500km高さを10kmとすると,その体積は,10^6 km^3となる。空気は1Lで1.25gだから1m^3で約1kg 1km^3で10^9 kgであるから,台風の領域に含まれる空気の全質量は10^15 kgとなる。1辺が10kmの水の質量と同じくらいだ。

実際には空気だけの塊でなく凝結した水蒸気(雲)混じりの流体だが,飽和水蒸気圧は気圧の数%のオーダーなので,ほぼ空気の塊とした質量と変わりがないと思われる。台風の中心が時速36kmで運動しているならば,台風の重心の並進運動の運動エネルギーは5×10^16 Jとなる。

台風の運動エネルギーに続く)

2019年10月13日日曜日

レオーノフ

台風19号による河川の氾濫は広範囲の地域に渡って甚大な被害となっている。地震を含め,当分はこのような自然災害が続くことが予想される。米国のためのイージス・アショアや辺野古移設利権などに税金を投入するくらいであれば,自衛隊の体制を災害救助目的で強化するほうに使うほうがよほど人命を救い国富を守ることにつながるように思える。

数日前にソ連の宇宙飛行士で世界初の宇宙遊泳に成功したアレクセイ・レオーノフ(1934-2019)がなくなったというニュースがあった。ニュース等ではあまり強調されなかったが,レオーノフといえば宇宙をテーマとした絵画を見たことが印象に残っている。たぶん,千里の万博公園あたりだったように思うのだが,1970年の大阪万博の時だったのかどうか(たぶん時期的に違うような・・・),既に記憶がはっきりしない。

2019年10月12日土曜日

台風の角運動量

台風を,時間的に変化するある領域を区画した巨視的な物体だとしたときに,その質量や速度を考えることができる。このとき台風の中心が重心とほぼ近いものになったらわかりやすいが,衛星写真で雲の分布をみると,必ずしもそうなのかどうかはよくわからない。で,この巨視的物体の速度は,さきほどの仮定がよければ,台風の中心の移動速度とほぼ等しくなる。このとき台風の角運動量はどうなるかと思って検索してみると,琉球大学の伊藤耕介さんの数値天気予報研究室が最初のほうに現れた。角運動量に関する記述もある。

2019年10月11日金曜日

無可有郷

青空文庫で江戸川乱歩のパノラマ島綺譚を読みはじめたら,無可有郷が出てきた。ユートピアのことかと思って調べてみたら,トマス・モアユートピアじゃなくて,ウィリアム・モリスユートピアだよりに行き当たった。そういえば家のリフォームで寝室とトイレに家族が選んでいたのはモリスのデザインの壁紙だった。ユートピアだよりとはまったく結びついていなかった。不覚であった。今朝のニュースではアメリカ合衆国で社会主義がはやっているという。日本はいったいどこへ向かうのだろう。ティール組織にはまったく社会主義のフレーバーは感じられなかった。あの分類だとどうなるのか。

2019年10月10日木曜日

ティール組織

もう新聞もテレビも止めようかとかいいながら,ずるずると旧弊に搦めとられている。テレビにいたっては,ビデオレコーダーを更新したおかげで,2つあったリモコンが1つに統合され,450時間録画可能とかになったため,ますます深みにはまっている。購読紙は,資本主義体制どっぷりの日本経済新聞なので,割り切って文化欄と科学欄と経済欄をみている。

新聞を平均 0.1ページ/秒の速度で読んでいるが,ときどき,おもしろい記事に出会うことがある。今日は,ティール組織。

ベルギーのフレデリック・ラルーが2014年に出した,Reinventing Organization が2018年に「ティール組織」として翻訳された。もう,5年前の話だったが,最近流行っている(ティール・ジャーニー・キャンパス)ようだ。世の中には知らないことが多い。本家の?Wikiサイトもある。

さて,この本「ティール組織」は,人間の組織モデルの進化と新しいモデルの提案を扱っている。ラルーはこれを色でシンボル化して5段階で表現している。フランス語Wikipediaの自動翻訳版を整理すると以下のとおり。

【赤】紀元前1万年〜|衝動的|族長|群狼
   |戦利品・上司の裁量で報酬
   |マフィア・ギャング・部族民兵
   |分業・実証的権限/恐怖・反応性
   |最強の法則・恐怖・暴力・短期主義・不安定性

【琥珀】紀元前4千年〜|従う人|ピラミッド組織|軍
   |階位と卒業証書に応じた給料体系
   |軍隊・カトリック教会・行政・学校・大学
   |正式で統一された役割・手順・計画と反復可能なプロセス・安定した階層,
   &下方制御・適合制御・統一思考
   |手続きの硬直性・過去の反復・変化への不適応・差異の排除

【橙】19世紀〜|成功|機械組織・資本主義企業|機械
   |個人ボーナス
   |ウォールストリート・バンカシュアランス・ナイキ・コカコーラ
   |革新・責任・実力主義・競争力・客観的・合理的/科学的精神による管理/報酬
   |専ら金融目的・金融外の意味の欠如(生態学的・社会的・人間的・感情的)
   &職業と個人の世界の分離

【緑】20世紀〜|多元的|ファミリービジネス・NGO|家族・協会・協同組合
   |集団保険料
   |スターバック・サウスウエスト航空・ベン&ジェリーズ ・
   &ミシェル&オーガスティン・新興企業・NGO
   |エンパワーメント・文化・尊敬・平等・感情・人権
   |ピラミッドの平等・コンセンサス文化は減速し決定をさえ妨げる

【青緑】20世紀〜|スケーラブル/包括||生物
   |ピアコンセンサスによる自己決定給
   |Buurtzorg・AES Corporation・Morning Star・FAVI・True Sounds,
   &パタゴニア・BSO / Origin・Holacracy
   |自己統治 / 自己管理・膨満感・進化論的根拠
   |

【青緑】は,フランス語の原文では,Opal(オパール)になっているが,英文ではTeal(コガモにみられる濃い青緑)だった。オパールというと青というイメージはなかったのだが,Wikipediaで検索するとそうでもないのかもしれない。まあ光のスペクトルの並びからして緑の次は青でよいのだろう。

 日本の大学はどうやら琥珀から橙に向かっているようだ。部分的には赤もちらついているかもしれない。

2019年10月9日水曜日

グッドイナフ-金森則

ノーベル化学賞の発表があって,グッドイナフって聞いたことあるような気がするけどどんな人かなと調べてみたら,金森順次郎先生の名前がでてきた。

当時の理学部の研究室は11しかなくて,理論物理はそのうち3つ。理学部の日当たりのよろしくない北西4階に,内山研,森田研,金森研と並んでいた。金森先生は我々の統計熱力学の授業を担当されていた。演習は助手の寺倉清之さんだった。

グッドイナフ-金森則は,陰イオンをはさんだ磁性イオンに対する超交換相互作用の符号をきめる一般則の名前だ。培風館から金森先生の磁性の本が出ているのだけど,買わずじまいだった。

金森先生には,学部3回生のときにきつく叱られたことがある,佐藤秀明君が機動隊になぐられて目に青痣をつくるなど,豊中キャンパスでの緊張関係が高まっていたとき,再度機動隊が導入されて,これにいきどおり,金森先生の授業がはじまった冒頭に1人でクラスに呼びかけに行った。金森先生はこれに対し,君はなんだ出て行けと一喝した。金森先生は,我々が入学した1972年に学生部長をつとめており,こうした学生の扱いには慣れていたのかもしれない。後に,中性子物性実験の国富信彦先生がフォローしてくださったようなのだが,その後,物理学科の同窓会でお目にかかっても,恐れ多くてあいさつもできなかった。

1994年に大阪教育大学の創基120周年の記念式典が柏原キャンパスで行われた。金森先生は,1991年から1997年まで阪大の総長をつとめていたので,来賓としてこの式典に参加され,自分の母親が大阪教育大附属平野幼稚園だったか小学校だったかの出身で縁があるとおっしゃっていた。



2019年10月8日火曜日

フラッグシップ大学(1)

 10月4日に,中央教育審議会の初等中等教育分科会の教員養成部会に置かれた「教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループ」の中間まとめがでた。「Society5.0時代に対応した教員養成を先導するフラッグシップ大学の在り方について(中間まとめ)」ということで,怪しさ満点の話だ。

教員養成系大学の再編プロセスにおける飴の一つであり,フラッグシップ大学の認定は期限付きであることから,これを使って大学における学校教員養成への恣意的な政治的介入がより容易に実現できるようになる。
教員養成の現状では,これまで既存の制度や予算等の制約の中で個別の好事例は生まれているものの,教員養成の在り方自体を大きく変革するような起爆剤とはなり得ておらず,大学の体制も,教育課題に対応した機動的な教員養成の実践や先導的試行等が十分に行える体制とは言い難い。
「教員養成のフラッグシップ大学」構想は,Society5.0時代に向け,我が国の教員養成の在り方自体を変革していく牽引役となる大学を創出することの必要性を背景とするものである。
教育職員免許法と教職課程認定でガチガチに縛っておいて,その上からたっぷりと免許状更新講習のソースをかけた状態で,どこが教員養成の在り方自体を大きく変革する起爆剤なのか。すでに改悪された教育基本法それ自身が起爆剤として機能し,日本の教育システムが瓦解しつつあるというのに・・・。

2019年10月7日月曜日

PayPay

最初にPayPayアプリをインストールしてチャージの練習をしたのが,去年の12月4日。このブログをはじめる一寸前だった。最初に使ったのが今年の2月3日,明日香にある自然食品のハム屋さんの店頭にPayPayの看板が出ていたため。その後,3月にジョーシン電気で消耗品を買ったのが最後だった。

消費税増税にからめて,複雑なキャッシュレス誘導策が実行されている。なにこれと思って無視していたが,本日2回ローソンとセブン・イレブンで使ってみたら,前回とは違ってなんだか簡単だった。これも停電などでネットワークが切れてしまえば使えなくなるし,端末のバッテリアップでも使えない。どうしてもバックアップのシステムは必要だ。店舗に手回し充電器やソーラパネルや電気自動車を1台置くとか・・・。

でも,もとのクラウドのサーバに至る経路が切れてしまえばそれまでか。なんと脆弱な基盤の上に成り立つ砂上の楼閣なのだろうか。

2019年10月6日日曜日

地球温暖化(2)

地球温暖化(1)からの続き

これに対して,様々な批判的な論説が現れている。もちろん,昔から地球温暖化に関する懐疑論があったが,一周回ってリニューアルしているということか。

・長周新聞:気候変動サミットと「温暖化論」の破綻 モンスター化したIPCC(2019)
・中村元隆:気候科学者の告白 地球温暖化説は未検証の仮説(2019)
・ジョン・クリスティ:熱帯の空−気候危機論への反証−(2019)
・リチャード・リンゼン:科学を無視した地球温暖化議論(2016)
・山田耕一:素人による素人のための地球温暖化懐疑論(2016)
・深井有:地球はもう温暖化していない−科学と政治の大転換へ−(2015)

自分のスタンスは昔からはっきりしていて,明日香壽川江守正多の議論は,赤祖父俊一丸山茂徳らのそれより信用できないというもの。でも気象学の先生に聞いたら二酸化炭素濃度の増加による温暖化の進行はほとんど正しいとのことだった。まあ,これに便乗した某Kさんによる理科教育・環境教育の二酸化炭素の温暖化効果を確かめる実験の方は,ほとんど否定されているんだけれど。

ということで,金星大の惑星に地表面で90気圧の窒素を充填したときの温度構造が説明したい。

P. S. 中村さんの上記資料には,NHK出演後に海洋研究開発機構からコラムの原稿依頼があったとある。「2014年1月上旬に北米を襲った大寒波について」というタイトルで寒波の原因が温暖化であるとの説を否定している。なお,リチャード・リンゼンは中村元隆の博士課程アドバイザーの一人。


2019年10月5日土曜日

地球温暖化(1)

京大総長の山極壽一は,京大の吉田寮問題,立看問題や折田先生像的問題でなかなかの対応をしていて頭がいたい。山極は日本学術会議会長の職にあるが,この度「地球温暖化問題に対する緊急メッセージ」というのを会長談話として出していた。9月の国連総会における「国連気候行動サミット」の直前に連帯のメッセージとして出したもののようだ。

温暖化の原因は人間の活動にあると断定したところから議論が始まり,2040年度に産業化以前から比べて地球平均気温が1.5度上昇するというシミュレーション結果から,「1.5度目標」というキーワードを強調している。1.5度の意味については,甲斐沼美紀子による「IPCC 1.5°C特別報告書 を読み解く」がある。

環境省のIPCC第5次評価報告書の概要−第1作業部会(自然科学的根拠)−のような政策的プレゼンテーション資料をみていると,グレタ・トゥーンベリがもうこれは絶対だ思うのも無理はない。

なお,典型的な2つの議論は次にみられる。
地球温暖化懐疑論批判(明日香壽川他 2009・・・住明正は表に出ないってことか)
地球温暖化懐疑論批判の誤謬(近藤邦明 2010)

地球温暖化(2)に続く



2019年10月4日金曜日

ノーベル賞飴

今年もノーベル賞の季節が巡ってきた。日本の学術論文数や引用数の国際順位の低下から,今後は日本からノーベル賞受賞者がでなくなるのではないかとささやかれている。これについての議論は,元三重大大学学長の豊田長康先生の分析から出発する必要がある。

それはそうとして,小学校6年生の頃(だと思う),アルフレッド・ノーベルの伝記を読んで読書感想文を書いたことがあった。偕成社の児童伝記全集か何かにノーベルの巻があったのだ。ではなぜ,あまたある偉人の伝記の中からノーベルを選んだのかというと,ノーベル賞が鍵だった。

「世界にはノーベル賞をもらうようなすごい科学者がたくさんいるが,その中から一人をえらぶのは難しい。しかし,それらの科学者はノーベル賞という基準で評価されている。とすれば,その共通の基準をつくりだしたノーベルについて知ることで,その他の科学者の全体をカバーできるのではないか」というイメージに近いことを子どもなりに考えて,ノーベルの伝記を読んだのだった。

いいのやらわるいのやら。

追伸:大阪教育大学の物理学教室の卒論発表会では,とてもよかった発表をえらんでノーベル賞飴をあげていたそうなのだが,自分が着任した年にはその習慣がなくなってしまっていた。ノーベル賞飴が製造中止になったためかもしれないが,その年代はよくわからない。ただ,しばらくは卒論要旨集の表紙の模様がノーベル賞のメダルのデザインとして残っていた。

2019年10月3日木曜日

phyphox

2010年に市川忠樹君といっしょに「携帯端末の加速度センサーによる実感をともなった運動の理解」という論文を書いた。iPhoneが日本に上陸したのが2008年であり,翌2009年の彼の修士論文にもとづくものである。2000年ごろのインターネットの教育利用運動のピーク時にも,モバイル学習端末をテーマにしてはどうかと芳賀さんに水を向けたこともあったけれど・・・,まあ,その時はそれどころではなかった。

その当時から様々なアプリが登場していたが,今日見つけた,ドイツのアーヘン工科大学で開発されたphyphoxはその決定版のような印象だ。日本語化されていて次のようなメニューがみられる。阪大の橋本幸士さんがTwitterで宣伝していたのだった。

写真:phyphoxのメニュースクリーンショットから(引用)

2019年10月2日水曜日

非常勤講師後期授業開始

夏休み50連休が終わって,後期の授業がはじまった。週2回の量子物理学(水2)と物理学Ⅲ(木3)だ。前期は,古典物理学(水2)と科学のための数学(木2)と
電磁気学(金3)だった。これに,小専理科A・Bや小学校教科内容(理科)などのオムニバスものが加わる。

たまにいくといろいろと環境が変化している。やや疲れた。

2019年10月1日火曜日

せとちとせ(1)

大学時代のマンドリンクラブの2学年上の先輩で,ベースを担当していたのが瀬戸俊昭さんである。基礎工学部の情報科学科でヒルベルト空間を羽ばたく蝶々だかなんだかよくわからないシャレを多発していた。部長ではなかったが,クラブの運営の中心的な存在であり,指揮の津江月義男さん(理学部化学科)と丁々発止の漫才を繰り広げていた。ビートルズが大好きでそれをめぐる論争だったようだ。

1回生が何人か,石橋にある炉端焼きの西本に連れていってもらったことがあったが,そのときも瀬戸さんがいただろうか。頭の回転が早くて洒脱な人だったが,卒業してから1度,江坂の東急ハンズがオープンしたてのころにちらっとお見かけしたことがあったくらいで,あまり接点はなかった。

この度,瀬戸さんを検索してみると,博報堂でなかなかの仕事をされた偉才人で,広告に関る多数の賞を獲得され,現在は個人事務所を開設されているようだ。その瀬戸さんが,せとちとせという回文のペンネームで,「たのしい回文」と「笑う回文教室」という本を出版されているようだ。本文カットもご本人。さもあらん。

[1]大手エンジニアも研修,「回文」の効用は

2019年9月30日月曜日

日本軍性奴隷制

神戸女学院大学の上野輝将先生の講演記録(2006年)がリポジトリで公開されていた。そのタイトルは,「日本軍性奴隷制(「従軍慰安婦」)問題と最近の動向 」である。大変わかりやすく問題の全体像を語っている。

2000年の「日本軍性奴隷制を裁く2000年女性国際戦犯法廷」がNHKのドキュメンタリーとなったのが2001年で,これに対して中川昭一と安倍晋三が圧力をかけてNHK番組を改変させた問題が明らかになったのが,朝日新聞の2005年の報道である。これをめぐる議論が起こった頃の講演記録である。

この日本軍性奴隷制否定は安倍晋三のデビュー戦であり,戦前の大日本帝国の制度や思想を肯定し,日本国憲法を改変して軍の存在を正当化し,女性差別と民族差別を強化するという問題の中核をなしている。それが,小林よしのりや橋下徹によって増幅され,大衆的に浸透した。この状況を基盤として政権を担当するのが安倍晋三であり,公然と反韓・嫌韓の空気(慰安婦否定+徴用工否定)を醸成している。現在の愛知トリエンナーレに対するテロ+検閲問題の病根は深い。


2019年9月29日日曜日

道徳教育を学校で行うべきでない理由

苫野一徳上記表題のインタビュー記事が集英社のサイトにある。表題に比べるとたいへん穏当で実践的な結論が導かれている。「問題解決的な道徳」の枠組みを使って,子どもたちが「自由の相互承認」の感度を高められるように,教科道徳から教科市民教育への転換を図れるように,学習指導要領に規定されてしまった特別教科の道徳を,探究を中心とした学校教育における学び方の変革の核としていこうというものだ。

日本会議国会議員懇談会の事務局長である荻生田光一は,文部科学大臣としてまさに日本会議的な「道徳」を貫徹しようとしているのだろう。それは,愛知トリエンナーレの文化庁補助金撤回で端的に示された。その「道徳」の強化は,日本社会の生産基盤を補完するための「移民」の増加=国際化・文化的多様化とは真っ向から対立する成分を含んでいる。また,経済界が大学に突付けた英語教育の重視=国際化のための入試改善とも矛盾するはずだが,そちらの方は利権眼鏡の対象として扱われる事項となるので道徳マターではないとされるのだろう。あるいは外国人の人権や市民権は無視した差別構造の強化としての道徳なので問題にはならないということかもしれない。

NHKでは愛国心を煽るために連日の朝から晩までラグビーの勝利をトップニュースに掲げている。嫌韓ニュースとスポーツニュースをサンドイッチのようにして,政権批判や社会の矛盾から目をそらすことにやっきになっている。一方で,消費税の問題は微細なお得生活情報に還元されてしまっている。開き直って釈明するのが作法となってしまった政権や大企業幹部の不正やモラルハザードに焦点を当てることもない。これらがりっぱな道徳教育の目指す完成形態なのだろう。

2019年9月28日土曜日

なつぞら

今日はNHKの朝のテレビドラマ「なつぞら」の最終回。100作目ということで,これまでの朝ドラヒロインがオールスターで登場していた。日本アニメの黎明期がテーマなのでおもしろかった。そこで,自分のアニメ視聴史(〜中学生まで)を振り返ってみた。

映画館にて
1960 白蛇伝(寺町終点の映画館パレスに小学校2年生の映画鑑賞)
1961 西遊記(同上,小学校3年生の映画鑑賞)
1961 101匹わんちゃん大行進(喜代子おばあちゃんと)
1963 わんぱく王子の大蛇退治(喜代子おばあちゃんと金劇にて)
1964 わんわん忠臣蔵(喜代子おばあちゃんと金劇にて)
1965 ガリバーの宇宙旅行(喜代子おばあちゃんと金劇にて)
1965 ファンタジア(小学校6年生?の映画鑑賞@金劇)

テレビアニメ
1960 フィリックス君(いつからはじまったのだろうか)
1962 鉄腕ポパイ(これもいつからはじまったのだろうか)
1963 鉄腕アトム(床屋の少年でおなじみ,ムックでも読んだ,金属おもちゃも買った)
1963 鉄人28号(同上,単行本でも読んだ,プラモデルも作った)
1963 エイトマン(小学校のバス旅行で熱唱した)
1963 狼少年ケン(おばあちゃんの家でみることが多かった?)
1964 トムとジェリー(これもおばあちゃんの家でみることが多かった)
1964 ビックX(購読中の少年ブックでもおなじみ,プラモデルも作った)
1965 宇宙エース(タツノコプロ,同上)
1965 おばけのQ太郎(以下藤子不二雄シリーズが続く)
1965 JQ(ジョニークエスト,主人公JQが好きだった)
1965 スーパージェッター(流星号のプラモデルも作った)
1965 遊星少年パピィ(ピーーーパピィ)
1965 宇宙少年ソラン(小学校卒業式午後のお楽しみ会の出し物だった)
1965 ジャングル大帝(カラー作品のスタート)
1966 ハリスの風(ちばてつやシリーズの始まり)
1966 魔法使いサリー(妹のりぼんでおなじみ)
1966 おそ松くん(赤塚不二夫シリーズの始まり)
1966 遊星仮面(ピネロン星人ですよ)
1967 黄金バット(これを見ているときに踵を切ったイメージが想起)
1967 悟空の大冒険(この三蔵法師に似ていると米島君に指摘された)
1968 ゲゲゲの鬼太郎(畦地君の家で少年マガジンを読みふける)
1968 巨人の星(同上,スポーツ漫画の始まり)

2019年9月27日金曜日

ニュースソースとしてのSNS

関西電力役員の背任に相当する原発マネー還流事件が発生している。それは,それとして,NHKの7時のニュースでは,SNSにおけるユーザの意見をいつものように取り上げていた。ある意味,街頭インタビューに相当するものと考えているのかもしれないが,顔も名前も見えない匿名のコメントを平気で使う神経が気味悪い。いや,いまの報道に関る若手記者にとっては,SNSを含むネット空間の情報は空気のようなものであり,むしろそれに依拠しないほうがおかしいと思っているのかもしれない。

インターネット空間には,政治的なPA(パブリックアクセプタンス)が満ちあふれていることや,エコーチェンバー効果が指摘されていることから,よほどの注意が必要だと思う。また,短いセンテンスに切り詰められた定型詞の使い回しや,統計科学への過度の依存が,情報の真偽が多数決で決定されるものであるかのような幻想を振りまいている。新聞やテレビや週刊誌などの既存メディアの行く末を考えたときに,SNSを何らかの形で取り込むことによって生き残りを図るという作戦なのだろうか。

監視カメラの横溢と同様に,すべての国民が持つ携帯カメラのネットワークは,これまで見逃してきたような様々な事件の瞬間を地引き網で掬うように漁っている。あるいは,多くの情報番組やバラエティ番組のネタ元は,YouTubeであったり,Twitterで拡散された情報あったりする。それが,マスメディアのシャワーを通じて全国にいや全世界を循環している。


2019年9月26日木曜日

ミキモト真珠島

三重県鳥羽のミキモト真珠島に行った。真珠博物館→海女スタンドでの実演御木本幸吉記念館→パールプラザと見て回る。白い磯着の海女さん2人による実演では,磯笛という浮上後の呼吸法からくる口笛が印象的だった。海女さんをのせてきた船はいそぶえだし,昔,物理学教室の旅行で宿泊したKKRの保養所はいそぶえ荘だったと思うがどうだろう。

養殖アコヤガイによる真円真珠の製法は,御木本幸吉が商業化に成功したが,見瀬立平と西川藤吉が技術を確立し実用化(特許取得)したとされている。これに対して,英国人のウィリアム・サヴィル・ケント発明したものであることを強調した論説がある。真珠博物館を見ていて,真珠の選別にはロボットとディープラーニングの組み合わせが使えそうだと思ったが,まだ実用化されていないのだろうか。

ミキモト真珠島と関連するのが,三重県出身の江戸川乱歩パノラマ島奇譚だ。鳥羽には江戸川乱歩館があるが,平日は予約制のようだった。