2020年6月11日木曜日

ミューオンの異常磁気モーメント(1)

arXiv:2006.04822v1で,KEKやFermilabなどのグループが,ミューオンの異常磁気能率の最近の理論的計算のレビューを行っている。標準模型のテストとして注目されているのだ。そのアブストラクトを訳してみた。

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ミュオンの異常磁気モーメントの標準模型計算の現状をレビューする。
これは微細構造定数αの摂動展開で行われ,純粋なQEDと電弱相互作用とハドロン相互作用の寄与に分解できる。

純粋なQEDの寄与が最も大きくO(α^5)まで計算された。その数値的不確かさは無視できるほど小さい。電弱相互作用の寄与は,(m_μ/M_W)2の因子分だけ抑えられ,有効数字7桁目のレベルでしか現れない。計算は2ループまで評価されておりその誤差は1%以下である。

ハドロン相互作用の寄与は最も計算が難しく,理論的な不確実性のほとんどはここからくる。主なハドロン寄与はハドロンの真空偏極によるO(α^2)の項から始まる。また,O(α^3)では光-光散乱におけるハドロンの寄与が現れる。

この観測値に特徴的な低いエネルギースケールでは、ハドロン相互作用の寄与は非摂動的な方法,すなわち分散関係と格子QCDのアプローチで計算されなければならない。

このレビューのほとんどの部分は,理論計算精度改善のためのこれら2つの方法,すなわちデータ駆動型の分散的アプローチと第一原理的な格子QCDアプローチの詳細な説明に費やされている。

最終的な理論計算結果は,a_SM = 116 591 810(43) × 10^-11 μ である。この値はブルックヘブンの実験での測定値よりも3.7σ小さい。この実験的不確かさは,現在フェルミ加速器研究所で行われている新しい実験と,将来のJ-PARC実験によって,間もなく1/4にまで低減される予定である。

このことと,近い将来に理論的な不確かさがさらに低減される見込みがある(この論文で言及)ことから,この量は新しい物理学の証拠を探すための最も有望な場所の一つとなっている。
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