2020年5月30日土曜日

特集|迷走する教育(3)

6.羽藤由美(応用言語学)
  英語入試改革の挫折から迷走を抜け出す道を探る
羽藤(はとう)先生は,2021年度入試における英語民間試験の導入阻止のために最も力を注いだ方々の1人である。おかげで当面はなんとか凌げたが,旗振り役の下村博文やスポークスマンの鈴木寛の息の根は止まっていないので,今後の展開は予断を許さない。「英語の四技能」というマジックワードと大学入試で高校教育を変えるという短絡の二重の誤謬をベースに利権誘導を図ってきたチームのよりどころとなるCFER基準持ち込みの欺瞞性が明らかにされる。そして,本当の「対案」がインプットの確保にあることがはっきりと示されている。十分な経験を踏まえた信頼できる専門家の知が生かされない日本の政策決定についての最後の結論が光る。「失敗しているのは英語学習者や英語教師ではなく,粗悪な英語教育政策しか繰り出すことのできない政府・文科省である。入試改革より,教育政策の決定プロセスの見直しと空回りする一連の改革の中核をになってきた研究者・教育者の刷新の方が喫緊の課題である」

7.阿部公彦(英米文学/評論)
  「すばらしい英語学習」の落とし穴
まずはじめに,公共性の高い入試を民間業者に丸投げするという仕組みが諸悪の根源であることがはっきりと示されている。また,「四技能主義」の虚妄がていねいに解き明かされる。これに対抗するものが,英語の運動感覚であるというところは,そうだとしてもどうやってそれを実現させていくのかという戦略を詳しく聞きたかった。

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