菅野完が,菅政権による学術会議人事への介入に抗議して,10/2の午後から官邸前でハンストに入っている。前日あたりに,YoutubeのSEE IT NOW -LIVEで,この重大な事案にどうやって意思表示するかを語っていた。大袈裟太郎が,そのスタート時の様子を「菅野完ハンスト、密着ドキュメント」でライブ中継している。マスコミが当然のようにこれを取り上げない中,田中龍作ジャーナルが,本人にインタビューをしている。1週間目の10/9に,大竹まことゴールデンラジオ(室井佑月と青木理)が同じくオンラインインタビューを流していた。日本の大手メディアが完全に無視する中,海外メディアのARAB NEWSが "Japanese man goes on hunger strike in front of Prime Minister Suga's office" として紹介している。
芥川龍之介が「蜘蛛の糸」を発表して百年。高二の秋の文化祭,クラスの仮装行列のテーマが 蜘蛛の糸だった。お釈迦様の極楽タワーの竹を近所から切り出し,地獄の焔と煙の絵を描いた。犍陀多に続いて蜘蛛の糸(登山部の赤いザイル)に群がる地獄の亡者だったころ。
2020年10月12日月曜日
ハンスト(1)
2020年10月8日木曜日
ネイチャーの論説
どうしてこんな世界になってしまったのか。
10月6日号のネイチャーが,"Why Nature needs to cover politics now more than ever" という論説を掲載した。政治が科学を蹂躙している例として,アメリカのトランプ大統領,ブラジルのボルソナール大統領,インドのモディ首相にならんで,日本の菅首相の学術会議の問題も取り上げられている。
その結論を引用すると次のようになる。
国が学術の独立性を尊重するという原則は、現代の研究を支える基盤の一つであり、この原則が侵食されると、研究と政策立案における質の基準と完全性に重大なリスクが生じる。政治家がこの誓約を破れば、人々の健康、環境、社会を危険にさらすことになります。
これが、ネイチャーのニュース特派員が、世界中の政治と研究で何が起こっているのかを見て報告するための努力を倍増させる理由です。それは、私たちの専門家の解説の著者が開発を評価し、批判し続ける理由です。
そして、本誌の編集ページでは、政治家に対して、学習と協力の精神を受け入れ、異なる視点を大切にし、科学的・学術的自治へのコミットメントを尊重するよう、引き続き呼びかけていきます。
科学と政治の関係を導いてきた慣習が脅かされており、ネイチャーは黙って見ているわけにはいきません。
ネイチャー 586, 169-170 (2020)
そして,Scienceにもとりあげられた。"Japan's new prime minister picks fight with Science Council By Dennis Normile Oct. 5, 2020"
2020年10月3日土曜日
学術会議(1)
第一条 この法律により日本学術会議を設立し、この法律を日本学術会議法と称する。
2 日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。
3 日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする。
第二条 日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする。
第二章 職務及び権限
第三条 日本学術会議は、独立して左の職務を行う。
一 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。
二 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。
第四条 政府は、左の事項について、日本学術会議に諮問することができる。
一 科学に関する研究、試験等の助成、その他科学の振興を図るために政府の支出する交付
金、補助金等の予算及びその配分
二 政府所管の研究所、試験所及び委託研究費等に関する予算編成の方針
四 その他日本学術会議に諮問することを適当と認める事項
第五条 日本学術会議は、左の事項について、政府に勧告することができる。
一 科学の振興及び技術の発達に関する方策
二 科学に関する研究成果の活用に関する方策
三 科学研究者の養成に関する方策
四 科学を行政に反映させる方策
五 科学を産業及び国民生活に浸透させる方策
六 その他日本学術会議の目的の遂行に適当な事項
第六条 政府は、日本学術会議の求に応じて、資料の提出、意見の開陳又は説明をすることが できる。
第六条の二 日本学術会議は、第三条第二号の職務を達成するため、学術に関する国際団体に 加入することができる。
2 前項の規定により学術に関する国際団体に加入する場合において、政府が新たに義務を負 担することとなるときは、あらかじめ内閣総理大臣の承認を経るものとする。
参議院議員の小西洋之は,twitterで,「現時点で内閣府が認めた事実。確信犯だ」
として,以下の経緯を明らかにしている。
・H30(2018) に内閣府と内閣法制局で「総理が任命拒否可」の解釈を作成
・本年(2020) 8/31に105名推薦名簿を受理
・9月上旬に上記解釈を再確認
・9/16の菅政権発足後,9/24に6名除外した99名の任命起案を起草し,9/28決裁
6名が任命されないことが新しい委員の任期がはじまる10/1の2日前に,学術会議側に伝えられたようだが,その結果,時間の猶予もなくこの事態を招くことになった。
[2]日本学術会議
[3]日本学術会議の設立と組織の変遷
[5]日本学術会議関連法規集
[6]日本学術会議の沿革
[7]日本学術会議の在り方
[8]総合科学技術・イノベーション会議CSTI
[9]彼らが最初共産主義者を攻撃したとき(ニーメラー)
[10]滝川事件|天皇機関説事件|矢内原忠雄事件|河合栄治郎事件
2020年9月10日木曜日
首相動静(3)
さっそくできあがったperl scriptで2020年1-8月,2019年,2018年,2017年と44ヶ月分の首相動静を収集してみた。ところが,2016年は空だった。そうか,時事通信は2017年度以降からしかアーカイブされていないのか。首相動静をインターネットで検索してみたところ,大手各紙に対応するものがある。2016年をキーワードに含めるとかろうじて朝日新聞のそれが一部ひっかかったがURLのエンコード方法が不明。毎日新聞の「首相日々」と読売新聞の「安倍首相の一日」は有料記事の中に埋もれてしまっている。また,日本経済新聞の「首相官邸デジタル」が「写真で見る永田町」に変わって情報量が激減。産経新聞の「安倍日誌」は,URL形式が一定ではない。なかなか難儀な話ではある。
2020年9月6日日曜日
おもちゃ
一月万冊の清水有高が元れいわ新選組参議院議員候補者の安冨歩や電通五輪に鋭く切り込む元博報堂の本間龍などをゲストとしてyoutubeチャンネルでやっている番組をときどきみている。菅野完のtwicas/youtubeチャンネルと並んで時間が消費されていく。
今日の話は,安倍晋三が本丸ではなかったのではという件である。第2次安倍政権を実現するべくいやがる本人を引っ張り出したのが菅義偉であるという大下英治説を紹介していた。これまでは,安倍晋三と政策秘書官の今井尚哉や事務担当秘書官の佐伯耕三などの経済産業省系官僚がコアであり,その周辺に菅+麻生+二階が回っているというイメージだったけれど,どうやらこれは天動説であり,実際は地動説が正しかったのかもしれない。
その根拠として取り上げられたのが,安倍晋三のおもちゃとしての憲法改正と拉致被害者問題というコンセプトである。ともに,7年半の間にこれっぽっちも進んでいないしやろうともしていない。そもそも憲法改正の正式な自由民主党案ですら誰もまとめようとしていない。菅義偉が担当の拉致問題も一ミリも動かしていない。これらは安倍が主導権を発揮しなかったというより,むしろ晋三に与えられたおもちゃ(右派勢力を引きとどめるための)であり,地動説の太陽グループが首相をその座に据えておくのに与えた道具だったというわけだ。
それにもかかわらず安倍晋三が主体的に動いている部分がゼロというわけではないと思われる。森友問題,加計問題,桜を見る会・・・(隠蔽作業が菅によるとしても),あるいは,稲田朋美,杉田水脈,河井案里などのお友達人事,甘利明の件などなど。
2020年8月29日土曜日
内閣総理大臣
日本国憲法
第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
○2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
○3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
第六十七条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
○2 衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
第七十一条 前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。
自由民主党党則
第四条 本党に、総裁を置く。
2 総裁は、党の最高責任者であって、党を代表し、党務を総理する。
第五条 本党に、副総裁を置くことができる。
2 副総裁は、総裁を補佐し、総裁に事故があるとき、又は総裁が欠けたときは、総裁の職務を行う。
第六条 総裁は、別に定める総裁公選規程により公選する。
2 総裁が任期中に欠けた場合には、原則として、前項の規定により後任の総裁を公選する。ただし、特に緊急を要するときは、党大会に代わる両院議員総会においてその後任を選任することができる。
3 前項ただし書の規定により総裁を選任する際の選挙人は、両院議員及び都道府県支部連合会代表各三名によるものとする。
総裁公選規程
(総裁選挙の施行期日等)
第八条 総裁選挙の施行期日は、総裁の任期満了の一か月前までに(総裁が任期中に欠けたことにより臨時の総裁選挙を行う場合にあっては、速やかに)、党本部管理委員会が総務会の議を経てこれを決定し、公表するものとする。
2 党本部管理委員会は、総裁選挙の施行期日の決定に当たり、総裁選挙の告示日、候補者届出締切日、投票日等の選挙日程を定めるものとする。
3 総裁選挙の告示は、党所属国会議員の投票(以下「議員投票」という)の投票日の十二日前までにしなければならない。
4 議員投票の投票日は、総裁の任期満了日前十日以内とする。
(得票数)
第二十一条 総裁選挙における総裁の候補者の得票数は、議員投票による得票数と、党員算定票との合計とする。
(当選者)
第二十二条 総裁選挙においては、議員投票の有効投票及び総党員算定票(次条において「有効投票等」という)の過半数を得た者をもって当選者とする。
(決選投票)
第二十三条 総裁選挙において有効投票等の過半数を得た者がなかった場合には、投票日において、第二十一条に規定する総裁の候補者の得票数の多かった上位者二人について党所属国会議員及び、都道府県各一票による決選投票を行い、その結果、得票数の多かった者をもって当選者とする。
追伸:安倍晋三の公式twitterの18フォロー中で,外国元首等を除く日本人は,佐藤正久,猪瀬直樹,安倍昭恵の3名。安倍昭恵の9フォロー中で,政治家は参議院議員の世耕弘成1名だけ。まあ,2012年でとまっているけれどね。
2020年7月31日金曜日
女帝 小池百合子(2)
2020年7月7日火曜日
領空の定義
2020年6月3日水曜日
特集|迷走する教育(5)
10.高橋哲(教育法学)
改正給特法総論
11.藤川伸治(NPO法人「教育改革2020 共育の杜」理事長)
給特法改正は長時間労働解消につながるのか
12.赤田圭亮(元中学校教員)
教員の「労働」は本当に「特殊」なのか?
わかったこと:
○1948年ごろ,学校の教職員の給与については,測定不能性のため一律48時間労働として一般の公務員より10%の上積みがされていた
○労働基準法において1年単位変形労働時間制は,厚生労働省令で定めるとされていたところを,給特法改正案では文部科学省令の管轄にすりかえられた。
○長時間労働解消が今回の議論の出発点であったものが,まったくその解消に寄与しない方法に帰結してしまった。
○田中角栄が教員給与の改善を図るのに尽力したという説は半分は正しいにせよ,文教族の様々な思惑の元での動きと教職員組合の動向の関係の下に行われている。
○全日教連は右翼でその半分が栃木県に集結している。
[1]公立の義務教育諸学校等の教職員の給与等に関する特別措置法(1971)
[2]学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法(1972)
[3]公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン(2019)
[4]「人材確保法」の成立過程 −政治主導による専門職化の視点から−(丸山和昭)
[5]教員給与は適切に運用されているのか(上林陽治)
[6]学校における働き方改革について(文部科学省)
[7]学校教員の働き方を考える教育学者の会
[8]日本教職員組合(1947:23.6万人)・全日本教職員組合(1991:7.1万人)・全日本教職員連盟(1984:1.9万人)
2020年5月31日日曜日
特集|迷走する教育(4)
2020年5月30日土曜日
特集|迷走する教育(3)
英語入試改革の挫折から迷走を抜け出す道を探る
羽藤(はとう)先生は,2021年度入試における英語民間試験の導入阻止のために最も力を注いだ方々の1人である。おかげで当面はなんとか凌げたが,旗振り役の下村博文やスポークスマンの鈴木寛の息の根は止まっていないので,今後の展開は予断を許さない。「英語の四技能」というマジックワードと大学入試で高校教育を変えるという短絡の二重の誤謬をベースに利権誘導を図ってきたチームのよりどころとなるCFER基準持ち込みの欺瞞性が明らかにされる。そして,本当の「対案」がインプットの確保にあることがはっきりと示されている。十分な経験を踏まえた信頼できる専門家の知が生かされない日本の政策決定についての最後の結論が光る。「失敗しているのは英語学習者や英語教師ではなく,粗悪な英語教育政策しか繰り出すことのできない政府・文科省である。入試改革より,教育政策の決定プロセスの見直しと空回りする一連の改革の中核をになってきた研究者・教育者の刷新の方が喫緊の課題である」
7.阿部公彦(英米文学/評論)
「すばらしい英語学習」の落とし穴
まずはじめに,公共性の高い入試を民間業者に丸投げするという仕組みが諸悪の根源であることがはっきりと示されている。また,「四技能主義」の虚妄がていねいに解き明かされる。これに対抗するものが,英語の運動感覚であるというところは,そうだとしてもどうやってそれを実現させていくのかという戦略を詳しく聞きたかった。
2020年5月28日木曜日
特集|迷走する教育(1)
以下簡単に感想を述べる。
1.大内裕和(教育社会学)・紅野謙介(日本近現代文学)
逃走の教育から闘争の教育へ
紅野(こうの)さんは麻布で中高の教員を勤めていた経験を持ち現在は日大文理学部の教授である。そこで国語教育と関連した話になるのだが,これがむしろ本件の本質をついているように思った。「言葉」の問題なのだ。「資質」「生きる力」「ゆとり」「主体性」「内容学」。これらの気味悪い言葉に違和感と異論を唱えられるのも最初の内だけで,あっという間にそれらに搦め捕られてしまい,議論はそのマジックワードを前提として進めざるを得なくなる。ニュートンの運動方程式が成立しない非慣性系のわけのわからない慣性力の支配のもとに屈服させられてしまった自分がそこにあった。
2.荒井克弘(高等教育論)
大学入学共通テストの現在
「高大接続」というマジックワードを考えるときに,日本の中等教育及び高等教育のシステムを他国のそれとていねいに比較して議論する必要性を感じた。例の下村・稲田一派が巻き返しを図っている9月入学にしてもそうだ。どこがグローバルスタンダードなのか。それもこれもジャーナリズムの検証機能の劣化がなせる技。
3.南風原朝和(心理統計学/テスト理論)
大学入試改革を「私的に」振り返る
ここで我々がひっかけられたマジックワードが「一点刻みの知識・技能偏重」だ。テスト理論の専門家の立場からこれにたいする明確で分かりやすい反論を加えているところが一番印象的であった(下図参照)。
2020年5月16日土曜日
東京高検検事長の定年延長についての元検察官による意見書(全文)
1 東京高検検事長黒川弘務氏は、本年2月8日に定年の63歳に達し退官の予定であったが、直前の1月31日、その定年を8月7日まで半年間延長する閣議決定が行われ、同氏は定年を過ぎて今なお現職に止(とど)まっている。
検察庁法によれば、定年は検事総長が65歳、その他の検察官は63歳とされており(同法22条)、定年延長を可能とする規定はない。従って検察官の定年を延長するためには検察庁法を改正するしかない。しかるに内閣は同法改正の手続きを経ずに閣議決定のみで黒川氏の定年延長を決定した。これは内閣が現検事総長稲田伸夫氏の後任として黒川氏を予定しており、そのために稲田氏を遅くとも総長の通例の在職期間である2年が終了する8月初旬までに勇退させてその後任に黒川氏を充てるための措置だというのがもっぱらの観測である。一説によると、本年4月20日に京都で開催される予定であった国連犯罪防止刑事司法会議で開催国を代表して稲田氏が開会の演説を行うことを花道として稲田氏が勇退し黒川氏が引き継ぐという筋書きであったが、新型コロナウイルスの流行を理由に会議が中止されたためにこの筋書きは消えたとも言われている。
いずれにせよ、この閣議決定による黒川氏の定年延長は検察庁法に基づかないものであり、黒川氏の留任には法的根拠はない。この点については、日弁連会長以下全国35を超える弁護士会の会長が反対声明を出したが、内閣はこの閣議決定を撤回せず、黒川氏の定年を超えての留任という異常な状態が現在も続いている。
2 一般の国家公務員については、一定の要件の下に定年延長が認められており(国家公務員法81条の3)、内閣はこれを根拠に黒川氏の定年延長を閣議決定したものであるが、検察庁法は国家公務員に対する通則である国家公務員法に対して特別法の関係にある。従って「特別法は一般法に優先する」との法理に従い、検察庁法に規定がないものについては通則としての国家公務員法が適用されるが、検察庁法に規定があるものについては同法が優先適用される。定年に関しては検察庁法に規定があるので、国家公務員法の定年関係規定は検察官には適用されない。これは従来の政府の見解でもあった。例えば昭和56年(1981年)4月28日、衆議院内閣委員会において所管の人事院事務総局斧任用局長は、「検察官には国家公務員法の定年延長規定は適用されない」旨明言しており、これに反する運用はこれまで1回も行われて来なかった。すなわちこの解釈と運用が定着している。
検察官は起訴不起訴の決定権すなわち公訴権を独占し、併せて捜査権も有する。捜査権の範囲は広く、政財界の不正事犯も当然捜査の対象となる。捜査権をもつ公訴官としてその責任は広く重い。時の政権の圧力によって起訴に値する事件が不起訴とされたり、起訴に値しないような事件が起訴されるような事態が発生するようなことがあれば日本の刑事司法は適正公平という基本理念を失って崩壊することになりかねない。検察官の責務は極めて重大であり、検察官は自ら捜査によって収集した証拠等の資料に基づいて起訴すべき事件か否かを判定する役割を担っている。その意味で検察官は準司法官とも言われ、司法の前衛たる役割を担っていると言える。
こうした検察官の責任の特殊性、重大性から一般の国家公務員を対象とした国家公務員法とは別に検察庁法という特別法を制定し、例えば検察官は検察官適格審査会によらなければその意に反して罷免(ひめん)されない(検察庁法23条)などの身分保障規定を設けている。検察官も一般の国家公務員であるから国家公務員法が適用されるというような皮相的な解釈は成り立たないのである。
3 本年2月13日衆議院本会議で、安倍総理大臣は「検察官にも国家公務員法の適用があると従来の解釈を変更することにした」旨述べた。これは、本来国会の権限である法律改正の手続きを経ずに内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更したという宣言であって、フランスの絶対王制を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる「朕(ちん)は国家である」との中世の亡霊のような言葉を彷彿(ほうふつ)とさせるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性を含んでいる。
時代背景は異なるが17世紀の高名な政治思想家ジョン・ロックはその著「統治二論」(加藤節訳、岩波文庫)の中で「法が終わるところ、暴政が始まる」と警告している。心すべき言葉である。
ところで仮に安倍総理の解釈のように国家公務員法による定年延長規定が検察官にも適用されると解釈しても、同法81条の3に規定する「その職員の職務の特殊性またはその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分の理由があるとき」という定年延長の要件に該当しないことは明らかである。
加えて人事院規則11―8第7条には「勤務延長は、職員が定年退職をすべきこととなる場合において、次の各号の1に該当するときに行うことができる」として、①職務が高度の専門的な知識、熟練した技能または豊富な経験を必要とするものであるため後任を容易に得ることができないとき、②勤務環境その他の勤務条件に特殊性があるため、その職員の退職により生ずる欠員を容易に補充することができず、業務の遂行に重大な障害が生ずるとき、③業務の性質上、その職員の退職による担当者の交替が当該業務の継続的遂行に重大な障害を生ずるとき、という場合を定年延長の要件に挙げている。
これは要するに、余人をもって代えがたいということであって、現在であれば新型コロナウイルスの流行を収束させるために必死に調査研究を続けている専門家チームのリーダーで後継者がすぐには見付からないというような場合が想定される。
現在、検察には黒川氏でなければ対応できないというほどの事案が係属しているのかどうか。引き合いに出されるゴーン被告逃亡事件についても黒川氏でなければ、言い換えれば後任の検事長では解決できないという特別な理由があるのであろうか。法律によって厳然と決められている役職定年を延長してまで検事長に留任させるべき法律上の要件に合致する理由は認め難い。
4 4月16日、国家公務員の定年を60歳から65歳に段階的に引き上げる国家公務員法改正案と抱き合わせる形で検察官の定年も63歳から65歳に引き上げる検察庁法改正案が衆議院本会議で審議入りした。野党側が前記閣議決定の撤回を求めたのに対し菅義偉官房長官は必要なしと突っぱねて既に閣議決定した黒川氏の定年延長を維持する方針を示した。こうして同氏の定年延長問題の決着が着かないまま検察庁法改正案の審議が開始されたのである。
この改正案中重要な問題点は、検事長を含む上級検察官の役職定年延長に関する改正についてである。すなわち同改正案には「内閣は(中略)年齢が63年に達した次長検事または検事長について、当該次長検事または検事長の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該次長検事または検事長を検事に任命することにより公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由があると認めるときは、当該次長検事または検事長が年齢63年に達した日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で期限を定め、引き続き当該次長検事または検事長が年齢63年に達した日において占めていた官及び職を占めたまま勤務をさせることができる(後略)」と記載されている。
難解な条文であるが、要するに次長検事および検事長は63歳の職務定年に達しても内閣が必要と認める一定の理由があれば1年以内の範囲で定年延長ができるということである。
注意すべきは、この規定は内閣の裁量で次長検事および検事長の定年延長が可能とする内容であり、前記の閣僚会議によって黒川検事長の定年延長を決定した違法な決議を後追いで容認しようとするものである。これまで政界と検察との両者間には検察官の人事に政治は介入しないという確立した慣例があり、その慣例がきちんと守られてきた。これは「検察を政治の影響から切りはなすための知恵」とされている(元検事総長伊藤栄樹著「だまされる検事」)。検察庁法は、組織の長に事故があるときまたは欠けたときに備えて臨時職務代行の制度(同法13条)を設けており、定年延長によって対応することは毫(ごう)も想定していなかったし、これからも同様であろうと思われる。
今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺(そ)ぐことを意図していると考えられる。
5 かつてロッキード世代と呼ばれる世代があったように思われる。ロッキード事件の捜査、公判に関与した検察官や検察事務官ばかりでなく、捜査、公判の推移に一喜一憂しつつ見守っていた多くの関係者、広くは国民大多数であった。
振り返ると、昭和51年(1976年)2月5日、某紙夕刊1面トップに「ロッキード社がワイロ商法 エアバスにからみ48億円 児玉誉士夫氏に21億円 日本政府にも流れる」との記事が掲載され、翌日から新聞もテレビもロッキード関連の報道一色に塗りつぶされて日本列島は興奮の渦に巻き込まれた。
当時特捜部にいた若手検事の間では、この降って湧いたような事件に対して、特捜部として必ず捜査に着手するという積極派や、着手すると言っても贈賄の被疑者は国外在住のロッキード社の幹部が中心だし、証拠もほとんど海外にある、いくら特捜部でも手が届かないのではないかという懐疑派、苦労して捜査しても造船疑獄事件のように指揮権発動でおしまいだという悲観派が入り乱れていた。
事件の第一報が掲載されてから13日後の2月18日検察首脳会議が開かれ、席上、東京高検検事長の神谷尚男氏が「いまこの事件の疑惑解明に着手しなければ検察は今後20年間国民の信頼を失う」と発言したことが報道されるやロッキード世代は歓喜した。後日談だが事件終了後しばらくして若手検事何名かで神谷氏のご自宅にお邪魔したときにこの発言をされた時の神谷氏の心境を聞いた。「(八方塞がりの中で)進むも地獄、退くも地獄なら、進むしかないではないか」という答えであった。
この神谷検事長の国民信頼発言でロッキード事件の方針が決定し、あとは田中角栄氏ら政財界の大物逮捕に至るご存じの展開となった。時の検事総長は布施健氏、法務大臣は稲葉修氏、法務事務次官は塩野宜慶(やすよし)(後に最高裁判事)、内閣総理大臣は三木武夫氏であった。
特捜部が造船疑獄事件の時のように指揮権発動に怯(おび)えることなくのびのびと事件の解明に全力を傾注できたのは検察上層部の不退転の姿勢、それに国民の熱い支持と、捜査への政治的介入に抑制的な政治家たちの存在であった。
国会で捜査の進展状況や疑惑を持たれている政治家の名前を明らかにせよと迫る国会議員に対して捜査の秘密を楯(たて)に断固拒否し続けた安原美穂刑事局長の姿が思い出される。
しかし検察の歴史には、捜査幹部が押収資料を改ざんするという天を仰ぎたくなるような恥ずべき事件もあった。後輩たちがこの事件がトラウマとなって弱体化し、きちんと育っていないのではないかという思いもある。それが今回のように政治権力につけ込まれる隙を与えてしまったのではないかとの懸念もある。検察は強い権力を持つ組織としてあくまで謙虚でなくてはならない。
しかしながら、検察が萎縮して人事権まで政権側に握られ、起訴・不起訴の決定など公訴権の行使にまで掣肘(せいちゅう)を受けるようになったら検察は国民の信託に応えられない。
正しいことが正しく行われる国家社会でなくてはならない。
黒川検事長の定年延長閣議決定、今回の検察庁法改正案提出と続く一連の動きは、検察の組織を弱体化して時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動きであり、ロッキード世代として看過し得ないものである。関係者がこの検察庁法改正の問題を賢察され、内閣が潔くこの改正法案中、検察幹部の定年延長を認める規定は撤回することを期待し、あくまで維持するというのであれば、与党野党の境界を超えて多くの国会議員と法曹人、そして心ある国民すべてがこの検察庁法改正案に断固反対の声を上げてこれを阻止する行動に出ることを期待してやまない。
【追記】この意見書は、本来は広く心ある元検察官多数に呼びかけて協議を重ねてまとめ上げるべきところ、既に問題の検察庁法一部改正法案が国会に提出され審議が開始されるという差し迫った状況下にあり、意見のとりまとめに当たる私(清水勇男)は既に85歳の高齢に加えて疾病により身体の自由を大きく失っている事情にあることから思うに任せず、やむなくごく少数の親しい先輩知友のみに呼びかけて起案したものであり、更に広く呼びかければ賛同者も多く参集し連名者も多岐に上るものと確実に予想されるので、残念の極みであるが、上記のような事情を了とせられ、意のあるところをなにとぞお酌み取り頂きたい。
令和2年5月15日
元仙台高検検事長・平田胤明(たねあき)
元法務省官房長・堀田力
元東京高検検事長・村山弘義
元大阪高検検事長・杉原弘泰
元最高検検事・土屋守
同・清水勇男
同・久保裕
同・五十嵐紀男
元検事総長・松尾邦弘
元最高検公判部長・本江威憙(ほんごうたけよし)
元最高検検事・町田幸雄
同・池田茂穂
同・加藤康栄
同・吉田博視
(本意見書とりまとめ担当・文責)清水勇男
法務大臣 森まさこ殿
2020年5月10日日曜日
検察庁法改正案に反対する
森友−加計−桜などの一連の流れの総決算で,自民−公明−維新が国会の強行突破を図っている。ひどい話である。制度としても非常に大きな問題をかかえてしまう。
検察庁法は検察庁の組織と検察官の任免の手続きを定めている。今回の改正案は,国家公務員法等の一部を改正する法律案の中にあって,その問題点のキモは,「役職定年を導入し,検事正については法務大臣の判断,次長検事および検事長については内閣の判断で,個別に役職定年を延長することができるようにしたところ(なお,現在の検察庁法には役職定年の制度はない)」のようだ。
第四条 検察庁法(昭和二十二年法律第六十一号)の一部を次のように改正する。などのあたりだろうか。
・・・
法務大臣は、前項の規定にかかわらず、年齢が六十三年に達した検事正の職を占める検事について、当該検事の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該検事を他の職に補することにより公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として法務大臣が定める準則(以下この条において単に「準則」という。)で定める事由があると認めるときは、当該検事が年齢六十三年に達した日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、引き続き当該検事に、当該検事が年齢六十三年に達した日において占めていた職を占めたまま勤務をさせることができる。
法務大臣は、前項の期限又はこの項の規定により延長した期限が到来する場合において、前項の事由が引き続きあると認めるときは、準則で定めるところにより、これらの期限の翌日から起算して一年を超えない範囲内(その範囲内に定年に達する日がある検事にあつては、延長した期限の翌日から当該定年に達する日までの範囲内)で期限を延長することができる。
・・・
内閣は、前項の規定にかかわらず、年齢が六十三年に達した次長検事又は検事長について、当該次長検事又は検事長の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該次長検事又は検事長を検事に任命することにより公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由があると認めるときは、当該次長検事又は検事長が年齢六十三年に達した日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、引き続き当該次長検事又は検事長に、当該次長検事又は検事長が年齢六十三年に達した日において占めていた官及び職を占めたまま勤務をさせることができる。
内閣は、前項の期限又はこの項の規定により延長した期限が到来する場合において、前項の事由が引き続きあると認めるときは、内閣の定めるところにより、これらの期限の翌日から起算して一年を超えない範囲内(その範囲内に定年に達する日がある次長検事又は検事長にあつては、延長した期限の翌日から当該定年に達する日までの範囲内)で期限を延長することができる。
※その後400万件を越えたあたりで, https://twittrend.jp からは消されてしまったようだ。あいかわらず,twitter.jpの恣意的・政治的な運営は本当にひどいことになっている。その痕跡が図の地域別の一部に残っているという指摘があった。
[1]検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明|あらためて検察庁法の一部改正に反対する会長声明(日本弁護士連合会)
[2]我が国の検察制度の特色(検察庁)
[3]いったい検察庁法改正案の何に抗議しているのか(徐東輝)
[4]安倍首相による 検察,警察の私物化−新型コロナ危機の陰で進む民主主義・法の支配の崩壊(小西洋之)
[5]「#検察庁法改正案に抗議します」をめぐって知っておいてほしいこと(山尾志桜里)
[6]twittrend(各地域のついっトレンド)
[7]twitter trending hashtag (こちらは改竄されておらず,約550万件に到達)
2020年4月29日水曜日
9月入学
2020年2月20日木曜日
新型冠状病毒肺炎
神戸大学の岩田健太郎は,しばらく前まで,新型コロナウイルス肺炎は心配しなくて良い,むしろ,子宮頸癌ウィルスのワクチン忌避のほうがよっぽど問題だろうなどと煽っていて,印象が大変悪かった。その彼が,YouTubeに「ダイヤモンド・プリンセスはCOVID-19製造機。なぜ船に入って一日で追い出されたのか(2/20削除…相当圧力がかかったのではないか)」を投稿して,急きょ注目を集めている。これが事実ならば厚生労働省など政府のトップの判断とリーダーシップはひどいものだ(まあどの案件もそうですけど・・・)。海外発生期→国内流入期→国内流行早期✓→国内蔓延期という流れのなかで今後への不安がいやおうにも増してくる。
ChinaCDCが「The Epidemiological Characteristics of an Outbreak of 2019 Novel Coronavirus Diseases (COVID-19) — China, 2020」として,最新のデータを分析した結果を2月17日に公表した。その一部を抜粋すると,
感染確認者 死亡者 致死率
全体 44,672(100) 1,023(100) 2.3
年齢
0–9 416 ( 0.9) − −
10–19 549 ( 1.2) 1 ( 0.1) 0.2
20–29 3,619 ( 8.1) 7 ( 0.7) 0.2
30–39 7,600 (17.0) 18 ( 1.8) 0.2
40–49 8,571 (19.2) 38 ( 3.7) 0.4
50–59 10,008 (22.4) 130 (12.7) 1.3
60–69 8,583 (19.2) 309 (30.2) 3.6
70–79 3,918 ( 8.8) 312 (30.5) 8.0
≥80 1,408 ( 3.2) 208 (20.3) 14.8
性別
男性 22,981 (51.4) 653 (63.8) 2.8
女性 21,691 (48.6) 370 (36.2) 1.7
Table 1. Patients, deaths, and case fatality rates, as well as observed time and mortality for n=44,672 confirmed COVID-19 cases in Mainland China as of February 11, 2020.
要するに私も該当している高齢者のみ危険ということではないか。そうならば日本政府の対応も逆によく理解できる。この際,(東京オリンピックに差し障りのない範囲で)パンデミックを引き起こして,財政負担をかけている高齢者を一掃してしまおうと考えてもおかしくないし,そのためのテストベッドとしてダイヤモンド・プリンセスを(消極的に)使うことにも吝かではないのだろう。
[1]「ものすごい悲惨な状態で、心の底から怖い」ダイヤモンド・プリンセスに乗り込んだ医師が告発動画(Buzfeed)
[2]Update on the Diamond Princess Cruise Ship in Japan(CDC)
[3]「ダイヤモンド・プリンセス」から下船始まる 新型コロナウイルス陰性の乗客(BBC News Japan)
[4]ダイヤモンド・プリンセスからの下船始まる、船内の状況に専門家が警鐘(CNN.co.jp)
[5]岩田健太郎先生の動画を拝見して(高山義浩)
[6]Coronavirus in Japan(CDC)
2020年2月7日金曜日
悲しい個人番号カード
ものものしいコーナで3人くらい同時に対応できそうな衝立ブースに職員が3,4人いて対応してもらった。準備物は事前のお知らせの通り,通知ハガキ,通知カード,身分証明(自動車運転免許証),印鑑の4つ。あとは,パスワードをあらかじめ決めておいたので,問題なく進行する。紙に書かされたパスワードを画面に入力するのがメインの手続きですぐに完了した。なんのことはない20分かかるといわれていたが,1人だと3分で終わりそうなので,予約制にする必要があるのだろうか。
カードを受け取って茫然自失となる。安っぽい感じで,自動車運転免許証より一回り小さいくてペラペラなのではないか(確認したら面積は免許証のサイズと同じで,ぺらぺらではなかったです)。へんな兎マークが付いていて色彩もいまいち。問題は写真。あらかじめ申請時に提出しておいたが,免許証より小さくて見るも無残なぼけぼけイメージになっていた。これでは本人確認できないんじゃないか。
その後,市役所の方に説明をきいたところ,さらに多くの問題点が発覚した。
(1)有効期限は10年だが,各種サービスと紐付けられたパスワードの有効期間は5年なので,これを確認されたうえで,市役所の人がサインペンで有効期間最終日を手書きした。おいおい,最初から印刷できないのか。
(2)遠隔地の戸籍関係書類は取り寄せられるのですねと聞いたところ(ほとんどそのために取得したようなものだったので),なんと,天理市は対応していないのでだめなのだそうだ。予算の関係その他でいつになるか分からないとのこと。えー,うそでしょう。
(3)ペイペイなどのスマホ決済サービスと連動した割引ができるとのことで,説明の書類をもらって帰ったところ,iPhone 6sには対応していないことが判明し,これも使えないのであった。だめだめだった。
(4)個人番号部分はみせると恥ずかしいものらしく,使うときはこの透明な袋にいれて下さいということで,部分的にグレイな四角が印刷されていて,個人番号やその他の部分を隠すポリプロの袋入りだった。ありえない。
以上のように,国が後先を考えずに推進しているようだけれど,制度設計や運用に完全に失敗している。この程度の個人番号カードしかデザインできなかったのかと思うとなさけない。ほんとうに貧しい国になってしまった。国会では毎日のように,安部やそのとりまきの非論理的ないいわけや利権まみれの暴走が続いていて,それを官僚機構が必死にささえている。そんな不合理が染みついてしまった。大学入学共通テストの失敗といい,行政がまともに機能しなくなっている。
2020年1月20日月曜日
1987,ある闘いの真実
この背景には,1月15日のソウル大学校学生の朴鍾哲(パク・ジョンチョル)が警察による拷問で死亡した事件とそれに係わる隠蔽工作の発覚,4月13日の「今年度中の憲法改正論議の中止」と「現行憲法に基づく次期大統領の選出と政権移譲」を主旨とする「4・13護憲措置」の発表,5月27日の野党も含む広範な反政府勢力を結集した「民主憲法争取国民運動本部」の結成,6月9日の延世大学校学生の李韓烈(イ・ハニョル)が警察の催涙弾直撃を受けて重体(7月5日に死亡),などの事件が起こっている。
これらの一連の事件を史実に基づいて構成し,2017年に公開された映画が張俊煥(チャン・ジュナン)監督「1987,ある闘いの真実」である。30年前の出来事であるが,韓国の民主化運動の熱気が伝わってくる。それは北朝鮮との緊張関係を背景とした反共政策の苛烈さと対応している。そして,それが韓国ジャーナリズムと現在の日本のジャーナリズムの違いを際立たせてもいる。通常国会が始まったが,NHKの岩田の解説に反吐が出そうになる。映画はとてもうまく作られていておもしろかった。日本アカデミー賞を6部門も受賞した「新聞記者」と比べると良いかもしれないが,軍配はチャン・ジュナンにあげたい。
ある意味,日本はぬるま湯であり,かつ茹でガエルであり,そのなかで肥大化した社会の慣性が世襲化の進行=既得権益の確保を温存している。これに対抗するグローバリズムに支えられた新自由主義は右翼的セクターを巻き込んで,基本的人権や民主的な組織を破壊し続けている(既得権益を持つ勢力と直交しているわけではない)。
2019年12月7日土曜日
3.11のトラウマと現実否認の政治
私の答え、その3:「いろいろ考えてきたんだが、私の答えは、いまの日本は、〈2011.3.11〉のトラウマから説明するのが一番分かりやすい、というもの。あの大地震、津波、原発事故のショック下に日本人たちは今もまだいるんだ。」
「それで、日本人たちの半分ぐらいに、精神分析のいう、le déni de réalité の反応を引き起こした。現実を否認して出来事は全くなかったかのごとく暮らすように決めた。それで、あの出来事はまるで夢のなかで起こった出来事であったかのように、悪夢のように忘れさることに決めたのさ。」
「そこに入り込んだのが、アベとその一味による今のアベ政権だというわけだ。3.11はとっても好都合なことに、たまたま野党がごくまれに政権についていたときに偶然起こった。災害の準備を怠ったのも原発を始めたのもあらゆる対策をネグッたのも全部自民党政権だったのにね。」
「それで、あの出来事全体の一切合切をアベたちは全部野党のせいにすることにした。すべての現実を否認して、他者に責任を転嫁することにした。そして、あの出来事の自分たちの責任と影響をすべて否認することにした。」
「それだけじゃなく、今の日本は世界から落伍していきつつあるし、経済もうまく行っていないし、人口を激減で衰退がせまっているのに、そんなことはいっさいない、というストーリーを組み立てることにした。お金も狸の葉っぱみたいに刷り続けて見せかけだけは株価をつりあげて経済もうまくいってる」
「ように見せかけることにした。すべてを「現実の否認」の政治で塗り込めるようにした。それが、あのアベという男の長期政権なのさ。ウソを基調にした、ポスト・トゥルースの政治なのさ。」[1] NULPTYX.COM 石田英敬のブログ
2019年12月5日木曜日
不正・忖度・虚偽・隠蔽
一方,不正・忖度・虚偽・隠蔽のCCCCサイクル(Corruption-Conjecture-Chicanery-Concealment)は季節外れの桜吹雪をまき散らしながら高速回転している。