2023年1月19日木曜日

博物館の定義(1)

博物館の定義が,国際博物館会議ICOM)の2022年8月の大会で定められ,その日本語訳が最近公表された。

博物館は英語ではMuseumなので,美術館を含んでいることがすぐにわかるのだけれど,日本語だと,博物館と美術館は頭の中で区別されてしまうので,ちょっと面倒である。

博物館法はあるが,美術館法はない。日本では博物館法の定義の中に美術館や動物園や水族館や植物園も包摂されている(日本の博物館の数現状)(注1)。
博物館法(昭和二十六年)
(定義)
第二条 この法律において「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(社会教育法による公民館及び図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)による図書館を除く。)のうち、地方公共団体、一般社団法人若しくは一般財団法人、宗教法人又は政令で定めるその他の法人(独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。第二十九条において同じ。)を除く。)が設置するもので次章の規定による登録を受けたものをいう。
そもそも教育基本法(昭和二十二年)→社会教育法(昭和二十三年)→{図書館法(昭和二十五年)・博物館法(昭和二十六年)}という構造で作られているらしい。
教育基本法(昭和二十二年/平成十八年)
(社会教育)
第十二条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。
2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。

社会教育法(昭和二十四年)
(図書館及び博物館)
第九条 図書館及び博物館は、社会教育のための機関とする
2 図書館及び博物館に関し必要な事項は、別に法律をもつて定める。

図書館法(昭和二十五年)
(定義)
第二条 この法律において「図書館」とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設で、地方公共団体、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人が設置するもの(学校に附属する図書館又は図書室を除く。)をいう。
新しい博物館の定義の日本語訳は次のようなものだ。
博物館の定義
“博物館は、有形及び無形の遺産を研究、収集、保存、解釈、展示する、社会のための非営利の常設機関である。博物館は一般に公開され、誰もが利用でき、包摂的であって、多様性と持続可能性を育む。倫理的かつ専門性をもってコミュニケーションを図り、コミュニティの参加とともに博物館は活動し、教育、愉しみ、省察と知識共有のための様々な経験を提供する。”
なお,原文はつぎのとおり。
Museum Definition
“A museum is a not-for-profit, permanent institution in the service of society that researches, collects, conserves, interprets and exhibits tangible and intangible heritage. Open to the public, accessible and inclusive, museums foster diversity and sustainability. They operate and communicate ethically, professionally and with the participation of communities, offering varied experiences for education, enjoyment, reflection and knowledge sharing.”

注1:平成十三年に制定された文化芸術基本法の内容は大変すばらしいものだ。その中に,次のような施設の充実に関する項目がある。
(劇場、音楽堂等の充実)
第二十五条 国は、劇場、音楽堂等の充実を図るため、これらの施設に関し、自らの設置等に係る施設の整備、公演等への支援、芸術家等の配置等への支援、情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
(美術館、博物館、図書館等の充実)
第二十六条 国は、美術館博物館、図書館等の充実を図るため、これらの施設に関し、自らの設置等に係る施設の整備、展示等への支援、芸術家等の配置等への支援、文化芸術に関する作品等の記録及び保存への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
ここに現れる劇場,音楽堂,美術館は別の法律で定義されていた。
美術品の美術館における公開の促進に関する法律(平成十年)
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
二 美術館 博物館法(昭和二十六年法律第二百八十五号)第二条第一項に規定する博物館又は同法第二十九条の規定により博物館に相当する施設として指定された施設のうち、美術品の公開及び保管を行うものをいう。

劇場、音楽堂等の活性化に関する法律(平成二十四年)
(定義)
第二条 この法律において「劇場、音楽堂等」とは、文化芸術に関する活動を行うための施設及びその施設の運営に係る人的体制により構成されるもののうち、その有する創意と知見をもって実演芸術の公演を企画し、又は行うこと等により、これを一般公衆に鑑賞させることを目的とするもの(他の施設と一体的に設置されている場合を含み、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第二条第一項に規定する風俗営業又は同条第五項に規定する性風俗関連特殊営業を行うものを除く。)をいう。

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