2020年8月31日月曜日

五番立

文楽の演目が時代物,世話物,舞踊に分類できるように,能は五番立となっているらしい。
近世から明治・大正までの能の正式の上演形式では一日の番組をこの順に上演する。

初番目(神・脇能物):神がシテで神仏の霊験を称える演目(この前に「翁」がくる)
二番目(男・修羅物):修羅道に落ちた武将がシテとなる演目(勝修羅と負修羅がある)
三番目(女・鬘物) :優美な女性がシテとなる優美な舞による演目
四番目(狂・雑能物):他の分類に入らないストーリ性のある演目
五番目(鬼・切能物):鬼・怨霊・天狗などがシテの派手で豪快な演目

なぜこれが出てきたかというと,三枝和子の最初の長編小説である「八月の修羅(未読)」がこの形式を踏んでいるという倉田容子の論説があったため。三枝和子の小説はあまり文庫化されておらず(いまどきされていてもあっというまに品切れになるが),表にでてこない。大庭みな子・岩橋邦枝・水田宗子・与那覇恵子監修による三枝和子選集(全六巻)が鼎書房から2007年に出版されており,古書店でも入手できる。「月の飛ぶ村」は収録されていないのか・・・。

第1巻
 八月の修羅 
 乱反射 
 処刑が行なわれている より 
   幼ない、うたごえ色の血 
   花塊の午後に 

第2巻
 思いがけず風の蝶 
 野守の鏡 より 
  野守 
  螢酒場 

第3巻
 響子微笑 
 響子愛染 
 響子悪趣 
 響子不生 

第4巻
 隅田川原 より 
  江口水駅 
  隅田川原 
 鬼どもの夜は深い 
 うそりやま考 

第5巻
 その日の夏 
 小説 清少納言「諾子の恋」 
 女王卑弥呼 

第6巻
 恋愛小説の陥穽 
 女の哲学ことはじめ 
 神様の居候たち 
 伝説は鎖に繋がれ より 
  白い月 
  覚束ない虹/葦舟に乗る/潜戸の海蛇 
  白い鎖 
 犬吠埼に〈単行本未収録作品〉 
 年 譜 
 参考文献 

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