2021年1月22日金曜日

赤いシリウス

 NHKのコズミックフロント☆NEXTは,非常にためになる科学番組である。先日放映された,「天狼星 シリウスのミステリー」もとても刺激的な内容だった。

シリウスは,オリオン座の三つ星を左に伸ばしたところのおおいぬ座にあり,太陽を除いて全天で最も明るい恒星(一等星)だ。地球から8.6光年の距離にあり,シリウスA(太陽と同程度の半径で太陽の約2倍の質量)とシリウスB(地球と同程度の半径で太陽と同程度の質量)からなる連星であり,明るい方のシリウスAは青白く光る主系列星である。シリウスBは非常に暗い白色矮星だ。

そのシリウスが,2千年前には赤く輝いていたという歴史的な文書がある。古代ローマの天文学者プトレマイオス(トレミー)のアルマゲストにその記載がある。超新星を除く普通の天文現象が数千年の時間スケールで起こるわけがないので,これはなんらかの比喩表現ではないかというのが定説らしい。

番組では,赤いシリウスが見えたのは事実であるという,科学的に根拠のあるいくつかの説が紹介されていた。シリウスにはシリウスCという別の三重連星があって,これがシリウスAに接近していたときに放出された物質が光を遮っていたという説や,桜井天体のように白色矮星であるシリウスBがヘリウムフラッシュによって一時的に赤くなったという説である。

シリウスは古代エジプトにおける暦の始まりを特徴づける天体であり,クフ王のピラミッドの南の回廊がシリウスが観測できる方向に伸びていたなど,いろいろとワクワクする話題が多いのだった。

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