2023年10月30日月曜日

鏡像法(5)

鏡像法(4)からの続き

接地された円筒導体について鏡像法を使う例を考える。原点Oを中心として半径$R$の円筒導体が$z$軸方向に無限に延びている(円筒面上では,$x^2+y^2=R^2$が満たされている)。$x$軸上の$(a,0,0)$を通って,$z$軸に平行で線電荷密度$\lambda$の直線がおかれている。これを鏡像法で解く際に,$x$軸上の(b,0,0)$を通って,z$軸に平行で線電荷密度$-\lambda'$の直線があると考える。円筒導体面では等電位になっており,これを基準に取る。


図:接地された円筒導体と直線電荷に対する鏡像法

円筒面上の電位は,$V(x,y) = \dfrac{\lambda}{2\pi \varepsilon_0} \log \sqrt{(x-a)^2+y^2} - \dfrac{\lambda'}{2\pi\varepsilon_0}\log \sqrt{(x-b)^2+y^2}+C$
$= \dfrac{1}{4 \pi\varepsilon_0} \Bigl\{\lambda \log (R^2+a^2-2 a x) - \lambda' \log(R^2+b^2 -2 b x) \Bigr\} +C=0$ である。

これが$x$によらずに成立するためには,$\log$の中の$x$依存性が消える必要がある。そこで,第2項を$\lambda' \log(R^2+b^2 -2 b x) = \lambda' \log \frac{b}{a}(\frac{a}{b} R^2+a b -2 a x) $と書き換えると,$V(x,y) = \dfrac{\lambda}{4 \pi\varepsilon_0} \Bigl\{ \log (R^2+a^2-2 a x) - \frac{\lambda'}{\lambda} \log (\frac{a}{b} R^2+a b -2 a x)\Bigr\}+C'$
つまり,$\lambda = \lambda',\ R^2+a^2 = \frac{a}{b} R^2+a b$ であれば$x$によらず定数になる。
これから鏡像となる直線電荷に対して,$\lambda = \lambda', R^2=a b$という条件が得られる。

この鏡像電荷が円筒導体上に分布する。導体面上の単位長さ当たり面電荷密度は$\sigma(\theta) = \varepsilon_0 E_r(\theta) R d\theta =- \varepsilon_0 \dfrac{\partial V(R)}{\partial R}R d\theta $で与えられる。$x=R \cos\theta$であることに注意して,
$E_r(\theta)=  -\dfrac{\lambda}{2 \pi\varepsilon_0} \Bigl\{ \dfrac{R-a \cos\theta}{R^2+a^2-2 a R \cos\theta}  - \dfrac{R-b \cos\theta}{R^2+b^2-2 b R \cos\theta} \Bigr\}$
$-\dfrac{\lambda}{2 \pi\varepsilon_0} \Bigl\{ \dfrac{R-a \cos\theta}{R^2+a^2-2 a R \cos\theta}  - \dfrac{R-b \cos\theta}{R^2+b^2-2 b R \cos\theta} \Bigr\}$

第2項の$b$を$b=R^2/a$によって消去して整理すると,
$E_r(\theta) = -\dfrac{\lambda}{2 \pi\varepsilon_0} \Bigl\{ \dfrac{R-a \cos\theta}{R^2+a^2-2 a R \cos\theta}  - \dfrac{R-b \cos\theta}{R^2+b^2-2 b R \cos\theta}\Bigr\}$
$= -\dfrac{\lambda}{2 \pi\varepsilon_0} \Bigl\{ \dfrac{R-a \cos\theta}{R^2+a^2-2 a R \cos\theta}  - \dfrac{R-R^2/a \cos\theta}{R^2+R^4/a^2-2 R^3/a \cos\theta}\Bigr\}$
$= -\dfrac{\lambda}{2 \pi\varepsilon_0} \Bigl\{ \dfrac{R-a \cos\theta}{R^2+a^2-2 a R \cos\theta}  - \dfrac{a^2/R- a \cos\theta}{a^2+R^2-2 a R \cos\theta}\Bigr\}$
$\therefore \sigma(\theta) = \dfrac{\lambda}{2 \pi}\dfrac{R^2-a^2}{R^2+a^2-2 a R \cos\theta} d\theta,   \ \  \int_0^{2\pi} \sigma(\theta) d\theta = - \lambda$

つまり導体円筒面には静電誘導によって単位長さ当たり$-\lambda$の電荷が誘起されることが確認できた。これは,鏡像電荷(青線)の仮定と辻褄が合っている。なお,積分の第1項はゼロであり,第2項がこの結果を与えている。また,接地されていない場合は,導体円筒の中心軸上に単位長さ当たり$+\lambda$の直線をおけば,円筒導体に誘起される電荷の総和はゼロにすることができる。

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