2024年2月16日金曜日

大学どこへ

日本記者クラブの主催する記者会見で,「大学どこへ」というシリーズがあった。半分は総長クラスなのでそれほど聞く気にもならない。第8回は,東京理科大学嘱託教授の宮武久住(1957-)さんだった。共同通信の記者を25年務めた後,著作権関係の実務家教員として横浜国立大学や東京理科大学の教授として勤めた人だ。

今の大学は変わらなければならないということを主張していた。しかし変化の時代に対応できない日本の組織というのは,なにも大学に限った話ではないような気がする。改革の提案として,在学期間や入学年齢,社会人学生と地域連携など六項目があげていたが,どの立場から何を大学の問題として認識しているのかがもう一つ明確ではない。その結果,自分の体験に照らした経験主義的な感想から敷延した結論に留まってしまう。

彼は,大学教員が互いをセンセイと呼び合うことへの違和感を強く表明していた(さん付け文化を持った分野も存在するが)。大学の自治という言葉がお蔵入りして久しいが,基本的には大学が,専門職による職能団体的な自律性と同僚性を持った組織としての側面があることを十分に理解していないような気がする。

その点,第5回の大庭良介さんの話は,データに基づいて基礎研究分野の研究費では,有望とされる分野への集中投下より,分散化が望ましいことを立証していて,おもしろかった。それにもかかわらず,講演後の質問者(退職ジャーナリスト)は予算がなくなった日本では選択と集中が必要だとしつこく自己主張していた(金融資産への投資が重要だという経験を繰り返し強調しながら…orz)。

日本記者クラブの会見はどうしていつもちょっと気持ち悪いのだろうか。ロートルおじさん記者達が,自慢話を交えながら,旧来の価値観と凝固した世界観でぐだぐだと質問を続ける様はどうみても気分が良くない。どうしてジャーナリストはあんな空気を醸し出すのだろうか。まあ,じぶんだって頭の干からびたおじさん(おじいさん)であり,同様の質問をしがちなので,持って他山の石とすべし。


[1]「大学どこへ」(1) 大野英男・東北大学総長(2023.11.28)
[2]「大学どこへ」(2) ドワンゴ顧問 川上量生さん(2023.12.08)
[3]「大学どこへ」(3) 原晋・青山学院大学陸上部監督(2023.12.14)
[4]「大学どこへ」(4) 高橋裕子・津田塾大学学長(2024.01.16)
[5]「大学どこへ」(5) 大庭良介・筑波大学准教授(2024.01.22)
[6]「大学どこへ」(6) 杉山直・名古屋大学総長(2024.01.30)
[7]「大学どこへ」(7) 伊藤公平・慶應義塾長(2024.02.07)
[8]「大学どこへ」(8) 宮武久佳・東京理科大学嘱託教授(2024.02.15)

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