2021年1月29日金曜日

都道府県人口当たりのCOVID-19(3)

都道府県人口当たりのCOVID-19(2)からの続き

東北大学の大隅典子さんが,感染者に対する死亡率のデータがみつからないとおっしゃっていたので,前回のデータを1月28日版データに更新してみた。確かに宮城県はトップではないにせよ,その値がかなり低く抑えられていた(他の東北諸県と対比させるとよいかも)。

ある時点での死亡数累計/感染数累計は,致命率(CFR)の近似値だと考えられる。以下では直近3ヶ月の累計比(CFR-3m)と全期間の累計比(CFR-total)を,前者の降順に並べてみた。日本全国では,これらの値は1.4%前後であり,アジア各国の値とほぼ同水準である。欧米でも,その値は2-3%程度であり,本質的に大きな違いはないように見える。

一時的に医療崩壊に近い事象が起きているとき,この値は増大するので,第1波や第2波を除く直近3ヶ月では,過去のこの部分を差し引いた現在の状況がわかりやすい。北陸三県や徳島県では過去の死亡数急増時の部分を除けば,現在は相対的に落ち着いていることがわかる。

宮城県を除く東北地方ではそもそもの感染数の絶対値が大きくないので,大阪府,兵庫県,広島県などで高い値を示していることとは違う環境的な原因で"CFR"が大きいのかもしれない。

東京都や沖縄県は人口あたりの感染数や死亡数の人口比は大きな値を示しているが,感染者に対しては適切な処置が施されているの"CFR"は大きくない。


都道府県名 CFR-3m CFR-total
 岩手県  5.77%  5.45%
 北海道  3.38%  3.43%
 山形県  3.05%  2.71%
 福島県  2.76%  2.48%
 兵庫県  2.48%  2.37%
 福井県  2.40%  3.36%
 香川県  2.33%  2.27%
 青森県  2.26%  1.86%
 大阪府  2.16%  2.09%
 広島県  2.11%  1.92%
 熊本県  2.03%  1.79%
 静岡県  1.91%  1.69%
 徳島県  1.83%  3.40%
 長崎県  1.79%  1.70%
 群馬県  1.72%  1.82%
 愛知県  1.67%  1.64%
 岐阜県  1.66%  1.66%
 長野県  1.56%  1.51%
 高知県  1.45%  1.68%
 愛媛県  1.41%  1.86%
 三重県  1.40%  1.36%
 石川県  1.40%  4.01%
 大分県  1.36%  1.43%
 京都府  1.32%  1.37%
 新潟県  1.27%  1.01%
 鳥取県  1.25%  1.01%
 滋賀県  1.25%  1.35%
 栃木県  1.25%  1.11%
 山口県  1.23%  1.18%
 埼玉県  1.21%  1.36%
 奈良県  1.19%  1.24%
和歌山県  1.19%  1.26%
 宮崎県  1.12%  0.95%
 茨城県  1.09%  1.30%
 山梨県  1.02%  1.45%
 千葉県  0.91%  1.06%
神奈川県  0.89%  1.12%
 岡山県  0.82%  0.87%
 沖縄県  0.78%  1.22%
 宮城県  0.75%  0.66%
 福岡県  0.72%  1.12%
 東京都  0.59%  0.87%
 佐賀県  0.58%  0.43%
鹿児島県  0.54%  1.14%
 秋田県  0.52%  0.39%
 富山県  0.23%  3.13%
 島根県  0.00%  0.00%

 全 国  1.34%  1.45%

(情報:NHKまとめ 2021/1/28現在)

2021年1月28日木曜日

YouTube(4)

 YouTube(3)からの続き

NHK夕方の番組シブ5時で,教育系YouTuberの特集をやっていた。ヨビノリたくみさんと,葉一(はいち)さんが取り上げられ,葉一さんがオンラインインタビューに答えていた。たくみさんは,横国大の物理工学から東大工学研究科の沙川研(修士)だが,葉一さんは東京学芸大学の初等数学のひとなのか。コロナ禍にともなうオンライン授業の普及や,GIGAスクール構想の展開などから,教育系YouTuberに注目が集まっている。ただ,それにしては日本の教育系YouTubeのコンテンツはほとんど未開拓だ。まあ,塾・予備校などのクローズドコンテンツはたくさんあるのだろう。

Webhackによれば,教育系YouTuberにもいくつかのカテゴリがある。(1) スキル・教養・ビジネス,(2) 本・書籍の要約,(3) 学生向け,(4) クイズ・脳トレ,(5) 英語・英会話 である。ユーチューブチャンネル登録数順に代表的な教育系ユーチューブを並べてみた。受験メタ知識が中心のものは除外している。大学や教育委員会(細々としたものはあるが)がもっと力を入れてもよいかもしれないが,そういうのはたいていおもしろくないので難しいところ。

1 とある男が授業をしてみた(129万人)

2 予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」(61万人)

3 授業映像TryIT(47万人)

4 Stardy -河野玄斗の神授業(35万人)

5 PASSLABO in 東大医学部発「朝10分」の受験勉強cafe(25万人)

6 「ただよび」文系チャンネル(18万人)

7 超わかる!授業動画(18万人)

8 鈴木貫太郎(13万人)

9 Historia Mundi(10万人)

10 eboard channel(8万人)

番外 中田敦彦のYouTube大学(351万人)




2021年1月27日水曜日

趣味

 趣味は何ですかと問われて困ることが多い。しばらく前は,「文楽鑑賞」と「読書」だったはずなのだが,コロナの影響で観劇もままならず,かといって読書力が筋力に比例して衰えているため,鉄棒にぶら下がっても1回も懸垂ができないようなざまである。

昨日,YouTubeではどんな内容が多いのか,はたまたYouTubeを教育で利用することができるのかどうかを調べるために,ランキングサイトであるユーチュラのタグをざっとながめていた。趣味でいうと,音楽と鉄道と料理と車とスポーツが目についた程度であり,どうも,まだ見残しがあるような気がしてならない

そもそも世の中の趣味にはどんなものがあるのだろう。ググっていると「趣味探し図鑑」にたどり着いた。しかし,どうもYouTubeにはここにでてくる趣味に該当する大きな集団は(先程の例以外では)見当たらなかった。

さて,その趣味探し図鑑に,60代男性のおすすめ趣味ランキングなるものがあったので,ここに紹介する。うーん,なんだかとても微妙なのだ。趣味の「数学」のランクの高さと,よくわからない「大人の塗り絵」に驚いてしまった(塗り絵会社の宣伝だろう)。10代女性のおすすめとかになると,かなり雰囲気が違うのだけれども,ついていけない感は,60代男性のおすすめの場合と大差はない。

1 ひとり旅
2 楽器演奏
3 ツーリング・バイク
4 歴史
5 大人の塗り絵
6 電子工作○
7 数学○
8 絵画
9 彫刻
10 散歩・ウォーキング○
11 貯金・節約
12 家庭菜園・ベランダ菜園
13 レザークラフト
14 写真・カメラ
15 登山・トレッキング
16 ドライブ
17 プラモデル○
18 パークゴルフ
19 習字・書道
20 漬物づくり
21 ドローン・レース
22 DIY
23 株式投資
24 語学(英語以外)
25 アーチェリー
26 陶芸
27 麻雀
28 天体観測
29 釣り
30 料理
31 筋力トレーニング
32 コーヒー(珈琲)
33 瞑想・座禅
34 蕎麦打ち
35 ガーデニング
36 ゴルフ
37 温泉巡り
38 ペン字
39 読書○
40 盆栽
41 ボウリング
42 日本酒・地酒○
43 果実酒づくり
44 作曲・DTM
45 自動車競技
46 競馬
47 卓球
48 ファッション
49 マスターズ陸上
50 海外ドラマ鑑賞
51 クロスワードパズル
52 LEGO(レゴ)○
53 ヨガ
54 乗馬
55 小説執筆
56 熱帯魚飼育
57 テレビゲーム
58 日記
59 スキューバダイビング
60 俳句・川柳・短歌○
61 ボードゲーム
62 水泳
63 国内旅行・海外旅行
64 世界遺産巡り
65 Q&Aサイト回答
66 社交ダンス
67 合唱
68 劇団・舞台演劇
69 ダーツ
70 映画館・映画鑑賞
71 MMORPG
72 動画編集○
73 囲碁
74 FX
75 競艇
76 ドッグスポーツ
77 将棋
78 昆虫飼育
79 ワイン
80 科学・科学実験○
81 ビリヤード
82 トライアスロン
83 ミュージカル鑑賞
84 アニメ鑑賞
85 ゲートボール
86 トレーディングカード
87 野球
88 スポーツ観戦
89 オートレース
90 競輪
91 チェス
92 サッカー
番外 プログラミング○
(丸印○は自分が興味を持ったもの)

2021年1月26日火曜日

YouTube(3)

YouTube(2) からの続き

YouTubeチャンネルのコンテンツについて,タグをざっと眺めてみた。

1位 ゲーム実況(5994),2位 音楽(3111),3位 女性(2519),4位 やってみた(1761),5位 芸能人(1477),6位 企業(1149),7位 鉄道(748),8位 商品レビュー(665),9位 スポーツ(626),9位 Vocaloid(573),10位 お笑い芸人(557)だったが,十分検索しきれていない可能性はある。ここには現れていないが,子ども・おもちゃ関係も関連も合計すれば735以上,その他では,料理が495,車が458などが目立つかもしれない。

一方,YouTubeの教育利用可能性はどうだろうか。同じくタグ数を数えてみた。勉強(178),教育(88),受験(50),プログラミング(44),大学(23),学校(22),資格(20),学習(10),授業(6)など。また,STEAM関係キーワードでいえば,数学(30),科学(28),実験(24),宇宙(23),化学(10),哲学(8),物理(5),統計(5),天文(4),生物(3)。まだまだ開拓されつくしていないようにもみえる。

2021年1月25日月曜日

YouTube(2)

 YouTube(1)からの続き

昨日のチャンネル登録者人数で気持ちがわるかったのは,両対数グラフの順位がユーチュラ掲載数の上限近くで急速に減少していることである。普通ならば,ジップの法則が当てはまりそうなもので,両対数グラフではほぼ直線となり,なんらかの冪乗則が成立してもよいところだ。直感的には,登録者数の少ないチャンネルもある程度の数が存在しているが,これらはユーチュラへの登録動機がないため,ロストされているからと考えられる。実際,ユーチューブチャンネル人気ランキングを出しているTUBERS(ユーチューブ活動支援コンサルティング)では,13万件の日本語チャンネルが存在すると書いているのでユーチュラの捕捉率は1/4程度なのかもしれない。

さて今日は,ユーチュラにおける日本のユーチューブチャンネルの累計動画再生回数である。1位は,Fisher's −フィッシャーズ− (110億回),2位:キッズライン♡Kids Line,3位:avex(88億回),4位:HikakinTV(79億回),5位:はじめしゃちょー(hajime)(78億回)などとなっている。

(1位,110億回),(18位,30億回),(107位,10億回),(506位,3億回),(1514位,1億回),(3923位,3千万回),(7123位,1千万回),(12590位,3百万回),(16760位,百万回),(20794位,30万回),(23690位,10万回),(26107位,3万回),(27708位,1万回),(28720位,3千回),(29262位,1千回)


図1 日本のユーチューブチャンネル累計再生数分布(片対数)



図2 日本のユーチューブチャンネル累計再生数分布(両対数)




2021年1月24日日曜日

YouTube(1)

 ベネッセの「小学生がなりたい職業ランキング2020」では男子小学生の1位が「ゲームクリエータ・プログラマ」,2位が「ユーチューバー」,女子小学生の1位が「芸能人」,4位が「ユーチューバー」ということだ。もっとも,クラレの調査「小学生の将来就きたい職業」ではようやく男子の10位に顔を出している程度。

テレビはつまらないし,読書エネルギーにも欠けるため,最近は自分がユーチューブにハマった。そこで,ユーチューブランキングサイトのユーチュラを使って少し調べてみた。なお,googleのYouTubeヘルプをみれば,自分のチャンネルの作成方法その他がわかる。

まずは,ユーチュラにおける日本のユーチューブチャンネルの登録者数である。YouTubeランキングには,約33,000のチャンネルが登録されている。登録数非公開のチャンネルが1200弱あるので,それ以外のチャンネルを,登録者数と順位で並べてみた。なお,1位は,キッズライン♡Kids Line(登録者数1220万人),2位:せんももあいし−Ch Sen, Momo, Ai & Shii(939万人),3位:はじめしゃちょー(hajime)(906万人),4位:HikakinTV(884万人),5位:タキロン Takilong Kids' Toy(712万人)などとなっている。

(1位,1220万人),(38位,300万人),(304位,100万人),(1434位,30万人),(4169位,10万人),(8915位,3万人),(13863位,1万人),(18923位,3千人),(23196位,1千人),(26549位,300人),(29071位,100人),(30477位,30人),(31265位,10人)


図1 日本のユーチューブチャンネル登録者数分布(片対数)


図2 日本のユーチューブチャンネル登録者数分布(両対数)


2021年1月23日土曜日

開催都市契約

 7月23日まであと半年になった。大栄翔は12勝,正代が照ノ富士に負けて3敗となった。負け越している遠藤が久々に御嶽海に勝っている。いや,相撲の話ではなくて,正代と同様にふらふらの低空飛行を続けている東京五輪の話だ。

開催都市契約によれば,国際オリンピック委員会(IOC)と東京都(開催都市)と日本オリンピック委員会(NOC)の間で契約が締結されている。で,この契約を厳守するオリンピック大会組織委員会(OCOG)の組成(formation)が義務付けられている。

開催都市、NOC(前述の開催都市および OCOG の財務上の責務に関しては除く)、および OCOG は、いかなる性質であっても、また、直接または間接を問わず、本契約の規定違反に起因する、すべての損害、費用および責任について連帯責任を負う。IOC は開催都市、NOC、および/または OCOG に対して、IOC の単独の裁量にて、IOC が適当とみなす場合、訴訟を起こすことができる。

いきなりこれなのであった。で,これである。

いわゆる「ニューメディア」権(インターネットによるダウンロードまたはストリー ミング、IPTV、ホームビデオ、ビデオオンデマンド、モバイル・プラットフォームの権利など)を含む(ただし、それらには限定されない)、既存のまたは将来生まれる あらゆる形態の放送、上映メディアを手段とする、本大会および本大会関連イベントの放送、上映、送信、配信に関するすべての契約(以下、「放送契約」という)は、 IOC が独占的に交渉、締結するものとする。 

なんだか悪質な詐欺のように見えてしまうのは気のせいだろうか。 

本大会開催の結果として生じた剰余金があれば、以下のとおり配分するものとする。
a) NOC に 20%
b) OCOG に 60%。NOC と協議のうえで OCOG が決定する開催国におけるスポーツの全般的利益のために使用することを目的とする
c) IOC に 20%

 

2021年1月22日金曜日

赤いシリウス

 NHKのコズミックフロント☆NEXTは,非常にためになる科学番組である。先日放映された,「天狼星 シリウスのミステリー」もとても刺激的な内容だった。

シリウスは,オリオン座の三つ星を左に伸ばしたところのおおいぬ座にあり,太陽を除いて全天で最も明るい恒星(一等星)だ。地球から8.6光年の距離にあり,シリウスA(太陽と同程度の半径で太陽の約2倍の質量)とシリウスB(地球と同程度の半径で太陽と同程度の質量)からなる連星であり,明るい方のシリウスAは青白く光る主系列星である。シリウスBは非常に暗い白色矮星だ。

そのシリウスが,2千年前には赤く輝いていたという歴史的な文書がある。古代ローマの天文学者プトレマイオス(トレミー)のアルマゲストにその記載がある。超新星を除く普通の天文現象が数千年の時間スケールで起こるわけがないので,これはなんらかの比喩表現ではないかというのが定説らしい。

番組では,赤いシリウスが見えたのは事実であるという,科学的に根拠のあるいくつかの説が紹介されていた。シリウスにはシリウスCという別の三重連星があって,これがシリウスAに接近していたときに放出された物質が光を遮っていたという説や,桜井天体のように白色矮星であるシリウスBがヘリウムフラッシュによって一時的に赤くなったという説である。

シリウスは古代エジプトにおける暦の始まりを特徴づける天体であり,クフ王のピラミッドの南の回廊がシリウスが観測できる方向に伸びていたなど,いろいろとワクワクする話題が多いのだった。

2021年1月21日木曜日

直木賞

芥川賞からの続き

 ついでに,直木賞についても調べてみたところ,6冊/202冊=3.0%であった。芥川賞の半分の割合である。自分の主な読書領域はSFなので,純文学系の方がオーバーラップが大きいからだろうか。※印は受賞作は読んでいないが,それ以外の著書を複数冊読んだ作家。

第42回(1959年下半期) - 司馬遼太郎※
第47回(1962年上半期) - 杉森久英『天才と狂人の間』
第56回(1966年下半期) - 五木寛之※
第67回(1972年上半期) - 井上ひさし※
第72回(1974年下半期) - 半村良※
第80回(1978年下半期) - 宮尾登美子※
第109回(1993年上半期) - 高村薫『マークスの山』
第114回(1995年下半期) - 藤原伊織『テロリストのパラソル』
第117回(1997年上半期) - 篠田節子※
第119回(1998年上半期) - 車谷長吉『赤目四十八瀧心中未遂』
第120回(1998年下半期) - 宮部みゆき『理由』
第121回(1999年上半期) - 桐野夏生『柔らかな頬』
第151回(2014年上半期) - 黒川博行※

なお,1970年代芥川賞の受賞数はインフレ気味だったが,直木賞の受賞数の方は逆に凹んでいる。文化的相転移はこのへんから始まって,80年代には完成したということなのだろうか。また,受賞者中に女性作家が占める割合は,直木賞の場合も芥川賞と同様で80年代に入ってから相転移したようにみえる。ただし,女性作家の割合は芥川賞では約1/2になっているのに対し,直木賞では約1/3にとどまっている。下記のテーブルは各年代の受賞者数(カッコ内は女性受賞者の内数)。

1930年代 7(0)
1940年代 19(2)
1950年代 26(4)
1960年代 24(5)
1970年代 18(1)
1980年代 30(7)
1990年代 26(8)
2000年代 27(9)
2010年代 23(9)
2020年代   2(1)

2021年1月20日水曜日

芥川賞

 第164回の芥川賞が,宇佐見りん「推し、燃ゆ」に決まった。「かか」で2019年の文藝賞と2020年の三島由紀夫賞を受賞したのに続くもので,なかなか凄そうである。

そもそも最近はほとんど本を読まなくなってしまった。情報の入力はインターネット(TwitterやYouTubeやFacebookなど)が中心になってしまい,極めて偏っている。ほとんどがデコレーションされた事実の集積物であり,創られた作品にふれる機会が激減している。あ,映画とかドラマはちょっと見ているかもしれないけれど。

そこで,自分がこれまでの芥川賞作品をどれほど読んできたのかをチェックしたところ,13冊/175冊=7.4%であった。ほとんど読んでいませんでした。なお,※は受賞作は読んでいないものの受賞作以外の作品を複数冊読んだ作家である。1970年代はほぼ立ち読みであったが,三田誠広のものはちょっとひどい作品だったと思う。1970年代は受賞者のインフレも起こってるし,選考委員どうなんだよ状態である。

第4回(1936年下半期) - 石川淳※
第25回(1951年上半期) - 安部公房「壁 S・カルマ氏の犯罪」
第28回(1952年下半期) - 松本清張※
第32回(1954年下半期) - 小島信夫※
第39回(1958年上半期) - 大江健三郎「飼育」
第43回(1960年上半期) - 北杜夫「夜と霧の隅で」
第51回(1964年上半期) - 柴田翔「されどわれらが日々──」
第56回(1966年下半期) - 丸山健二※
第61回(1969年上半期) - 庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」
第64回(1970年下半期) - 古井由吉「杳子」
第75回(1976年上半期) - 村上龍「限りなく透明に近いブルー」
第77回(1977年上半期) - 三田誠広「僕って何」
第84回(1980年下半期) - 尾辻克彦「父が消えた」
第98回(1987年下半期) - 池澤夏樹「スティル・ライフ」
第110回(1993年下半期) - 奥泉光「石の来歴」
第115回(1996年上半期) - 川上弘美「蛇を踏む」
第123回(2000年上半期) - 町田康「きれぎれ」
第146回(2011年下半期)- 円城塔※

なお,受賞者中に女性作家が占める割合は80年代に入ってから相転移したようだった。かつては男性作家が受賞者のほとんどを占めていたが,いまではほぼ半数が女性である。下記のテーブルは各年代の受賞者数(カッコ内は女性受賞者の内数)。なお,1945年から1948年は終戦前後の混乱のために中止されている。

1930年代 12(1)
1940年代 13(2)
1950年代 17(0)
1960年代 18(4)
1970年代 27(6)
1980年代 16(8)
1990年代 22(8)
2000年代 22(9)
2010年代 25(12)
2020年代   3(2)


2021年1月19日火曜日

PHITS

 PHITS(Partcle and Heavy Ion Transport code System)は,「あらゆる物質中での様々な放射線挙動を核反応モデルや核データなどを用いて模擬するモンテカルロ計算コードです」ということで,さらに「物質や人体内での放射線の動きをシミュレーションする計算コードです。原子力だけでなく,医学や理学など様々な分野で活用されています」なので,開発者の仁井田浩二さんは,とうとうCOVID-19のモンテカルロシミュレーションに踏み出した。

酔歩するエージェントと散乱断面積の概念はおもしろいけれど,地理状況が人口密度しか反映されていないのであれば,本質的には,微分方程式と変わらないのではないか。それにしても,中野さんといい大西さんといい原子核物理屋のコロナ好きはどこから来るのだろうか。放射性崩壊系列によく似ていて,ちょうど手頃な複雑さを持ったシミュレーションの対象だということなのかな。

2021年1月18日月曜日

日本語版ウィキペディア(2)

 北村紗衣(saebou)さんが,佐藤由美子さんの意見に若干の反論をしていた。彼女のウィキペディアンとしての経験に基づくものであって,事実としては概ね問題ないと思われる。が,本質はやはり歴史修正主義の跋扈である。

2001年1月15日にスタートしたウィキペディアは,今年で開設20周年を迎えることになる。記念イベントとしてオフラインミーティングが東京+サテライト会場で催されるようだ。

退職前の数年の大学院の授業では,ウィキペディアの教育利用を話題にしたことがあって,2008年頃からの動きは少しだけ眺めたことがあるが,その後はほとんど盛り上がらないまま推移していたようだった。

2021年1月17日日曜日

日本語版ウィキペディア(1)

 佐藤由美子さんの「日本語版ウィキペディアで歴史修正主義が広がる理由と解決策」という記事を見たが,まったくそのとおりだと思われる。自然科学の分野でも日本語版ウィキペディアの記事にムラがあると同時に,英語版と比較して非常に内容が薄いことが気になっていた。オープン性に欠けるコミュニティがディスインフォメーション(故意に流す虚偽情報)の温床になっているということだが,右派(あるいは準政府団体)の組織的な活動がSNSに加えてウィキペディアをターゲットにしているということだろう。

2021年1月16日土曜日

都道府県人口当たりのCOVID-19(2)


昨日のデータの全体。総人口と65歳以上は単位が1000人であることに注意する。人口密度は,人/平方キロメートル,感染率と死亡率は,感染数と死亡数を各都道府県の総人口で割ったもの。

都道府県 総人口 65歳以上 高齢化率(%)人口密度 感染数 死亡数 感染率(ppm) 死亡率(ppm)
北海道  5,286  1,656  31.3    69  15,300  521  2,894  99
青森県  1,263  412  32.6  136  607      8  481  6
岩手県  1,241  403  32.5    84  449    25  362  20
宮城県  2,316  643  27.8  321  2,813    17  1,215  7
秋田県  981  357  36.4    88  181      1  185  1
山形県  1,090  358  32.9  121  438    12  402  11
福島県  1,864  576  30.9  139  1,337    30  717  16
茨城県  2,877  833  28.9  478  3,458    41  1,202  14
栃木県  1,946  546  28.0  308  2,916    16  1,498  8
群馬県  1,952  574  29.4  310  3,066    57  1,571  29
埼玉県  7,330  1,934  26.4  1,913  19,277  258  2,630  35
千葉県  6,255  1,721  27.5  1,207  15,868  160  2,537  26
東京都  13,822  3,189  23.1  6,169  80,068  707  5,793  51
神奈川県  9,177  2,305  25.1  3,778  30,690  340  3,344  37
新潟県  2,246  716  31.9  183  739      5  329  2
富山県  1,050  336  32.0  251  768    26  731  25
石川県  1,143  334  29.2  276  1,267    53  1,108  46
福井県  774  234  30.2  188  411    12  531  16
山梨県  817  248  30.3  187  816    11  999  13
長野県  2,063  651  31.5  155  1,819    21  882  10
岐阜県  1,997  595  29.8  191  3,288    52  1,646  26
静岡県  3,659  1,081  29.5  476  3,654    59  999  16
愛知県  7,537  1,875  24.9  1,447  20,399  305  2,707  40
三重県  1,791  527  29.4    31  1,672    23  934  13
滋賀県  1,412  363  25.7  352  1,661    17  1,176  12
京都府  2,591  749  28.9  566  6,463    78  2,494  30
大阪府  8,813  2,420  27.5  4,640  36,434  714  4,134  81
兵庫県  5,484  1,577  28.8  659  12,978  298  2,367  54
奈良県  1,339  413  30.9  370  2,430    31  1,815  23
和歌山県  935  306  32.7  204  819      9  876  10
鳥取県  560  177  31.6  164  173      2  309  4
島根県  680  231  34.0  104  231      0  340  0
岡山県  1,898  571  30.1  270  1,967    16  1,036  8
広島県  2,817  817  29.0  335  4,271    66  1,516  23
山口県  1,370  465  33.9  230  760      5  555  4
徳島県  736  243  33.1  182  272      9  370  12
香川県  962  303  31.5  520  477      4  496  4
愛媛県  1,352  441  32.6  244  762    13  564  10
高知県  706  245  34.8  103  757    12  1,072  17
福岡県  5,107  1,408  27.6  1,023  12,349  136  2,418  27
佐賀県  819  244  29.7  341  698      3  852  4
長崎県  1,341  429  32.0  333  1,157    10  863  7
熊本県  1,757  537  30.6  241  2,732    36  1,555  20
大分県  1,144  371  32.4  184  885      9  774  8
宮崎県  1,081  342  31.7  143  1,426    11  1,319  10
鹿児島県  1,614  506  31.4  179  1,318    14  817  9
沖縄県  1,448  313  21.6  628  6,107    86  4,218  59
                 
全 国  126,443 35,575 1,414 30,517 308,428 4,339  2,439  34

(情報:NHKまとめ 2021/1/15現在)

2021年1月15日金曜日

都道府県人口当たりのCOVID-19(1)

新型コロナウイルス感染症の死亡数で,大阪府がトップに立っている。 各都道府県の人口で規格化すると1/14/2021現在では次のようになっている。

1 北海道 99(31.3%)
2 大阪府 81(27.5%)
3 沖縄県 59(21.6%)
4 兵庫県 54(28.8%)
5 東京都 51(23.1%)
6 石川県 46(29.2%)
7 愛知県 40(24.9%)
8 神奈川県37(25.1%)
9 埼玉県 35(26.4%)
10 京都府 30(28.9%)
(100万人あたりの死亡数累計,全国平均は 34,カッコ内は65歳以上人口の比率)

このうち北海道,沖縄県,石川県が緊急事態宣言の対象区域に入っていない。それにしても,北海道と大阪府は群を抜いている。ニュースでは高齢者がどうこうという言い訳がされていたが,単純な高齢化率は,他の都道府県と比べても重要な因子とは思われない。高齢者に対する医療福祉体制が大阪府では極端に劣っているというのであれば,大阪維新のこれまでの政策から納得できる。

ところで,感染数の人口比や死亡数/感染数をみるとまた違った見え方があらわれる(奈良県危ないじゃないですか・・・)
1 東京都 5793(0.88%)
2 沖縄県 4218(1.41%)
3 大阪府 4134(1.96%)
4 神奈川県3344(1.11%)
5 北海道 2894(3.41%)
6 愛知県 2707(1.50%)
7 埼玉県 2630(1.34%)
8 千葉県 2537(1.01%)
9 京都府 2494(1.21%)
10 福岡県 2418(1.10%)
11 兵庫県 2367(2.30%)
12 奈良県 1815(1.28%)
(100万人あたりの感染数累計,全国平均は 2439,カッコ内は死亡率/感染率,全国平均は
1.41%)

さらに謎のデータが。ある時点での死亡率/感染率=死亡数累計/感染数累計は,CFR(致命率)の近似値と考えてもよいかもしれないが,全国平均の数倍に達する地域がある。北海道や石川県は一時感染者が急増して混乱状態になっていたような気もするが,岩手県や福井県など,そもそも感染数が少ないところでこの値というのはどういうことなのだろうか。感染者が十分に補足できていないということなのかもしれない。

1 岩手県 5.57%
2 石川県 4.18%
3 北海道 3.41%
4 富山県 3.39%
5 徳島県 3.31%
6 福井県 2.92%
7 山形県 2.74%
8 兵庫県 2.30%
9 福島県 2.24%
10 大阪府 1.96%
(先のカッコ内と同様の死亡率/感染率=死亡数累計/感染数累計,全国平均は1.41%)

(情報:NHKまとめ 2021/1/15現在)・・・NHKのクレジット表示の指示がちょっといまいち。


2021年1月14日木曜日

中性子寿命問題

「物質の科学2」の 演習課題に関わって,日本の加速器でもっともエネルギーの高いものは何かを調らべてみた。筑波のKEKの加速器だろうと思っていたが,このメインマシンはCP非保存検証のためのBファクトリーであって,大強度ビームを追求するものだった。このKEKBは電子8GeV,陽電子3.5GeVのコライダーでウプシロン粒子(b\bar{b})を生成して,崩壊するB中間子と反B中間子の崩壊モードを比べている。なお,増強されたSuperKEKBはルミノシティが40倍になる電子7GeV,陽電子5GeVのコライダーだ。

高エネルギー加速器研究機構(KEK)と日本原子力研究開発機構(JAEA)が茨城県大洗で共同運用しているのが,大強度陽子加速器施設(J-PARC)である。J-PARCの加速器は,線形加速器(400MeV),陽子シンクロトロン(3GeV),陽子シンクロトロン(50GeV)のメインリングからなる。50GeVのPSは今のところ30GeVで運用しているようだ。

さて,中性子寿命問題である。これまでの中性子寿命の実験的検証方法にはビーム法とボトル法の2種類があり,ビーム法では888秒,ボトル法では879秒で,9秒という有意の差があり,これが埋まっていない。前者はビームが通過しながら崩壊する際の陽子をカウントし,後者は閉じ込めた中性子の数の変化をカウントしている。もしこれが正しいのであれば,ビーム法で観測されているモード(n→p+n+ν)以外の遷移があることになる,

理論的な可能性として,ミラー中性子(mirror matter)の存在が示唆され,ミラー物質はダークマターの候補にもなっているようだがまだまだわからない。J-PARCにおけるKEKグループの実験は,第3の測定方法を定義するものであり,パルス中性子が崩壊する際の電子をカウントする。ただし,まだ実験誤差が大きすぎてこれから詰めていく段階である。



2021年1月13日水曜日

寒中見舞い

 寒中見舞いは,二十四節気の小寒と大寒の間に出す見舞い。定年退職を期に年賀状はやめることにしたのだけれど,親戚についてはまだ完全にはストップできない。それでも年々これが最後ですという年賀状が届くようになってきた。なお,年賀状をいただいた知人には,寒中見舞いを出すことにした(が,いつまで続くだろう・・・)。ちなみに今年の年賀状(親戚分)のデザインは下記のとおりであった。


写真:奈良市の植村牧場にて


2021年1月12日火曜日

Alfred(2)

Alfred(1)からの続き

というわけで,とりあえずできたのだけれど・・・微妙に動作が思ったとおりにならない。内部で呼び出していると思われるSiri のデータに問題があるのだろうか。試行錯誤の結果とりあえず下記のやりかたでできたのだが,実際に試してみるとなんだか検索漏れがある・・・

(1) AlfredのPreferenceでWorkFlowを選択する。

(2) 画面左下の+ボタンで新しいBlankWindowを作成する。名前をつけて,説明を加え,CategoryはUncategorizedにする。Bundle IDとCreated ByとWebsiteは適当でよいのかもしれない。

(3) できた新規Workflowの画面で黒い画面を右クリック(Ctrl+クリック)して,InputsからFile Filterを選択する。

(4) keywordは コマンドをキックする短い文字列としてwith spaceにチェックしておけば良い。Placeholder titleとPlaceholder subjectも適当でよいのかもしれない。Filetypeにpdfとdjvとpublic.folderを指定したが,これは見本をdrag&dropすればよろしい。

(5) scopeには検索対象のfolderを指定するとこれでできあがり。



2021年1月11日月曜日

外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律

 論理的には,この「外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律」の逆過程なので,そこで主張の妥当性が判断されるのがひとつ。さらには,国際的にはどのような原則が確立されているかということだが,「国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約」についてという文書が外務省にある。この国連国家免除条約本体はこちら

報道では,かつての絶対免除主義「国及びその財産については,すべて無条件に他の国の裁判所の裁判権からの免除を認めること」が,現在でも国際的な原則であるかのような印象を与える説明がなされているが,そうでもないかもしれない。なお,条約の締約国は19カ国なので,まだ発効されていない。

2021年1月10日日曜日

人工血液

 新型コロナウイルス感染症の蔓延にともなって,献血機会が減少し,日本の医療活動に必要な血液が確保できないのではないかというニュースが流れていた。そこで,人工血液というのはまだ開発されていないのかどうか調べてみた。

日本血液代替物学会が存在するくらいなので,研究は進んでいると考えられる。学会誌の「人工血液」は会員以外の誰でも自由にpdfファイルで読むことができるのがありがたい。奈良県立大学の酒井宏水先生が現在の学会長だ。

人工血液の1つとして,赤血球の酸素運搬機能を代替する人工の微粒子である人工赤血球がある。日赤や医療機関で発生する期限切れ非使用赤血球(検査済み)から,酸素を結合するタンパク質ヘモグロビン(Hb)を精製分離し,これを濃度高くリポソームに封入した微粒子であり,ヘモグロビンベシクル(Hb-V)とよばれるものがその一例だ。

また,血小板輸血に関しては,室温保存による細菌繁殖に起因する感染症を防止する目的で,法制上,血小板製剤の保存期間が4日以内に限定されており,血小板輸血に対する抜本的な供給システムの構築が喫緊の課題である。このため,iPS細胞から血小板を大量に生産するための方法が研究されている。

白血球は難しいのではないかと思ったが,逆にこれは薬で代替することができて,赤血球や血小板の方が残念ながら今の医療技術では作れないので献血してほしいとのことだった。