2023年7月2日日曜日

雨宮処凛


菅野完の論は,日本の現在の思想状況というか,差別的な態度が根強く蔓延って弱者を圧迫している現状を良く説明するものだと思える。

通俗道徳論≒自己責任論≒新自由主義という近似式から,1945年にリセットされた日本の資本主義が,人権という車輪を欠いたまま曲がって走り続け,その結果,自民党や日本維新の会が力を持っている現状もある程度は納得できる(アメリカによる日本支配の構図との関係がどうなっているかはちょっと・・・)。

もう一つ気になったのは,最近の日本維新の会の著しい成長の原因は何かという時間スケールの問題については,必ずしも満足行く答えを与えていないということだ。そんなとき,マガジン9の「なぜ維新なのかについてのロスジェネ的考察」で,雨宮処凛(1975-)が別の角度から議論していた。"自分の力で" がんばって要約すると次のようなものだ。
○日本維新の会への支持が広がっている。それはなぜか。
○特に「ロスジェネ世代の維新支持」という現象を考察する。
○40代以下の世代(ロスジェネ〜ゆとり・さとり〜)は「経営者マインドや為政者マインドをナチュラルに搭載している」例え,末端労働者であっても。
○彼ら世代には,労働組合や労働運動より「いつか一発逆転すること」の方がずっとずっとリアリティがあるから。
○この世代=雨宮は「自由な時代だから,人は可能性に満ちている。夢をかなえろチャレンジしろ。」という脅迫的な圧力にさらされてきた。
○そのロールモデルは,ホリエモン,ひろゆき,ZOZO前澤やユーチューバ−など,全員トリッキーな一発逆転系自己責任論者である。
○我々はずっと政治にDVを受けている。優しいふりをした人に裏切られるより,最初からひどいとわかってる人の方がまだましという気持ちになる。それは究極の消去法であり,唯一できる無意識の自己防衛だ。
○維新は確実に「どうせ世の中も人間もロクなもんじゃない」ということを体現している。そこが「現実がわかっているリアリスト」とある種の人々には見えてしまう。だからこそ,個別議員の犯罪歴などがこれほど暴かれてもほぼノーダメージという状態に繋がっている。
○我々は理想を語る人がマヌケにしか見えないという世界に住んでいる。現実がひどければひどいほど意地悪そうな人が支持を集め、理想を語る人が嘘つきの詐欺師にしか見えない地獄のような逆説にどうしたら対抗できるのか。

ロスジェネ世代の一発逆転のロールモデルであるYouTuberは,通俗的道徳規範の体現者≒禁欲的なジャパニーズプロテスタントではない。そうではあっても,自己責任論者の一種には違いないわけで,新自由主義との相性は抜群だ。

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