2023年7月15日土曜日

核融合スタートアップ

核融合に関する自分の知識が古いままなので,新しい話題についていけてない。

いちおう原子核物理を専門としていて,名大のプラズマ研を見学し,友達には核融合をテーマとして原研に就職した人たち(佐藤正泰君とか藤井常幸君とか)がいて,院生時代には,レーザー核融合研究センターの壮大な建物を横目に原付で核物理センターに通っていたので,それなりの耳学問的知識はあるのだけれど,そこまで真面目に勉強したわけではない。

自分のこれまでの乏しい知識はおよそ以下の通り。
 ○制御核融合の方式には,磁場閉じこめ慣性閉じこめがある。
 ○前者はトカマク型と,なんだかよくわからないヘリカル型に分けられる。
 ○後者はレーザ型と,あまりよくわからないイオンビーム型に分けられる。
 ○現在のトップはトカマク型の国際熱核融合実験炉ITERと,これに続くレーザ型のローレンス・リバモア国立研究所国立点火施設(NIF)のもの。ともに莫大なコストがかかる。
 ○これらの延長線上で実証炉や商業炉に到達するのはかなり先の話

そんなわけで核融合スタートアップの現状がどうなっているのか調べようとしていると,文部科学省の核融合の挑戦的な研究の支援の在り方に関する検討会の資料があった。京都フュージョン・エンジニアリングの共同創設者でもある武田秀太郎(1989-)のものだ。それらをまとめると+αで次の知識が得られた。

 ○核融合の研究開発が,国や大学から民間企業(スタートアップ)に移った。  
 ○高温超伝導による強磁場のトカマクでは装置のサイズが1/1000で済む。
 ○レーザー核融合のエネルギー充填を半導体レーザーにしてエネルギー効率を高めれば,パルス周期が非現実的な数時間から1/10秒以下にできる。
 ○FRC(逆転磁場配位型)などの新しい方式や燃料 p+11B が登場してきた。
 ○HelionやTAEを除き,中性子の運動エネルギーで湯沸かし発電の範囲に留まる。
 ○p+11Bはマシだが,中性子による放射化やトリチウムの問題は残っている。
 ○核融合炉でもトリチウムやHe3を巡って,核燃料サイクルという概念がある。

[1]TAE Technologies(米 1998-  1100億円)FRC p+11B
[2]General Fusion(加 2002-  500億円)Magnetically Confined Acoustic Compression
[3]Tokamak Energy(英 2009-  200億円)Spherical Tokamak 高温超伝導磁場
[4]First Light Fusion(英 2011-  100億円)Hyper Velocity Inertial Confinement
[5]Helion Energy(米 2013-  650億円)FRC D+He3 -> Microsoftが電力購入契約
[6]Commonwealth Fusion Systems(米 2018-  2600億円)Tokamak 高温超伝導磁場
[7]京都フュージョンエンジニアリング(日 2019-  120億円)
[8]EX-Fusion(日 2021-  18億円)レーザー核融合
[9]Helical Fusion(日 2021-  0.7億円)ヘリカル型核融合
[11]民間資金での核融合研究(武田秀太郎他)
[12]トカマク式核融合が超小型化(野澤哲生)
[13]核融合に第3の方式が登場(野澤哲生)

0 件のコメント:

コメントを投稿