2023年8月26日土曜日

確率変数

コーシー=シュワルツの不等式からの続き

あまり意味がわからない確率変数がどのように定義されているかというと,理数系の基礎数学 7確率・統計」柴田文明,岩波書店や「現代数理統計学」竹村彰通,創文社では概ね次のようになっている。
確率変数
根元事象の一つ一つに割り当てられた数値のどれかをとる(確率的に変動する)
変数Xを導入し,この変数Xを確率変数とよび,その数値を確率変数Xの実現値という。

確率関数
各実現値xでの確率を考え,さらにこれをxの関数と見たものを,
確率変数Xの確率関数という,p(x) = P(X=x)
そもそも,変数とは何か。それが確率的に変動するとは何か。確率関数の定義式Pの中のイコールは何か(数学だから代入ではない)。等々,疑問で一杯。

コルモゴロフ流の定義(小山昭夫,渡辺澄夫)だともう少しスッキリする。
(1) 根元事象 ω:試行(測定)で生ずる1つ1つの結果
(2) 標本空間 Ω:すべての根元事象の集合(ω ∈ Ω)(Ω:全事象)
(3) 完全加法属 F( σ集合属):標本空間 Ω の 部分集合の集合で 次の条件をみたすもの。Ω ∈ F,A ∈ FならA^c(補集合) ∈ F,Fに属する部分集合の和集合(無限個まで)が F に属する。
(4) 確率 P(A):すべてのA ∈ Fに対して,P(A) ≧ 0, P(Ω) = 1, Ai ∩ Aj = ∅ ならば,P(∪ An) = Σ P(An) (確率の連続性)を満足する P(A) を事象Aの確率という。
(5) 確率空間:(Ω, F, P)の組のこと
(6) 確率変数 X(ω):確率空間(Ω, F, P)と可測空間(Ω', F')に対して定義された写像 X:Ω→Ω' が確率変数である
(7) ただし,任意のB ∈ Ω' に対してX^{-1}(B) = {ω ∈ Ω | X(ω) ∈ B}∈ F
(8) 確率変数Xの分布関数 F(x):F(x) = P(X≧x)
(9) 確率変数Xの密度関数 f(x):f(x) = dF(x) /dx,  f(x) ≧0, ∫ f(x) dx = 1

確率変数は,試行の結果として現れる「量」を表している。試行前は未知だが,試行を行う(ωが定まる) と X(ω) という量を出力する。こうして,確率を扱う理論には試行(測定) という概念が不可分に導入されることになる。


確率変数がその後どのように使われるかを知っておけばもう少しだけ安心するかもしれない。
(1) 期待値:E(X) = Σ x P(X=x) または E(X) = ∫ x f(x) dx
(2) 分散:Var(X)=E((X-E(X))^2)
(3) 標準偏差:σx = √Var(X)
(4) 共分散:Cov(X, Y) = E((X-E(X))(Y-E(Y))
(5) 相関係数:ρxy = Cov(X, Y) /( σx σy )

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