2022年11月19日土曜日

弾道ミサイルの軌道(5)

弾道ミサイルの軌道(4)からの続き

NHKの報道によれば,11月18日(金)午前10時14分,北朝鮮のICBMが発射され,午前11時23分に北海道渡島大島の西200kmの海上に落下した。飛行時間は69分,飛行距離は1,000km,最高高度は6,100km,速度はマッハ22とされている。

また,弾頭質量によっては15,000kmを越える射程となり,米国本土を狙えるとあった。しかし,今回の実験もロフテッド軌道だったので射出角は90度にかなり近いはずだ。これをより低い角度にすれば質量を変化させなくても十分到達できると思うけれどどうなのか。とりあえず,自分のモデルで計算して確かめてみよう。

g = 0.0098; R = 6350; τ = 87; p = 0.75; a = 0.0446; s =  45 Degree; T = 5100; 
g = 0.0098; R = 6350; τ = 87; p = 0.75; a = 0.0446; s =  86.2 Degree; T = 4140; 

fr[t_, τ_] := a*Sin[s]*HeavisideTheta[τ - t]
ft[t_, τ_] := a*Cos[s]*r[t]*HeavisideTheta[τ - t]
fm[t_, τ_] := -p/(τ - p*t)*HeavisideTheta[τ - t]
sol = NDSolve[{r''[t] == -fm[t, τ]*r'[t] + h[t]^2/r[t]^3 - g R^2/r[t]^2 + fr[t, τ], 
r[0] == R, r'[0] == 0, h'[t] == -fm[t, τ]*h[t] + ft[t, τ], h[0] == 0}, {r, h}, {t, 0, T}]
f[t_] := r[t] /. sol[[1, 1]]
d[t_] := h[t] /. sol[[1, 2]]
Plot[{6350, f[t]}, {t, 0, T}]
Plot[{f[t + 1] - f[t], d[t]*R/f[t]^2, d[t]/f[t]}, {t, 0, T},  PlotRange -> {-4, 8}]

tyx[T_] := {T, f[T] - R, NIntegrate[R d[t]/f[t]^2 , {t, 0, T}]}
v[T_] := Sqrt[(f[T] - f[T - 1])^2 + (R d[T]/f[T]^2)^2]
{tyx[T], v[T]/0.340}
{{4140, 41.9866, 1036.42}, 22.9628}
g0 = ParametricPlot[{NIntegrate[R d[t]/f[t]^2 , {t, 0, tt}],  f[tt] - R}, {tt, 0, T}]

このモデルの仮定は次のようなものである。(1) 距離の二乗に反比例する万有引力が働く極座標での運動方程式を解く。(2) コリオリの力や空気抵抗は考えない。(3) 推進剤の燃焼噴射によって,投射体の速度ベクトルの方向に等加速度(a=0.0446 km/s^2)を発射時から一定時間加える。これにより投射体の質量は燃料が0になるまで一定の割合で減少する。(4) 多段式ロケットは考えず,一段式として全質量に対する燃料比(p=0.75)を与える。このとき,運動方程式は全質量に依存しない。(5) 飛行時間の観測値を与え,投射角度と推進加速時間を主パラメータとして,飛行時間と最高高度の観測値が再現されるように調整する。

結論としては,弾頭質量(というか全質量に対する燃料比)を変化させなくても,射出角を86.2度から45度に変更すれば,飛行時間5100秒(85分)で到達距離が14,600kmになる。なお,ロフテッド軌道の場合の弾道ミサイルの最高速度はマッハ23となり,報告されたマッハ22をほぼ再現した。


図:同一パラメタで射出角と飛行時間だけを変えた場合の弾道軌道

P. S. 11月19日の北朝鮮の朝鮮中央通信によれば,このロフテッド軌道の弾道ミサイルは,新型大陸間弾道弾「火星17」の試験発射であり,最高高度 6,040.9 km ,飛行距離 999.2 km ,飛行時間 4135 秒とのことだ。なお,同じ火星17は,今年の3月24日には,最高高度 6,248.5 km ,飛行距離 1090 km ,飛行時間 4052 秒で飛行している。

[2]北朝鮮のミサイル等関連情報(続報第2報,防衛省・自衛隊)
  (防衛省からは,わかった部分から順に発表されている。発表時刻を入れるべきでは)


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