2019年6月21日金曜日

道徳教育(1)

1958年,昭和33年施行の学習指導要領で教科外活動の時間としての道徳が導入されたため,自分が小学校の時にはすでに毎週1回の道徳の授業があった。道徳は教科ではなかったので,当時のあの薄い教科書も教科書ではなかったのだろうか。当時の小学校道徳の目的は以下のようなものだ。

 1 日常生活の基本的な行動様式を理解し,これを身につけるように導く。
 2 道徳的心情を高め,正邪善悪を判断する能力を養うように導く
 3 個性の伸長を助け,創造的な生活態度を確立するように導く。
 4 民主的な国家・社会の成員として必要な道徳的態度と実践的意欲を高めるように導く。

小学校の道徳の時間はイヤでしかたがなかった。教訓めいた題材の中にはサイエンスやスポーツにかかわる興味深いものも若干混じっていたが(テニスの清水善造選手の話とか,電子顕微鏡の開発の話とか),自分の内面の嘘を見透かされたような学校生活をテーマとした道徳的葛藤のストーリーは,なんともがまんできず,はやくこの時間が終わればいいのにと願っていた。体育の時間と同じくらいイヤな時間だった。

そんな道徳の時間は, 教育基本法の改正で地ならしされたところへ,2015年に特別な教科として再定義されることになった。それ以来,学校および社会の支配層のツールとしてその内容に磨きがかけられつつある。そう,道徳が声高に語られるときはその主体と目的と対象を明確に意識しておいたほうがよい。

道徳は,宗教に替わって,あるいは宗教を補完して,高度に複雑化した人間の共同体を安定的に維持するための規範を定義するものなのだろう。しかし,それが学校教育の教科という形で実現できるのかどうかはよくわかっていない。Wikipediaの道徳教育には対応する英語項目がなく,それに相当するものとしては,Character Education (人格教育)が示されている。これは,民主主義社会における市民の育成という観点から、子どもの人格の発展に働きかけ、子どもを取り巻く諸問題を解決することを目指した教育のこと,であるとされる。しかし,それは成功していないともある。また,英国では,Personal, Social, Health and Economic (PSHE) Education という概念で与えられるものに相当するようだ。

[1]道徳教育(文部科学省)
[2]道徳教育アーカイブ(文部科学省)
[3]総合的道徳教育プログラム(東京学芸大学)
[4]日本道徳教育方法学会
[5]日本道徳教育学会

道徳教育(2)に続く)

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