2020年5月28日木曜日

特集|迷走する教育(1)

現代思想の2020年4月号vol.48-4の特集が「迷走する教育−大学入学共通テスト・新学習指導要領・変形労働時間制」だった。これは読んでおきたいと思い,2月号の量子コンピュータに続いて早速アマゾンで注文したが積ん読状態になっていた。16本の記事が207ページに渡っている。平均13ページ弱。

以下簡単に感想を述べる。

1.大内裕和(教育社会学)・紅野謙介(日本近現代文学)
  逃走の教育から闘争の教育へ 
紅野(こうの)さんは麻布で中高の教員を勤めていた経験を持ち現在は日大文理学部の教授である。そこで国語教育と関連した話になるのだが,これがむしろ本件の本質をついているように思った。「言葉」の問題なのだ。「資質」「生きる力」「ゆとり」「主体性」「内容学」。これらの気味悪い言葉に違和感と異論を唱えられるのも最初の内だけで,あっという間にそれらに搦め捕られてしまい,議論はそのマジックワードを前提として進めざるを得なくなる。ニュートンの運動方程式が成立しない非慣性系のわけのわからない慣性力の支配のもとに屈服させられてしまった自分がそこにあった。

2.荒井克弘(高等教育論)
  大学入学共通テストの現在
「高大接続」というマジックワードを考えるときに,日本の中等教育及び高等教育のシステムを他国のそれとていねいに比較して議論する必要性を感じた。例の下村・稲田一派が巻き返しを図っている9月入学にしてもそうだ。どこがグローバルスタンダードなのか。それもこれもジャーナリズムの検証機能の劣化がなせる技。

3.南風原朝和(心理統計学/テスト理論)
  大学入試改革を「私的に」振り返る
ここで我々がひっかけられたマジックワードが「一点刻みの知識・技能偏重」だ。テスト理論の専門家の立場からこれにたいする明確で分かりやすい反論を加えているところが一番印象的であった(下図参照)。


図 なぜ5段階評価がまずいのか(上記3より引用)

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