2020年6月9日火曜日

佐藤オオキ

佐藤オオキデザインオフィス nendo を主催する日本のデザイナー。このあたりでは,天理市駅前広場のコフフンを設計したことで知られている。

問題は,彼が最近デザインしたローソンの食品のパッケージデザインである。それなりにすっきりと統一されてはいるものの,文字の視認性や商品の判別性など,ユニバーサルデザインの観点から批判が相次いでいる。そのあおりを受けてコフフンで事故が多発していた件もちょっとだけ再燃していた。コフフンの一施設の斜面の勾配が急で小児が骨折して危なかったというもの。利用する際には見張りがつくような運用変更があったような気もしたが最近はどうなっているのだろうか。

図:コフフンのイメージ

[1]ローソンPB新パッケージの「わかりにくすぎる」という問題(Wezzy)

2020年6月8日月曜日

田植え

奈良県の農業研究開発センターの出している栽培技術マニュアルによれば,「ヒノヒカリ」と「キヌヒカリ」の田植えは6月9日となっている。朝の散歩で目にする数多の水田には水が張られ,日々田植えが進んでいる。


写真 朝の散歩から(2020.6.8撮影)

2020年6月7日日曜日

タクシー運転手

録画していた2017年公開の韓国映画「タクシー運転手」,最初の方ははほとんど見ていなかったが,光州の虐殺場面からカーチェイスの最後まで引きつけられた。1980年5月18日から27日に韓国全羅南道の光州市で起きた光州事件で,ドイツ人ジャーナリストが事件を報道するに至った実話に基づいている。主演がソン・ガンホだったのでやっぱりおもしろい。

アメリカ合衆国のミネソタ州ミネアポリスでの警察官による黒人(ジョージ・フロイド)殺害事件はついに警察機構の解体再建という話にまで達している。日本では対岸の火事のようなネトウヨの論調もあるが,沖縄や東京でほとんど同レベルの差別が繰り広げられている。そう,香港や天安門もしかり,権力はどこでも人間の憎悪を使って機械的に発動する。日本のマスコミはほとんどとりあげないし,警察や出入国在留管理庁(入国管理センター)はびくともしないのだろう。

2020年6月6日土曜日

4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム

4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウムは,昨日で10回目を迎えた。尾崎君の出演回から,ながら視聴を続けてきた。喜連川先生のやさしいコメントを愉しみにしているが,吉本興業を引っ張り出したのはちょっと微妙だ。大阪における維新と吉本の複合体の悪辣ぶりに辟易しているからである。

昨日のシンポジウム,ハーバード大学医学部教授 の波多伸彦先生の「遠隔授業におけるアクティブラーニング応用事例」は,アメリカの大学の教育事情がわかってよかった。1つのコースは週3時間の授業と9時間の自習からなり,1人の学生は週4コマとるので,50時間ほどの時間を学習に費やすことになる。日本の大学受験生並の勉強時間でありこれがずっと続くということだ。日本の大学教育の密度は理系の専門教育に至るまではその数分の1程度かもしれない。だって週に16コマくらい履修しないといけないので。

さて,もうひとつ引っかかったのが国立政策研究所の白水始(しらうずはじめ)さんの話。聞いているうちにちょっと気持ちが悪くなってきて途中で離脱した。白水さんは,東大法学部から名大文学部心理に移って認知科学を専攻している。博士課程は三宅なほみさんがいた中京大学で修めているようだ。あのあたりのスクールにはちょっと近づきたくない。

彼のトークのタイトルが「ウィズコロナ時代の対話型オンライン授業と授業研究に向けて」ということで,最初からつまずいた。小池百合子的キャッチフレーズへの拒絶反応である。「教育改革の近道は新学習指導要領の実現」から話を始めるのは,まあ国研なので当然なのかもしれない。1. 一人ひとりの子どもの学ぶプロセス を保証しようとするから。2.教員が学びのデザイナー&アナリス トになることを目指すから。などとほとんど無批判にこれらの前提を置くことに,最近はどうしても違和感を感じてしまう自分なのであった。

次に出てくるのが,「教育に「データ」を=「データ」の必要性・有効性 “Data-fueled Education”」なので,そりゃベネッセが幅をきかせるはずである。こうして御用学者の群れが,マジックワードを並べつつ独占企業体によるデータの囲い込みを誘導していくのであった。

さらにひどいのが,21世紀に求められる知性。1.多様な考え・意見を「集めて編集できる」知性 ,2.答えを「作り出す」知性,とくるのである。どおりで,子どもニュース崩れの池上彰やキュレーター気取りの佐々木俊尚がもてはやされるわけだ。自分自身も散々使ってきて,また振り回されてきたマジックワード,「共有」や「交流(コミュニケーション)」が,情緒的なエーテルに充ち満ちた日本の教育空間にもたらしているものを改めて分析し直す必要があるのだろう。

2020年6月5日金曜日

特集|迷走する教育(7)

15.三浦綾希子(教育社会学)
   高等教育で学ぶ移民第二世代の若者たち
   
日本は移民国家であるという認識が必要である。というのが最初の結論であり以下の議論の前提となっている。在留外国人の過半数が「就労制限がなく定住可能性の高い在留資格を持っている」からだ。とすれば,外国人児童生徒の問題は,移民第二世代の教育としてより堅固な制度的裏付けを必要とすることになる。

大阪教育大学でも数年前の教養学科から教育協働学科への改組の過程で,学長の強い意思によってかなり大量の留学生の受け入れを前提とした制度設計が行われた。その現状がどうなっているのか把握していない。ただ,グローバル化とダイバーシティが教員養成理念の柱の一つとなるのであれば,移民第二世代にフォーカスを当てて彼らの高等教育機会の確保とキャリア形成を前提とした教育組織や教育システムについて検討する余地があったと,いまさらながら考える。留学生らとの重層的な交流に加え,彼らの正当なエスニシティ獲得の活動が,学校教員養成課程の学生たちとも相互作用することで,多様性を獲得した学生群の輩出に繋げるという「新しいマーケット」を見通す構想があってもよかった。

16.知念渉(教育社会学)
   〈ヤンチャな子ら〉の「男らしさ」を捉えるために

これはもう一つよくわからなかった。というのか,男性性研究にあまり興味が引かれないのだった。

2020年6月4日木曜日

特集|迷走する教育(6)

13.岡崎勝(小学校非常勤講師/学校ブック『お・は』編集人)
   先生,学校はどこへ行くんでしょうか?
   スティーブン・キングに聞いて下さい!

岡崎さんは,1952年名古屋市生まれ。愛知教育大学保健体育科卒業。小学校の体育の先生だった。小学校教員では一番政治力の大きいのが体育の教員というのが相場で,そういえば,大阪教育大学の体育の先生方にもしっかりした見識を持つ方が多かった。体育やスポーツ専攻の学生さんたちは雑でやんちゃな印象のほうが強かったけどね。それはそうとして,一番印象的だったのは,今どきの保護者や子どもと学校教員の摩擦の実態だった。労働時間問題以前の大きな障壁だった。最後の「しかし,意外とITは空虚なポルターガイストなのかもしれない」という文がスティーブン・キングにもつながっていたのか(未読だ)。著者はもちろん,GIGAスクール構想に否定的であり,教育改革の名のもとに進行している学校からの収奪,すなわち,マジックワードに飾られた職業訓練的労働者・消費者養成現場としての学校・IT消費市場の現場としての学校に違和感を抱いている。

14.内田良(教育社会学)
   新型コロナウイルス感染症のリスク

内田さんは,福井出身で学部は名大の経済なのか。ふーん。で,愛知教育大学を経て,名大の教育発達学研究科。新型コロナウイルス感染症の拡大防止をうたった3月のはじめからの全国一斉休校の要請の話だけれど,感染症についての専門知でつっかかってしまって,話が深まらないうちに終了してしまった。組み体操の時の切れ味はなかった。

2020年6月3日水曜日

特集|迷走する教育(5)

給特法から問う

10.高橋哲(教育法学)
   改正給特法総論
   
11.藤川伸治(NPO法人「教育改革2020 共育の杜」理事長)
   給特法改正は長時間労働解消につながるのか

12.赤田圭亮(元中学校教員)
   教員の「労働」は本当に「特殊」なのか?

わかったこと:
○1948年ごろ,学校の教職員の給与については,測定不能性のため一律48時間労働として一般の公務員より10%の上積みがされていた
○労働基準法において1年単位変形労働時間制は,厚生労働省令で定めるとされていたところを,給特法改正案では文部科学省令の管轄にすりかえられた。
○長時間労働解消が今回の議論の出発点であったものが,まったくその解消に寄与しない方法に帰結してしまった。
○田中角栄が教員給与の改善を図るのに尽力したという説は半分は正しいにせよ,文教族の様々な思惑の元での動きと教職員組合の動向の関係の下に行われている。
○全日教連は右翼でその半分が栃木県に集結している。

[1]公立の義務教育諸学校等の教職員の給与等に関する特別措置法(1971)
[2]学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法(1972)
[3]公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン(2019)
[4]「人材確保法」の成立過程 −政治主導による専門職化の視点から−(丸山和昭)
[5]教員給与は適切に運用されているのか(上林陽治)
[6]学校における働き方改革について(文部科学省)
[7]学校教員の働き方を考える教育学者の会
[8]日本教職員組合(1947:23.6万人)・全日本教職員組合(1991:7.1万人)・全日本教職員連盟(1984:1.9万人)

2020年6月2日火曜日

女帝 小池百合子(1)

久しぶりに近鉄百貨店八木店の6Fにあるジュンク堂書店にいった。ここは品揃えも配列もいまいちだけれど,奈良県で近くの書店といえばこのあたりしかないという残念なことになっている。で,「女帝 小池百合子」があったので,手にとってカイロ大学のあたりだけさらっと読んでみた。著者は石井妙子であり,なぜか1冊も読んだことがないにもかかわらず,「おそめ−伝説の銀座マダムの数奇にして華麗な半生」の書評と評判だけで自分が信頼をおいているノンフィクション作家だ。

ほんの一部の断片からも,小池百合子を特徴づけるキーワードが「嘘」であることが明確に伝わってきた。そして,これは今の日本の政治の中枢を特徴づけるキーワードでもあった。安倍晋三チームの「嘘」は,憲法解釈をねじ曲げ,法律を無視し,公文書を改ざんし,統計を捏造し,電通やマスコミを使った情報戦に長け,ネットを通じた攻撃の手をやめることがない。そう,大阪維新のキーワードも「嘘」なのであった。橋下−松井−吉村がこの間進めてきた政策の根幹には「嘘」がある。

「嘘」がまかりとおっているのは,半分は我々自身が望んだからなのだと思う。1990年代以降の大災害の連続と政権のかじ取りの失敗による日本(大阪)の凋落や,中国・韓国の成長を見たくなかった我々の心性がその「嘘」を容認して育て上げてついにここまで至ってしまったのだ。コロナ禍はその嘘を暴く効果を持っていると同時に,さらにその「嘘」の毒を拡散する働きをするのかもしれない。

[1]1155夜「おそめ」石井妙子 (松岡正剛)
[2]女帝 小池百合子」“学歴詐称疑惑”を斬る! 郷原信郎の「日本の権力を斬る!(2020.6.2)
[3]東大教授と語る【小池知事のカイロ大学首席卒業】問題について(2020.6.4)
[4]地上波が一切無視する本『女帝小池百合子』の作者が語る衝撃の事実(2020.6.5)
[5]「学歴詐称疑惑」再燃の小池百合子…その「虚飾の物語」を検証する(近藤大介・石井妙子,2020.6.5)

2020年6月1日月曜日

紀州加太

新型コロナウイルス感染症の拡大がなければ,いまごろは友人達との例年の家族旅行で和歌山県の休暇村紀州加太でのんびりしているはずだった。残念ながら今年は無理でした。

日本の緊急事態宣言が終わって,6月からは学校なども徐々に再開されている。しかし,問題が解決しているわけではないので,一進一退が続く。一方,世界の感染の中心は南半球に移ったのかもしれない。ロシアやインドでの増加も目を離せないが,ブラジル・ペルー・チリ・メキシコと中南米での感染者の急増が顕著になってきた。

政権支持率は下がったとはいうものの,まだまだ一定の数を維持するとともに,吉村人気から日本維新の会の政党支持率が上昇して自由民主党の減少分を補填している。官邸=経済産業省の暗躍により,アベノマスク(まだ到着していません)だけでなく,持続化給付金事業をダミーの一般社団法人サービスデザイン推進協議会が受注した後に,事業の再委託を受けた広告大手の電通がさらに人材派遣のパソナやIT業のトランスコスモスに業務を外注していたという二重三重の税金の中抜きがあらゆる場面で進行中。

決定プロセスの不透明なブルーインパルスは,自衛隊中央病院の美しいカメラアングルの報道では,都立駒込病院の玄関から病院名を含めた上空写真とのモンタージュによって,NHKの印象操作映像が作られていた。教科情報のメディアリテラシーなんてものはくその役にも立たない。学ぶべきは,自然科学であり社会科学であり歴史と人文学である。

アメリカでは黒人反差別暴動とトランプによるSNS抑圧,日本のTwitter Japanでは大量のリベラル派ブロックが進行している今日この頃。


2020年5月31日日曜日

特集|迷走する教育(4)

8.吉田弘幸(予備校教師)
  共通テストは如何に在るべきか
吉田さんは数年前の阪大や京大の物理の入試問題ミスの件で積極的に発言した人である。ここでは,大学入学共通テストの試行調査について分析から説き起こしている。設問の前置きや場面設定にページ数がさかれ,数学や理科の内容自身が薄くなっているということだ。あらためて,問題をみたがそれなりによくできているように思った。これまでの入試センター試験は,定型的な基本問題であり,無味乾燥に感じていたので,これはこれでありうるような気はする。国語や数学における記述式問題の導入が不必要,不可能であるという部分は完全に同意である。

9.大澤裕一(予備校教師/数学)
  高校数学カリキュラムの過去・現在・未来
大澤さんは数学の入試問題それ自身ではなく,数学のカリキュラム(学習指導要領)の問題点を指摘している。問題だらけだった。10年の周期で無理に変えようとして,専門家の意見ではなく外野の意見を重視することで,より望ましくない道が選択されるという不合理な結果が続いている。ベクトルしかり,行列と一次変換しかりである。統計の重要さはわからなくはないが,これはむしろ応用数学として教科「情報」に組込んだほうがよいのではないか。なお,箱ヒゲ図・四分位偏差(なんのことかわかっていない)不要論には全く同意である。

2020年5月30日土曜日

特集|迷走する教育(3)

6.羽藤由美(応用言語学)
  英語入試改革の挫折から迷走を抜け出す道を探る
羽藤(はとう)先生は,2021年度入試における英語民間試験の導入阻止のために最も力を注いだ方々の1人である。おかげで当面はなんとか凌げたが,旗振り役の下村博文やスポークスマンの鈴木寛の息の根は止まっていないので,今後の展開は予断を許さない。「英語の四技能」というマジックワードと大学入試で高校教育を変えるという短絡の二重の誤謬をベースに利権誘導を図ってきたチームのよりどころとなるCFER基準持ち込みの欺瞞性が明らかにされる。そして,本当の「対案」がインプットの確保にあることがはっきりと示されている。十分な経験を踏まえた信頼できる専門家の知が生かされない日本の政策決定についての最後の結論が光る。「失敗しているのは英語学習者や英語教師ではなく,粗悪な英語教育政策しか繰り出すことのできない政府・文科省である。入試改革より,教育政策の決定プロセスの見直しと空回りする一連の改革の中核をになってきた研究者・教育者の刷新の方が喫緊の課題である」

7.阿部公彦(英米文学/評論)
  「すばらしい英語学習」の落とし穴
まずはじめに,公共性の高い入試を民間業者に丸投げするという仕組みが諸悪の根源であることがはっきりと示されている。また,「四技能主義」の虚妄がていねいに解き明かされる。これに対抗するものが,英語の運動感覚であるというところは,そうだとしてもどうやってそれを実現させていくのかという戦略を詳しく聞きたかった。

2020年5月29日金曜日

特集|迷走する教育(2)

4.木村小夜(日本近現代文学)
  「読む」力と「国語」入試の明日
木村さんの主張はYouTubeにある「参議院 2019年11月19日 文教科学委員会木村小夜(参考人 福井県立大学学術教養センター教授)」という7分あまりの動画をみるのがよい。国語の記述式入試問題の欠陥を明解に指摘していて切れ味が良い。また,彼女が高大接続という言葉で思い出した高校時代のエピソードがよかった。「あなた達が学校で習う日本語の文法は橋本文法というものを元にしているが,実は文法はそれだけではなく,色々な理論がある」と断ってから古典の最初の授業が始まったという一節である。自分は国語は苦手だったしましてや文法は現代文も古典もからっきしダメだったので,そんな話は聞いたことがなかった。現代日本語文法では,山田文法,松下文法,橋本文法,時枝文法の四大文法が重要な位置を占めるとある。そんなことになっていたのか。

5.五味渕典嗣(近現代日本語文学/文化研究)
  文学の貧困
あらめて「文学」とは何か,論理国語と文学国語の分裂を招いた思い込みはなんだったのか(新井紀子が一役買っているのだ)を考えたくなる。高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説では,例によって科目の目標を「知識及び技能」「思考力,判断力, 表現力等」「学びに向かう力,人間性等」の三つの柱で整理した,とある。人間性なのか・・・orz。高等学校の国語は必履修科目の「現代の国語(41)」+「言語文化(35)」に加えて,選択科目の「論理国語(35)」+「文学国語(31)」+「国語表現(37)」+「古典探究(28)」からなる(カッコ内は解説における記載ページ数)。その文学国語は,「主として「思考力,判断力,表現力等」の感性・情緒の側面の力を育成する科目として,深く共感 したり豊かに想像したりして,書いたり読んだりする資質・能力の育成を重視している」ということで,文学=感性と情緒というレッテルが貼られていたのだった。



2020年5月28日木曜日

特集|迷走する教育(1)

現代思想の2020年4月号vol.48-4の特集が「迷走する教育−大学入学共通テスト・新学習指導要領・変形労働時間制」だった。これは読んでおきたいと思い,2月号の量子コンピュータに続いて早速アマゾンで注文したが積ん読状態になっていた。16本の記事が207ページに渡っている。平均13ページ弱。

以下簡単に感想を述べる。

1.大内裕和(教育社会学)・紅野謙介(日本近現代文学)
  逃走の教育から闘争の教育へ 
紅野(こうの)さんは麻布で中高の教員を勤めていた経験を持ち現在は日大文理学部の教授である。そこで国語教育と関連した話になるのだが,これがむしろ本件の本質をついているように思った。「言葉」の問題なのだ。「資質」「生きる力」「ゆとり」「主体性」「内容学」。これらの気味悪い言葉に違和感と異論を唱えられるのも最初の内だけで,あっという間にそれらに搦め捕られてしまい,議論はそのマジックワードを前提として進めざるを得なくなる。ニュートンの運動方程式が成立しない非慣性系のわけのわからない慣性力の支配のもとに屈服させられてしまった自分がそこにあった。

2.荒井克弘(高等教育論)
  大学入学共通テストの現在
「高大接続」というマジックワードを考えるときに,日本の中等教育及び高等教育のシステムを他国のそれとていねいに比較して議論する必要性を感じた。例の下村・稲田一派が巻き返しを図っている9月入学にしてもそうだ。どこがグローバルスタンダードなのか。それもこれもジャーナリズムの検証機能の劣化がなせる技。

3.南風原朝和(心理統計学/テスト理論)
  大学入試改革を「私的に」振り返る
ここで我々がひっかけられたマジックワードが「一点刻みの知識・技能偏重」だ。テスト理論の専門家の立場からこれにたいする明確で分かりやすい反論を加えているところが一番印象的であった(下図参照)。


図 なぜ5段階評価がまずいのか(上記3より引用)

2020年5月27日水曜日

ほとんど正三角形

Twitterでほとんど正三角形にみえる二等辺三角形が話題になっていた。数学パズル作家のポテト一郎さんが,簡単で精度の高いものを考案したのでそれをtikzで描いてみた。話題の発端となったその1は各辺が,$\sqrt{64},\sqrt{65},\sqrt{65}$である。その2が新しく考案されたもので,各辺が$\sqrt{241}/2,\sqrt{241}/2,\sqrt{242}/2$である。

図1 ほとんど正三角形その1

図2 ほとんど正三角形その2


2020年5月26日火曜日

緊急事態宣言解除(3)

緊急事態宣言解除(2)からの続き

昨日,残っていた北海道,東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県の緊急事態宣言が解除された。記念に東京都のモデル計算を行ってみた。なんだかグダグダな対応のうちに,よく理由はわからないが,欧米とは異なり,他の東アジアやオセアニア地域なみの水準で第1波はおよそ終息したように思われる。

モデル計算で使用したパラメタは,$\alpha_1=5/0.8,\ \alpha_2=5/0.2,\ \beta=0.505,\ \gamma_1=15/0.94,\ \gamma_2=15/0.06,\ \lambda=35,\ \tau=14,\ \nu=0.1$である。時刻の基準は,新規感染数累計と東京の人口比が10ppmになる時点の3月23日としており,日本の場合とちがって,新規感染数の初期値は正しい値となっている。


図1 東京の新規感染数累計(u6),死亡数累計(u4),回復数累計(u5)

図2 モデル計算に用いた東京(オレンジ)と日本(水色)の実効再生産数

NHKなどで毎日報道されているデータを東京の人口で割って1万人あたりの数に換算したものが上記グラフのサークルであり,下記の値を用いた。なお日時の原点は3/22としている(無駄に有効数字が多くて気持ち悪いのだが面倒なのでそのままにした結果)。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
xt=[0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,
14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,
28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,
42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,
56,57,58,59,60,61,62]
yt=[0.1100,0.1221,0.1514,0.1850,0.2136,0.2571,0.3057,
0.3164,0.3721,0.4193,0.4886,0.5521,0.6364,0.7386,
0.7964,0.8529,0.9557,1.0850,1.2179,1.3586,1.4771,
1.5414,1.6564,1.7471,1.8536,1.9957,2.1250,2.2014,
2.2743,2.3621,2.4564,2.5521,2.6664,2.7400,2.7914,
2.8193,2.8993,2.9329,2.9657,3.0836,3.1979,3.2629,
3.3250,3.3657,3.3914,3.4079,3.4357,3.4614,3.4771,
3.5421,3.5621,3.5693,3.5907,3.5971,3.6071,3.6107,
3.6179,3.6214,3.6250,3.6664,3.6686,3.6700,3.6800]
zt=[0.286,0.357,0.357,0.357,0.357,0.357,0.357,
0.857,0.857,0.857,1.000,1.357,1.643,2.143,
2.214,2.500,2.571,2.857,2.857,3.000,3.000,
3.357,3.786,4.000,4.500,4.857,5.071,5.500,
5.786,5.786,6.214,6.643,7.143,7.143,7.571,
7.714,8.357,8.571,9.000,10.071,10.357,10.714,
10.714,11.071,11.429,12.214,12.857,12.857,13.500,
14.000,14.500,15.143,15.643,16.429,16.929,17.214,
17.429,17.643,18.286,18.786,18.786,18.786,18.800]/100
plot(xt,yt,st=:scatter,label="Confirmed-tokyo")
plot!(xt,zt,st=:scatter,label="Deaths-tokyo")
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


2020年5月25日月曜日

中ツ道

買物の帰り,旧24号線を南に下る途中で道がやや右に曲がるところの細い道を直進するとどんどん細い道に迷い込んでいった。google map 上では県道の51号線となっていて,それなりに太い線が引かれていた。残念ながらいつものようにグーグルマップの地図はあてにならず,現実の道路は隘路なのであった。途中に橘街道という看板があったので,これが中ツ道なのかと思った。朝の散歩の北東の転換点にあるセブンイレブン喜殿町店の前の道につながっており,そのまま南下すると前栽幼稚園から前栽駅に到達する道路だった。

2020年5月24日日曜日

LaTeX.css

LaTeX.cssというのは,MathJaxみたいなものかと思っていたが,よく考えるとそんなわけはないのであって,LaTeXの出力風のデザインをするスタイルシートなのであった。

図 LaTeX.cssによるスタイルの例

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
<meta charset="UTF-8">
<link rel="stylesheet" href="https://latex.now.sh/style.css" />
<script id="MathJax-script" async src="https://cdn.jsdelivr.net/npm/mathjax@3/es5/tex-mml-chtml.js"></script>
</head>
<body>
<header>
<h1>LaTeX.css</h1>
<p class="author">コシギリ クニオ <br> 2020年 5月 25日</p>
</header>

<div class="abstract">
<h5>概要</h5>
<p>そうなんです。これは,mathjax の類縁ではありませんでした。</p>
</div>

<nav role="navigation" class="toc">
<h3>目次</h3>
<ol>
  <li><a href="#getting-started">はじめに</a> </li>
  <li><a href="#conclusions">おしまい</a>
</ol>
</nav>

<main>
  <article>
    <h3 id="getting-started">はじめに</h2>

<br/>

<div>
$$(x+y)^{n}=\sum_{k=0}^{n}\left(\begin{array}{l}n \\ k\end{array}\right) x^{n-k}
y^{k}=\sum_{k=0}^{n}\left(\begin{array}{l}n \\ k\end{array}\right) x^{k} y^{n-k}$$
</div>
  </article>
</main>

</body>
</html>

2020年5月23日土曜日

日和聡子

パンク侍がきっかけで町田康の最近の著作を調べていたらおすすめの5冊というYouTube動画が見つかったので何か面白いのあるかなと思ったら(注:平野啓一郎は自作の宣伝ばかりしていたぞ・・・どうなのか)日和聡子の「御命授天纏佐左目谷行(ごめいさずかりてんてんささめがやつゆき)」を紹介していて思わずピンと来て引き込まれたので調べてみると島根県出身の1974年生まれの詩人・小説家だったがこれは読んでみたいなあ。

追伸:町田康はえらく痩せてしまったようだった,病気だったのかもしれないが,数年前の動画も同じようなものだったのでどうなのだろうか。死ぬまでにギケイキなんとかしてね。

2020年5月22日金曜日

パンデミック侍

町田康の「パンク侍,斬られて候」の映画をテレビで見た。原作はとてもおもしろかったのだが,ストーリーはほぼ忘却の彼方にあった。まあ,「宿屋めぐり」や「告白」など他の物語と混線しているものもあるからか。映画のほうは,原作に忠実にパンクになっている部分と,制御がきななくでグダグダになっている部分が混在していた。ストーリはほぼ再現していたのでまあまあかしら。

物語に登場する「腹ふり党」が猖獗をきわめるというのは,まさにパンデミックにつながるのだった。次は「ギケイキ 千年の流転」を読まなくては。えっ,全四巻・・・

P. S. 本棚を確認すると,河出文庫の「ギケイキ 千年の流転」があった。なんということだ。読んだことすら忘れているのだろうか・・・最近こういうのが多くて・・・



2020年5月21日木曜日

緊急事態宣言解除(2)

東京高等検察庁の黒川弘務検事長が軽い訓告(懲戒処分ではない)を受けつつ辞表を提出した日,大阪府・兵庫県・京都府の緊急事態宣言が解除された(北海道・東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県は未解除)。

無理無理日本のデータにあわせた単純なモデル計算を実行してみると次のようになった。全回復数累計(無症状感染からの回復を含む)は1万人当り6人強にしかならず,例の0.6%とはどうしても1桁違うのであった。なお,使用したパラメタは,$\alpha_1=5/0.8,\ \alpha_2=5/0.2,\ \beta=0.67,\ \gamma_1=15/0.94,\ \gamma_2=15/0.06,\ \lambda=63,\ \tau=14,\ \nu=0.001$である。$\nu$は想定値の0.01より1桁小さく取ってはじめてこの程度の一致をみているので,真の感染数や死亡数は現在報告された値より10倍程度までの範囲で変化することがありうるかもしれない。そのときには,0.6%が再現できるのことになるのだが・・・


図1 日本の新規感染数累計(u6)と死亡数累計(u4)

図2 日本の総回復数累計(u5)

図3 このモデルパラメタでの有効再生産数($R_{\rm eff} = \beta(t) \alpha$)

このモデルの$\beta(t)$では,4月中旬に有効再生産数 $R_{\rm eff}$ が1を切るようなパラメタを選択したことになっている。なお,報告時点ベースの観測値を再現するようにモデルパラメタを設定しているので,実際には4月の初旬ということになるだろう。

WHOに報告されているデータを日本の人口で割って,1万人あたりの数に換算したものが上記グラフのサークルであり,下記の値を用いている。なお日時の原点は3/1としている。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 
#japan-data(start=3/1)
xj=[0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,
14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,
28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,
42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,
56,57,58,59,60,61,62]
yj=[0.0190,0.0202,0.0213,0.0225,0.0252,0.0277,0.0324,
0.0361,0.0387,0.0408,0.0451,0.0492,0.0536,0.0568,
0.0619,0.0646,0.0658,0.0658,0.0693,0.0754,0.0790,
0.0830,0.0864,0.0895,0.0947,0.103,0.110,0.119,
0.134,0.148,0.155,0.173,0.189,0.208,0.232,
0.260,0.290,0.310,0.338,0.378,0.424,0.477,
0.536,0.576,0.607,0.643,0.681,0.728,0.777,
0.822,0.853,0.882,0.912,0.946,0.983,1.018,
1.046,1.062,1.078,1.099,1.118,1.133,1.154]
zj=[0.040,0.048,0.048,0.048,0.048,0.048,0.048,
0.048,0.056,0.071,0.095,0.119,0.151,0.167,
0.175,0.190,0.222,0.222,0.230,0.262,0.278,
0.286,0.325,0.333,0.341,0.357,0.365,0.389,
0.413,0.429,0.444,0.452,0.452,0.516,0.548,
0.556,0.579,0.635,0.643,0.675,0.698,0.746,
0.778,0.810,0.865,0.944,1.079,1.175,1.222,
1.278,1.357,1.476,2.198,2.278,2.516,2.651,
2.762,2.786,2.984,3.087,3.294,3.429,3.603]/100
plot(xj,yj,st=:scatter,label="Confirmed-japan")
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