2020年8月2日日曜日

SIRモデルとK値(2)

SIRモデルとK値(1)からの続き

新規感染者数の累計に対する微分方程式において,$\beta(t)=\beta e^{-\alpha t} $と仮定すると,
$\dfrac{dJ}{dt} = \beta e^{-\alpha t}J$であり,その解は,$J = J_0 \exp [ \frac{\beta}{\alpha} (1 - e^{- \alpha t}) ]$ となる。

ゴンペルツ関数を $f_G(x) = \exp[ - e^{-x}]$と定義して,$ \frac{\beta}{\alpha}=e^{\alpha t_0}$とおくと,

$J = J_0 \exp [ e^{\alpha t_0} (1 - e^{- \alpha t}) ]  =  J_0 \exp [ e^{\alpha t_0}  - e^{- \alpha (t-t_0)}) ]$
$= J_1 \exp [- e^{- \alpha (t-t_0)}] = J_1 f_G(\alpha (t-t_0))$ ただし,$J_1 = J_0  \exp [ e^{\alpha t_0}]$ とおいた。

これから,$K(t)=1-J(t-\tau)/J(t) = 1-f_G(\alpha (t-\tau -t_0))/f_G(\alpha (t-t_0))$となり,
$K(t) = 1 - \exp[-(e^{\alpha \tau}-1) e^{-\alpha(t-t_0)}]= 1 - f_G(x_k)$とかける。
ただし,$x_k=\alpha (t - t_0 - \delta t),\ \delta t = \frac{1}{\alpha} \log (e^{\alpha t})$ である。

ゴンペルツ関数の微分は,$f'_G(x) = e^{-x} f_G(x)$ であるから,K値の微分は,
$K'(t) = -\alpha e^{-x_k} f_G(x_k)$ となる。つまり,$K(t)=f_G(x_k)=1/2$のとき,
$e^{-x_k}=\log2$が成り立ち,$K'(t) = -\alpha \frac{\log 2}{2}$となる(なお,このモデルにおいて$K'(t)$の絶対値が極大値をとるのは,$f_G(x_k)=1/e, x_k=0$のときである)。

中野モデルを数理的に解析した秋山に従えば,中野モデルでの減衰係数$k \ (0<k<1, 1-k \ll 1)$は  $ \alpha = -\log k $ に対応していた。
$\therefore K' =  \frac{\log 2}{2} \log k =  \frac{\log 2}{2} (k-1) = \frac{1}{2.88}\ (k-1)$
つまり,$k = 1 + 2.88K'$ という中野が導いた現象論的関係式が得られる。

0 件のコメント:

コメントを投稿