2022年10月13日木曜日

未来をあきらめない(1)

いや,ほとんどあきらめてるわけだけれど。だいだい,このリノベーションの時代になんで,東京オリンピック(2020)と大阪万博(2025)とカジノIRとリニア新幹線なんだ,と誰かがボヤいていたけれども,全くその通りで時代錯誤で先につながらない利権プロジェクトばかりが蠢いている。統一教会さえ完全に排除できれば,日韓トンネルの方がまだマシと思わず口走ってしまいそうになる。

ソフトイーサの開発で有名な,日本トップクラスのIT技術者である登大遊(1984-)さんが,デジタル庁 デジタル臨時行政調査会作業部会 テクノロジーベースの規制改革推進委員会(第1回)で,「テクノロジーマップ、技術カタログの在り方について」という資料を提出していた。外観はお役人が大好きなポンチ絵テクノロジー満載のコテコテ画像だったので,どうかなと思いつつ読んでみると,久々に心が洗われた。

いつの間にかIT(情報技術)という標語が,動詞も含めたパッケージとしてのDX(デジタルトランスフォーメ—ション)という無意味なカタカナ掛け声に変わってしまった。そのまったく進化しない日本型組織の強固な殻をどうやって内側から破るかという戦略が書かれている。

そこにあるのは,組織内の,(A) 技術研究的な人材(同僚制・独立責任・専門性重視・試行錯誤主義と (B) 経営事務的な人材(官僚制・指揮命令・上意下達・計画主義の特徴を捉え,IT技術イノベーションを,(A)に如何に浸透させて,それを(B)の力で展開拡散するかを具体的に検討したものだ。まさに,細胞に浸入して増殖するウイルスのイメージだ。

技術研究的な人材は,試行錯誤・ 業務革新を担い,自分の責任で頭脳を働かせることができる。一方,経営事務的な人材は,組織的な集団思考と決定に頼って仕事をし,大規模化・組織化・運用を担う。この技術研究的な人材(A)をターゲットとして,適切な情報を注入すれば,業務革新的な情報が経営事務的な人材(B)が担う組織に提供され,フィードバックを受けつつ前進できるという作戦だ。

(A) の技術研究的な人材に届く情報の例として,1990年代のコンピュータ雑誌群があげられていた。自分にとっては,1980-1990年代のそれなのだが,本質的に変わらない。登さんが指摘するように,本当に良質で大量の技術情報があふれていた。そのころは,帰宅時の書店通いで,ほとんどの主要雑誌を毎日のように立ち読みすることができた。さらに,日経バイト日経パソコンTheBASICSoftware DesignMacの雑誌を数冊,定期購読して浴びるように情報をインプットしていた時代だ。

登さんのすごいところは,アイディアをすぐに実装できるところだ。Git + GitLab + 静的 HTML 生成器という開発実例を示している。MarkDownを前提としたHTM重視なのはとてもリーズナブルなのだけれど,おじさんとしては,pdf化されたパッケージもないと安心できない。歳を取ってしまったからだろう。

これを読んで,日本の大学改革がなぜ失敗だったかがよくわかった。大学組織の(A)技術研究的な人材や環境を破壊して,(B) 経営事務的な組織論理を貫徹させようとしているからだ。一方,初中等教育のGIGAスクールの分析は難しい。(A)と(B)が縮退した組織だから。教師の二面性をどう捉えるか。

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