2020年6月27日土曜日

磁場のエネルギー

点電荷からなる系の場合に,クーロン力の位置エネルギーの総和を時間に依存しない電場に対するマクスウェル方程式をつかって変形すると電場のエネルギー密度の体積積分になって,遠隔相互作用から近接相互作用への論理的な切り替えを納得させるトピックとなっている。

同様に,環状電流からなる系の場合に,電流間の力を導く位置エネルギーの総和を時間に依存しない磁場に対するマクスウェル方程式をつかって変形すると磁場のエネルギー密度の体積積分になる。このときの中間過程に電流密度とベクトルポテンシャルの内積の体積積分の1/2が出てくる。これは電場の場合に電荷密度とスカラーポテンシャルの積の体積積分の1/2が出てくることと対応していて,電荷と電流の並行な式がとてもきれいにみえるのだけれども,符号問題がなかなかすっきりしない。

単純に考えると,平行電流間には引力が働き,電流がつくるベクトルポテンシャルは電流と平行であることから,電流密度とベクトルポテンシャルの内積にマイナスをつけたものをエネルギー密度だとするのが物理的な直感と一致する。一方で,上の環状電流の場合では,マイナスをつけないものをエネルギー密度として計算をすすめている。

この符号問題については,砂川さん,前野さん,太田さんの教科書ではいちおう説明がされている。例えば,前野さんの教科書では,あらかじめ定まっている電流の配置(外部磁場への電流の配置)などの場合にはマイナスがつき,その状態にへもってくるように電流を流すのに必要なエネルギーを考える場合にはマイナスがつかないということなのだが,どうも十分に腑に落ちてこない。

おまけにダブルカウントをさけるために1/2がついたりつかなかったりするものだから,授業でどうやって説明したものか思案のしどころである。あるいは太田さんの教科書にあるように磁束変化に対する説明が不可欠なのかもしれず,静磁場の範囲でまかなえるかどうかも微妙だ。

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