2022年4月18日月曜日

abc予想(2)

 abc予想(1)からの続き

肝腎のabc予想である。準備のために,自然数 $n$ の根基(radical)を定義する。素数を$\{ p_i \}$として,$n = p_1^{k_1} \cdot p_2^{k_2} \cdot \cdots \ $と素因数分解できるとき,$n$ の根基が次のように定義される。${\rm rad}(n) \equiv p_1 \cdot p_2 \cdots \ $ 。例えば,${\rm rad}(120)={\rm rad}(2^2  \cdot 3^2 \cdot 5) = 2 \cdot 3 \cdot 5 = 30$ 。

3つの自然数の組,$(a, b, c)$ において,$a+b=c\ $であり,$ a < b\ $が互いに素であるものを,abc-トリプルとよぶ。普通は,$c < {\rm rad}(a b c)$ であるが,$c > {\rm rad}(a b c)$も無限に存在しうる。そこで,ある形のabc-トリプルで後者の条件を満たすものが無限個あることを示す。

素数 $p>2$,自然数 $n>1$として,$a=1, b=2^{p(p-1)n}-1, c=2^{p(p-1)n}$というabc-トリプルを考える。このとき,${\rm rad}(a b c) = {\rm rad}(a) {\rm rad}(b) {\rm rad}(c) = 1 \cdot {\rm rad}(b)  \cdot 2 = 2\ {\rm rad}(2^{p(p-1)n}-1) $となる。

ところで,$b = 2^{p(p-1)n} - 1 = \bigl( 2^{p(p-1)} \bigr)^n - 1 = \bigl( 2^{p(p-1)}-1 \bigr) \bigl( \cdots  \bigr) = p^2 \cdot \bigl( \cdot \  \cdots  \bigr)$ とかけるので(*),$\frac{b}{p^2}$は自然数である。そこで,${\rm rad}(a b c) = 2 \cdot {\rm rad} (p^2 \cdot \frac{b}{p^2}) \le 2 \cdot p \cdot  \frac{b}{p^2} = 2 \cdot \frac{b}{p} \lt \frac{2}{p} c$ 。ただし,$ {\rm rad}(m) \le m$ を用いた。

(*) フェルマーの小定理により,$2^{p-1}\ \equiv 1 \ ({\rm mod}\ p)$,すなわち,$2^{p-1} = k\ p + 1\ $なので,$2^{p(p-1)} = (k\ p + 1)^p = \Sigma_{r=0}^{p-1} C_r^p\ (k\ p)^{p-r} 1^r +1\ $。このため,$2^{p(p-1)}-1=(k\ p + 1)^p - 1\ $を展開した $k p$の最低次の項は,$C_{p-1}^p \cdot (k\ p) = k\ p^2$であり,全体は$p^2$を因子として持つ。

つまり,このabc-トリプルは任意の$n$に対して,$c > \frac{2}{p} c > {\rm rad}(abc)$ となるので,無限個存在する。

0 件のコメント:

コメントを投稿