2021年10月28日木曜日

平均自由行程(1)

ラジオメーター(2)からの続き

平均自由行程の式は,$\lambda=\dfrac{1}{\sqrt{2} \rho \sigma}$とした,$\rho$は気体分子密度,$\sigma$は気体分子の衝突断面積である。で,$\sqrt{2}$がどこから出てきたのかは,簡単そうな難しそうな話だった。

固定された分子群に平均速度$v$の粒子が進んでいるとき,単位時間当たり,長さ直径$d$の円筒内の分子とは衝突することができる。静止している気体分子密度が$\rho$なので,単位時間当たりの衝突回数は,$n=\rho \pi d^2 v$である。そこで一回当たりに進む距離は,$\dfrac{v}{n}=\dfrac{1}{\rho \pi d^2} = \dfrac{1}{\rho \sigma}$となる。ただし,衝突断面積は $\sigma = \pi d^2$である。

簡単そうな話では次のようになっている。全ての粒子が動いている場合,衝突する2分子の速度ベクトルを$\bm{v}$と$\bm{v}'$とすると,相対速度ベクトルは,$\bm{u}=\bm{v}-\bm{v}'$となり,$u=|\bm{u}|$の平均値を先ほどの$v$に当てはめる必要がある。そこで,$\overline{\bm{u}^2}=\overline{\bm{v}^2}-2\overline{\bm{v}\cdot\bm{v}'}+\overline{\bm{v}'^2}$より,$u^2=v^2+v^2$となる。先ほどの$v$は$u=\sqrt{2} v$に置き換えられるから,$\sqrt{2}$があらわれる。ただし,速度ベクトルの相対的な向きはランダムであるとして,$\overline{\bm{v}\cdot\bm{v}'}$=0を用いた。

実のところはもう少し複雑な計算が必要らしいが,その前提として気体分子速度のマクスウェル・ボルツマン分布が必要なのかどうか。混合気体のマクスウェル・ボルツマン分布はどうなるかなど疑問が続く。

[1]衝突頻度と平均自由行程(山崎勝義)

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