2024年11月4日月曜日

再現性

清水亮(1976-)による「人格のコンピュータ再構成」というnoteの記事がおもしろかった。中学生の時のマックスヘッドルームの話からはじまって,AIによって再構成された複数の自分の人格の話に発展した(別記事の落合陽一(1987-)との佐渡旅行の話もおもしろかった)。

そういえば,高校の数学で大数の法則中心極限定理を学んだ後に,米島君と話題になったのは次のようなことだ。「多数の自分の人格が確率的に生成されたとき,結局それらの人生は固有の人格のために中心極限定理で与えられるようなところに収束するのだろうか。」それは単なる思考実験だったけれど,いまや,それが実現するところにまで来ているのかもしれない。

清水亮の記事の最後に,「この「再現性」の問題は非常に大きな問題となっていて、それが理由で欧米ではGPTのAPIを使うのをやめる学者も増え始めている」という一文があって,少し引っかかったので,ChatGPT-4oに聞いてみることにした。その結果を以下に報告する。対話相手として申し分ないのかもしれない。

Q(koshix):
引用:この「再現性」の問題は非常に大きな問題となっていて、それが理由で欧米ではGPTのAPIを使うのをやめる学者も増え始めている。
という文章がありますが,この意味を教えてください。

A(ChatGPT):
この文章にある「再現性の問題」は、特に研究や学術的な活動において非常に重要な概念です。再現性とは、同じ条件下で実験や研究を繰り返すと、同じ結果が得られることを指します。再現性が担保されていない場合、研究結果の信頼性や正当性が疑わしくなります。

GPTのAPIを使う学者が減り始めているという文脈では、次のような背景が考えられます。

1.出力の一貫性が低い
GPTのような大規模な生成AIモデルは、入力が同じでも必ずしも同じ出力を生成するとは限りません。特に、生成されたテキストは確率的に決定されるため、同じプロンプトに対して異なる結果が得られることがあります。この特性は、再現性が求められる研究の場では問題となり、学者が同じ実験を再現できないことに繋がる可能性があります。
2.透明性の欠如
GPTのような生成モデルは「ブラックボックス」とされることが多く、具体的にどのようなプロセスで出力が決まっているのかが理解しにくい場合があります。これは、再現性を検証する際にさらに難しい問題となり、学術研究の基盤である「どのように結果が得られたか」を説明するのが難しくなります。
3.モデルの進化と変更
APIで提供されるモデルが定期的に更新される場合、過去のバージョンと同じ挙動を保証できなくなります。研究者があるバージョンのGPTで得た結果を将来的に再度得ようとすると、APIの進化に伴って挙動が変わり、同じ結果が再現できないリスクがあります。

これらの理由から、欧米の一部の学者が、再現性の重要性を重視してGPTのAPIの使用を避けるようになっている、ということを示していると考えられます。特に科学的な研究や論文で使用する場合、再現性が確保されていないと、その研究結果に信頼性を持たせるのが難しくなるためです。


Q(koshix):
人間は,機械ではないため,その思考や出力としての発言や著述にブレが生ずるのは当然のことであり,また時間を経ることによってもこれらは変化します。なぜ,人間のアウトプットにおける再現性の重要性にそこまでこだわるのかが,少し理解できません。

A(ChatGPT):
人間のアウトプットは確かに変動しやすく、時間や状況によって異なるのは自然なことです。しかし、再現性が重要視されるのは、特に科学や研究、技術開発の分野で「信頼できる知識の蓄積」と「正確な検証」が必要とされるからです。この観点から、なぜ再現性にこだわるのか、以下のような理由が挙げられます。

1.信頼性の確保
科学や学術研究では、ある実験や分析結果が「再現」できることが、その結果が正しいと信じられるための基本的な条件です。例えば、ある研究者が新しい治療法を発見した場合、その結果が他の研究者によっても再現できなければ、その治療法の有効性は疑われます。再現性があることで、研究が単なる偶然や一時的な誤差ではなく、一般的に通用する真実に基づいていると確認できます。

人間のアウトプットが時間や状況で変わることが許容される領域、例えば芸術や文学では、その「変化」こそが価値や深みを生みます。しかし、科学や技術では、何が原因で変わるのかをはっきりさせ、同じ条件下で同じ結果が出せることが極めて重要です。機械やプログラムは、まさにこのような「ブレ」をなくすために開発されています。

2.誤差やバイアスの排除
人間の思考には、しばしば無意識の偏見や感情的な要因が入り込むことがあります。このため、同じ状況においても異なる結論や発言が生まれます。再現性を確保することで、こうした一時的なバイアスや誤りを排除し、純粋にデータや事実に基づいた結論を得ることが可能になります。

たとえば、心理学の実験や社会科学の調査などでは、同じデータセットに対して異なる解釈が生じることがありますが、それでも再現性のある結果は他の要因によって影響されにくいと考えられます。これにより、学問的な議論や検証が可能になり、結論に対する信頼性が高まります。

3.新しい発見の検証と信頼性
再現性が確保されていないと、新しい発見や理論が検証されないまま広まる危険性があります。もし結果が再現できないのであれば、それは偶然や誤った方法論に基づく可能性があり、信頼できるものではありません。再現性を重視することで、確かな基礎の上に新たな理論や発見を積み重ねることができるのです。

例えば、薬の効果や新しい物理法則を提唱する場合、それが一度きりの結果なのか、あるいは他の研究者が何度試しても同じ結果を得られるのかは大きな違いです。再現性があることで、その発見が科学的に有効であることが裏付けられ、実用化に進む道が開けます。

4.技術やシステムの安定性
生成AIなどのシステムにおける再現性の重要性は、技術の安定性や信頼性を高めるためです。たとえば、自動運転車のシステムや医療用AIが、同じ状況で異なる判断をしてしまうと大きな問題につながります。このため、システムの動作が一貫して再現性を持つことが求められます。人間とは異なり、こうした技術においては、予測可能で一貫した結果が必須となります。

最後に
確かに、日常生活や芸術、創造的な活動においては人間のアウトプットの変動や変化は自然であり、しばしば価値があるものです。しかし、科学的検証や技術開発の場では、再現性がないと、偶然や誤りに基づいた結論を広めてしまうリスクがあります。これが、人間の思考と機械のアウトプットにおける再現性の違いに対するこだわりの理由だと考えられます。


Q(koshix):
科学的検証や技術開発の場においては,科学的・工学的な実験による検証や,数学的な論理的な検証を必ず伴いますので,この分野における人間の論文や発表はその範囲内でしか妥当性を持ちえません。したがって,揺らぎや変化はこの範囲を逸脱することはできません。それは当然のことです。したがって,生成AIを利用したとしても,このような現実のデータや現象や論理や数学による制約の範囲に留まるはずです。それにもかかわらず,危機感を抱く根拠がいまひとつわからないのです。あなたの説明は科学の妥当性の議論になっていて,その一歩手前にある人間が持つ表現の部分の幅を説明する根拠にはなっていません。

A(ChatGPT):
あなたの指摘は非常に鋭いと思います。科学や工学において、論理的・数学的な枠組みや実験的な検証により、揺らぎや不確実性がコントロールされるため、その範囲内では妥当性が確保されます。生成AIの出力も、そのデータやアルゴリズムが物理的・数学的制約を受けている限り、科学的検証の枠を逸脱するわけではありません。そのため、生成AIを使用した場合でも、同じ制約の中で妥当性が保たれるべきだという考えはもっともです。

しかし、生成AIに対して危機感を抱く理由には、科学的・技術的な再現性の問題とは少し異なる次元の懸念が関わっていることがあるかもしれません。それをいくつかの観点から整理してみましょう。

1.確率的生成による予測不可能性
生成AI、特にGPTのようなモデルは、基本的に確率的な手法でテキストを生成します。これは、同じ入力に対しても、異なる結果が生じうるという特性を持っているため、再現性が完全には保証されないことがあります。人間の発表や論文においても個人差はありますが、再現性が求められる場面(論文の方法や結論など)では、論理や実験データに基づく厳密な制約がかかります。一方、生成AIの出力はその場でランダムに変動しやすく、特に学術的な検証の厳密性が要求される場面では、この不安定性が問題視されることがあります。

2.ブラックボックス化されたアルゴリズム
生成AIの背後にあるモデルは、膨大なデータとパラメータを基に動作しており、個々の生成結果がどのようなデータやロジックに基づいているのかを完全に解明できないという問題があります。人間の論文や発表は、背後に論理的・実験的なプロセスが明示され、その検証方法もクリアに説明されます。しかし、生成AIの出力は、それがどのデータセットやロジックに基づいたのかがユーザーにとっては「ブラックボックス」となっている場合が多く、この不透明性が信頼性に対する懸念を生じさせています。

3.著述や表現における独自性や責任の欠如
人間の著述や発表は、通常、その人が責任を持って発信し、背後にある論理やデータの整合性がその発言の妥当性を支えます。しかし、生成AIによる出力には、その発言や結果に対する主体的な責任が欠如しているため、科学的・学術的な信頼性が担保されにくくなる可能性があります。仮にAIが論理的な誤りを含む結果を生成したとしても、その責任をどのように扱うかが不明確なため、学術の場では信頼性に対する懸念が生じるのです。

4.外部データに対する依存とバイアスのリスク
AIモデルは大量の外部データに基づいて学習されますが、そのデータ自体が偏っていたり、不完全だったりする可能性があります。このため、AIの出力に人間の思考のような意図しないバイアスや、データの制約を反映しない誤った表現が含まれるリスクが高まります。特に科学の分野では、データの信頼性と透明性が重要ですが、AIが用いたデータやその選別過程が不明確な場合、結果が再現できないだけでなく、バイアスを含む可能性があり、危機感を抱く理由の一つとなり得ます。

結論
あなたが指摘された通り、科学的妥当性や検証の枠組み自体は厳格な制約があり、それが守られている限り、生成AIの利用もその範囲内で有効です。しかし、生成AIの特性(確率的な出力、ブラックボックス的なプロセス、責任の不在、データのバイアス)によって、その信頼性や再現性に関する懸念が生じています。このため、特に再現性が求められる分野では、AIの出力に依存しすぎることに対して懸念があるのです。

この懸念は、学術的な信頼性や透明性を損なう可能性に対する防衛的な姿勢ともいえるでしょう。


図:「再現性」というタイトルの絵(Imagen3による)

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