2023年3月10日金曜日

生成AIの2つの顔(2)

生成AIの2つの顔(1) からの続き

もう一つは,シンギュラリティサロン・オンラインの「AIは人類社会に革命をおこすのか 〜 OpenAI CEO サム・アルトマン氏の未来予測について考える」だ。ゲストに関西外国語大学の水野義之さんが登場して,AIの問題点を指摘した。ChatGPTは壮大な文化破壊であるというのがキーワードだ。

その意味は次のように説明される。(1) 人間は易きに流れる(勉強嫌い)。(2) 情報は不気味の谷を感じない(気付けない)。(3) 事前に知っていない限り間違いは見抜けない(鵜呑み)。(4) 人間は自分を相手に投影する(思い込み)。これらの結果,ChatGPTの普及によって愚かな人間が増えてしまい,二極分化はさらに進むことになる。それほど厳しい反対論ではない。

なんとなくいいたいことは解るのだけれど,十分に整理しきれていない印象だ。が,水野さんが20年前に原子核実験物理から大学における情報教育へと研究テーマを変えてからの蓄積の上,最近のAIについても十分リサーチしていることから,バランスのとれた興味深い話だった。壮大な文化破壊に対する対策としては,(1) Yann LeCun のFacebook 2/14/2023のコメント#14を引用している。「− LLMは*書き込み補助*として使われている。− 心のない大衆に彼らの作り上げたナンセンスを信じさせることで,社会の布石を破壊することは*しない*。− 人々は役に立つことにそれらを使う」(これ対策ではないけど…)(2) AI倫理による回避,(3) 人間知能の理解進化(?) をあげていた。

水野さんと最初に会ったのは,自分がD1のときの夏の学校の原子核分科の研究会だ。藤田純一先生が来られるはずだったが,病気でかなわなかったときか。修士論文のA=12体系のベータ崩壊におけるCVCの話をしたところ,最前列に座っていた1学年下の水野さん(東北大学の原子核理究施設:現,電子光理学研究センターで電子散乱の実験をしていた)が質問してきた。

次に覚えているシーンは1980年5月,阪大核物理研究センターが六甲山の関西地区大学セミナーハウスで開催した原子核物理の夏の学校だ。小林正博君と一緒にエジプト人留学生から英会話を学んで準備したサマースクールだった。夜のインフォーマルミーティングで水野さんはQCDの深部非弾性散乱でOperator Product Expansion の話を始めていた。うーんなんだったのか。

最後は,1996年1月に早稲田大学で催されたのJAIN-OLU合同シンポジウムの場だ。「インターネットと教育 −WWWによる教育情報の提供−*」というタイトルで発表したのだが,同じ場で,水野さんがインターネットとボランティア的な内容の話をした。チラッと顔を合わせて,あらこんなところでとなったのだった。ちなみに,和歌山県のみさと天文台の尾久土正己さんが「過疎地域の天文台におけるインターネット活用」という話をしている。

*リンク先は同趣旨で書いた,大阪大学大型計算機センターニュース(1997.8)の記事

0 件のコメント:

コメントを投稿