2020年11月21日土曜日

CFR(致命率)(4)

 CFR(致命率)(3)からの続き

WHOのダッシュボードを眺めていると,やなり新規感染数のピークと死亡数のピークは1〜3週間ほどずれているので,致命率の定義を修正したバージョンを考える。「致命率*=死亡数累計(t)/新規感染数累計(t-14)」として,感染確認時に対して死亡時には2週間(14日)の遅延があると仮定した。また,英国の新規感染数累計と死亡数累計にあった不連続をWHOのデータを再確認して解消した。最近3ヶ月の定性的な結果は同じだけれど,4〜5月あたりの感染急拡大期の振る舞いは大きく変動している国もあった。なお,このように定義した致命率*の値の最新値(2020.11.19時点)を示しておく。

アジアの致命率*:

イラン 6.6%,武漢 6.6%,中国 5.2%,インドネシア 3.7%,フィリピン 2.1%,香港 2.0%,日本 1.9%,韓国 1.8%,インド 1.6%,東京 1.5%,台湾 1.2%(2020.11.19 現在)

図1 アジアの致命率*(2020.5.1〜2020.11.19)

欧米の致命率*:

メキシコ 10.6%,イタリア 6.0%,英国 4.8%,スペイン 3.2%,フランス 3.1%,ブラジル 3.0%,トルコ 3.1%,米国 2.7%,ドイツ 2.2%,ロシア2.0%(2020.11.19 現在)

図2 欧米の致命率*(2020.5.1〜2020.11.19)


2020年11月20日金曜日

CFR(致命率)(3)

 CFR(致命率)(2)からの続き

およそ半年前に,COVID-19の致命率について書いた。その後のデータが蓄積してきたので改めて考えてみよう。前回は「致命率 = 死亡数累計(t)/新規感染数累計(t-7)」と定義して,2月から5月あたりの3ヶ月分くらいのデータを見ていた。今回は,大局的な振る舞いを比較するため,5月1日から11月19日までのアジアと欧米の主要国の「致命率」=死亡数累計(t)/新規感染数累計(t)とあらためて定義して,その時間変化と国別の比較について考察する。なお,データは,WHO Coronavirus Disease (COVID-19) Dashboard を用いた。また,通常のインフルエンザの致命率は0.1%未満のオーダーであることに注意する。

(1)アジアの場合


図1 アジアの致命率(2020.5.1-2020.11.19)

いくつかの例外を除いて,ここでのサンプル諸国の多くはCFR=1〜2%の範囲に収まっており,地域による大きな違いがないことがわかる。最初に感染が拡大した武漢とその効果が大半を占める中国ではCFR=5〜7%と高い値を示しているが,中国では随分前に感染がほぼ完全に収束しており,初期の結果がそのまま凍結されているためだ。その段階では感染者に対する適切な治療の処方策が確立していなかった。そのことは,5月ごろの日本や東京についても当てはまっており,当時は病院のリソースも不足しておりCFR=5%を越えていたのが上のグラフから見て取れる(その後,現在の日本の値CFR=1.6%あたりに収束している)。

イランでは,当初からCFR=5%くらいの値で高止まりしている。この理由ははっきりわからない。現在のイランでは新規感染数の第3波が観察されている。インドネシアはゆっくりではあるが,CFRは標準的水準に近づいている。ただし,新規感染数はあいかわらず増加中だ。インドの感染数増大ペースも当初は危機的に見えた。絶対値はあいかわらず大きいのだが,すでに第1の増大ピークは越えているし,CFRもそれほど高くない値で収束している。

台湾や韓国はほぼ一定で推移しているので,当初からそれなりの医療体制が整備されて適切な治療が行われていたように見える(これは日本と大きく違うところだ)。香港も同様だったが,政治的不安定性が原因なのだろうか,いまでは必ずしも最優等生グループには属していない。

(2)欧米の場合

図2 欧米の致命率(2020.5.1-2020.11.19)

ここでもいくつかの例外を除いてCFR=2〜3%の範囲に収まりつつある。例外はCFR=10%のメキシコであり,南米で感染トップ数のブラジルの致命率が,CFR=2.8%と落ち着いてきているのと対照的である。

ヨーロッパでは,当初急速な感染拡大で十分な対策が取れないまま死亡数が急増していたため,CFRも10〜20%という非常に高い水準にあった。この記憶が後に,日本はよくやっているという誤解につながり,不十分な対策を自己肯定してしまうという困った隘路に入る要因となった。当初の大きな山を越えると,仏・英・伊・西のCFRはみごとにアジアのレベルと同等な領域に収束してきた。CFR=1.7%のロシアだけは当初からアジア並みの水準で推移しており(当初はかなり怪しい値ではないかという指摘もあった),CFR=1.6%のドイツも他の欧州の国々に比べて低い水準で安定している。なお,現在の欧州の感染拡大によって,各国のCFRが影響されている様子はまだ今のところ観察されていない。

米国は,感染数の指数関数的増加の第三波のただ中にあるのだけれど,CFRの観点から見ると,当初の6%程度から現在の2.2%になったということであり,日本と比べてもそれほど大きいわけではない。高々日本の1.5倍程度の水準であり,感染数は2桁違うとはいうものの,感染後の状態については日本とはあまりかわらないと考えられる。

(3)その他

したがって,欧米とアジアの違いは感染数にあるといってよい。死亡数はこれに連動するが,アジアでも欧米でも収束すれば,CFR=1〜3%とその差は大きくない。なお,これは通常のインフルエンザに比べれば1桁以上大きいので,「COVID-19はインフルエンザ並みの感染症だから心配はいらない」という言説は必ずしも妥当しない。

現時点での人口1万人あたりのアジアの新規感染数累計は,イラン96人,インド67人,フィリピン41人,東京25人,インドネシア18人,日本10人,韓国6人,中国0.6人,台湾0.3人となっている。また,同様に,欧米の場合は,米国341人,スペイン310人,フランス302人,ブラジル284人,英国215人,イタリア211人,ロシア137人,ドイツ103人である。

日本の新規感染数累計の人口比は,欧米に比べれば1.5桁小さいといえるが,アジアでは必ずしもトップグループではない。東アジアが欧米に比べて感染数の人口比が1桁小さくなっている理由ははっきりせず,オーストラリアやニュージーランドも同様に感染率が小さいことから,社会文化的な要因だけで説明できるのか疑問なところがある。ネアンデルタール人の遺伝子が絡んでいるのかについても同様によくわからないし,あるいは複合要因からなる偶然なのかもしれない。

いずれにせよ,日本のCFRは他の国々と同じ水準なので,これ以上感染数が増加しないような医療と検査の体制の整備が急務であることは間違いない。GO TOの看板を掲げたまま怪しいキャッチフレーズや,効果が疑問であるマナーの押し付けで自助を促している場合ではない。あるいは,本当に必要なのは大袈裟太郎のいうようにGO TO VOTEなのかもしれない。

2020年11月19日木曜日

COVID-19感染予測

 Google Cloud Platform からCOVID-19感染予測のページがしばらく前にオープンした。サンプルとして,US Dashboard と Japan Dashboard があり,後者はCOVID-19 感染予測(日本版)として,28日後までの各都道府県の死亡者数と感染者数の予測をみることができる。これによれば,12月14日までの28日間で,全国で死亡者数が555人,陽性者数が51,605人となっている。ただし,日別陽性者数が2,000人を越えるのが12月4日という予測だが,昨日の時点でこれは越えてしまっているのだった。

図 グーグルのCOVID-19陽性者数感染予測(日本)から引用(2020.11.19)


2020年11月18日水曜日

M1(2)

M1(1)からの続き

Apple Silicon M1 を搭載したMacBook Airの実機での報告(*Tuberによる15分前後のVlog)が youtube にどんどんあがってきた。非常に短時間の評価で,比較にはさまざまな制約条件はあるというものの,その多くは「わぉ,スゲェー」というものだった。

一番大きな問題のひとつは,ファンレス構造で発熱による熱暴走は大丈夫かというものだ。これについては「全く熱くない」と「結構熱くなる」に別れた。Geekbenchでは熱くならないようだけれど,GPUがフルに動くアプリケーションではかなり熱いという説もあったが,熱暴走状態をみせるところまでは至っていない。動画編集ソフトによる動画書き出しても,インテルのiMacやMacBook Proの2019年最上位てんこ盛りモデルの実行時間1.5倍以内の時間で完了している。Rosetta2を使ってもこの程度だというのはすごい。

追伸:drikinのダビンチによる動画編集の話を追加した。なかなかおもしろそうな世界がひろがっている。(2020.11.20)


2020年11月17日火曜日

Mathics

Mahtematicaについてからの続き

Mathematicaを使い始めて30年くらいになるが,アカデミック価格の年間契約からはずれたため,2019年の12.0.0.0でバージョンアップが止まってしまった。最新のMathematicaは12.1だと思われる。Mathematicaは家庭・趣味用デスクトップライセンスでも45,000円なので今となってはかなり高額である。学生用ライセンスこそ21,000円だけれど,大学だとその10倍の210,000円,普通の企業だと,469,000円もするわけで相当厳しいのであった。

で,普通はMathematicaの代替はないかと考えてSegeMathだとかいうことになる。いっときこれをインストールしていたのだけれどかなりサイズが大きいので,SSD領域確保のために消去してしまった。Mathematicaのほうが慣れている分使いやすいことでもあるし。M1マシンとBigSurに移行したらどうなるかはわからない。Jupyter上のJuliaが登場したことによって,かなりの部分はこれで代替できるのだけれど,それでもMathematicaの方がコーディングの負荷が少ない。

さて,そんな中で今日発見したのが,フリーのMathematica文法互換ソフトウェアのMathicsである。円周率は4000桁くらいまでしか計算できなかったので,あくまでも教育用という位置づけになるかもしれない。それでもちょっと安心でWolframAlphaよりはましかもしれない。

インストールは簡単で,(1) pip3 install Mathics3, (2) brew install sqlite (macOSの場合),(3) \$ mathics でコマンドライン版起動,(4) \$ mathics server でGUI版起動 (localhost:8000) であった。List of computer algebra systems にはリストアップされていないのだけれどどうしてかな?


Mathics 1.1.0 on CPython 3.8.6 (default, Oct 27 2020, 08:57:44) using SymPy 1.6.2, mpmath 1.1.0

Copyright (C) 2011-2020 The Mathics Team.

This program comes with ABSOLUTELY NO WARRANTY. This is free software, and you are welcome to redistribute itunder certain conditions. See the documentation for the full license.

Quit by pressing CONTROL-D

2020年11月16日月曜日

科学技術・学術審議会

戦後,日本学術会議がスタートしてから政府自民党によってその実態が骨抜きにされる過程が続いてきた。そのための別機構とは,内閣府の総合科学技術・イノベーション会議だと思っていたけれど,実はそれだけではなかった。もうひとつが文部科学省の科学技術・学術審議会である。こちらのほうは,「中央省庁等改革の一環として,科学技術・学術関係の6審議会(海洋開発審議会,航空・電子等技術審議会,資源調査会,技術士審議会,学術審議会,測地学審議会)の機能を整理・統合し,平成13年1月6日付け(2001年)で文部科学省に設置されたもの」ということだ。

「イエスマンの集まりになったら国は滅びる」(毎日新聞)の中島秀人・東工大教授によれば,

当初の学術会議は、学術政策や予算の分配に強い影響力を持っていました。当時は権威がある組織だったので、代わりの団体を作る方策が取られました。59年に科学技術会議(現総合科学技術・イノベーション会議)、67年に学術審議会(現科学技術・学術審議会)が作られたのです。政策決定は科学技術会議が、予算配分は学術審議会が担うようになり、学術会議は権限を奪われていきました。学術会議には、提言、報告、政府の諮問に対する答申などの機能もありますが、これらを含め70年代から、社会的な発信力や影響力がほとんどなくなってきたと思います。

ということなので,問題の根は深い。そもそも,政府から独立して国を代表する科学アカデミーと政策推進のために抽出された科学者集団としての審議会等の性格は大きく異る。しかも実効的な力のなかった組織(科学アカデミー)を生贄として血祭りにあげ, 権力(人事)掌握のための機会として利用しようということなのだ。新型コロナウィルス感染症対応でもわかるように,客観的,合理的な事実から離れた(場合によっては法制度を無視した)政策遂行による日本の劣化がとどまるところをしらない。

2020年11月15日日曜日

ロゲイニング

 家の前の道路を,なにやらゼッケンをして地図らしきものを持った集団が歩いている。「これはなに」と調べてみると,天理ロゲイニング by 奈良マラソンというイベントだった。天理駅前広場のコフフンには受付や着替えコーナが設置されており,9:20受付開始で最長5時間以内だから,15:00ごろまではこれが続いていると思われる。

ロゲイニングは地図とコンパスだけで山野に設置されたポイントを探していくオリエンテーリングと似ているが,ポイントがたくさんあってその順序を工夫しながら制限時間内にできるだけ多くの得点を稼ぐというゲームらしい。経路を工夫することも競技のうちなので,巡回セールスマン問題の要素があるということか。ポイントの難易度によって得点の重み付けがされているようだ。

今回は奈良マラソンから派生したイベントということだけれど,オリエンテーリング協会も年間シリーズを主催している。本家は日本ロゲイニング協会かと思ったが,情報が2018年で止まっている。大丈夫か。これによるとロゲイニングは次のように定義されているので,今回のものはカテゴリBの小規模ロゲイニング(時間が6時間未満3時間以上)に該当するのかもしれない。 

1. チーム競技であること。
2. 競技地図から読み取れない不確実なイベントが発生しないこと。
3. CHECK POINT(CP)は自由な順番でまわれるルールであること。
4. CPはすべて回りきれない程度設定されること。
5. 競技時間は6時間以上であること。
6. CPの通過判定方式は公正さが保たれるものであること。
7. 移動手段は走り(歩き)であること。
8. 主催者が指定した地図とコンパスのみでナビゲーションをおこなうこと。
9. 地図上に示されたCPの場所(○印の中心)と実際のCPの場所が一致すること。

google mapで経路検索するのはルール違反となっているらしいが,チェックポイントを写真撮影するフォトロゲイニングというものがあるので,これはどうなるのか調べてみると携帯電話のカメラはOKだった。日本フォトロゲイニング協会はロゲイニング協会とは別の一般社団法人だが,こちらのようがウェブサイトも充実していて人気のようだ。フォトロゲのルールも整備されている。

通過チェックは写真撮影により(アプリもあるみたい),競技時間設定が2時間以上ならOKで電子機器利用の制限もない。たとえば3時間ならば,5×7 km,5時間で は7×10 km くらいの範囲でコースが設定されるようだ(フォトロゲと他競技との比較)。一度ちょっと街なかの軽いコースで試してみたい。



2020年11月14日土曜日

回顧録

 小柴昌俊先生(1926.9.19-2020.11.12)が亡くなった。からというわけでもないかもしれないが,今日のNHKのブラタモリは「飛騨」ということで,高山から始まりスーパーカミオカンデの見学に至るものだった。小柴さんのグループが初代のカミオカンデで超新星 SN 1987Aのニュートリノを捕まえたのが,1987年の2月23日だった。その年の4月に京都国際会館でPANIC '87(第11回素粒子と原子核国際会議)が開催され,政池明先生がコメンテーターとしてさっそうとプレナリーセッションの壇上に駆け上がって,SN 1987Aからのγ線の観測が非常に重要だと指摘していたのだけれど,あれはいったいどうなったのだろうか。

谷畑さんと土岐さんの国際会議報告によれば,最終日には小柴先生の講演もあったようだが,自分の記憶にはないのであった。山崎先生が組織委員長で,森田先生や中井先生が幹事ということで,弱い相互作用のパラレルセッションのサイエンスセクレタリーを務めることになったのだけれど,4名の発表者に発表のまとめをもらうのに四苦八苦した覚えがある。

小柴先生については,東京大学の「宇宙線研究所長梶田隆章教授2015年ノーベル物理学賞受賞記念ページ」のあたりの回顧録にある記事がおもしろいと評判だった。また,東工大の渡邊靖志先生の「カミオカンデとスーパーカミオカンデ」にも貴重な話がある。東京大学総合研究博物館には,小柴昌俊先生ノーベル賞受賞記念「ニュートリノ」という文集があった。

2020年11月13日金曜日

CleanMyMac X

アップルの M1 搭載機種が発表された余波が続いている。macOSのメジャーバージョンアップであるBig Surもいよいよ配信開始となって,さっそくレポートもあがりはじめた。その流れでCleanMyMac Xについての記事が目についた。無料だというのでさっそく飛びついてクリーンアップを開始した。12GBくらい不要領域がでてきて,消去を選んだところ500MBだけクリーンアップ,残りは有料でとなった。デザインもUIもよかったので早速1年分のライセンスキーを取得したけれど・・・うーん,なかなかすごい商売である。

それにしてもBig Sur である。バイナリがintelとM1の両対応でサイズが倍になったという話もあるが,twitterでも若い人がどんどん試している。歳をとるとなかなか新しいものにとびつけなくなるのが悲しい。そもそもmid 2012のMacBook Proでは話題に参加できないのだけれど。はやくiPadとMacが統合されてほしい。

2020年11月12日木曜日

Splashtop

 iPadをMacのリモートデスクトップとして使いたいと思った。一時なくなりかけていたMac Miniが M1チップをのせてきたので,しばらくは安泰かと思われたからだ。Mac Miniの値段は132,800円(16GB+1TB)なので,MacBook Airより4万円は安い。いまとなっては,iPad も必需品なので,これとnotebook の重複を防ぎつつMacOSも使えるとなればありがたい。Mac Miniのインターフェースも,USB4×2, HDMI 2.0,USB-A,Gigabit Ethernet,ヘッドフォンジャックなどがあってなんとなくうれしい。

Sidecarを使うと,iPadをMacの2番めのディスプレイ(ペンタブレット機能付き)として使うことができる。が,それはリモートデスクトップではないと思われる。そもそも該当するのは,2016年発売のMacBook Pro以降なので残念でした。ということで,さらに調べてみると,Splashtop,Jump Desktop,Chrome Remote Desktop,Microsoft Remote Desktopという選択肢がでてきたので,おすすめだったSplashtopをiPad Pro とMacBook Proにインストールしてみた。うーん,ヌルヌルしているがそれなりに動作する。そもそも,iPadのキーボードがあれなので,どこまで実用に堪えるかはわからない。日本語入力もできないかと思ったが,大丈夫だった。

2020年11月11日水曜日

M1(1)

 Appleは,2006年以来使われてきたIntel チップから,アップル独自のARMベースSoC(システムオンチップ)である M1 チップへの変更を開始した。2020年11月11日のアップルイベントで,予てからアナウンスしていた AppleオリジナルのM1チップが搭載された13inch MacBook Air, Mac Mini, 13inch MacBook Pro の発表があった。即日に予約開始して来週はじめから出荷ということだ。M

5nmのラインルールによりM1チップに集積されるトランジスタ数は160億個だ。ここに8つのCPUコア(4つは高速,4つは低消費電力),8コアのGPU,16コアのニューラルエンジンなどを搭載し,毎秒11兆回の演算が可能となっている。この新しいMacBook Proは,クアッドコアIntel 1.7GHz i7の MacBook Proに比べて,CPU速度は2.8倍,GPU速度は5倍,ニューラルエンジン速度は11倍というふれこみだ。

M1の省電力性により,MacBook Airではファンが搭載されておらず,バッテリ駆動時間はこれまでの6〜8時間から50%以上は伸びているようだ(ワイヤレス接続時の名目10時間が15時間)。しかも価格は,MacBook Air の16GB+1TBで169,800円か。

問題は,homebrew, Julia, MacTeX, Mathematicaなどがちゃんと動くかどうかである。前回のPowerPCからIntel への移行や,MotorolaからPowerPCへの移行時もそれほど困った記憶はないので,今回もスムーズに乗り換えられるかもしれない。今使っているのはmid 2012の MacBook Proなので,すでに8年以上経過している。次は,ややこしいバーがついていないMacBook Air にしようかと考えているけど,どうなることか。

2020年11月10日火曜日

デジタル庁創設の課題

 日本経済新聞に掲載されていた記事。前回掲載された(上)は東大の越塚登の論で毒にも薬にもならない話に見えたので読まなかった(ネットで読み直してもやはりスカだった)。本日の(下)は,明治大学の田中秀明廉宗淳の「問題解決の実行計画を」というもので,楠正憲も指摘していたように,日本が参考にすべきは同様の社会規模や制度を持つ韓国であるという線に沿った議論になっていた。韓国の電子政府関係組織なども丁寧に紹介されており,久しぶりに納得できて読みがいのある論説だった。

正確な状況分析ができていないにもかかわらず政権浮揚の手段としてデジタル庁を持ち出した菅義偉と利権にまみれたミーハーの平井卓也が進める政策がろくなものになるはずがないような気がする。科学的・合理的な思考から程遠いところで局所的な利権を組み込むために汲々として全てが進められている日本の状態では,とてもではないが韓国に太刀打ちできそうにない。コロナ対策もしかりである。安倍内閣ではこれにネトウヨフレーバーがトッピングされており,それは今も色濃く残ったままである。

日本の行政のオンライン利用率が先進国最低で国民が便利さを感じていない理由として3点があげられている。(1)戦略や施策の評価,問題と原因の分析がないこと,(2)システムに合わせて業務や法手続きを見直さず,現在の業務のまま進めようとすること(行政の無謬化),(3)組織が縦割り打破をできていないこと,出向2年しばりで職員の専門性が軽視されキャリア形成を阻害していること(博士号を持ったスタッフがどれだけいるのか)。

この本質的な問題や課題に立ち向かわないデジタル庁は,いまのガラクタの組織の上に覆いかぶさり,新たな利権の繋ぎ変えによってさらなるスパゲッティシステムを生み出すだけかもしれない。エストニアをモデルとして語っている限り話は始まらない。

2020年11月9日月曜日

プガジャ

 今はなき曽根崎書店を検索してもほとんど情報がみつからないので,その場所がどこだったのかが思い出せない。プレイガイドジャーナル編大阪青春街図'76の断片にかろうじて阪急東通商店街2としてその場所が示されていた。

曽根崎書店といえば,前進や解放などが販売されており,新左翼系の雑誌や書籍とともに季刊NW-SFも棚に並んでいた。日本におけるニューウェーブを主導した山野浩一と,サンリオSF文庫(1978-1987)で重要な役割を果たした山田和子が季刊NW-SF編集に関わっていたと思う。1970年から1982年にかけて不定期に発刊されていたので,探すのがけっこう大変だった記憶がある。1972年に大学に入ってからはSFマガジンの購読もやめてしまったので,その代替として季刊NW-SFに期待していた。しかし,バラードやディックやディッシュなどの一部を除いて今ひとつはまらなかったかもしれない。

そのB6サイズ(後にB5)の「プレイガイドジャーナル(1971-1987)」である。1971年に発刊されていたが,定期的に購読するほどではなかった。1973年2月の「大阪青春街図」は発売後すぐに購入して長く手元にあったが,大阪市内を歩くための目安としてたいへん重宝した。米島くんから東京には「ぴあ(1972-2011)」というのがあるときいたが,そちらは純粋な映画・音楽情報誌で,プガジャの持っていたちょっと怪しいところが蒸留されたものだった。



写真:大阪青春街図の表紙(六月社書房)恵文社ウェブサイトから引用


2020年11月8日日曜日

大統領選挙

ペンシルバニアの票がほぼ固まったところでバイデンの当選確実が一斉に報じられた。たぶん法廷闘争に持ち込んでというトランプの作戦も成立しないだろう。しかし,あいかわらずトランプ的=大阪維新的なマッチョイズムの根は残ったままになっている。

各州の郡単位の色分けを見れば,都市部の青と周辺部の赤の差が際立って見える。アメリカで取材を続けていた大袈裟太郎の予想はほぼあたっていたし,町山智浩は当然として,平河エリも正確な予想をしていた。これに反してろくにデータも見ずにとんでも説を流したものの中でも際立っていたのが木村太郎だった。

[1]「トランプ優勢」を報じ続けた「日本のメディア」,その大きすぎる問題(平河エリ)


州記号RepDemRepDemmemo
WY370.4%26.7%1
WV568.7%29.6%2
ND365.5%31.9%3
OK765.4%32.3%4
ID463.9%33.1%5
IN1163.9%33.1%5
AR662.6%34.6%7
AL962.5%36.4%8
AK362.1%33.5%9
KY862.1%36.2%10
SD361.8%35.6%11
TN1160.7%37.4%12
MS659.7%38.8%
NE4158.6%39.3%
LA858.5%39.8%
UT658.4%37.7%
MO1056.9%41.3%
MT356.9%40.6%
KS656.5%41.3%
SC955.1%43.4%
OH1853.4%45.2%
IA653.2%45.0%
TX3852.2%46.4%
FL2951.2%47.9%216
NC1550.1%48.7%
GA1649.3%49.5%
PA2049.1%49.7%
AZ1148.9%49.6%
WI1048.9%49.6%
MI1647.9%50.6%
NV647.9%49.9%
NH445.6%52.8%226
MN1045.4%52.6%
VA1344.5%54.0%
ME1344.2%52.9%
NM543.6%54.2%
NY2943.0%55.7%
IL2042.3%55.8%
CO942.1%55.3%
OR740.6%57.0%
CT740.4%58.1%
NJ1440.1%58.7%
DE339.8%58.8%
RI439.1%59.4%
WA1238.6%58.9%
MD1034.8%63.5%(6)
HI434.3%63.7%(5)
CA5533.4%64.7%(4)
MA1132.6%65.6%(3)
VT330.8%66.4%(2)
ZDC35.2%93.3%(1)
35823230647.7%50.6%