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2019年11月12日火曜日

桜を見る会

桜を見る会は,例年4月に新宿御苑で行われる内閣総理大臣主催の公的行事である。1700万円の予算を大幅に超過する支出が続いたことが問題視されたかと思ったら,逆に実態を追認して来年度予算を3倍の5700万円にする始末。何年か前に,安倍を批判していた爆笑問題がよばれて安倍と並んでいたときにいやーな感じはしたよね。11月8日の参議院予算委員会での日本共産党の田村智子議員の質疑が注目されている。最初,大手マスコミはほとんど沈黙したままだったが,少しだけ流れが変わったか。これも新しい燃料がなければすぐに沙汰やみになるのだろう。

P. S. 2019.11.13 橋下−NHK−菅 ラインで,燃料を除去(来年度中止)して火消しに走った模様。安倍晋三後援会のホテルニューオータニ前夜祭+富士急行バスツアーの問題も政治資金報告書の問題も何も解決していないはずだけど・・・

P. P. S. 2019.11.15 NHK社会部も結構攻勢をかけていたが,安倍が説明するといっているので(実際,夕刻に記者のぶらさがりで実施),つっぱねるための言い訳の作文ができたのだろう。追求側は証拠が足りず今回も詰めが甘かったということか・・・(今場所の遠藤の相撲みたい)

[1]「桜を見る会」を全部見る!テレ東NEWS:テレビ東京

2019年11月11日月曜日

英語民間試験の国会質疑から


京都工芸繊維大学の羽藤(はとう)由美先生は,京都工芸繊維大学の「大学入試への英語スピーキングテスト導入プロジェクト」のリーダーである。京都工芸繊維大学では,入試改革の一環として,英語スピーキングテスト導入に向けた学際的な研究グループを立ち上げており,国内でも最も先進的な取り組みをしている外国語教育の専門家である。先日の衆議院の文部科学委員会の参考人意見陳述に感銘を受けたので,ここに文字起した。

羽藤由美 参考人(京都工芸繊維大学教授)
意見陳述 11/5 衆議院・文部科学委員会
高大接続改革[英語民間試験]9:08-10:32
英語四技能の育成は重要です。しかし教育のインフラともいえる共通テストを民間に委ねるということは,国にとって重大な判断です。それによって得られるものと失なうものの大きさの比較検討が一切なされていません。
財や名を成した素人が,どこか高いところに集まって,個人的な経験や感想を言いあい,その中で決めた現実味のない教育政策が,推進に無批判に協力するごく少数の研究者や教員を利用する形で,そのまま現場に降りてきます。この現状こそどうぞ改善して下さい。
この国には,英語教育,言語テスト,テスト理論など能力の高い研究者がたくさんいます。教育現場にも地味に研鑽を積み,着実な成果をあげている先生方がいらっしゃいます。どうかその人たちの専門知を結集して,入試に頼らない教育の在り方も含めて,実現可能な最適解を探す努力をして下さい。
今回の検討会議が,そういう会議となるようなご配慮をお願いいたします。
[1]東京大学入学者選抜方法検討ワーキング・グループ答申(2018.07.12)


2019年9月30日月曜日

日本軍性奴隷制

神戸女学院大学の上野輝将先生の講演記録(2006年)がリポジトリで公開されていた。そのタイトルは,「日本軍性奴隷制(「従軍慰安婦」)問題と最近の動向 」である。大変わかりやすく問題の全体像を語っている。

2000年の「日本軍性奴隷制を裁く2000年女性国際戦犯法廷」がNHKのドキュメンタリーとなったのが2001年で,これに対して中川昭一と安倍晋三が圧力をかけてNHK番組を改変させた問題が明らかになったのが,朝日新聞の2005年の報道である。これをめぐる議論が起こった頃の講演記録である。

この日本軍性奴隷制否定は安倍晋三のデビュー戦であり,戦前の大日本帝国の制度や思想を肯定し,日本国憲法を改変して軍の存在を正当化し,女性差別と民族差別を強化するという問題の中核をなしている。それが,小林よしのりや橋下徹によって増幅され,大衆的に浸透した。この状況を基盤として政権を担当するのが安倍晋三であり,公然と反韓・嫌韓の空気(慰安婦否定+徴用工否定)を醸成している。現在の愛知トリエンナーレに対するテロ+検閲問題の病根は深い。


2019年9月29日日曜日

道徳教育を学校で行うべきでない理由

苫野一徳上記表題のインタビュー記事が集英社のサイトにある。表題に比べるとたいへん穏当で実践的な結論が導かれている。「問題解決的な道徳」の枠組みを使って,子どもたちが「自由の相互承認」の感度を高められるように,教科道徳から教科市民教育への転換を図れるように,学習指導要領に規定されてしまった特別教科の道徳を,探究を中心とした学校教育における学び方の変革の核としていこうというものだ。

日本会議国会議員懇談会の事務局長である荻生田光一は,文部科学大臣としてまさに日本会議的な「道徳」を貫徹しようとしているのだろう。それは,愛知トリエンナーレの文化庁補助金撤回で端的に示された。その「道徳」の強化は,日本社会の生産基盤を補完するための「移民」の増加=国際化・文化的多様化とは真っ向から対立する成分を含んでいる。また,経済界が大学に突付けた英語教育の重視=国際化のための入試改善とも矛盾するはずだが,そちらの方は利権眼鏡の対象として扱われる事項となるので道徳マターではないとされるのだろう。あるいは外国人の人権や市民権は無視した差別構造の強化としての道徳なので問題にはならないということかもしれない。

NHKでは愛国心を煽るために連日の朝から晩までラグビーの勝利をトップニュースに掲げている。嫌韓ニュースとスポーツニュースをサンドイッチのようにして,政権批判や社会の矛盾から目をそらすことにやっきになっている。一方で,消費税の問題は微細なお得生活情報に還元されてしまっている。開き直って釈明するのが作法となってしまった政権や大企業幹部の不正やモラルハザードに焦点を当てることもない。これらがりっぱな道徳教育の目指す完成形態なのだろう。

2019年9月9日月曜日

徴用工の定義をめぐって

今回の日韓問題の発端となる徴用工という用語の定義について。昨年11月の安倍首相の国会答弁それ自身が不正確な理解(事実誤認)に基づいている可能性があることを,東京大学総合文化研究科地域文化専攻研究の外村大教授が指摘している。他にも論点整理のための貴重な研究ノートがpdfで公開されている。

2018年11月13日 軍需会社法等で「徴用とみなす」ことについて
2018年11月10日 11月1日首相答弁への疑問―日本政府の戦時労務動員政策理解をめぐって
2018年11月10日 「徴用工」の用語は間違いか? 適切か?




2019年9月7日土曜日

日韓関係の悪化を招いた責任

外務省に25年勤め,東大教養学部に出向した後,日本大学法学部教授,明治学院大学国際学部教授,広島市立大学広島平和研究所所長などを歴任した浅井基文さんのブログ「21世紀の日本と国際社会」は貴重な論考の集まりだ。

2019年8月25日の記事「引きこもり国家」へと進む日本(ハンギョレ文章)が「世に倦む日々」で紹介され一部で話題になった。「今日の日韓関係の悪化を招いた責任は全的に安倍政権にあることについての私の理解をお話しします」ということで,明解に今の状況を分析している。一読の価値がある。

P. S.  田中宏和の「世に倦む日々」は毀誉褒貶も激しいのだけれど,ときどきは新鮮な切り口を見せてくれる。9月4日の「開戦と戦時」にはドキッとした。



2019年9月5日木曜日

旭日旗舞う東京五輪

オリンピックや万博に血道をあげるよりも,東日本大震災・原発被害からの復興や急速に劣化しつつある生活・国土インフラ補修のほうがよほど重要だと思っていた。そのオリンピックの方は,招致汚職と猛暑の危険とボランティア搾取と大腸菌まみれの海と次々とケチがついてきたが,日本オリンピック委員会(JOC)の非公開を経由してとうとう旭日旗での応援を認めるというところにまで到達したようだ。

日韓関係の悪化のエピソードとしての旭日旗自衛艦の拒否問題は,今年の5月に外務省と防衛省によるプロパガンダ強化へとつながった。官僚たちはみごとに東アジアの歴史問題を「旭日旗の歴史」問題と,どうでもよい「旭日旗のデザイン」問題と,関係ない「満艦飾の定義」問題にすりかえた(防衛官僚の方がやや賢くない印象がある)。これらを背景として,どうしようもないJOCは新しい結論を導いたようだ。

FIFAのこれまでの経緯などからしても,オリンピック競技場への旭日旗の導入にこれっぽっちも賛成する根拠は出てこない。しかし,まじめな青少年諸君とその延長線上にあるマスコミの皆さんは外務省の説明をみて納得するものと想像される。

[1]2019.5.13,外務省 旭日旗
[2]2019.5.24,防衛省 自衛隊の旗と満艦飾について (自衛艦旗について
[3]2018.7.1,セネガル戦でまたも「旭日旗」。日本代表を応援するのに旭日旗を出すべきではないこれだけの理由
[4]2017.4.27,旭日旗はなぜサッカースタジアムで禁止なのか? 関係ない日本側の主張、知るべき国際ルール
[5]2013.7.30,なぜ韓国サポーターは政治的な横断幕を掲げ、旭日旗に反発するのか?
[6]FIFA Stadium Safety and Security Regulations 

2019年8月19日月曜日

加藤恭子と田島道治

NHK特集の昭和天皇(1901-1989)に関するテーマは,夜7:00のニュースにまであふれ出して,国民に何らかの変化をもたらせようとしている。8月17日に放映された,NHKスペシャル「昭和天皇は何を語ったのか −初公開・秘録拝謁記」である。初代宮内庁長官を務めた田島道治(1885-1968)の昭和天皇とのやりとりを記録した手帳やノートが発見されたということで,昭和天皇のこれまで伝えられなかった考えを伺い知ることができる。

これに対してさっそく,昭和天皇と田島道治のことは既に知られていたとのコメントがあった。その内容は,フランス文学者で伝記著者である,加藤恭子(1929-)が不思議な因縁で田島家から受け取った資料の一部によって知られ,書籍としても出版されていた内容だということである。具体的には「近現代日本の政策史料収集と情報公開調査を踏まえた政策史研究の再構築」という科研費の報告書にある2003年の講演記録から分かる。

ただ,フランス文学者の加藤恭子は「田島メモ」を直接見てはおらず,それがゆえに,歴史学者である茶園義男(1925-)からその推論(天皇の謝罪詔書の草稿の位置づけ)を強く否定されていた。しかし,今回NHKが報道した田島メモが本当ならば,茶園のほうが誤っていたということなのだろう。

天皇の戦争責任と憲法改定と再軍備をめぐるいくつかの重層的なテーマが含まれており,NHKがこれを報じたのが,どのような意図のもとでなのか,あるいは安倍政権がどうやってこれを改憲スケジュールに編み込んでいくのか,不安で不確実な暗雲がただよっている。

そうこうしているうちにも,れいわ⊗韓国⊗あいちトリエンナーレ⊗N国をめがけて,杉田水脈,橋下徹,東国原英夫らが続々と右からの工作に励んでおり,マスコミは反韓国で一色の報道。それにしても,金正恩があれほど文在寅に対して敵意を表明するのはなぜなのだろうか。板門店でのトランプ+金正恩+文在寅(あるいは最初の段階の会談)からどうしてこんなに遠くに来てしまったのだろうか,どんな理や利があるのかよくわからない。

2019年8月9日金曜日

中田敦彦のYouTube大学

ヨビノリが話題になっていると思っていたら,オリエンタルラジオ中田敦彦YouTube大学の話が飛んできた。チャンネル登録者は65万人を越え(277位),動画再生数は3700万回に達している。2019年4月から青山学院大学経営学部の客員講師に就任して,「エンターテインメントビジネス実践経営学」を担当するともに,教育系YouTuberとして,日本史,世界史,経済,政治,文学,などをテーマとした番組を配信している。タイトルは次のようなものであり,わりといい感じ。
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【政治】なぜ増え続ける?「消費税増税」〜裏に隠された歴史編〜①
25万 回視聴
【政治】消費税増税は本当に必要なのか!?〜不都合な真実編〜②
22万 回視聴
【政治】まだ解決していない「原発問題」〜原発の歴史編〜①
17万 回視聴
【政治】国家や大企業の利権が絡む「原発問題」〜真相追求編〜②
12万 回視聴
【政治】憲法改正問題を中田がわかりやすく解説!〜基礎知識編〜①
20万 回視聴
【政治】憲法改正問題(第9条)の本質に中田が切り込む!〜核心編〜②
19万 回視聴
【政治】投票に行かないと損する!?「選挙〜入門編〜①」
27万 回視聴
【政治】国家予算100兆円の使い道は!?「選挙〜入門編〜②」
17万 回視聴
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中田敦彦は,茂木健一郎の発言をめぐる議論で,松本人志を批判し,吉本興業から圧力が加わったとの話があった。中央や地方の政権との癒着でポストTV時代の延命を目指しているよしもとが差別の温床になっていることを考えると,中田敦彦には頑張ってもらいたい。が,一方でヨビノリや中田敦彦のYouTube大学の隆盛がはらむ危険性も少し感じる。ポピュリズムであるにしても,山本太郎のようなはっきりとした原理が必要なのだろうと思う。

追伸:結局中田敦彦のそれはチャンネル登録から外してしまった。

2019年8月7日水曜日

戦時性暴力の問題(1)

サイゾーウーマン というのはウェブ版の女性週刊誌のようなものなのかな?
特集「慰安婦問題」を考える第1回として,「今さら聞けない「慰安婦」問題の基本を研究者に聞く――なぜ何度も「謝罪」しているのに火種となるのか」が取り上げられていた。
関東学院大学教授の林博史先生のたいへんていねいな解説である。いわゆる「慰安婦」問題は,日本における最近のすべての民族・歴史・性差別・表現問題の中心点だと思われる。

一番の戦犯は小林よしのりだろうか。そして,中川昭一と安倍晋三とNHKだ。安倍に重用される極右女性議員たちと安倍を支える日本会議とその周辺の文化人。橋下徹と維新グループや大都市の首長たち。気づかないふりでスルーを決め込むどころか,反韓気分の火に油を注ぐ勢いのマスメディア。それによって燃え上がるネトウヨ工作員。信じ込む高齢者たち小人閑居して不善をなす。

戦時性暴力の問題(2)に続く)

2019年8月4日日曜日

あいちトリエンナーレ

あいちトリエンナーレ2019は,愛知県で開催される現代美術の国際芸術祭である。2010年から3年おきに開催されており,今回が4回目になる。芸術監督はツダるでおなじみの津田大介。2015年1月18日〜2月1日に東京練馬のギャラリー古藤で「表現の不自由展」という企画が開催された。これまで,組織的な検閲や忖度によって展示を拒否あるいは撤回された作品を集めたもので,澤地久枝さんのトークなどもあった。

あいちトリエンナーレ2019では,この「表現の不自由展」の続きとして,「表現の不自由展・その後」が企画された。慰安婦問題を契機とする少女像,昭和天皇の肖像を燃やす映像,安倍政権への警鐘を掲げるかまくら等を展示していた。これに対して抗議や脅迫が殺到するとともに,松井大阪市長に教唆された河村名古屋市長や,菅官房長官の企画に対する否定的発言が,抗議・脅迫側を支持して煽っために,企画は8月3日に中止に追い込まれてしまった

日本には,安倍政権の中核に存在する極右的(含むネトウヨ)な見解に反対する表現の自由(特に戦時の性暴力や徴用や虐殺等に関して)の余地が極めて乏しいことが改めてはっきりと可視化されてしまった。また,それを補完するように,脅迫側の存在や警察による不対応を所与の前提として出典企画側の非をとなえる江川紹子のような言論が幅をきかせている。表現の自由をあからさまに攻撃することはまずいと考える手合は,一定の集団に不快を催す企画を公金でまかなうことについて異を唱えるという作戦に出ている。

なお,表現の自由は無制限・無限定に認められるとは考えない。生存に関る人権と抵触する場合は認められるべきではないと思う。つまり,国際人権規約の次の条項が議論の出発点になるということ。その上で今回の抗議・脅迫・弾圧側にはなんの理も認められない。

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自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約 B規約)

第十九条
1 すべての者は,干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
2 すべての者は,表現の自由についての権利を有する。この権利には,口頭,手書き若しくは印刷,芸術の形態又は自ら選択する他の方法により,国境とのかかわりなく,あらゆる種類の情報及び考えを求め,受け及び伝える自由を含む。
3 2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって,この権利の行使については,一定の制限を課すことができる。ただし,その制限は,法律によって定められ,かつ,次の目的のために必要とされるものに限る。
(a) 他の者の権利又は信用の尊重
(b) 国の安全,公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護

第二十条
1 戦争のためのいかなる宣伝も,法律で禁止する。
2 差別,敵意又は暴力の扇動となる国民的,人種的又は宗教的憎悪の唱道は,法律で禁止する。

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[1]自由権規約委員会 一般的意見34(仮訳)(日本弁護士連合会)
[2]あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」をめぐって起きたこと−事実関係と論点の整理(明戸隆浩)


2019年8月2日金曜日

White List

暑い夏がさらに熱くなった日。

日本における安全保障貿易管理の枠組みの中で,大量破壊兵器及び通常兵器の開発等に使われる可能性のある貨物の輸出や技術の提供行為などを行う際,経済産業大臣への届け出およびその許可を受けることを義務付けた制度が「補完的輸出規制キャッチオール規制)」である。

その中の,グループA(輸出管理優遇措置対象国=27カ国)が,いわゆるホワイトリストに載っている国。韓国をこれから外してグループBにするというのが本日の日本政府の閣議決定の内容である。8月7日に公布,8月27日から施行予定。

自分の立場は,文在寅(ムン・ジェイン)支持,安倍内閣不支持である。経済産業省がコアになっている現政権は,どんなメリットを求めてこの措置へと踏み出したのだろうか。普通に考えると経済的なメリットは全くないので,政治的・軍事的な判断であるが,なにか不思議な気がする。

北朝鮮との緊張緩和路線を進める韓国への対抗。建前としても安全保障上の問題から今回の措置を取ったという説明をしている。今回の北朝鮮の短距離ミサイル実験にJアラートも出さずゴルフに勤しんでいた安倍だが,韓国と北朝鮮が主導し米国(トランプ)と中国とロシアが支持する朝鮮半島の緊張緩和は困るので,それを妨害するための一手と考えられる。

朝鮮半島の緊張状態は,拉致被害者を利用した国内世論の喚起や,軍事的脅威をあおって米国の軍事産業への協力の言い訳に使えることなどから,安倍にとってこれを維持することには価値がある。これはトランプに取っては困った日本の行動なのだが,ポンペオ国務長官の取り成しもいまいち迫力がなく,もしあったとしても日本はこれを蹴っている。反トランプの米国内対北朝鮮強硬派との繋がりや両者の力関係がなせる技かもしれない。

ホワイトリストからの削除は,韓国との間に軍事的な信頼関係はないと日本側が宣言したことと同じだから,日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)を韓国側が破棄しても,当然ということになる。この協定は,日本と韓国のどちらにとってよりメリットがあったのだろうか。最近の北朝鮮のミサイル実験については明らかに韓国側の情報が優位なので,今後,日本はそれが米国経由でしか得られないことになる。いずれにせよ,米軍が圧倒的な情報をもっているということであれば,日本にとってのデメリットは相対的に小さいかもしれないが・・・GSOMIA破棄は北朝鮮と韓国を接近させる方向に作用する。

10月の消費税増税を見越し,国民の関心をそらし,きたる衆議院議員選挙のための反韓気分を醸成することが目的なのだろうか。れいわ新選組の効果を無効化し,右寄りで排外主義的な気分を煽ることが,日本会議や維新をはじめとしたコアな安倍支持層を元気づけ,政権の浮揚や安倍4選あるいは憲法改正への道を開くという考えがあるのかもしれない。ハイテク産業やインバウンド需要などへの経済的なダメージがどれだけあろうが政権支持率にはほとんど影響ないという判断なのだろうか。

長期的に見て,日本の高度素材産業への影響がどうなるかは,正確な情報が読み切れない。数ヶ月で韓国は新しいサプライチェーンを構築できるという説と,日本の技術的な蓄積はそんな短期間では乗り越えられないという説がある。結局は時間スケールの問題なのであって,グローバルなハイテクサプライチェーンからの日本の剥落は進むだろう。あるいは,高度素材提供企業が倒産して,韓国企業に買収されるというオチなのかもしれないが。

[1]安全保障貿易管理(大学研究機関向け)…orz なんと生き苦しい世界なのか

2019年7月31日水曜日

参院選後の無残な大阪

れいわ新選組の特定枠で当選した,舩後靖彦議員と木村英子議員の障害に対する対応をめぐって,さまざまな意見が飛び交っている。参議院の議院運営委員会や事務局の当面の対応は妥当だと思う。これに対して維新の党首をはじめ,主要メンバーらが真っ先にかみついている。反人権・差別主義者たちの本領発揮である。松井一郎のツイートに対して,2万5千件のイイネがついていることにがく然とする。同じような空気がN国党の立花孝志を当選させ,それを核として新自由主義かつ差別的言辞を弄するはぐれもの議員の集まりが形成されつつある。大阪の教育も公園も,すべての公共的存在が商品化され,吉本を中心とした企業に売り飛ばされていく。なにせ辰巳商会中央図書館ですよ。今日で7月も終わりだが暑い夏は続く・・・

2019年7月29日月曜日

きしみ

日本経済新聞 7月29日朝刊で報じられた日経・テレビ東京による7/26-28世論調査の結果。安倍内閣支持率52%(18-39歳 58%,40-59歳 56%,60歳以上47%)。改憲国民投票賛成52%(18-39歳64%,40-59歳58%,60歳以上43%)。このまま推移すれば,憲法改正に至るのは時間の問題かもしれない。

大阪での維新の躍進は,反動的な動きだと思っていたが,大阪はこれまでも政治的には日本の先端を走っていた。中選挙区制時代の自民党の凋落や,公明党・共産党の拡大など,他の地域に先駆けていたように思う。今の動きは,大都市圏と地方の違いが顕著に現れているようだが,日本社会の閉塞感と変化への切望が,維新という形で吹き出している面もあるのだろう。

猛暑がはじまりそうな朝のベランダから,緑の水田を見下ろしていたら,蟬の鳴き声とともに,日本のきしみが響いてくるような気がした。このきしみをなんとかしたいという社会の気分が,後先を考えずに改憲という道へと走らせてしまいそうな予感がする。

複雑化・肥大化した社会システムの持つ慣性と既得権をそのままにして(受益主体は変わるかもしれないが),社会の変革を進めようとすることが,社会の高度情報化(ネットワーク→AI)と絡み合ってグロテスクな様相を呈している。20世紀のソ連などによる社会主義と計画経済は失敗に終わったが,21世紀のIT技術に根ざした資本主義の上に新しい計画経済が構築されようとしている。PDCAとエビデンスの悪夢が世界を覆っている。

2019年7月25日木曜日

参院選(2019)の結果

開票直後の新聞やテレビでは,自民公明の与党が勝利と大々的に報じていたような気がしたが,落ち着いてみるともう少しややこしくなっていた。

・投票率はかなり下がった(特に若年層)。これは政権・マスコミの狙いどおり。
・自民党は議席数をかなり減らしたが,公明党は低投票率に救われ議席数を増やした。
・若年層を中心として支持の高い維新の会やN国党が議席をかなり伸ばした。N国党はYouTubeで資金調達し,選挙区の供託金の300万円を出資金として立候補者をつのり,政党助成金で還元するというビジネスモデルをつくってしまった。政党要件の2%は確保できるというシミュレーションにもとづいている。彼らは政策(NHK放送のスクランブル化のみ)ではなく,単純な利殖の手段として国会を利用している。背後関係はあるかないか不明だが,維新と同様の新自由主義的なヘイト政党であって親安倍であることは違いない。
・今回,立憲の数が増えたのは,国民民主党との再編過程のボーナスにすぎない。
・社民共産の支持者高齢化が進行し,得票率が顕著に下がった。その分をれいわ新選組がカバーした。3党(共社れ)の比例区得票率合計は,15.39%→15.59%である。立憲が食われたという見方が正しいかどうかは疑問。なお,3党(自公維)の比例区得票率合計は,58.63%→58.22%だ。

投票率 54.7%→48.8%
議席数 総数 242→245 
     2/3  162→164   比例政党得票率
    自民 124→113  自民 35.91→35.37 △
    公明   25→  28  公明 13.52→13.05 △
    維新   13→  16  維新   9.20→  9.80 ○
    N国  0→ 1  N国     0→  1.97 ○
    国民   23→  21  国民  (20.98)→  6.95 −
    立憲   24→  32  立憲  (20.98)→15.81 −
    社民  2→ 2  社民   2.74→  2.09 ×
    共産   14→  13  共産 10.74→  8.95 ×
    れいわ 1→ 2  れいわ(1.91)→  4.55 ○
    無所属  12→  17
    欠員  4→ 0
    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
    改憲派 162+α → 158/179+β

当初の予定通りに国民民主党を改憲グループに含めれば,179+βで改憲可能になった。
比例得票率でいうと,改憲派(自民+公明+維新+N国+国民)が67.14%で反改憲派(立憲+社民+共産+れいわ)が31.40%である。結局,この参議院選挙が分岐点になったということかもしれない。国民民主党内がどの程度まとまるか,造反が出るかにもよるが,ベネッセと吉本興業(+テレビ・新聞・広告)を押さえた安倍政権は強い。もし,上記の改憲派を背景に安倍がゴーサインを出すことができれば,どんどん改憲キャンペーンのCMを打って,大阪の維新のような様相が全国的に展開されるのは火をみるより明らか。

安倍自身は,背景組織などを踏まえた改憲狙いかもしれないが,別に,極右に義理立てする必要のない新自由主義派のとりまきは,消費税増税+インボイス導入(これ自身は合理的政策だと思う)による不満や反政権の動きを打ち消すための手段として考えているのでは。もちろん,憲法9条,24条の改悪は,それぞれ関連業界の利益(防衛産業はトランプにむしられているか?)と,家族の扶養義務強調=社会保障政策の超軽量化による財政負担の軽減というメリットがあるわけで。

2019年7月23日火曜日

ベネッセと吉本興業

単純化された物語:安倍政権は教育を梃子とした日本の改造を目指してきた。それが新自由主義的な動きと連動して様々な問題を噴出させている。ベネッセは幼児から大学入試までの知育をカバーし,吉本興業はお笑いによる差別的な構造の再生産を通じて徳育をカバーする。その背景には,日本会議的な反左翼や反人権のトーンで染められたタペストリーがあり,官僚崩れのフィクサーが蠢いて行政や政治を結ぶ網目を張り巡らしている。新しい教育基本法の下で飼いならされた若者たちはこの網目に搦め捕られていく・・・

大阪都構想・憲法改正のための強力な宣伝エンジンとしての吉本興業,そして,その報酬としての沖縄開発利権とIT教育システム利権。松本人志に象徴されるいじめの構造を内在化したグロテスクなヘイトチームが,大阪から日本を覆い尽して行く。安倍が吉本の舞台に立ち,吉本芸人が首相を訪問するのは,すべてこのための地均しだった。


2019年7月15日月曜日

分断と中庸

7月14日の東京新聞の参議院選に関する記事「選挙ツイート受信に偏り 無党派ユーザー「1党だけ」63%」は,2017年の衆議院議員選挙に対する豊橋技術科学大の吉田光男助教(計算社会科学)と東京大の鳥海不二夫准教授(同)の研究を紹介している。衆議院選挙前後の1ヶ月くらいの政党の発信を受け取ったユーザ1600万人のうち,政党の公式アカウントを直接フォローしたりリツイートするユーザ(政党支持層)以外の受信者1300万人を無党派的なユーザとして分析した。このうち6割が1党だけからしか情報を受け取っておらず,分断(エコーチェンバー現象)が進んでいるとしたものだ。

佐々木俊尚がこれを受けて,解説している。ネット上ではエコーチェンバーによって左右の過激な極論が拡大しており,中庸な意見をすくい上げる必要がある,というものだ。佐々木自身が左派に暴力的なものいいはやめたほうがよいといったところ,トーンポリシング(抗議内容ではなく態度を問題にして批判をそらす行為)だという返信が殺到したとのこと。図星をさされたので,東京新聞で反論している。佐々木も主戦場のミキ・デザキにもう一度学んでほしいところである。

大学時代に読んだ岩波新書の「現代の神話(B.ダンハム)」では,第五章の「どんな問題にも二つの面があるものだということ」,が一番印象に残った。大学に入学したのは1972年で,キャンパスには70年安保前夜の大学闘争の余熱が少しだけ残っていたが,いずれにせよ我々は遅れてきたのであった。それでも,キャンパスの中で生ずる様々な問題に対して,意思決定を迫られる場面はあり,どのような態度をとり行動をするかを迷い続けることになる。そんな中で読んだアメリカの進歩的哲学者ダンハムの新書本は非常に読みやすく納得しやすかった。もちろん,ドイツ・イデオロギーや経済学・哲学草稿や弁証法的唯物論入門(モーリス・コーンフォース…)などの友人との勉強会もあったのだが,素人にはちょっとハードルが高すぎた。

ダンハムは,次のように書いた。
最後に,重大問題に関しては,中立ということは1つの幻想にすぎない,ということをのべておかなければならない。一たび実際に問題に関して二つの立場ができてしまえば,なにをやろうと,やるまいと,どちらかの側を助けることになる。かような時代になっても民主主義を助けようとしなかったはみかみ屋の紳士たちは,ファシズムを助けたものとみなさなければならない。こういう紳士たちの「科学的」な無為こそは,ヒットラーが一番あてにしたものの一つであって,それで相当な成功をおさめたのである。
(「現代の神話」−正しいものの考え方− (上)岩波新書168aより引用) 

いまでは,ネット上で活躍し,社会的な発言をする科学者たちのある部分(主に反ニセ科学派から構成される)は,「科学的」で中立な立場などとっておらず,強者の論理が貫徹する「科学」の立場に立って堂々と自説を展開し,弱者たちの「非科学的」な言説を,「科学的でない」ことに加えて「倫理」や「人権」の名目でもって退治しようとしている。もちろんかつても政府や企業の立場に立つ御用学者はたくさんいたが,インターネットの言説空間は新しい種類の集団を生み出した。これをエア御用と名付けたのは秀逸だったと思うが,かえって問題がややこしくなるだけだったかもしれない。

さて,佐々木俊尚は水平社宣言をどう評価するのだろうか。中庸性からの逸脱の先駆者であり,実際に様々な副作用を発生したではないかとして,真っ先に否定すべき対象だと認識するのかもしれない。

2019年7月13日土曜日

韓国と日本

A谷君から電話あり。韓国の件どう思う,ひどくないかと。いや,世間はみな韓国を批判しているけど,自分は文在寅支持だと答える。自分の周りの友達もみな韓国が悪いと思っているようだ。いや,日本人の大半がそうなのだろう。安倍政権は参議院選挙のために反韓国を持ち出した。前回の2016年参議院選挙では反北朝鮮だった。慰安婦問題徴用工問題貿易管理問題と続く一連の流れで,NHKのニュースや民放のニュースバラエティを見続ければ,必然的に日本人の大半の意見が形成されるのだと思う。これが,日本の強みとしての高度素材産業の優位性を失う階段を降りるきっかけになりそうだ。

P. S. 7/25/2019「対韓輸出規制」,電子機器メーカーの怒りの矛先は日本に向く?
https://eetimes.jp/ee/articles/1907/10/news027.html

2019年7月10日水曜日

第25回参議院議員通常選挙

第25回参議院議員通常選挙の投票日は7月21日(日)だが,期日前投票のため市役所まで往復した。今回の目玉は,山本太郎がひきいる「れいわ新選組」。自動車のラジオからは,トランプ政権が有志連合の軍をホルムズ海峡に派遣して,イランに圧力をかけようとしているというニュースが流れてきた。日本への踏み絵だ。憂鬱な時代の変わり目がきてしまった。そして,日本もまた,トランプに倣うかのように,国際捕鯨委員会から脱退しただけでなく,韓国への貿易制裁まではじめてしまった。

こわいものみたさで,自民党の政見放送を見る。内容はまったくひどいのだが,三原じゅん子のしゃべり方は悪くはない。そのため,安倍晋三の滑舌の悪さが際立ってしまう。いつもはNHKのニュースの「神」編集で見ているのでそこまで感じないことが多いのだけれど,通しで聞くとこれだ・・・orz。やはり,国会審議はいずれかのチャンネルでノーカットですべてを放送すべきである。しかし,この聞き苦しさが,とんでもない話を良く噛まずにスッと丸飲みさせるための秘訣なのかもしれない。あれ,アベノミクスといわず三本の矢の経済政策といったのはなぜだ。その後,アベノミクスの果実を生かしてとのお言葉あり。後半は野党批判でまとめ,三原じゅん子の,先の国会演説を褒めるシンゾー。