2022年10月1日土曜日

プログラミング教育(4)

プログラミング教育(1)からの続き

一昨年に文部科学省が出した「小学校プログラミング教育の手引き(第3版)」をもう一度確認する。
はじめに ~ なぜ小学校にプログラミング教育を導入するのか ~

 今日、コンピュータは人々の生活の様々な場面で活用されています。家電や自動車をはじめ身近なものの多くにもコンピュータが内蔵され、人々の生活を便利で豊かなものにしています。誰にとっても、職業生活をはじめ、学校での学習や生涯学習、家庭生活や余暇生活など、あらゆる活動において、 コンピュータなどの情報機器やサービスとそれによってもたらされる情報とを適切に選択・活用して問題を解決していくことが不可欠な社会が到来しつつあります。 
 コンピュータをより適切、効果的に活用していくためには、その仕組みを知ることが重要です。コンピュータは人が命令を与えることによって動作します。端的に言えば、この命令が「プログラム」であり、命令を与えることが「プログラミング」です。プログラミングによって、コンピュータに自分が求める動作をさせることができるとともに、コンピュータの仕組みの一端をうかがい知ることができるので、コンピュータが「魔法の箱」ではなくなり、より主体的に活用することにつながります。 
 プログラミング教育は子供たちの可能性を広げることにもつながります。プログラミングの能力を開花させ、創造力を発揮して、起業する若者や特許を取得する子供も現れています。子供が秘めている可能性を発掘し、将来の社会で活躍できるきっかけとなることも期待できるのです。 
 このように、コンピュータを理解し上手に活用していく力を身に付けることは、あらゆる活動においてコンピュータ等を活用することが求められるこれからの社会を生きていく子供たちにとって、将来どのような職業に就くとしても、極めて重要なこととなっています。諸外国においても、初等教育の段階からプログラミング教育を導入する動きが見られます。 
 こうしたことから、このたびの学習指導要領改訂において、小・中・高等学校を通じてプログラミング教育を充実することとし、2020 年度から小学校においてもプログラミング教育を導入することとなりました。 
1980年代半ば,大学の研究室にPC-8801やPC-9801やSHARP MZ-2000系などが入りはじめた頃,これからの学校教育にはコンピュータが絶対必要になるということで,大阪教育大学の理学科をあげての取り組みが始まった。データステーション(後の情報処理センター)にあって全学共通に使えるパソコンはほんの数台しかなかったので,理科の教員が研究費を持ち寄って2人に一台のラップトップPCを整備することになった。

最初は,CP-M/86が搭載されたFM-16π が2人に1台+教員用の計21台,やがてMS-DOSPC-98LTが1人1台に置き換わっていった。これが物理教室の並びにある階段教室のロッカーに設置されることになる。理科情報演習という授業名を冠したテキストは,山口先生,家野先生と自分が編集作業を担当した。休日まで集まって各教員からの分担原稿を整理していた。

あるとき,このプロジェクトの音頭をとっていた,X線実験を専門とする高木義人先生が,小中学校教員向けの公開講座でコンピュータの使い方=プログラミングをやってはどうかと発案した。理科の教員に呼びかけたのだが,必ずしもよい返事が得られなかった。結局,物理教室のメンバー=加藤先生・仲田先生(高木研究室の助手)・自分だけでやろうということになった。もしかすると,山口先生や家野先生も参加していたいたかもしれない。

反対意見の代表的なものとして,福江先生の意見があった。「これからはコンピュータが当たり前のように学校にはいって活用される時代はくることは確かだ。しかし,その段階で,教員が自分でプログラミングによって授業で活用できる教材をつくるとか,データ処理をBASICで行うということはなく,様々なソフトウェアを活用したり組み合わせることが中心になるはずだ」。

いや,まったくそのとおりなのだが,その当時,学校の先生にコンピュータを体験してもらう場合,実質的には内蔵されているBASICインタープリタを使うしかなかったのである。もちろん,マルチプラン,松,jx-word太郎,dBASEなどのアプリケーションソフトは登場していたが,1本数万なので,とても台数分賄う予算はなかったのである。

そんなわけで,じりじりと太陽が照りつける夏休みの天王寺キャンパスの旧校舎の,冷房もない階段教室で汗だくになりながら,よくわからない学校の先生を相手に,BASICプログラミングを懇切丁寧に指導する3日間というのを数年続けたのだった。

それが40年近く前の話である。やがて,インターネットへの接続がはじまり,大学は柏原キャンパスに統合移転し,キャンパスネットが整備され,コンピュータ実習室も複数室もうけられ,キャンパス全域に無線LANアクセスポイントができたら,全学生BYODの時代になってしまい,学校現場でもGIGAスクール=一人一台の環境整備が進んでいる。

で,いま再びプログラミング教育というわけだ。どう考えても上の第2段落にあるプログラミングでコンピュータの仕組みを知ることが主体的活用につながるというのが正しい考えであるとは思えない一方,前回述べたように,コンピュータを創造的ツールとして使うという観点でみれば,それはそれでありうるのかとも思われる。


図:プログラミングからのパラダイム転換(人工知能研究の新潮流から引用)

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