2019年1月9日水曜日

金門五三桐

大阪松竹座の壽初春大歌舞伎の夜の部の演目は,並木五瓶の金門五三桐の通し狂言である。二幕目の南禅寺山門の返しの浅葱幕前で,細棹の三味線弾きが白木の台に片足を乗せ,正本を片手に持つ唄い手が朗詠する。調べてみると大薩摩節(おおざつまぶし)の独唱とあり,その後,石川五右衛門と真柴久吉のお馴染の場面が始まる。

絶景かな,絶景かな。春の眺めは値千金とは小せえ,小せえ。この五右衛門には値万両,最早陽も西に傾き,誠に春の夕暮れに花の盛りもまた一入,はて,うららかな眺めじゃなぁ。ハテ心得ぬ,われを忘れずこのところに羽根を休むるとは。なになに,某もとは大明十二代神宗皇帝の臣下宋蘇卿と言いし者,本国に一子を残し,この土に渡り謀叛の企て今月ただいま露顕なし,たとえ空しく相果つるとも,かの地に残せし倅,われを慕うて日本へ渡りしとほぼ聞けど,いまだ対面は遂げず形見に与えし蘭麝待という名香を証拠になにとぞ尋ね出し,わが無念を語り,力を合わせ,久吉を討ち取るべきものなり。すりゃ此村大炒之助と言いしは,わが父宋蘇卿にありつるか,父の無念,光秀公の恨み,たとえこの身は油で煮られ,肉はとろけ,骨は微塵に砕くるとも,おのれ久吉,今にぞ思い知らせてくれん。

 



0 件のコメント:

コメントを投稿