2022年11月6日日曜日

質量とは何か

放送大学の生涯学習支援番組「科学からの招待状」の第4回は「質量とは何か この宇宙に存在する物質の根本的性質とその起源を考える」というものだった。

たまたまチャンネルを回すと,放送大学の松井哲男さん(1953-)の司会で,矢崎紘一先生(1938-)が話されていた。久しぶりにお顔を拝見したが,ずいぶんとお年を召されてしまった。タイトルがちょっと微妙なのだが,宇宙の物質の質量を担っているのは原子核だということでこういうテーマ設定にしたたのだろう。

この回に登場するのは,矢崎さんとゴードン・ベイム(1935-)と初田哲男さん(1958-)だ。矢崎先生の父上も仁科芳雄のところで,サイクロトロンや原子核の研究をしていたらしい。矢崎さん(15歳上),松井さん(1学年上),初田さん(5学年下)は,原子核理論の近い分野の研究者だった。

45年ほど前,矢崎さんは,東大の有馬研の助教授で,鈴木俊夫さん(1951-)らと炭素12のM1電子散乱の磁気形状因子に対するコア偏極の効果を共同研究していた。彼らの結果と,我々の追試計算の結果が微妙にズレている。そこで,もしかして彼らの式の導出方法が間違っているのではと考え,こちらが想定した彼らの方法に対応するCFPの計算式を送った。

矢崎さんはスラスラとこちらの計算式の解釈の問題を明らかにして,矛盾はあっという間に解消された。我々の計算が間違っていたわけではないが,久々にCFPの複雑な計算をしましたというコメントが大坪先生経由で寄せられた。

そういえば,森田先生が京都での研究会の後に,矢崎さんらを含む若手を招いて飲みにいったこともあった。有馬研はその後,矢崎さん,大塚さんへと引きつがれ,原子核殻模型計算の最先端を走っていく。

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