2020年8月11日火曜日

2020年8月10日月曜日

2020年8月9日日曜日

さよなら三角

妹のおかげで,少女マンガに触れる機会が多かった。月刊少女マンガ雑誌といえば,少女クラブ(講談社:1946-1962),少女(光文社:1949-1963),なかよし(講談社:1954-),りぼん(集英社:1955-)などだった。どれを購入していたのだろうか。あるいは,週刊誌の少女フレンド(講談社:1962-1974),マーガレット(集英社:1963-1988),セブンティーン(集英社:1968-)だったか。

砂糖や脂肪がふんだんに使われている洋菓子や和菓子のようなフレーバーでなくて,自分にも楽しく読めたのは,恐怖マンガ系の楳図かずお(へび少女とか),ギャグマンガの土田よしこ,あるいは巴里夫(ともえさとお)などに限られていた。巴里夫のデビュー作が「さよなら三角」となっているが,それだったかあるいは別のマンガのエピソードのひとつだっだような気もするけれが,さよなら三角の最初のフレーズだけが印象的だった。

 さよなら三角 また来て四角
 四角は豆腐 豆腐は白い
 白いはウサギ ウサギは跳ねる
 跳ねるはカエル カエルは青い(みどり)
 青い(みどり)は柳(葉っぱ)
 柳(葉っぱ)はゆれる
 ゆれるは幽霊 幽霊は消える
 消えるは電気 電気は光る
 光るはおやじのハゲ頭

また,単行本で萩尾望都のシリーズを揃えていたのを読ませてもらったのは,大阪に出てきてからかもしれない。

中でも最も印象深かったのは水野英子ファイヤー!だった。ちょうど自分が高校生の頃で,洋楽ポップスにはまっていた時期なので強く引かれた作品だった。いまだと,クイーンのボヘミアン・ラプソディー,昔だとロマン・ロランのジャン・クリストフか。

2020年8月8日土曜日

涼風至

きのう立秋を迎えた。朝夕に少し秋めいた風や空も感じられるが,日中の猛暑は続いている。

新型コロナウィルス感染症の第1波第2幕もまだ峠にはさしかかっていない。沖縄や愛知や大阪や東京が特に心配なのだけれど,あいかわらず,PCR検査を抑制しようという日本特有の雑音はいっこうにおさまらない。それどころか大阪維新はあいかわらずのクオリティで在阪TV局の吉本芸人と結託してとんでもない洗脳放送を続けている。一方で官邸政府与党は,いわゆる『低死亡率』を根拠として,積極的な対応を忌避してひたすら逃げ回っている。

それにしても驚いたのは,理科教育畑で日本の教育実践に最も影響力があると自負している大学教員が,家人の緊急連絡によってイソジンを買いに薬局に走ったということを,なんのためらいも,恥じることもなく,フェイスブックで開陳していたことだ。そう,日本の科学教育は確実に失敗の道を進んでいるのだろう。それがすべての分野に染みついている国民的で非合理的な判断態度を下支えしている。

まあ人のことはいえないのである。さんざん否定しておいたGOTOキャンペーンにいそいそと申し込んだのは,もろもろの事情があるのでと言い訳している私です。それにしても日本のITクオリティはすごすぎる。GOTOキャンペーン公式サイトのSTAY NAVIで手続きを進めてみたところ,最終段階で画面遷移せず割引クーポンが発行されなかった。さっそく問い合わせたが,たぶん週明けまで返事はないだろう。こんなポンコツシステムのために大量の税金が湯水のように投入されている。


2020年8月7日金曜日

日の丸

昭和30年から40年にかけては,少年マンガ雑誌は月刊誌がその中心だった。やがて,少年サンデー(小学館:1959-),少年マガジン(講談社:1959-),少年キング(少年画報社:1963-),少年ジャンプ(集英社:1969-),少年チャンピオン(秋田書店:1970-)などの週刊誌が主流となっていく。

小学校低学年のときに,母親からマンガの雑誌を定期購読してもいいという話をとりつけた。少年マガジンやサンデーなどの週刊誌もあるよとすすめられたけれど,付録もついている月刊誌を選択した。それが日の丸(集英社:1958-1963)だった。どちらかといえば最もマイナーだったのだが,どうしてそれが気に入ったのかよくわからない。ナンバーセブン(手塚治虫)やテレビ小僧(石森章太郎)があったのは憶えている。

当時の月刊誌といえば,少年クラブ(講談社:1946-1962),少年(光文社:1946-1968),冒険王(秋田書店:1949-1983),少年画報(少年画報社:1950-1971),まんが王(秋田書店:1952-1971),ぼくら(講談社:1954-1969),少年ブック(集英社:1959-)などがあった。

各社2冊のところがあるので,対象年齢層が少しずれていたのかもしれない。日の丸は小学校3年の終わりに休刊となって,同じ集英社の少年ブックに引き継がれたため,そのまま少年ブックを購読していた。少年ブックは日の丸と違って付録も充実しており,毎号楽しみだった。小学校5年生の時に実家が新築されたので,それを潮時として購読をやめたのかもしれない。やがて小学校が終わるころには,月刊誌のピークも終わりに近づいていた。

定期購読していないものでも,貸本屋,床屋,病院,友達の家などで読む機会は多かったので,各雑誌の主要マンガの印象は大きい。また,少年ブックに連載されていた,ビッグX(手塚治虫)や宇宙エース(吉田竜夫)などは,鉄腕アトムや鉄人28号などのメジャーではない作品がアニメ化されていく過程のさきがけのひとつだった。

2020年8月6日木曜日

海底軍艦

NHKの歴史秘話ヒストリアで「伊400幻の巨大潜水艦」をやっていた。伊四百型潜水艦は全長122mで第二次世界大戦中に就航したものでは世界最大の潜水艦であった(2012年まで世界一)。特殊攻撃機の青嵐を3機搭載できる潜水空母だ。そのコンセプトが後の核ミサイル搭載の原子力潜水艦につながっていく。

Wikipediaをみていると,特撮映画の「海底軍艦」の話がでている。宇宙戦艦ヤマトではないが,伊四百型潜水艦を改造して海底軍艦をつくったのかと思えばそうではなくて,実在の伊400,401, 402に続く,伊403という仮想の潜水艦を奪って終戦時に帝国海軍を離脱したグループが海底軍艦の轟天号をつくってムウ帝国と戦うという話だった。

海底軍艦が上映されたのは,小学校4年の冬だった。おばあちゃんの家で遊んでいたときに,どういう話になったのか,親戚のお兄さん(斉藤之泰さん)に当時の大和の上階で上映中の映画館に連れていってもらうことになる。マンガ月刊誌の付録でも読んだとおもう。印象的なのは冷凍光線だった。氷点下273度ですべてのものを凍らせてしまうというすばらしい兵器を搭載していたのだ。2本立てのクレージーキャッツを見るかと聞かれたが,当然もういいよといって,帰ってきたのであった。たぶん海底軍艦のプラモデルもつくったような気がする。


2020年8月5日水曜日

桑田次郎

桑田次郎が7月2日に85歳で亡くなったという報道があった。桑田二郎とあったので,何を間違えているのかと思ったが,間違えていたのは自分のほうで,1990年ごろに改名されていた。

まぼろし探偵は,少年画報に1957年から1961年まで連載されていた。少年と同じように新保の床屋でみていたのか,あるいは清藤の貸本屋で借りていたのかどうだったのか。吉永小百合が出ていたテレビのまぼろし探偵は1959年から1960年の放送で,これもなんとなく記憶にある。

月光仮面は,1958年から1959年までテレビで放映されていたが,こちらの印象のほうが強い。小学校の絵日記では,風呂敷をマントにして月光仮面ごっこをしている絵をかいていた。桑田次郎の少年クラブのマンガ版のほうは記憶にないが,サタンの爪の赤が印象的だった絵本は買ってもらったことがある。月光仮面といえば佐藤秀明君で,金沢大理(→北教大)の岡崎隆さんと一緒に原子核三者若手夏の学校で踊っていた。

エイトマンは,平井和正原作のスタンダードなSFの設定だった。1963年から1965年までの少年マガジンの方は見ていなかったかもしれないが,1963年から1964年の丸美屋ののりたま提供のテレビマンガのほうは欠かさずに見ていた。小学校のバス旅行の帰りにはエイトマンの歌で盛り上がっていた。エイトマンといえば深山良徳君で,これまた夏の学校でのエイトマンの踊りはシュレーディンガー音頭を圧倒していた。



2020年8月4日火曜日

月の飛ぶ村

三枝和子の「月の飛ぶ村(新潮社,1979)」を買ったのは,院生時代に購読していた朝日新聞の書評欄がきっかけだったと思う。SFの一種だと思ったからかもしれない。非常に密度の高い読書体験をすることができたので,それから三枝和子の書いたモノに注目するようになった。

あるとき,梅田の紀伊国屋書店か旭屋書店の書棚の上の方の段に「思いがけず風の蝶(冬樹社,1980)」を見つけた。その本はかなりのボリュームであったにもかかわらず,これは買わねばと思ったのも,別の書評の効果だったのかもしれない。その本によって,式子内親王の「玉のをよたえなはたえねなからへは 忍ふることのよはりもそする」と,京都の「糺ノ森」が自分の記憶にインプットされることになった。

なぜかこの本を抱えた自分が,研究室の後輩の横田晃敏君と一緒にいる記憶が残っている。


2020年8月3日月曜日

思いがけず風の蝶

「冬の蝶」という季語に引っかかったとき,もしかして「思いがけず冬の蝶」だったのか,そんな伏線が潜んでいたのか・・・と思ったが,なんのことはない「思いがけず風の蝶」でした。1980年に読んでからもう40年になる。

三枝和子が2003年に74歳で亡くなってから17年経過した。「思いがけず風の蝶」で検索してもほとんど情報が得られない。CiNiiで三枝和子を検索すると,駒沢大学の倉田容子さんの論文が3編みつかるだけだった。あとは,小谷野敦高桑法子さん(富山県の福野出身ではないか)相手に,三枝和子をディスっているtogetter,三枝和子をめぐる対話くらいしかない。

2020年8月2日日曜日

SIRモデルとK値(2)

SIRモデルとK値(1)からの続き

新規感染者数の累計に対する微分方程式において,$\beta(t)=\beta e^{-\alpha t} $と仮定すると,
$\dfrac{dJ}{dt} = \beta e^{-\alpha t}J$であり,その解は,$J = J_0 \exp [ \frac{\beta}{\alpha} (1 - e^{- \alpha t}) ]$ となる。

ゴンペルツ関数を $f_G(x) = \exp[ - e^{-x}]$と定義して,$ \frac{\beta}{\alpha}=e^{\alpha t_0}$とおくと,

$J = J_0 \exp [ e^{\alpha t_0} (1 - e^{- \alpha t}) ]  =  J_0 \exp [ e^{\alpha t_0}  - e^{- \alpha (t-t_0)}) ]$
$= J_1 \exp [- e^{- \alpha (t-t_0)}] = J_1 f_G(\alpha (t-t_0))$ ただし,$J_1 = J_0  \exp [ e^{\alpha t_0}]$ とおいた。

これから,$K(t)=1-J(t-\tau)/J(t) = 1-f_G(\alpha (t-\tau -t_0))/f_G(\alpha (t-t_0))$となり,
$K(t) = 1 - \exp[-(e^{\alpha \tau}-1) e^{-\alpha(t-t_0)}]= 1 - f_G(x_k)$とかける。
ただし,$x_k=\alpha (t - t_0 - \delta t),\ \delta t = \frac{1}{\alpha} \log (e^{\alpha t})$ である。

ゴンペルツ関数の微分は,$f'_G(x) = e^{-x} f_G(x)$ であるから,K値の微分は,
$K'(t) = -\alpha e^{-x_k} f_G(x_k)$ となる。つまり,$K(t)=f_G(x_k)=1/2$のとき,
$e^{-x_k}=\log2$が成り立ち,$K'(t) = -\alpha \frac{\log 2}{2}$となる(なお,このモデルにおいて$K'(t)$の絶対値が極大値をとるのは,$f_G(x_k)=1/e, x_k=0$のときである)。

中野モデルを数理的に解析した秋山に従えば,中野モデルでの減衰係数$k \ (0<k<1, 1-k \ll 1)$は  $ \alpha = -\log k $ に対応していた。
$\therefore K' =  \frac{\log 2}{2} \log k =  \frac{\log 2}{2} (k-1) = \frac{1}{2.88}\ (k-1)$
つまり,$k = 1 + 2.88K'$ という中野が導いた現象論的関係式が得られる。

2020年8月1日土曜日

SIRモデルとK値(1)

ゴンペルツ関数からの続き

(復習)
(1) 阪大の中野らは,新型コロナウイルス感染症が拡大する時期の指標としてK値を導入し,その勾配がある範囲で一定になることをみつけた(ここまではOK)。さらにこれが普遍的な現象であると主張した(これはどうよ)。
(2) 東工大の秋山は,中野のモデルを数理的に解析してK値の定性的な振る舞いがゴンペルツ関数で表現されることを導いた。さらに,K=0.5におけるK値の勾配の式が中野モデルと一致することを示した(これは大丈夫)。
(3) 京大基研の大西らは,感染者数の増大の単純な微分方程式で,係数を指数関数にとることにより,感染者数やK値がゴンペルツ関数で表現されることを示した(これも大丈夫)。さらに,各国の感染拡大期の感染者数がこの普遍的なゴンペルツ関数で表されるとした。

K値はその出発点が完全な現象論だったとしても,一定の背景があることが示された。ただし,その適用条件や特性を無視して性急に政策に適応することへの批判は多い。


感染症のSIRモデルは次の非線形連立微分方程式で表すことができる。ただし,人口Nの
集団における感受性保持者(Susceptible)をS(t),感染者(Infected)をI(t), 隔離者・回復者をR(t)として,S(t)+I(t)+R(t)=Nは一定とする。また,$\beta$を感染者1人1日当りの伝搬感染者数,$\gamma$を感染者の回復率(その逆数が平均感染期間)であるとすれば,

$\dfrac{dS}{dt} = -\beta \dfrac{S}{N} I$
$\dfrac{dI}{dt} = \beta \dfrac{S}{N} I - \gamma I$
$\dfrac{dR}{dt} = \gamma I$

初期条件として,感染者$I(0)$が非常に少ないところから感染が拡大する場合を考え,$I(0) \ll S(0)$とする。このとき$S/N \sim 1$であり,元の微分方程式系は次のように近似できる。

$\dfrac{dS}{dt} = -\beta I$
$\dfrac{dI}{dt} = (\beta - \gamma) I = -\gamma (1 -  R_0) I$
$\dfrac{dR}{dt} = \gamma I$

ここで,$R_0 \equiv \beta/\gamma$ は基本再生産数とよばれる定数であり,$1 < R_0$のとき感染者数は指数関数的に増大し,$1 > R_0$ならば感染者は減少する。

$\beta$が定数でなく時間の減少関数であれば感染増大が抑制される。これを表わすために,$\beta$を$\beta(t)$としたときの,$R_t \equiv \beta(t)/\gamma$を実効再生産数とよぶ。

$I(t)$は感染者数であり,回復者の分は減少していく。一方新規感染者数の累計を$J(t)$とすれば
これは,ある集団において単調増加して収束する。そこで,上記微分方程式から減少項
$\gamma I$を除いたものが,$J(t)$に対する微分方程式だと仮定する。
$\dfrac{dJ(t)}{dt} = \gamma R_t J(t) = \beta(t) J(t)$

このとき$\bar{R}$値,$L$値,$K$値を次のように定義する。なお,$\tau=7$であり,時間の単位は日とする。
$\bar{R}(t) = J(t)/J(t-\tau) > 1,\  L(t) = \log \bar{R}(t) > 0,\ K(t) = 1-\dfrac{1}{\bar{R}(t)} < 1$





2020年7月31日金曜日

女帝 小池百合子(2)

女帝 小池百合子(1)からの続き

斎藤美奈子森達也web掲示板談話第105回が,『女帝 小池百合子』を読んで という斉藤から森へのメッセージであった。二人とも1956年生まれで新潟県立新潟高校の同級生だったとか。

「この本を褒めた人は,(1)じつはきちんと読んでいない,(2)都知事選前の時流に流された(リベラル陣営に忖度した・選挙で彼女を落選させたかった),(3)そもそも本を読む力がない,(4)そもそも性差別主義者である,のどれかではないかと思います。」として,「女帝 小池百合子」と石井妙子を強く批判していた。

著者の石井妙子は「おそめ」の件で評価していたけれど,考えてみれば,自分では読んでおらず,松岡正剛や菅野完の情報でしか判断していなかった。立ち読みしたエジプトの下りでも微妙な違和感を感じたのだけれど,それより,小池百合子憎しの気分が優先していたのは事実なので,自分の場合は上の4項目がすべて当てはまりそうだ。

斎藤美奈子は,東京新聞のコラムがときおりtwitterに放流されてきて,ほとんど同意できる内容なので相対的に信頼できるようにも思う。斎藤美奈子の判断の方が正解に近いのかもしれない。

[1]『女帝 小池百合子』石井妙子(千浦僚,2020.7)
[2]小池百合子氏と『モダンガール論』(香山リカ,2020.7)
[4]小池百合子はモンスター?(斎藤美奈子,2020.8)
[7]『女帝 小池百合子』を読む(1)(2)(井戸まさえ,2021.1)


2020年7月30日木曜日

中干し

近所の田んぼの水が干されている。

奈良県農業研究開発センターの,水稲「ヒノヒカリ」をつくりこなすための7つのポイント,によれば,「3.水管理:登熟向上のために!中干しは必要な茎数を確保した後 に,軽くひび割れするぐらいまでで7日程度実施する(7/中〜下)」ということなので,ちょうど今がその時期のようだ。

今年は,稲の大害虫であるスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)が大発生していて,田んぼやその周辺には毒々しい赤い卵が目立つのだけれど,大丈夫なのだろうか。



写真:朝の散歩で撮影した近所の田んぼの様子(左 2020.7.28 / 右 2020.7.13)

2020年7月29日水曜日

ひまわり

もうすぐ梅雨が明けそうだが,列島の各地を線状降水帯の豪雨が襲い,コロナの第一波第二幕の波は人口密集地に達している。今年は冷夏の予想もあって,夏のひまわりの存在感はうすいのかもしれない。

 ひまわりというと金沢市立野田中学校のシンボルであった。

久しぶりにホームページをのぞいてみると,金沢子どもかがやき宣言と野田中学校の目指す学校像がいきなり出てきて,あれあれとなったが,ちゃんと生徒信条は残っていました。

<生徒信条>
一.いつも太陽にむかって咲く ひまわりのように 明るく正しく生きよう
一.たくましく生長する  ひまわりのように  雄々しく元気に伸びよう
一.大きな輪になって咲く ひまわりのように  みんな仲良く協力しよう

有側友雄先生というハンプティ=ダンブティに似た先生がいた。野田中の「ぬし」のような威厳をもった先生だった。生徒指導というか道徳教育の核となり校長先生を差し置いて存在感を発揮していた。全校集会などで悪童どもへにらみをきかせるわけだ。その有側先生は,我々1年生の習字の授業も担当していたが,その最初の授業のときに指名されて,教卓の上に掲げられている生徒信条を読むようにといわれた。

「一(いち) いつも・・・」といったところでストップがかかり,これは一(ひとつ)と読むのだ,と訂正された。生徒信条はクラスの朝礼で毎日発声していたような気もするが,毎朝間違っていたのかもしれない。

有側先生が学年全員の前で講話をすることが何回かあったが,その1回は非常に強く印象に残っている。君たちにとって,頭,体,心,で一番大切なのは何かという問いが投げ掛けられた。幼い中学生の自分は,人間は命あっての物種なので,「体」かなと思ったが,有側先生はそれが「心」であるということをはっきりと語った。そうだったのか,と衝撃を受けた。衝撃を受けるほうがおかしいような気もするが,まあそんなものなのである。



写真:ヒマワリ(2020.8.3撮影)

2020年7月28日火曜日

GPT-3

しばらく前から,GPT-3が話題になっていた。星暁雄さんの解説「革命かパンドラの箱か,新AIツールGPT-3の波紋」がわかりやすかったので要約してみる。GPT-3はサンフランシスコにある非営利組織のOpenAIが開発して2020年6月に公開したAIツールである。OpenAIは,オープンソースと親和性の高い安全な人工知能への道を探ることを目的としている。

GPT-3をひとことでいうと,英単語や短い文章をインプットすると,関連する「それらしい」テキストを自動生成するツールである。文章以外に,プログラムコードや楽譜を自動的に生成すこともできるため,大きな反響をよんでいる。

その仕組みは,"Language Models are Few-Shot Learners"という論文で報告されている。1兆語からなるきわめて巨大な例文集を元に,1750億種類の変数を持つ「言語モデル」に言葉と言葉の関連の度合いを記憶させておき,この「言語モデル」に対して「数種類の実例と課題文」を与えると,それらしい文章を出力するものである。すべては公開されていないが,APIによって短い例文で試してみることはできるようだ。フェイクニュースや差別的表現が簡単に作り出されることなどまだまだ課題は大きいのかもしれないが,汎用的なAIへの一つのステップ。

2020年7月27日月曜日

ゴンペルツ関数

K値再訪からの続き

K値という名の中野さんモデルが主張する振る舞いの根拠として,ゴンペルツ関数(Gompertz function)とよばれる二重指数関数について言及されているものがいくつか見られる。

東京工業大学の生命情報科学の秋山泰さんは,中野さんの提案があってまもなく「累積感染者数の変化に関する新たな指標「K 値」の利点と欠点について(2020.5.10)」で,中野さんのモデルの根拠につながる議論をしている。また,京大基礎物理学研究所の原子核理論の大西明さんのグループは,"Universality in COVID-19 spread in view of the Gompertz function (2020.6.18) "という論文をmedRxivに投稿している。これは,各国の新規感染者数がゴンペルツ関数でユニバーサルに表現できるというものだ。中野さんといい大西さんといい原子核分野の(実験と理論ではあるが)物理屋さんはなぜCOVID-19に引かれるのだろうか。あるいは,Qiitaでは@BMJrさんが「COVID-19 数理モデル 〜 SIR と Gompertz と K値の関係〜(2020.6.30)」という詳しい記事を書いている。

一方,東京海洋大学の勝川俊雄さんは「K値による予測を使うべきでない理由(2020.7.13)」で,ゴンペルツ関数を用いて新規感染者数を予測することに対し,① 現在始まりつつある第二波がゴンペルツ曲線に従うとは限らない,② 現在の限られたデータから,ゴンペルツ曲線のパラメータを推定しても精度は低い,という2つの理由で警告している。さらに,牧野さんが紹介していたのが「K値は擬似科学」・・・なかなか激しい。

例えゴンペルツ関数を持ってしても,牧野さんのいうように,K値(という名の中野モデル)をこの度の事象全域にあてはめることは無謀だと思うのだけれど(まあそうはいっていないのだろうが,だからオフセットを取り続けてグダグダになる),むやみに否定してもそれほど生産的ではない。識者の皆様には,上記あたりにも目を通した上で反論をガードしつつ,その政治・社会的な側面をギリギリと詰めて大阪に充満する維新のよどんだ空気を一掃してほしい。

2020年7月26日日曜日

8億年前の小惑星シャワー

大阪大学理学研究科の寺田健太郎さんが,ネイチャー・コミュニケーションズ に出した論文,"Asteroid shower on the Earth-Moon system immediately before the Cryogenian period revealed by KAGUYA" が話題になっていた。阪大のホームページに詳しい説明がある。

日本の月周回衛星のかぐやが撮影したデータから,直径20km以上のクレータ59個を調べてその周辺に存在する直径が0.1-1kmの微小クレーターのサイズ分布などから,形成年代を推定した結果,8個またはモデルによっては17個の形成年代が8億年前となった。これは偶然では考えられないため,この時期に破砕された小惑星のシャワーが月−地球軌道周辺に降り注いだと考えられるというものだ。

8億年前に破砕した小惑星は100km以上の直径を持ち,一部は地球型惑星や太陽に落下し,一部は小惑星帯に残り,さらに一部は地球近傍小惑星へと軌道進化したようだ。

どうやって形成年代測定するのかを調べてみると,東京大学の諸田智克さんの論文がたくさん出てきた。諸田さんは金沢生まれで金沢大学の地球科学でドクターをとっている。寺田さんのネイチャー論文の共著者にも諸田さんの名前があった。ファーストオーサは寺田さんだけれど,むしろ彼が研究の中心ではないのか。それにしては,東大には記事が出ていない。はやぶさのタッチダウンの話がでたところだからか。


図 月面クレータの形成年代分布(阪大ホームページより引用)


2020年7月25日土曜日

K値再訪

中野さんのK値から2ヶ月半

牧野淳一郎さんが中野貴志さんのK値について言及している。「K値による「予測」は,その数学的構造から必ず,対策しなくても早期に収束する,という楽観的な予測をだすものになっており,そのため対策が不要,事態は深刻ではない,と信じたいメディアや自治体によって取り上げられる,という構造になっているように思われるが,予測事態はこのためにつねに「早期収束する」としか予言できない,実際の予言能力をもたないものになっている」

まあそうだわな。K値はたんなる定義(新規陽性者数累計の1週間差分比率)なので,しょぼい定義だとしても(だれでも簡単に公開データから求められるという長所もある)それ自身に責任はない。問題は,中野さんがその当時の複数のデータをみて,K値の収束パターンは簡単な共通の関数形に落とし込めるとしたところにある。ちょっと考えれば無理筋とわかるのに。

中野君が京大物理の同級生だったという野尻美保子さんもしきりに警告している。ふりむかない中野君に業を煮やした野尻さんは,対抗して f. o. 値(fatal outcome projection) という量を提案した。これは新規陽性者数の年代別分布に死亡率の重みをかけたものなので,K値よりも役に立ちそうである。なんといっても下手な予測をしないところがよい。予測があるとすれば,これを見た人が感じる変動の時間スケールについての直感によるものなので,害は少ない。

K値は,新規陽性者数累計が増加するにつれて感度が悪くなるので,あまり役にたたないように思われる。確かにそのとおりなのであるが,実際にはこの度の日本の第二波というのか第一波の第二幕というのか,これを検知することはできているので,あまり馬鹿にしなくてもいいのにかわいそうだなとは思う。中野説への反論は,実際のデータで単純に収束しない例をあげればいいだけかしら。

図 欧米のK値(4/1-7/23@2020)

最近のデータでは,アメリカ,メキシコ,ブラジルが K=0.1あたりのグループを形成し,ヨーロッパは0.05以下に概ね収束している(最近微増気味)。英国は途中でWHOへの報告データが変更されたので負の値をとっていることに注意する。


図 アジアのK値(4/1-7/23@2020)

香港,東京,日本のK値が この3週間,K=0.05あたりからはじまって,K=0.2をこえる勢いで増加中である。中野さんのいうK値の単調な減衰は感染初期のある時期に見られるだけだ。

追伸:宮沢孝幸がtwitterで大阪のK値の推移というグラフを公開している。6/28に0.9あたりでスタートしているのだけれど,累積値の初期値をどこに取ってリセットしているのだろう。その前後の類似グラフをみると6/24ということなのか。よくわからないが非常に恣意的にみえる(カットオフ色々試したけど K=0.6 前後が3週間ほど続いて今に至るという答えしか出ない・・・)。


2020年7月24日金曜日

赤摂也

高校の数学の時間に,理数科の担任の松川一雄先生が,赤摂也の名前を出したことがある。たぶん,我々の先輩で東大の数学にすすんだ凄い数学者なんだというニュアンスだったと思うが,いつものように記憶はあいまいである。大学に入り理工書の棚を定期的にチェックするようになると培風館の赤白の数学全書のシリーズ本のトップに赤摂也の「集合論入門」を見かけるようになり,その名前はしっかりと定着したのだがその集合論の本は買わなかった。

この度,整列集合の比較定理をなるべく簡単に説明している資料がないかとネット空間をさまよっていたら,赤摂也の名前が出てきた。培風館の「集合論入門」はたいへんよいとあったので,どうしようか。調べてみると,赤摂也先生は昨年の11月に93歳で亡くなられたようだ。金沢市出身なのでたぶん間違いないはずだけれど,金沢一中との関係にふれた記事はない。

なお,松川一雄先生,楠禎一郎先生,谷口澄雄先生が連続して(金沢泉丘高校の理数科の担任の順ではないか)石川県立金沢西高等学校の校長を務められている。一代とんでその次には地学の竹守熈先生も。



写真:赤摂也先生の肖像写真(筑摩書房「現代数学概論」から引用)

2020年7月23日木曜日

カリーニングラード

欧州のSpotify利用可能国をみていたら,ポーランドの北でバルト三国との間に小さな空白地帯があった。あれ?こんなとこに国があったっけと,調べてみたらロシアの飛び地のカリーニングラード州であった。その主要都市はカリーニングラードで,そもそもはドイツ騎士団がつくった東プロイセンの中心都市であるケーニヒスベルクだった。そこは,カント,オイラー,ヒルベルトの出身地であり,あの一筆書きで有名なケーニヒスベルクの橋はここにある。


図 ケーニヒスベルクの橋(Wikipediaより引用)