2020年6月20日土曜日

平沢進(1)

犬も歩けば棒にあたる。今日は平沢進(1954.4.1-)にあたった。Twitterでみた「賢者のプロペラ」が頭痛に効くというのがきっかけ。JASRACと喧嘩しているところもよろしい。オフィシャルウェブサイトには無料ダウンロードページもあった。4月1日生まれだと同学年になるのかな。さっそくyoutubeのhirasawasusumuもチャンネル登録してみる。

2020年6月19日金曜日

核電気共鳴(NER)

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学のグループが,実験の失敗から量子コンピュータへの道のブレークスルーを開いたかもしれないという3ヶ月前の記事(2020.3.20)にぶつかったので,調べてみた。arxivの "Coherent electrical control of a single high-spin nucleus in silicon" だ。

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原子核スピンは高度にコヒーレントな量子オブジェクトである。大規模なアンサンブルにおいて,核磁気共鳴によってその制御と測定が行われ,化学,医学,材料科学,鉱業などで広く利用されている。また,原子核スピンは、量子情報処理の初期のアイデア[1]や実証[2]にも登場している。これらのアイデアをスケールアップするには,個々の原子核を制御する必要がある,つまり,原子核が一つの電子と結合したことを検出できるということだ[3, 4, 5]。

しかし,原子核との相互作用は振動する磁場によってもたらされる必要があるが,磁場を局所化したり遮断したりできないことから,多スピンナノスケール素子への組み込みは複雑になる。電場を用いた制御はこの問題を解決するだろうが,これまでの方法[6,7,8]では,電子と原子核の超微細相互作用をとおして電気信号を磁場に変換することに依存していたため,原子核スピンのコヒーレンスに重大な影響を与えていた。

ここでは,シリコンナノ電子素子内で生成された局所的な電場を用いて,単一アンチモン(スピン7/2)原子核のコヒーレント量子制御を実証した。この方法は、1961年に最初に提案されたアイデア[9]を利用したものであるが、これまで単一の原子核では実験的に実現されていなかった。我々の結果は,微視的な理論モデルによって支持されている。それは,原子核四重極相互作用の純粋な電気的変調が,格子歪みのもとで,コヒーレントな核スピン遷移をもたらすことを説明している。

その結果得られたスピン脱フェージング時間0.1秒は,電気的に駆動するために結合した電子スピンを必要とする方法で得られた結果を1桁以上回っている。これらの結果は,高スピンで四重極能率を持つ原子核が,完全に電気的な制御を用いて,カオスモデル,歪みセンサー,ハイブリッドスピン機械量子システムとして展開できることを示している。電気的に制御可能な原子核を量子ドット[10, 11]と統合することで,振動磁場を必要とせずに動作する,シリコン上でのスケーラブルな核・電子スピンベースの量子計算機への道が開けるかもしれない。
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arxivで見つかる Nuclear Electric Resonance には,日本のNTT−東北大−ERATOグループによる,"Electric-Field-Induced Nuclear Spin Resonance Mediated by Oscillating Electron Spin Domains in GaAs-Based Semiconductors" とか,"Spatial distribution of dynamically polarized nuclear spins in electron spin domains in the ν = 2/3 fractional quantum Hall state studied by nuclear electric resonance"とかが出てくる。ううむ,NERは自然言語処理分野では,Named Entity Recognitionのアクロニムなのか。

たんに,核四重極能率をつかったスピン制御というのであれば,ベータ崩壊の核整列における杉本−南園グループの手法とかわらないような気がするけれど,どこが本質的な違いなのだろうか。

2020年6月18日木曜日

XENON1T暗黒物質実験

イタリアの山中1400mの深さに世界最大級の地下素粒子研究施設グラン・サッソ国立研究所がある。そこに設置された超高純度低バックグラウンド液体キセノン測定器XENON1Tによる実験結果がarxivに報告(Observation of Excess Electronic Recoil Events in XENON1T)されており,IPMUからもプレスリリースが出ている。

本来は宇宙にある暗黒物質の測定を目的としているが,この報告では標準理論からずれた新しい物理学の探索に興味がある。つまり,暗黒物質の候補としてのアクシオンを考えた場合,宇宙論的な制約から暗黒物質候補としてのアクシオンはKeVオーダー以下でなければならない。一方この装置では,1〜100KeVのオーダーのアクシオン(太陽アクシオン)を観測することができるというわけだ。さっそくアブストラクトを訳してみた

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XENON1T検出器で測定された低エネルギー電子反跳データを用いて,新しい物理学の探索を行った結果を報告する。0.65トン年の被ばくと1-30keVの間の76±2(stat)イベント/(トン×年×keV)という前代未聞の低バックグラウンド率により,太陽アクシオン,太陽ニュートリノの磁気モーメント,ボソニック暗黒物質の競合的探索が可能となった。

7 keV以下で観測される既知のバックグラウンドを超える過剰は,低エネルギーに向かって上昇し,2-3 keVの間で顕著になる。太陽アクシオンモデルは3.5σの有意性を持ち,電子・光子・原子核へのアクシオン結合については3次元の90%信頼度曲面が報告されている。この曲面はg_ae<3.7×10^-12, g_ae g_an^eff<4.6×10^-18, g_ae g_aγ<7.6×10^-22 GeV-1で定義された立方体に内接しており,g_ae=0またはg_ae g_aγ=g_ae ge_an^eff=0のいずれかを除く。

ニュートリノ磁気モーメント信号は3.2σでバックグラウンドよりも同様に有利であり,μ_ν∈(1.4,2.9)×10^-11 μ_B (90% C.L.) の信頼区間が報告されている。どちらの結果も恒星からくる制約とは緊張関係にある。

また、当初は考慮されていなかったトリチウムのβ崩壊も,キセノン中のトリチウム濃度が(6.2±2.0)×10^-25 mol/molに対応する3.2σの有意性で説明できる。このような微量な量は、現在の生産・還元メカニズムの知見では確認も排除もできない。制約のないトリチウム成分をフィッティングに含めると,太陽アキシオン仮説とニュートリノ磁気モーメント仮説の有意性はそれぞれ2.1σと0.9σに減少する。この解析によれば,疑スカラーとベクトル型のボソニック暗黒物質について,1〜210keV/c^2の間のほとんどの質量について,これまでで最も制限的な直接の制約を与える。
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論文のアペンディックスにはβ線スペクトルのモデリングとして2ページを越えて懐かしい式が並んでいた。鉛やクリプトンからのバックグラウンドの計算で必要らしい。べーレンズ・ビューリングのβ線スペクトルの式や,スペクトル補正関数,クーロン補正の係数,スクリーニング補正の効果などおなじみの表式のオンパレードである。低エネルギーにおける反跳電子の測定が肝なので,このあたりを丁寧に押さえておく必要があるのだと思われる。






2020年6月17日水曜日

稗田環濠集落

稗田阿礼の出身地ということで,稗田環濠集落にある賣太神社の祭神は稗田阿礼命(ひえだのあれのみこと)だった。天宇受賣命(あめのうずめのみこと)と猿田彦神(さるたひこのかみ)も祭神に名を連ねている。

神道の神の命名規則によると,「(1)○○ノ(2)○○ノ(3)○○」では,(1)が神の属性,(2)が神の名前,(3)が神号(尊称)である。むむむ,(3)には神−命−大神−権現−明神などがあるようだがいまひとつ区別がかわからない。そもそもサルタヒコも古事記では猿田毘古神・猿田毘古大神・猿田毘古之男神であり,日本書紀では猿田彦命となっているということなのでいったいなんなのか。

えーっ,猿田彦と天宇受賣は夫婦だったのか。猿田彦が手塚治虫の火の鳥にでてきたところまではなんとなく知っていたけれど。また「アメノウズメ」は古事記では天宇受賣命,日本書紀では天細女命となっている。賣太神社は稗田阿礼なので古事記方式でよいのだろう。

P. S. 稗田環濠集落の水路には亀がたくさん泳いでいた。猿沢池を越えるインパクトである。


写真:大和郡山市の稗田環濠集落にある賣太神社(2020.6.16撮影)

2020年6月16日火曜日

銀河系の知的文明

36の知的文明が銀河系内で交信?、英研究チームが算出」などのセンセーショナルなタイトルのニュースが飛んでいたので,またぞろドレイク方程式か何かかと思えば,「宇宙生物学コペルニクス原理」というものを編み出したらしいので,arxivで探してみた。


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我々は,生命の探索に関する宇宙的な視点を提示し,最新の天体物理学的情報を用いて,我々の銀河系に交信している地球外知的文明(CETI)が存在する可能性を調べている。我々の計算には,銀河系の星形成史,金属元素分布,ハビタブルゾーンに地球型惑星が存在する可能性を,我々が宇宙生物学的・コペルニクス的弱・強条件と呼ぶ特定の仮定の下で計算している。これらの仮定は,知的で交信能力のある生命が存在することが知られている唯一の状況,つまり我々自身の惑星に基づいている。このタイプの生命は,金属元素が豊富な環境で発達し,そのために約50億年の時間を要した。我々は,いくつかの異なったシナリオに基づいて可能なCETIの数を研究している。一つは「弱い宇宙生物学的コペルニクスの原理」であり,惑星が知的生命体を形成するのは50億年後のことだが,それ以前ではない。もう一つは強い条件であり,地球のように45~55億年の間に生命が形成されなければならないというものだ。強い条件(厳密な仮定)の下では,銀河系内には少なくとも36+175-32の文明が存在するはずだ。これは下限値であり,交信可能な文明の平均寿命は100年であるという(現在の我々の状況に基づく)仮定を置いている。もしCETIが銀河系全体に一様に広がっているとすれば,最も近いものはせいぜい17000+33600-10000光年の距離にあり、低質量の赤色矮星を周回している可能性が高く,我々が予測可能な将来の検出能力をはるかに超えていることを意味する。さらに,この生命をホストしている星が太陽型星である可能性は非常に低く,ほとんどが赤色矮星でなければならないことから,長い時間スケールで生命をホストするには十分に安定ではないと考えられる。我々はさらに他のシナリオを検討し,我々の仮定条件を変えることで,銀河系内に存在可能性なCETIの数を調べた。
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むむむ,銀河系内の交信可能な文明は結構存在するにしてもほとんどがあまり長くに渡って安定でない赤色矮星(M-Dwarf)の回りの惑星にあり,ほとんど観測困難で,どうなんでしょうということだ。あ,いろいろ書いているけれど,かなり精密化された新しいドレイク方程式なのでした。うーむ,うまくいけば,700年ぐらいがんばると1つ交信可能な文明が見つかるし,7000光年以内に知的生命体が見つからないようならば,交信可能な文明の持続時間は2000年以下であり,我々もまたそうである可能性が高いらしい。むむむ。

2020年6月15日月曜日

ジーン・シモンズ

ロックグルーブKISSジーン・シモンズの番組が放映されていた。もう70歳なのに,20kgの衣裳をつけて口から火を噴いていた。舌が長いのだ。たいへんだ。KISSのイメージの特徴的な顔の隈取りデザインはジーン・シモンズの顔のものだった。

KISSは1973-74にブレイクしているが,そのころはもう洋楽ポップスはあまり聴かなくなっていた。そもそもあの手のハードロックはちょっと苦手だったし。ジーン・シモンズはユダヤ人であり,後にニューヨークに移住した母親がナチスの強制収容所の生き残りであった。

2020年6月14日日曜日

残された人々

アレグザンダー・ケイの児童文学「The Incredible Tide」が「残された人々」として邦訳されているが,これが宮崎駿の「未来少年コナン」の原作となった。NHKでまとめて放送しているのをたまたまみたが,なんと,ほとんど天空の城ラピュタのイメージやモチーフでちりばめられていた。そうだったのね。おもしろそうなのでとりあえず録画予約しておいた。

なお,インターネット上には The Incredible Tideのテキストもころがっているような雰囲気であった。この原作のほうもちょっと気になるところではある。

2020年6月13日土曜日

これでわかった! 世界のいま

NHKの日曜夕方の番組「これでわかった!世界のいま」は結構たのしみでみていたけれど,6月7日の放送で大きくつまづいた。以前から韓国や中国を取り上げる際に顕著だった(これらにも見るに堪えないものがしばしば登場していた)。NHKの国際部や政治部の偏向がとても気になる番組だったが,ここにいたって,人権センスがゼロであったことを露呈してしまった。国際部といい政治部といいひどいことになっているものだ。

番組の構成は,例の池上彰の週間子どもニュースのフレーバーを引き継いでおり,レギュラー出演者に坂下千里子を配置しつつ,上から目線で国際部や政治部のスタッフが「子ども」に教えを垂れるという構造になっていた。そこに陥穽があったわけだ。パックンやサヘル・ローズなども準レギュラーになっておりうまく構成すればとてもよい番組になりうる。いかんせん,今のNHKのニュース系番組全体が(社会部発信の一部を除いて),政府よりにねじ曲がっているために,こんなことになってしまったのだろうと思う。

「なにも知らない人々を啓蒙するためにわかりやすくデフォルメする」だとか「対立する双方に対等な言い分があるので是々非々とするのが中立性である」だとかのジャーナリズムに対する誤った観念に囚われすぎているのだろう。

2020年6月12日金曜日

岡山更生館事件

岡山更生館事件が話題になっていたので,Wikipediaをみたらテレビの2時間ドラマのプロットのようにドラマチックな記述だった。毎日新聞の大森実さんは著名なジャーナリストだが,Wikipediaのこの記事の主著者の方もちょっとなかなかな方であった。ひどい事件には違いないと思うが,どこまでどうなのかはよくわからない

例の小池百合子の件で,清水有高と安富歩が語っていたように,「嘘」というキーワードより「ハッタリ」の方がふさわしいのかもしれず,安倍政権のもとで電通が暗躍し,大阪維新のもとに吉本が妄動しているのも,「利益誘導」という経済原理に加えて,「ハッタリ」という情報原理(広告原理)が貫徹しているような気がする。そんなことは,半世紀も前に筒井康隆をはじめとする日本SF作家陣が擬似イベントSFとしてそのエッセンスを取り出していたような気がするけれど。

岡山更生館事件は悲劇で不正義ではあるけれど,ちょっとだけひっかかるところもある。小池百合子問題も同様。ただ,法的なシステムをぐずぐずにしてしまいかねない不誠実や不正義の横行は,到底「ハッタリ」で済ませることができないのだけれど。


2020年6月11日木曜日

ミューオンの異常磁気モーメント(1)

arXiv:2006.04822v1で,KEKやFermilabなどのグループが,ミューオンの異常磁気能率の最近の理論的計算のレビューを行っている。標準模型のテストとして注目されているのだ。そのアブストラクトを訳してみた。

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ミュオンの異常磁気モーメントの標準模型計算の現状をレビューする。
これは微細構造定数αの摂動展開で行われ,純粋なQEDと電弱相互作用とハドロン相互作用の寄与に分解できる。

純粋なQEDの寄与が最も大きくO(α^5)まで計算された。その数値的不確かさは無視できるほど小さい。電弱相互作用の寄与は,(m_μ/M_W)2の因子分だけ抑えられ,有効数字7桁目のレベルでしか現れない。計算は2ループまで評価されておりその誤差は1%以下である。

ハドロン相互作用の寄与は最も計算が難しく,理論的な不確実性のほとんどはここからくる。主なハドロン寄与はハドロンの真空偏極によるO(α^2)の項から始まる。また,O(α^3)では光-光散乱におけるハドロンの寄与が現れる。

この観測値に特徴的な低いエネルギースケールでは、ハドロン相互作用の寄与は非摂動的な方法,すなわち分散関係と格子QCDのアプローチで計算されなければならない。

このレビューのほとんどの部分は,理論計算精度改善のためのこれら2つの方法,すなわちデータ駆動型の分散的アプローチと第一原理的な格子QCDアプローチの詳細な説明に費やされている。

最終的な理論計算結果は,a_SM = 116 591 810(43) × 10^-11 μ である。この値はブルックヘブンの実験での測定値よりも3.7σ小さい。この実験的不確かさは,現在フェルミ加速器研究所で行われている新しい実験と,将来のJ-PARC実験によって,間もなく1/4にまで低減される予定である。

このことと,近い将来に理論的な不確かさがさらに低減される見込みがある(この論文で言及)ことから,この量は新しい物理学の証拠を探すための最も有望な場所の一つとなっている。
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2020年6月10日水曜日

カイロ大学同窓会

昨日は,在日エジプト大使館の Facebook (ページの作成日は2018年1月9日)で,小池百合子が卒業生であることを証明するというカイロ大学からの文書が公開されていた。なお,こちらは,在日エジプト大使館文化・教育・科学局のページ

一昨日あたりから,Wikipediaのカイロ大学同窓会(英語版)のページが編集されている。発端の3件のIPアドレスによる編集が日本人が発信源であろうと思われるのは,当初,カイロ大学が Kairo とスペリングされていたからである。カイロ・アメリカン大学の同窓会には小池の記述があるのに,カイロ大学にないのはどうしてだという声があったので,それに対応してあわてて繕おうとしたようだ。
なお,amazonで検索すれば,カイロ大学の同窓会名簿的なもので小池百合子が載っていそうな情報がある。

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清水有高と安富歩は,さらに次の段階に議論を進めていた。アリス・ミラーによる幼児虐待とその社会への影響という文脈である。小池を支持する我々の側が問題とされている。

2020年6月9日火曜日

佐藤オオキ

佐藤オオキデザインオフィス nendo を主催する日本のデザイナー。このあたりでは,天理市駅前広場のコフフンを設計したことで知られている。

問題は,彼が最近デザインしたローソンの食品のパッケージデザインである。それなりにすっきりと統一されてはいるものの,文字の視認性や商品の判別性など,ユニバーサルデザインの観点から批判が相次いでいる。そのあおりを受けてコフフンで事故が多発していた件もちょっとだけ再燃していた。コフフンの一施設の斜面の勾配が急で小児が骨折して危なかったというもの。利用する際には見張りがつくような運用変更があったような気もしたが最近はどうなっているのだろうか。

図:コフフンのイメージ

[1]ローソンPB新パッケージの「わかりにくすぎる」という問題(Wezzy)

2020年6月8日月曜日

田植え

奈良県の農業研究開発センターの出している栽培技術マニュアルによれば,「ヒノヒカリ」と「キヌヒカリ」の田植えは6月9日となっている。朝の散歩で目にする数多の水田には水が張られ,日々田植えが進んでいる。


写真 朝の散歩から(2020.6.8撮影)

2020年6月7日日曜日

タクシー運転手

録画していた2017年公開の韓国映画「タクシー運転手」,最初の方ははほとんど見ていなかったが,光州の虐殺場面からカーチェイスの最後まで引きつけられた。1980年5月18日から27日に韓国全羅南道の光州市で起きた光州事件で,ドイツ人ジャーナリストが事件を報道するに至った実話に基づいている。主演がソン・ガンホだったのでやっぱりおもしろい。

アメリカ合衆国のミネソタ州ミネアポリスでの警察官による黒人(ジョージ・フロイド)殺害事件はついに警察機構の解体再建という話にまで達している。日本では対岸の火事のようなネトウヨの論調もあるが,沖縄や東京でほとんど同レベルの差別が繰り広げられている。そう,香港や天安門もしかり,権力はどこでも人間の憎悪を使って機械的に発動する。日本のマスコミはほとんどとりあげないし,警察や出入国在留管理庁(入国管理センター)はびくともしないのだろう。

2020年6月6日土曜日

4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム

4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウムは,昨日で10回目を迎えた。尾崎君の出演回から,ながら視聴を続けてきた。喜連川先生のやさしいコメントを愉しみにしているが,吉本興業を引っ張り出したのはちょっと微妙だ。大阪における維新と吉本の複合体の悪辣ぶりに辟易しているからである。

昨日のシンポジウム,ハーバード大学医学部教授 の波多伸彦先生の「遠隔授業におけるアクティブラーニング応用事例」は,アメリカの大学の教育事情がわかってよかった。1つのコースは週3時間の授業と9時間の自習からなり,1人の学生は週4コマとるので,50時間ほどの時間を学習に費やすことになる。日本の大学受験生並の勉強時間でありこれがずっと続くということだ。日本の大学教育の密度は理系の専門教育に至るまではその数分の1程度かもしれない。だって週に16コマくらい履修しないといけないので。

さて,もうひとつ引っかかったのが国立政策研究所の白水始(しらうずはじめ)さんの話。聞いているうちにちょっと気持ちが悪くなってきて途中で離脱した。白水さんは,東大法学部から名大文学部心理に移って認知科学を専攻している。博士課程は三宅なほみさんがいた中京大学で修めているようだ。あのあたりのスクールにはちょっと近づきたくない。

彼のトークのタイトルが「ウィズコロナ時代の対話型オンライン授業と授業研究に向けて」ということで,最初からつまずいた。小池百合子的キャッチフレーズへの拒絶反応である。「教育改革の近道は新学習指導要領の実現」から話を始めるのは,まあ国研なので当然なのかもしれない。1. 一人ひとりの子どもの学ぶプロセス を保証しようとするから。2.教員が学びのデザイナー&アナリス トになることを目指すから。などとほとんど無批判にこれらの前提を置くことに,最近はどうしても違和感を感じてしまう自分なのであった。

次に出てくるのが,「教育に「データ」を=「データ」の必要性・有効性 “Data-fueled Education”」なので,そりゃベネッセが幅をきかせるはずである。こうして御用学者の群れが,マジックワードを並べつつ独占企業体によるデータの囲い込みを誘導していくのであった。

さらにひどいのが,21世紀に求められる知性。1.多様な考え・意見を「集めて編集できる」知性 ,2.答えを「作り出す」知性,とくるのである。どおりで,子どもニュース崩れの池上彰やキュレーター気取りの佐々木俊尚がもてはやされるわけだ。自分自身も散々使ってきて,また振り回されてきたマジックワード,「共有」や「交流(コミュニケーション)」が,情緒的なエーテルに充ち満ちた日本の教育空間にもたらしているものを改めて分析し直す必要があるのだろう。

2020年6月5日金曜日

特集|迷走する教育(7)

15.三浦綾希子(教育社会学)
   高等教育で学ぶ移民第二世代の若者たち
   
日本は移民国家であるという認識が必要である。というのが最初の結論であり以下の議論の前提となっている。在留外国人の過半数が「就労制限がなく定住可能性の高い在留資格を持っている」からだ。とすれば,外国人児童生徒の問題は,移民第二世代の教育としてより堅固な制度的裏付けを必要とすることになる。

大阪教育大学でも数年前の教養学科から教育協働学科への改組の過程で,学長の強い意思によってかなり大量の留学生の受け入れを前提とした制度設計が行われた。その現状がどうなっているのか把握していない。ただ,グローバル化とダイバーシティが教員養成理念の柱の一つとなるのであれば,移民第二世代にフォーカスを当てて彼らの高等教育機会の確保とキャリア形成を前提とした教育組織や教育システムについて検討する余地があったと,いまさらながら考える。留学生らとの重層的な交流に加え,彼らの正当なエスニシティ獲得の活動が,学校教員養成課程の学生たちとも相互作用することで,多様性を獲得した学生群の輩出に繋げるという「新しいマーケット」を見通す構想があってもよかった。

16.知念渉(教育社会学)
   〈ヤンチャな子ら〉の「男らしさ」を捉えるために

これはもう一つよくわからなかった。というのか,男性性研究にあまり興味が引かれないのだった。

2020年6月4日木曜日

特集|迷走する教育(6)

13.岡崎勝(小学校非常勤講師/学校ブック『お・は』編集人)
   先生,学校はどこへ行くんでしょうか?
   スティーブン・キングに聞いて下さい!

岡崎さんは,1952年名古屋市生まれ。愛知教育大学保健体育科卒業。小学校の体育の先生だった。小学校教員では一番政治力の大きいのが体育の教員というのが相場で,そういえば,大阪教育大学の体育の先生方にもしっかりした見識を持つ方が多かった。体育やスポーツ専攻の学生さんたちは雑でやんちゃな印象のほうが強かったけどね。それはそうとして,一番印象的だったのは,今どきの保護者や子どもと学校教員の摩擦の実態だった。労働時間問題以前の大きな障壁だった。最後の「しかし,意外とITは空虚なポルターガイストなのかもしれない」という文がスティーブン・キングにもつながっていたのか(未読だ)。著者はもちろん,GIGAスクール構想に否定的であり,教育改革の名のもとに進行している学校からの収奪,すなわち,マジックワードに飾られた職業訓練的労働者・消費者養成現場としての学校・IT消費市場の現場としての学校に違和感を抱いている。

14.内田良(教育社会学)
   新型コロナウイルス感染症のリスク

内田さんは,福井出身で学部は名大の経済なのか。ふーん。で,愛知教育大学を経て,名大の教育発達学研究科。新型コロナウイルス感染症の拡大防止をうたった3月のはじめからの全国一斉休校の要請の話だけれど,感染症についての専門知でつっかかってしまって,話が深まらないうちに終了してしまった。組み体操の時の切れ味はなかった。

2020年6月3日水曜日

特集|迷走する教育(5)

給特法から問う

10.高橋哲(教育法学)
   改正給特法総論
   
11.藤川伸治(NPO法人「教育改革2020 共育の杜」理事長)
   給特法改正は長時間労働解消につながるのか

12.赤田圭亮(元中学校教員)
   教員の「労働」は本当に「特殊」なのか?

わかったこと:
○1948年ごろ,学校の教職員の給与については,測定不能性のため一律48時間労働として一般の公務員より10%の上積みがされていた
○労働基準法において1年単位変形労働時間制は,厚生労働省令で定めるとされていたところを,給特法改正案では文部科学省令の管轄にすりかえられた。
○長時間労働解消が今回の議論の出発点であったものが,まったくその解消に寄与しない方法に帰結してしまった。
○田中角栄が教員給与の改善を図るのに尽力したという説は半分は正しいにせよ,文教族の様々な思惑の元での動きと教職員組合の動向の関係の下に行われている。
○全日教連は右翼でその半分が栃木県に集結している。

[1]公立の義務教育諸学校等の教職員の給与等に関する特別措置法(1971)
[2]学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法(1972)
[3]公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン(2019)
[4]「人材確保法」の成立過程 −政治主導による専門職化の視点から−(丸山和昭)
[5]教員給与は適切に運用されているのか(上林陽治)
[6]学校における働き方改革について(文部科学省)
[7]学校教員の働き方を考える教育学者の会
[8]日本教職員組合(1947:23.6万人)・全日本教職員組合(1991:7.1万人)・全日本教職員連盟(1984:1.9万人)

2020年6月2日火曜日

女帝 小池百合子(1)

久しぶりに近鉄百貨店八木店の6Fにあるジュンク堂書店にいった。ここは品揃えも配列もいまいちだけれど,奈良県で近くの書店といえばこのあたりしかないという残念なことになっている。で,「女帝 小池百合子」があったので,手にとってカイロ大学のあたりだけさらっと読んでみた。著者は石井妙子であり,なぜか1冊も読んだことがないにもかかわらず,「おそめ−伝説の銀座マダムの数奇にして華麗な半生」の書評と評判だけで自分が信頼をおいているノンフィクション作家だ。

ほんの一部の断片からも,小池百合子を特徴づけるキーワードが「嘘」であることが明確に伝わってきた。そして,これは今の日本の政治の中枢を特徴づけるキーワードでもあった。安倍晋三チームの「嘘」は,憲法解釈をねじ曲げ,法律を無視し,公文書を改ざんし,統計を捏造し,電通やマスコミを使った情報戦に長け,ネットを通じた攻撃の手をやめることがない。そう,大阪維新のキーワードも「嘘」なのであった。橋下−松井−吉村がこの間進めてきた政策の根幹には「嘘」がある。

「嘘」がまかりとおっているのは,半分は我々自身が望んだからなのだと思う。1990年代以降の大災害の連続と政権のかじ取りの失敗による日本(大阪)の凋落や,中国・韓国の成長を見たくなかった我々の心性がその「嘘」を容認して育て上げてついにここまで至ってしまったのだ。コロナ禍はその嘘を暴く効果を持っていると同時に,さらにその「嘘」の毒を拡散する働きをするのかもしれない。

[1]1155夜「おそめ」石井妙子 (松岡正剛)
[2]女帝 小池百合子」“学歴詐称疑惑”を斬る! 郷原信郎の「日本の権力を斬る!(2020.6.2)
[3]東大教授と語る【小池知事のカイロ大学首席卒業】問題について(2020.6.4)
[4]地上波が一切無視する本『女帝小池百合子』の作者が語る衝撃の事実(2020.6.5)
[5]「学歴詐称疑惑」再燃の小池百合子…その「虚飾の物語」を検証する(近藤大介・石井妙子,2020.6.5)

2020年6月1日月曜日

紀州加太

新型コロナウイルス感染症の拡大がなければ,いまごろは友人達との例年の家族旅行で和歌山県の休暇村紀州加太でのんびりしているはずだった。残念ながら今年は無理でした。

日本の緊急事態宣言が終わって,6月からは学校なども徐々に再開されている。しかし,問題が解決しているわけではないので,一進一退が続く。一方,世界の感染の中心は南半球に移ったのかもしれない。ロシアやインドでの増加も目を離せないが,ブラジル・ペルー・チリ・メキシコと中南米での感染者の急増が顕著になってきた。

政権支持率は下がったとはいうものの,まだまだ一定の数を維持するとともに,吉村人気から日本維新の会の政党支持率が上昇して自由民主党の減少分を補填している。官邸=経済産業省の暗躍により,アベノマスク(まだ到着していません)だけでなく,持続化給付金事業をダミーの一般社団法人サービスデザイン推進協議会が受注した後に,事業の再委託を受けた広告大手の電通がさらに人材派遣のパソナやIT業のトランスコスモスに業務を外注していたという二重三重の税金の中抜きがあらゆる場面で進行中。

決定プロセスの不透明なブルーインパルスは,自衛隊中央病院の美しいカメラアングルの報道では,都立駒込病院の玄関から病院名を含めた上空写真とのモンタージュによって,NHKの印象操作映像が作られていた。教科情報のメディアリテラシーなんてものはくその役にも立たない。学ぶべきは,自然科学であり社会科学であり歴史と人文学である。

アメリカでは黒人反差別暴動とトランプによるSNS抑圧,日本のTwitter Japanでは大量のリベラル派ブロックが進行している今日この頃。