2022年7月7日木曜日

最密球充填

フィールズ賞は,4年に一度開催される国際数学者会議(ICM)で,顕著な業績を上げた40歳以下の数学者(2-4名)に与えられる賞だ。初回は1936年だが,第2回の1950年から4年周期が始まっている。

受賞者の日本人は,小平邦彦(1954年),広中平祐(1970年),森重文(1990年)の三人。2014年にイランのマリアル・ミリザハニ(1977-2017)が女性として初めての受賞者となったが,若くしてガんで亡くなっている。2022年の今回,ウクライナのマリナ・ヴィヤゾフスカ(1984-)が二人目の女性受賞者となった。

彼女の業績は,最密球充填に関わるものだ。空間に規則的に球を配置するときの密度の最大値がわかっているものは,1次元(100%),2次元($\frac{\pi}{\sqrt{12}}=0.9068$),3次元($\frac{\pi}{\sqrt{18}}=0.7404$),8次元($\frac{\pi^4}{384}=0.2536$),24次元($\frac{\pi^12}{12!}=0.001929$)だけである。2017年にヴィヤゾフスカは,単独で8次元の問題を,これを応用して連名で24次元の問題を解決した。

3次元の問題の証明は,ケプラー予想とよばれ,17世紀のヨハネス・ケプラーの時代から考えられてきた。1998年に,トーマス・ヘイルズが解決したが,250ページの手稿と10万個の線形計画問題を解くコードとデータ3ギガバイトを必要とした。その後,コンピュータによる形式的証明を援用して証明を完全なものにした。一方,ヴィヤゾフスカの論文は,普通の理系の大学生でも読めそうな式を20ページほど並べるだけでこれを解決してしまった。


写真:新潮文庫のケプラー予想の書影(Amazonから引用)

[1]8次元と24次元の球充填問題の解決(tsujimotter)

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