2023年7月11日火曜日

Threads(2)

Threads(1)からの続き

7月6日から始まったThreadsの登録数が5日で1億件を越えた。ChatGPTより速いスピードだった。Twitter,Mastodon,Bluesky,Threadsと巡回するのが面倒になってきた。そこで,自分が使ったことのある主なSNSについてまとめみる。

Facebook(2004.2-):憶えていないけれどいつから使い始めたのだろうか。ここに登場するのは知り合いばかり。あと,若干の有名人をフォローしているのでその情報は貴重だ。萩原雅之,橋本大也,増井俊之,岡口基一,神田敏晶,千坂恭二などなど。高齢化が進んでいて,若者は参加していない。友達の数は395人。

Mixi(2004.2-):これもいつから使い始めたのだろうか。誰かのページを見ると足跡が残るのだった。一次かなり盛り上がっていたが,アカウントは削除してしまった。

Twitter(2006.3-):2008年8月11日にiPhoneを買って8月18日にまちがえて,TwitterクライアントのNatsuLionをインストールして以来だ。Twilogに利用記録がある。最近のタイムラインアルゴリズムはグダグダ担っていたが,イーロンマスクに買収されて以後,さらにもろもろ全部おかしくなってしまった。それでも多くの人が残っているのでやめられない。フォロー中915人,フォロワー 953人,投稿数9758件。

Instagram(2010.10-):登録したのはiPhoneのアイコンが古いバージョンのときからなのだが,実際に写真をあげるようになったのは最近のことである。キラキラ投稿が多い中,地味に散歩写真をあげている。フォロー中331人,フォロワー288人,投稿数695件。

Mastodon(2016.3-):2017年4月の最初のブームで複数のMastodonインスタンスに登録した。そのうち自分のアカウントが残っているのが,日本のメジャーインスタンスであるmstdn.jpと数式を投稿できるmathtod.onlineの2つだけだ。サーバーが分散しているので,一番期待できるはずなのだけれど・・・。フォロー中285人,フォロワー319人。

Bluesky(2023.1-):結城浩さんから招待コードをもらうことができて,2023年5月中旬から使い始めた。参加者総数が少ないので,なかなか必要な情報が得られない。タイムラインはOKかと思われる。フォロー中86人,フォロワー32人,投稿数6件。

Threads(2023.7-):このムーブメントに乗り遅れないようにと予約したものの,ぼやぼやしていたら100万人番目は越えてしまっていた。まあ1億から見れば,1%の程度の位置にはあるのだけれど。タイムラインアルゴリズムがいまいちなのと,真面目な話をしにくい雰囲気が煽られている。フォロー中336人,フォロワー102人,投稿数11件。


2023年7月10日月曜日

エアレボルーション

最近お薦めに上がってきたエアレボルーションは,島田雅彦(1961-)と白井聡(1977-)とジョー横溝(1968-)が毎週ゲストを招いて対談するチャンネルだ。

長い対談が月額770円で週3回配信されるが,そのうち前半の40分から120分ほど無料で公開されている。外山恒一,鈴木涼美,柄谷行人,鈴木エイト他,多彩なゲストが続いている。無料分だけを見ているが,1月に配信されていた金平茂紀(1953-)の回がおもしろかった。

金平さんは昨年秋まで報道特集のキャスターをしていて,ときどきみていたが,ソ連崩壊の1991-1994までJNNのモスクワ支局長として派遣されていた。島田雅彦は東京外国語大学のロシア語科出身で,白井聡は研究テーマがレーニン主義,社会思想,政治学だ。このベストメンバーがウクライナ=ロシア戦争について語っていた。

金平さんはこの正月に1週間ほどモスクワに観光客として旧知の人を訪ねており,現在のモスクワの様子を伝えていた。我々が目にする耳にするのは,西側のフィルターを通過して,日本のマスコミによって増幅された大政翼賛会的な情報だけなので,新鮮なものがあった。

ロシアは見かけ上ほとんど疲弊しておらず,このままだとウクライナ戦争がベトナム戦争化しそうだとのことだ。アメリカがクラスター爆弾を提供するというのも日本のテレビではシラッと何も問題がないかのように伝えられている。

昨年2月に始まったウクライナ戦争と7月の安倍首相殺人事件を奇貨として,防衛費が倍増され南西諸島へのミサイル配備が進むということになってしまった。

2023年7月9日日曜日

警告メッセージ

7月7日七夕に遭遇した怖い話。

Blogspot(google)から警告がとどいた。最初は,投稿したページになにやら警告マークが出てきて何が何だかよくわからずに焦った。ログアウトして再アクセスしてみると,警告付ではあるもののワンクッションおけば一応は見える最低限のレベルものだった。

YouTube(これもgoogleだ)で収益化できなくなった哲学系ユーチューバ−じゅんちゃんが遭遇した理不尽な話などを散々聞いていたので,これはまずいことになったと思った。あらためて自分の記事を読み返してみて,話題のイーロンマスクとTwitterの話がまずかったのか,最後のBlueskyの招待枠の話がまずかったのか,表現に過激なところがあったのか,誰かに刺されたのか・・・わからない。気になるところをすべて無難なものに修正して再投稿したが,同じ警告がついてしまった。がーん。

少し頭を冷やしていると,googleアカウントにBlogspot運営側からメールが届いていたのに気がついた。引用すると次のようなものだった。
 ご存知のこととは存じますが、Blogger のコミュニティ ガイドライン では、Blogger で許可されるコンテンツと禁止されているコンテンツについて概説されています。Blogger では、お客様の「 Bluesky(2)」というタイトルの投稿について審査の必要があるとの報告を受けました。審査の結果、この投稿には慎重に扱うべきコンテンツが含まれていると判断し、投稿を閲覧しようとした読者に警告メッセージが表示されるようにいたしました (投稿の URL: 略)。読者がこの投稿とブログを閲覧するには、この警告を承諾する必要があります。

さらに,

お客様のブログ投稿に警告メッセージが表示されるようになった理由:この投稿のコンテンツが、アダルト コンテンツに関する Blogger のポリシーに違反していることが判明いたしました。

 えーっ,それはないわ。修正して再審査を申し込めということだけれど,どこがアダルトなのかさっぱりわからない。さらに熟考してみると,どうやら参考コードのなかの英文字列がやや微妙だったことに気付いた。これを直して再審査を申し込んだがなしのつぶてである。

しかたがないので,新しく微修正版(アルファベット3文字×2箇所修正)を投稿したところ無事にパスした。

教訓:言論や表現の自由は,その手段をAIでブラックボックス化されたビッグビジネスに握られている限り,常に風前のともしびであり,相当なコストを費やすことなしに説明責任など果たされることは期待できない。分散IDと分散SNSの普及が待たれる。

2023年7月8日土曜日

Threads(1)

Bluesky(2)からの続き

MetaがはじめたTwitterにかわるSNSがThreadsだ。7月6日8:00ごろから時間前倒しでリリースしたところ,2時間で200万人,4時間で500万人,7時間で1000万人,半日で3000万人,2日7000万人のユーザーを集めたらしい。

メタの旧社名はフェイスブックであり,マーク・ザッカ—バーグ(1984-)がメタバースに入れ込むまではSNSの会社だった。フェイスブック社は2012年に写真・動画共有SNSのインスタグラム社を買収した。インスタグラムは,2010年にAppStoreに登場し,2ヶ月で100万人,8ヶ月で500万人,約1年で1000万人のユーザを集めている。現在のアクティブユーザ数は10億人のオーダーだ(登録アカウントは20億)。インスタ映えは普通名詞になってしまった。

Threadsをはじめるには,インスタグラムのアカウントが必要である。巧妙な作戦だ。インスタグラマー10億人のうち1%が参加すれば,簡単に1000万人に達するわけだ。周到に準備されたためか,他のマイナーなSNSとは異なり,これだけ短時間に集中して負荷がかかるスタート時のアクセスを軽々とこなしているように見える。Blueskyはそれに対応できるだけのリソースを持たないので招待制で細々とやってきたわけだ。

ユーザインターフェイスや,機能についてはまだ揺らいでいて評価は定まっていないけれど,迷走状態のTwitterがさらに霞んでしまいそうな雰囲気だ。自分が使えるようになって最初のタイムラインには,瀬戸弘司やドリキンの顔とフォローもしていないスレッドが流れてきて訳が分からなかったが,どうやらフォロー数が少ない場合,アルゴリズムでお薦めをコントロールしているらしい。その他の特徴は以下の通り。

 ○投稿文字数は500字まで,写真10枚,動画は5分まで
 ○Web版はないが(アプリに誘導される),自分の投稿へのリンクは可能
 ○ハッシュタグや検索(ユーザアカウントを除く)は機能しない
 ○いいねの数はわかるが,リツイート=再投稿の数はわからない
 ○タイムラインの+マークからすぐにフォローできる
 ○引用とRT(再投稿)はあるが,DMはない
 ○アカウント削除には,インスタグラムのアカウントごと削除する必要
 ○社会派,物理屋などはまだあまり流れ着いていない

そんなわけで,7月6日はThread祭りの日だった。フォロー関係の構築で一日がつぶれる。



写真:Threadsの参加証@Instagram(2023.7.6)

[4]Threads国内フォロワー数(UserLocal)
[6]世界ソーシャルメディア統計 (Stat Counter)


2023年7月7日金曜日

Bluesky(2)

Bluesky(1)からの続き

いよいよTwitterがややこしくなってきた。7月1日,イーロン・マスク(1971-)はTwitterアカウントの種類に応じて一時的に閲覧回数の制限を設けた。認証済みアカウントは6000件(1万件),未認証アカウントで600件(1000件),作成されたばかりの未認証アカウントで300件(500件)というわけだ(括弧内は7月2日の泥縄的修正値)。制限の理由については,インターネット上のデータ収集や処理における不正な操作の急増に対応するためとしている。

実際には,TwitterがAPI課金を急騰させたことを原因とするウェブスクレーピングの増加だとか,サーバーを運用しているクラウドとの契約の関係だとか,Twitterコードのバグが自分自身に対するDOS攻撃をしたのが原因だとか,諸説がある。いずれにせよTwitterのコントロールがいよいよ効いていないことが明らかになった。

このため,再びTwitterから他のSNSへの流失が進んでいるらしい。その候補の一つはジャック・ドーシー(1976-)がはじめたBlueskyだけれど,招待制の登録者はまだ20万人だ(Twitterは4.5億人)。他に T2 とか MetaのThreads が話題になっている。どうなることか。現在のところ,Twitterに流れる情報の方がまだまだ有用度が高い。

そのBlueskyの歩き方というドキュメントがmd形式で流れていた。pdfに変換しようと考えた。たぶんpandocが使えるはずなのだが,調べてみると一手間必要だった。これをまとめると次のようになる。
$ brew install pandoc ✓
$ brew cask install mactex ✓
~/.zshrc に次の行を追加
export PATH=/usr/local/texlive/2019/bin/x86_64-darwin/:$PATH
$ source ~/.zshrc
$ pandoc bluesky.md -o bluesky.pdf --pdf-engine=xelatex -V documentclass=bxjsarticle -V classoption=pandoc
これをシェルスクリプトにすると
$ cat md2pdf.sh
#!/bin/zsh
# usage mdspdf.sh test
# input test.md output test.pdf
#
pandoc $1.md -o $1.pdf --pdf-engine=xelatex -V documentclass=bxjsarticle -V classoption=pandoc

これで無事にmdファイルをpdfファイルに変換できた。

P. S. Blueskyの招待コードが若干余っているので必要な方はメール,TwitterのDM,Facebook Messengerなどでご連絡ください。

2023年7月6日木曜日

大学教育とChatGPT(12)

大学教育とChatGPT(11)からの続き

ChatGPTにもそろそろみんな飽きてきたけれど,世間ではまだダラダラと続いている。GPT-4も最近はどうも調子がすぐれない。難しい問い対してブチ切れてしまう現象が頻発している。最新のデータにアクセスできるBing連携の部分も公開が停止されてしまった。かといって,Bard,Perplexity,Bingなどがイマイチである状況には変わりがない。

そうこうしているうちに,国産LLMのニュースがいろいろと入ってきた。しかしそれらは企業・行政向けや研究開発用の特殊なシステムを指向している。いずれもパラメタ数が数十B以下の小規模LLMなのだ。良質な日本語テキストをたっぷりと学習させた,自由に使える標準的な日本語LLMが現れてほしい。
6月28日
ChatGPT等の生成AIについて
常磐大学 学事センター長 河野敬一・学生支援センター長 菅田浩一郎

6月29日
佐賀大学における生成AI を始めとするデジタル技術の利活用に関する基本方針について
佐賀大学

6月29日
Chat GPT等の利用について
周南公立大学 副学長(教学担当) 渡部明

6月29日
学修における生成系AIの使用について
恵泉女学園大学

6月30日
生成AIの使用に関する注意喚起
奈良教育大学 副学長(教育担当) 越野和之

7月1日
金城大学生成AI(ChatGPT、Midjourney等)の活用に関する基本的な考え方
金城大学 学長 米島學

7月3日
生成系AIの利活用に係る注意喚起
筑波技術大学 情報処理通信センター

7月3日
生成AI活用に関するガイドライン(学生向け)(ver. 1.0)について
島根県立大学 学長 山下一也

7月3日
ChatGPTをはじめとする生成系AI利用についての本学の基本的な考え方
沖縄大学 学長 山代寛

7月3日
京都府立大学生成AI利用ガイドラインの策定
京都府立大学 AIデータサイエンス教育研究センター

7月4日
ChatGPT等の生成系AIの利用について
日本社会事業大学

7月4日
仁愛大学におけるChat GPT等生成系AIの活用に係る基本方針
仁愛大学 学長 田代俊孝

2023年7月5日水曜日

生成AI学校向けガイドライン

7月4日,文部科学省は,日本の初等中等教育の学校を管理している各都道府県・各指定都市教育委員会教育長や都道府県知事などに対して「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン」の 作成についてという通知を発出した。

マスコミのニュースを聞く限り,例によって,各大学のガイドラインのような生ぬるいものがでてきたのかと思っていた。ところが,現物は24ページ相当のプレゼン資料を含めて16ページという,かなり気合いが入ったものだった。

ところでその中身をみると,山越えの暗い見通しの悪い道を,車内からワァーワァーいわれて,アクセルとブレーキを踏みながらとばしているような微妙なことになっている。

ポイントは,(1) 利用規約を守れ(ChatGPTは13歳以上+18才までは保護者同意,Bingは未成年には保護者同意が必要,Bardは18歳以上),(2) パイロット的な取り組みを進めよ,(3) 一般の学校はおとなしくせよ,というものだった。AI以前の話なのだけれど「全ての学校で,情報の真偽を確かめること(いわゆるファクトチェック)の習慣付けも含め・・・」とか,そもそも大人ができていないのでは・・・。

一番言いたかったのではないかと思われる事項は,チェックリストの第8項目にあった。
 「読書感想文などを⻑期休業中の課題として課す場合には,AIによる生成物を自己の成果物と して応募・提出することは不適切又は不正な行為であること,自分のためにならないことなどを十分に指導しているか。保護者に対しても,生成AIの不適切な使用が行われないよう,周知・理 解を得ているか」

追伸:この通知を出したのは,初等中等教育局長の藤原章夫さんだ。平成24年(2012年),学長・事務局長らと文部科学省に行ったあと新橋あたりの居酒屋で一度会っている。そのときは,初中局の教職員課長だったのか。大阪教育大学は教職大学院の設置申請を計画中であり,新任の事務局長の若井祐次さんが大学振興課の方々と併せてセッティングした。長尾先生と栗林先生はそれについて若井さんを大層評価していた。藤原さんがかつてフランス大使館にいたころのことが話題になっていたが,ひたすらよろしくお願いします的なことで終始していた。

2023年7月4日火曜日

シンセティック・メディア(3)

シンセティック・メディア(2)からの続き

シンセティック・メディア=マルチモーダルなAI技術による仮想人格的インターフェースだとすると,その適用分野や帰結がどうなるのかが気になる。想定される分野を考えてみると,結局,新聞紙面のようなことになるような気がしてきた。

図:シンセティック・メディアの主な適用分野


個別に何が起こるか考えようと思ったが,そもそも生成系AIがどのように利用できるかというと,(1) 対話型モード,(2) 一括処理モード になる。昔の会話型TSS処理とバッチ処理の再来だ。シンセティック・メディアが有効なのは,前者の対話型モードの場合だろう。

対話型モードを使うときに,自分が,(1) 受信サイドなのか,(2) 発信サイドなのかで意味が異なってくる。とりあえず,利用のための必要条件やリソース等を度外視して考える。

(1) 受信サイドでは,自分の疑問に対して対話的に回答を得ること,対話型でコンテンツ・リソースを創作すること,共感を得るための対話相手としての時間を費やすこと,などがあげられる。本や論文の単なる要約だけならば,バッチで十分である。多くの場合,ある種の専門家としての仮想人格が必要になる。

 (2) 発信サイドでは,自分の分身を作成しておけば,時間と空間の制約を越えて,多数の人と対話しながらメッセージを伝えることができる。ただ,普通の人がSNSで発信するのはいいとして,視聴者がさらに対話的に深いコミュニケーションを取りたいとなるようなケースはそれほど多いのかという疑問は残る。

これらを別に視点から見ると,(1) 専門家としての仮想人格と,(2) 友人としての仮想人格の2種類のニーズが発生するということなのかもしれない。専門家というのは,必ずしも学術分野における研究者やいわゆる専門職だけを指すのではなく,生活や趣味,普通の職業や地域社会などでの現実世界の細部に関する現実の経験を持っているかどうかが鍵になる。

また,上記の仮想人格のそれぞれに対して,(1) 非実在人物に対応,(2) 歴史上の実在人物に対応,(3) 現存の実在人物に対応,の場合が考えられる。仮想人格も著作物になるのだろうか。面倒な話ではある。

さらに人間=現実人格(P)と仮想人格(V)とのコミュニケーションの時空形態からすれば,現在のインターネット・コミュニケーションと同様に考えられる。時間的には,(1) 同時交流(チャットやライブ)と,(2) 遅延交流 (メールやブログ)が,空間的には,(1) 一対一交流(P−V)と (2) 集団交流(P^m ×V^n ) が考えられる。ここで,仮想人格は複数人存在できるということに注意が必要だ。

そうなると最重要問題は,PとVが区別できるかということに帰着するのかもしれない。まさに フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」に登場するフォークト=カンプフ感情移入度検査法 が必要な時代になってしまった。

2023年7月3日月曜日

満月

満月が出てるよというので,ベランダに出て見ると南東の低い空につぶれた楕円形に光る月が出ていた。満月じゃないのではと,iPhoneの六曜で月齢を確認してみると満月でした。

先日の人間ドックでは眼鏡をかけて右眼が0.4,左眼が0.9だった。そんなわけで,裸眼では無限遠方の光点はたいてい歪んでぼやけて見える。早速眼鏡をかけて月の形を確認してみると確かに満月だ。

ところで,なぜこんな低い空にかかっているのかと思ったけれど,良く考えれば,昨日が夏至からおよそ10日後の半夏生。春分や秋分における月の南中高度は90度−緯度である。これに地球の公転面に対する自転軸の傾き23.4度をプラスマイナスしてあげれば,冬至や夏至の南中高度がわかる。

探してみると奈良県の各市町村の緯度経度の値が見つかった。天理市は,東経135.8度,北緯34.7度になるので,夏至における月の南中高度は 90-34.7-23.4=31.9度となる。それは低いわけだ。これが冬至になれば,90-34.7+23.4=78.7度となる。こんなにも違うのか。梅雨時に満月を見ることはあまりなかったので,ちょっとビックリ。

天理市の経度緯度は,市役所の位置だけでなく,東西南北端の値も出ている。このうち西端がいつもの散歩コース上にあり,ファミリー公園のちょっと東側の田んぼの中だ。



図:国土地理院の地形図から天理市西端近傍

2023年7月2日日曜日

雨宮処凛


菅野完の論は,日本の現在の思想状況というか,差別的な態度が根強く蔓延って弱者を圧迫している現状を良く説明するものだと思える。

通俗道徳論≒自己責任論≒新自由主義という近似式から,1945年にリセットされた日本の資本主義が,人権という車輪を欠いたまま曲がって走り続け,その結果,自民党や日本維新の会が力を持っている現状もある程度は納得できる(アメリカによる日本支配の構図との関係がどうなっているかはちょっと・・・)。

もう一つ気になったのは,最近の日本維新の会の著しい成長の原因は何かという時間スケールの問題については,必ずしも満足行く答えを与えていないということだ。そんなとき,マガジン9の「なぜ維新なのかについてのロスジェネ的考察」で,雨宮処凛(1975-)が別の角度から議論していた。"自分の力で" がんばって要約すると次のようなものだ。
○日本維新の会への支持が広がっている。それはなぜか。
○特に「ロスジェネ世代の維新支持」という現象を考察する。
○40代以下の世代(ロスジェネ〜ゆとり・さとり〜)は「経営者マインドや為政者マインドをナチュラルに搭載している」例え,末端労働者であっても。
○彼ら世代には,労働組合や労働運動より「いつか一発逆転すること」の方がずっとずっとリアリティがあるから。
○この世代=雨宮は「自由な時代だから,人は可能性に満ちている。夢をかなえろチャレンジしろ。」という脅迫的な圧力にさらされてきた。
○そのロールモデルは,ホリエモン,ひろゆき,ZOZO前澤やユーチューバ−など,全員トリッキーな一発逆転系自己責任論者である。
○我々はずっと政治にDVを受けている。優しいふりをした人に裏切られるより,最初からひどいとわかってる人の方がまだましという気持ちになる。それは究極の消去法であり,唯一できる無意識の自己防衛だ。
○維新は確実に「どうせ世の中も人間もロクなもんじゃない」ということを体現している。そこが「現実がわかっているリアリスト」とある種の人々には見えてしまう。だからこそ,個別議員の犯罪歴などがこれほど暴かれてもほぼノーダメージという状態に繋がっている。
○我々は理想を語る人がマヌケにしか見えないという世界に住んでいる。現実がひどければひどいほど意地悪そうな人が支持を集め、理想を語る人が嘘つきの詐欺師にしか見えない地獄のような逆説にどうしたら対抗できるのか。

ロスジェネ世代の一発逆転のロールモデルであるYouTuberは,通俗的道徳規範の体現者≒禁欲的なジャパニーズプロテスタントではない。そうではあっても,自己責任論者の一種には違いないわけで,新自由主義との相性は抜群だ。

2023年7月1日土曜日

ロスジェネ世代

ロスジェネ世代という表現がよく用いられるので,この記事で勉強した。しかし,あまりしっくりしないので,GPT-4にきいたりWikipediaで調べた結果,日本におけるジェネレーションについてはおおむね次のようにまとめられそうだ。もちろん年代は厳密なものではない。


1.団塊世代(1947年〜1949年生):第二次世界大戦後のベビーブームにより生まれた世代。経済成長を経験し日本の復興を支えた。

2.(しらけ世代)(1950年〜1964年生):1955年〜1964年生には新人類という名前があるらしいが,1950年〜1954年の我々の世代にはまともな名前がないのだ。第Ⅰ期学習指導要領(規準化+道徳)の世代

3.バブル世代(1965年〜1970年生):バブル経済が最高潮に達した時期に大人になった。そのため、バブル経済の恩恵を受けて育った世代ともいえる。第Ⅱ期学習指導要領(現代化)の世代

4.団塊ジュニア世代(1971年〜1974年生):団塊世代の子供たちにあたる。親の団塊世代が生んだ豊かな時代を享受したが,バブル崩壊の就職氷河期と重なることになった。第Ⅲ期学習指導要領(ゆとりの始まり)の世代

5.就職氷河期世代・ロスジェネ世代(1975年〜1985年生):就職氷河期(バブル崩壊後の厳しい雇用環境)に直面した。そのため以後も経済的に困難な状況に置かれたものが多い。第Ⅲ〜Ⅵ期学習指導要領(プレゆとり)の世代

6.ゆとり世代さとり世代(1986年〜1999年生):学校での競争が緩やかになり,生活ペースが自由になるゆとり教育方針のもとで育った。物欲や出世欲が薄く,現状に満足しているとされる。第Ⅳ・Ⅴ期学習指導要領(ゆとり→生きる力)の世代

7.Z世代(2000年〜2011年生):デジタルネイティブと呼ばれ,インターネットやスマートフォンなどのテクノロジーと共に成長。オンライン上でのコミュニケーションに長け,多様性を尊重する傾向がある。第Ⅵ期学習指導要領(脱ゆとり)の世代

8.α世代(2012年生〜):Z世代以降のテクノロジーを完全に体験して育つ最初の世代。詳細な特性はまだ明確には定まっていない。第Ⅶ期学習指導要領(学び方)の世代


以下の図では,各世代が10歳のときの対応する学習指導要領が並行してわかるようにした欄と,20歳のときの経済状況のイメージをつかむための欄を加えたものを示した。



図:日本の世代と学習指導要領の対比

2023年6月30日金曜日

ヒトは衰退するのか

6月26日の日経朝刊1面トップの記事のタイトルが「ヒトは衰退するのか」だった。テクノ新世 岐路に立つ人類という特集記事の初回なのだ。来月から購読料が値上げされる日経の気分はほとんどSFになっている。他の全国紙ではなかなか考えにくい取り扱いかもしれない。

一つはAIによって,人間の仕事(欧米の場合)の4分の1が自動化されるという話である。これは,ゴールドマン・サックスの2023年3-4月のレポートに基づいているのだけれど,彼らは"Generative AI could raise global GDP by 7%"というタイトルをつけていて,受け取り方や強調の仕方が違う。

もう一つが,地球上の人工物の総重量が生物のそれを越えたというものである。これはワイツマン科学研究所の2020年のnature論文からきているので,早速調べてみたところ原論文が見つかった。なんとなく機械やプラスチックの総量が生き物を越えたのかというイメージだったけれど,そういうわけでもない。


図:地球上の人工物の総重量と生物の総重量(Elhacham et. al. より引用)

上の図が日経朝刊で引用されたものだが,バイオマスの値は乾燥重量であった,人工物は,コンクリート,骨材,レンガ,アスファルトがほとんどを占め,これに金属とプラスティックが続く。下の図では,水を含んだバイオマスの重量の値も示されている,これならば,2037年くらいになる。また,廃棄物がグレーで示されている。こちらもかなりの値になる。

人為的な気候変動説については必ずしも十分には信用できなかったが,これを見ると考えが変わるかもしれない。

2023年6月29日木曜日

大学教育とChatGPT(11)

大学教育とChatGPT(10)からの続き

各大学では,FDやセミナーなどで生成系AIについて取り上げる例が増えている。国立情報学研究所が開催している教育機関DXシンポジウムのシリーズでも,最近の話題の中心は生成系AIだ。大学からの生成系AIの利用に関する注意のほうはまだ続いている。

一方,組織としてこの問題に真正面から積極的に取り組んでいるところはそれほど多くない。例えば,立命館大学の生命科学部の英語授業の取り組みであり,武蔵野美術大学×AIピカソ,AI絵画AWARD である。AI Picassoを使うことで,著作権問題がクリアされるようだ。これは誰でも応募できるということか。新手の受験生募集作戦かもしれない。

森木銀河さんは,生成AIの台頭に応対する大学組織の動向として,テキストの分析をおこなっている。これは5月27日にJAIR(日本IR協会)の研究会で発表されている。
6月20日
ChatGPT 学生向けメッセージ
神戸常盤大学
https://www.kobe-tokiwa.ac.jp/univ/news/79d167af9c48840589cbe01f5c49663d03ef3211.pdf

6月20日
生成系 AI の利用について
畿央大学 教育推進室長 冬木正彦
https://www.kio.ac.jp/wpmlmain/wp-content/uploads/2023/06/AI_20230620.pdf

6月22日
ChatGPT 等の生成系 AI の授業における 利用について
北陸大学教務部長 杉森公一
https://www.hokuriku-u.ac.jp/sptopics/202306221427.html

6月22日
生成系人工知能について~実践的思考力を高めるために~
ルーテル学院大学 学長 石居基夫
https://www.luther.ac.jp/college/president.html#生成系人工知能について

6月23日
生成系AIに関する学生向けガイドライン
麗澤大学副学長(教育担当) 渡邊信・情報教育センター長 吉田健一郎・データサイエンス教育センター長 小塩篤史
https://www.reitaku-u.ac.jp/news/research/1776803/

6月23日
東邦大学における生成系AI の利用に関する方針
東邦大学 学長 高松研
https://www.toho-u.ac.jp/upnews/2023/20230623_1_AI.html

6月23日
生成系AI(ChatGPT、Bing AI、Bard等)の利用に関する留意事項
愛知工科大学 学長 大西正敏
https://www.aut.ac.jp/outline/policy/#anchor04

6月23日
生成AIツールに対する基本的考え方
法政大学 教育開発支援機構 教育開発・学習支援センター
https://www.hoseikyoiku.jp/lf/project/view.php?c=topics_view&pk=1687401621

6月26日
ChatGPT等の生成系AIの利用について
大阪人間科学大学 学長 井上博司
https://www.ohs.ac.jp/fiscal/2023/6573/

6月27日
本学におけるChatGPT等の生成系AIの利用における注意点について
福岡教育大学 学長 飯田慎司
https://www.fukuoka-edu.ac.jp/information/u28vtn00000012lz.html

2023年6月28日水曜日

モバイルICOCA

ついこの間,ICOCAからスマートICOCAに引っ越したばかりなのに,もうモバイルICOCAがiPhoneに対応してしまった。

Suicaは以前からモバイル対応だったのでうらやましかったが,ICOCAも3月のAndroid端末に続いてようやくiOSまで順番が回ってきた。夕方のニュースで見かけて早速トライしたら皆が殺到していた。少しだけ待たされたが,案内行列に並んでいたらしばらくしてOKとの通知があった。

iOSのウォレットを開いて,追加の+メニューから交通系カードを選ぶと,トップにICOCAがでてきたので,SMART ICOCAカードを取り出してiPhoneをかざすだけだ。情報の転送が必要だからだろうか,普通のICカードでの読み取りに比べるとちょっと時間がかかる。

ICOCAアプリのインストールに誘導されたので,こちらもインストールしたけれど,役割分担が今一よくわかっていない。とにかく,ICOCAアプリは使えるようになり待望のオンラインチャージも可能になった。チャージ上限は2万円というのも確認できた。ところで,旧のモバイルICOCAカードのほうはそのまま使えるのだろうか。WESTER アプリで残高確認すると,一応残っているのだ。どういうこと?

検索してもあまり要領を得ない。世界はどんどん複雑になっていって,年寄りはついていくのが大変になる。これに新幹線のスマートEXを組み合わせて使うことになったらどうしようかと思うのだけれど,もう東京に通うこともなくなったので,心配御無用であった。


写真:引き続き使えるのかどうかよくわからなくなった SMART ICOCA

追伸:JRおでかけネットをちゃんと読むと,移行後のICOCAは使えなくなるので破棄せよとのことだった。

推察:夕方にApple Payの障害で,モバイルSUICAが使えなくなっていた。たぶん,アクセスが集中したICOCAのせいではないかと睨んでいるのだがどうだろう。

付録:モバイルICOCAはAndroid用の名前であって iPhoneのそれは ICOCA  Pay らしい。

2023年6月27日火曜日

安丸良夫

通俗道徳と日本資本主義からの続き

菅野完の話は,安丸良夫(1934-2016)の民衆思想史に基づいたものだ。歴史学者というと頭に思い浮かぶのは網野善彦(1928-2004)で,安丸良夫は聞いたこともなかった。

岩波講座の日本歴史はこれまでに5次にわたって出版されているが,その第4次シリーズ(1993-1995)の編集委員が,朝尾直弘・網野善彦・石井進・鹿野政直・早川庄八・安丸良夫だった。なお,第5次シリーズ(2013-2015)の編集委員は,大津透・桜井英治・藤井譲治・吉田裕・李成市であり,こちらで聞いたことがあるのは吉田裕(1954-)くらいか。

安丸良夫は,富山県東礪波郡高瀬村(現在の南砺市森清)の出身なのだが,これはわが家のルーツがある越中桐の木村(南砺市桐木)や松の木村(南砺市松木)から6kmほど東にある。安丸の通った福野高校は5km東だ。真宗篤信地帯の農村出身であることが,その後の彼の思想に大きな影響を与えたとのこと。

1953年に京大文学部に入学し,大学院生のときにアルバイトで大本出口なお(1837-1918)のおふでさきの解読作業に携わる。1965の「日本の近代化と民衆思想」で彼の理論が展開された。戦後日本の啓蒙主義的な時代思潮のなかで前近代的・封建的などとされて来た「通俗道徳」(勤勉、倹約、孝行、正直などの民衆的な日常道徳)が,じつは民衆の自己規律と自己鍛錬の様式であり,それを通じて膨大な人間的エネルギーが発揮され,近代化していく日本社会を基底部で支えた,というものだ(マックス・ヴェーバーのプロ倫を想像すると理解しやすい)。

「歴史をおしすすめる根源的な活動力は民衆自身だ」という主張は,様々な批判や反発を招いたようだが,それに対する安丸の見解は参考文献の[1] [2] にみられる。民衆というキーワードを強調しなければ,菅野完の通俗道徳≒自己責任論≒新自由主義にすんなりつながるのだけれど。

[1]「民衆思想史」の立場(安丸良夫)
[2]「民衆史」と戦後歴史学(安丸良夫)

2023年6月26日月曜日

通俗道徳と日本資本主義


日本会議の研究でおなじみ,天理市出身の菅野完(1974-)が,FaceBookおよびYouTubeで展開していた論(1:08:30あたり->)が腑に落ちた。

その趣旨は次のようなものだ。欧米ではプロテスタンティズムが資本主義を産み出したが,日本では江戸時代に上方で商品経済の勃興とともに発生した通俗道徳がその後の資本主義発展に大きな役割を果たした。

通俗道徳というのは,「勤勉・倹約・礼儀・孝行などの道徳的規範を履行していれば富や幸福が訪れる」というものだ。それ以前は「全ては前世の宿業」という仏教的な因縁思想が主流だった。通俗道徳により,成功している人=道徳的規範を履行した人,不幸な人=道徳的規範の履行に欠損がある人,という認知が進むことになる。

ある人が不幸な場合,その原因は本人の道徳的瑕疵に着せられ,社会構造への批判的検討や歴史的経緯に対する考察は入りえない。不幸な人が告発する行為は,礼儀という徳目違反と見なされて,さらに不道徳ポイントが追加される。それだけでなく,成功者がこの不道徳事例を見逃すことによる減点をさけるために,不幸な告発者への道徳的批判に邁進することになる。

このような通俗道徳の土壌の上には「人権」や「権利」などの意識は芽生えようがない。欧米(プロテスタンティズム)では全ての人が神との平等な契約にさらされており,これによって人権意識が育まれたのとは大きな違いがある。

そのため,日本の資本主義は欧米のそれとは異なり,人権という片方の車輪を欠いたまま成長してしまったというわけだ。1945年の敗戦で,脱輪はいったん解消されたが,その後75年経過して再び脱輪の道を進んでいる。実際,女性差別,外国人差別,LGBTQ差別,などは放置されたまま,いや悪化の一途を辿っている。これが菅野完の論のあらすじだった。

結論:通俗道徳論 ≒ 自己責任論 ≒ 日本型新自由主義(自民党・維新支持者の論理)
noiehoieさんには「通俗道徳の倫理と資本主義の精神」という新書をはやく書いてほしい。


2023年6月25日日曜日

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

1972年,大学に入りたてのころは知的好奇心のポテンシャルにあふれていた。梅棹忠夫岩波新書青版の知的生産の技術に影響されていた頃だ。毎年100冊近い本(まあ半分以上文庫のSFや小説なのだが)を読んで,京大式カードにチャレンジし(1週間で挫折),NHKの生物工学の講座を視聴し(基礎工に潜ったほうがはやい),街を歩いた。

岩波書店の「図書」も新刊本の情報収集のために購読していた。年100円?と安かった。面倒だったので封筒に100円玉を入れて送ったら,郵便局から突き返されてきた。その図書に岩波の文化講演会の案内が載っていた。

京都の国際会議場だかどこかで夕方から無料で開催されるものに,分子生物学の渡辺格(1916-2007)など3名の話があるというのでとんでいった。渡辺先生の話はそれほどインパクトがなくてやや期待外れだった(というか話の内容を理解できなかったのかもしれない)が,その後にでてきた,大塚久雄(1907-1996)が印象的だった。周囲を圧倒する雰囲気の隻腕の老紳士で,マックス・ヴェーバーとマルクスの話だったような気がする(こちらのほうも話の内容は頭に入らなかった)。

さて,その大塚久雄先生が訳したマックス・ヴェーバー(1864-1920)のプロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(1904)である。学生のころ人文社会科学の中で一番関心のあったのは社会学だったけれど,正統的で本格的なものにはまったく手が伸びず,見田宗介や井上俊など周辺の甘いお菓子のような本ばかり読んでいた。

でこのたび,ChatGPTのお力をかりて俄勉強してみるが,上記にリンクしたWikipediaの方がより具体的で丁寧な説明がわかりやすかった。

Q:User
マックス・ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」で展開される論理の筋道をなるべく分かりやすく解きほぐして説明してください。

A:ChatGPT
マックス・ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」は、西欧の経済的成功とプロテスタントの宗教倫理の関係性についての社会学的研究です。

ヴェーバーの主張は、プロテスタンティズム(特にカルヴァン派)の倫理観が、現代の資本主義の精神を醸成し、助けたというものです。

以下に、ヴェーバーの主要な論点をいくつか列挙します:

職業倫理(Calling):プロテスタンティズム(特にカルヴァン派)では、一人ひとりが神から職業(calling)を与えられ、それを全うすることが信仰の一環とされます。つまり、労働はただの生計を立てる手段ではなく、神への奉仕として理解されました。これは、労働を倫理的価値として捉え、経済活動を奨励する強力な推進力となりました。

予定説と成功の証:カルヴァン派の特徴的な教義である予定説は、神がすでに誰が救われ、誰が避けられるかを決定しているとするものです。しかし、この運命は誰にもわからない。したがって、信者は自分が選ばれた者であると信じる確証を求めました。ここで、経済的成功がその確証として捉えられるようになりました。

禁欲主義と資本蓄積:プロテスタンティズムは節制と自己規制を強調し、贅沢や浪費に対して否定的な態度をとりました。したがって、信者は労働を通じて得た利益を再投資し、資本を蓄積する傾向がありました。これが、資本主義の発展を推進しました。

このように、ヴェーバーはプロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神がどのように関連しているかを論じています。彼の見解には議論の余地がありますが、宗教的価値観が経済行動や社会的変化にどのように影響を与え得るかを示す一例として引用されます。彼の視点から見れば、プロテスタンティズムの宗教的倫理は、労働の倫理的価値を高め、経済的成功を信仰の証と捉え、さらに生活の節制を奨励することにより、資本主義の発展を促進しました。

しかし、これは一方的な因果関係を示しているわけではありません。ヴェーバー自身も、プロテスタンティズムが唯一の要因、または必ずしも資本主義の発展につながるとは主張していません。むしろ、彼の主張は、これら二つの発展が互いに影響を与え、形成し合ったというものです。このような視点は、経済、宗教、文化などのさまざまな要素がどのように相互作用するかを理解するための重要な枠組みを提供します。 


写真:マックス・ヴェーバー(Wikipediaより引用)

Q:User
2. 予定説と成功の証:の部分のロジックがわかりにくいです。『禁欲的プロテスタンティズムは、「利潤の肯定」と「利潤の追求の正当化」を生み出した。つまり、金儲けに正当性を与えたのである。』の理由をもう少し詳しく説明してください。

A:ChatGPT
マックス・ヴェーバーの理論における「予定説と成功の証」について、より詳細に説明します。

カルヴァン派プロテスタンティズムには、「予定説」という重要な教義があります。これは、神がすでに誰が永遠の救済を受けるか(選ばれた者)を決めている、という信念です。しかし、誰が選ばれた者なのか、また、自分自身が選ばれた者なのかを知ることはできません。この不確実性は、信者にとって大きな不安を生じさせることとなります。

ヴェーバーは、このような信者が自身が選ばれている(つまり、神によって救済が約束されている)確証を求めるために、自らの職業に励み、経済的な成功を追求したと主張します。経済的成功は、自身が選ばれた者であるという"証拠"または"確証"と捉えられたのです。つまり、成功は神からの恵みの証となり、これが利潤追求の正当化につながります。

この理論は、「禁欲的プロテスタンティズムは、利潤の肯定と利潤の追求の正当化を生み出した」という結論に結びつきます。具体的には、信者は自身の労働と経済的成功を神聖な使命と捉え、それを通じて神の意志を具現化するものと理解しました。これにより、一見すると物質的で世俗的な活動である「金儲け」にも、神聖な価値が見出され、正当化されたのです。

2023年6月24日土曜日

大学の英語教育はいらない?

大学にもう英語教育はいらない」というのは,立命館大学生命科学部で英語教育を担当している山中司さんが2017年に執筆した論文のタイトルだ。

ChatGPTのインパクトを一番切実に受け止めているのが,大学の英語教育のコミュニティだ。各大学から出ている生成AI使用ガイドラインだが,これを3月の段階で日本で最初に発出したのが東京外国語大学でありその内容も秀逸だった。

山中さんは,2022年度秋学期から立命館大学の必修英語科目に翻訳ツール(みらい翻訳)を導入し試験運用を始めている。さらに,授業におけるChatGPTの活用もニュースに取り上げられ,英語教育とAIに関してはトップランナーである。

さてその論文だが,17ページあったので要約をGPT-4 & プラグインにお願いした。ChatWithPDF はファイル読み込みに失敗し,AskYourPDFもLinkReaderも,どうもイマイチの結果しか出してこない。最近,GPT-4の調子はよくないのかもしれない。

しかたがないので,自分で読んでまとめる必要がある。これがまた面倒で仕方がない。AIによってすごい勢いで人間(自分)の退化が促されていることを実感する。これが人類に対するAIの脅威の最大のものだ。そもそも老人の読む力が筋力に比例して落ちているのだった。

○本論文は,大学教育の未来の一つの極としての「英語教育解体論」を語る。
○大学設置基準の大綱化で科目設定が各大学の判断に任されているにも関わらず全ての大学では,「外国語科目」として「英語」が必修化されている。
○AIにより,音声認識や自動翻訳の技術,AIによる4技能の活用が十分実用的になり,(1) 英語教員が不要,(2) 英語教育が不要,(3) 英語学習が不要 になる。
○この状況は英語教育への企業参入を容易にし,市場原理で大学の外国語教育≡教員が駆逐される可能性がある。これらが「強い解体論」と呼ばれる外在的要因である。
○哲学における「言語論的転回」でコミュニケーション=言語(言語至上主義)と捉えられていたのが,複合メディア・表現へのアクセスが容易になり逆転し始めた。
○英語教育=第二言語習得=応用言語学が,確たる方法論と統一理論を持たず解体しつつある分野になった。
○英語が世界言語であることから,言語寛容性がもとめられ規範性を失っている。これらが「弱い解体論」とよばれる内在的要因である。

ということで,ChatGPTが登場する前夜から英語教育は危機に瀕していたことがわかる。




2023年6月23日金曜日

生成系AI利用の基本方針


一部の大学は別として,多くの大学で今一つ十分な検討がされていないような気がする。生成系AIの利用上の注意文書のことだ。本来は大学としての基本方針を確立し,それに基づいて,教職員向け(教育・研究・事務)と学生向け(学習)の具体的なガイドラインを2本作るという構造になるべきだろう。

せめて,ChatGPTにたたき台を出してもらってから,考えればよかったのではないだろうか。例えば,以下のようにそれらしい基本方針がでてくるのに。リテラシーがないままに,自分たちは知っているという雰囲気のガイドラインを出しているわけで。

生成系AI利用の基本方針(GPT-4からの提案)

1. オープン性と透明性
我々の大学はオープンで透明な利用を推進します。AIの利用の過程と結果は、利用者が学び、理解し、さらにはその適用を改善するための知識を共有することを可能にするべきです。

2. 教育的な目的
AIの利用は教育的な目的を優先するべきです。研究、学習、そして教育的な探求が主な利用目的となります。

3. 倫理と責任
AIの利用は常に倫理的な枠組みの中で行われるべきであり、利用者はその使用について全面的な責任を負うべきです。これには、潜在的なバイアス、データの使用、AIの出力への理解と扱いについての考慮が含まれます。

4. データのプライバシー
AIの利用はプライバシーを尊重するべきです。敏感なデータを扱う場合や、特定の個人が識別可能な状況では、データの匿名化や適切な扱いが行われるべきです。

5. コラボレーションと共有
我々の大学は、AIの成功した利用事例と失敗事例の共有を推奨します。これにより、一人一人の学習が共同体全体の知識に反映され、全体として前進することができます。

6. 継続的な学習と適応
AIとその利用は進化し続けます。そのため、我々の大学は継続的な学習、適応、そしてAIの利用の改善を推進します。

7. アクセシビリティ
我々の大学は、全ての学生、教員、職員がAIを公平に利用できることを保証します。そのために、我々は必要なリソースと教育を提供します。

日本の大学の注意文書に欠けているのが ,1,5,7あたりだ。2が妥当なのかどうかはよくわからない。

2023年6月22日木曜日

大学教育とChatGPT(10)

大学教育とChatGPT(9)からの続き

私立大学情報教育協会(JUCE)が生成系AI使用ガイドラインを出していたので,他の学会や国大協の会長談話と併せてまとめておく。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
4月25日,人工知能学会としての大規模生成モデルに対してのメッセージ
一般社団法人 人工知能学会 会長 津本周作/倫理委員会

5月1日,生成AIの利用ガイドライン
日本ディープラーニング協会

5月29日,生成 AI の利活用に関する国立大学協会会長コメント
国立大学協会会長 永田恭介

5月31日,生成系 AI 使用ガイドライン
公益社団法人私立大学情報教育協会
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

今週は,他のアーカイブを参考にして落ち穂拾いに努めたところ,結構な見落としがあった。あとは,横浜国立大学が受験生向けの注意を出していたのがめずらしかった。生成系AIを駆使して願書等を作成するような学生は真っ先に入学させればいいように思うのだが,気のせいかもしれない。

文科省の学校向けガイドライン案がリークされていたけれど,この小中高ガイドラインに振り舞わされる大学もでてきそうな勢いだ。『指針案は「生成AIを使いこなす力を育てる姿勢が重要」としつつ、著作権侵害や批判的思考、創造性への影響といった懸念やリスクもあると指摘』。批判的思考や創造性を収奪しながらそれを是とする空気を作ってきたのは誰・・・いまさら感がただよう。

6月6日
Chat GPT等の生成AIの利用について
昭和大学 学長 久光正

6月9日
ChatGPT等の生成系AIの利用について
育英大学

6月13日
ChatGPT等の生成人工知能(生成AI)利用に関する留意事項等について
多摩大学

6月13日
大学における Chat GPT 等 AI の活用に関する指針
日本赤十字九州国際看護大学

6月14日
生成系AIの取り扱いに関して
関西医科大学 学長 木梨達雄

6月14日
ChatGPT等の生成AIの使用に関する留意事項
沖縄国際大学 学長 前津榮健

6月14日
生成AI(ChatGPT等)に関する注意事項
近畿大学 経営学部長 安酸建二

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 

6月15日
生成AI(Generative AI)の利用に関する本学の考え方について
横浜国立大学 副学長(教育担当) 髙木まさき・副学長(研究・情報担当) 四方順司

6月15日
ChatGPT等の生成系AIに関する本学での対応について
実践女子大学 学長 難波雅紀

6月15日
生成系AIに関する本学の基本方針
四天王寺大学 学長 須原祥二

6月16日
生成系AI(人工知能:Artificial Intelligence)に関する本学の考え方と留意点
十文字学園女子大学 教育担当副学長 安達一寿

6月16日
学生による生成系AIの利用における注意点について
日本医療科学大学 学長・教務部長

6月16日
ChatGPT等の生成系AIの利用に関する注意喚起
敦賀市立看護大学 学長 内布敦子

6月19日
授業などにおけるChatGPTなどの生成AIの利用について
福井大学 理事(教育,評価担当)/副学長・データ科学・AI教育研究センター長

6月19日
生成系AIの学習・研究活動への利用について
山梨英和大学 学長 朴憲郁

6月20日
ChatGPT等の生成系AI(人工知能) 利用について
静岡県立大学 副学長(全学教務委員長) 今井康之・学生部長 細川光洋

6月20日
宮崎大学における生成系AIの利用にかかる留意事項について
宮崎大学長 鮫島浩
宮崎大学における生成系 AI の学習上の利用についての考え

6月20日
生成AIを活用するための基本方針
徳島大学長 河村保彦

6月21日
生成系AIの使用に関する注意について
名古屋経済大学 学長 佐分晴夫
6月21日
東洋学園大学 ChatGPTなどの生成AIへの本学の考え方
東洋学園大学学長 辻中豊
6月21日
本学におけるChatGPT等の生成系AIツールの利用について
神戸学院大学 学長 中村恵
6月21日
酪農学園大学における ChatGPT 等の生成系 AI 利用に関する留意事項について
酪農学園大学 学長 岩野英知
https://www.rakuno.ac.jp/archives/28167.html