2019年11月5日火曜日

南円堂と北円堂

家人に勧められて,興福寺国宝特別公開【南円堂,北円堂】に行った。秋晴れの爽やかな朝,すでに30人ほどが興福寺に設置された特別展の ticket counter に並んでいた。重要文化財南円堂では,東向きの国宝木造不空羂索観音菩薩座像(康慶作)のまわりに国宝木造四天王立像(康慶作)が多聞天(北東)持国天(南東)増長天(南西)広目天(北西)と囲んでおり,本尊の左手と右手の脇に国宝木造法相六祖座像(康慶作)が玄賓,行賀,常騰と玄昉,善集,神叡が据えてあった。南円堂よりひとまわり小さな国宝北円堂には国宝木造弥勒如来座像(運慶作)の背後に国宝木造無著菩薩立像と世親菩薩立像(運慶作)が,脇の左右に法苑林菩薩と大妙相菩薩が,そして国宝木心乾漆造四天王立像が囲んでいる。

運慶の無著菩薩は前回見たときは凄い印象があったが今回は弥勒如来ともども,康慶の迫力に負けてしまった。南円堂は何周もして四天王像の特徴を観察した。両足の上げ方や火焔光背の炎の向きの対称性,両手に持つ武具と宝物,衣装や兜,体型などすべてが緻密に計算されて形造られて本尊の周りを囲んでいた。一般に,四天王は持国天(東)増長天(南)広目天(西)多聞天(北)とそれぞれの守護範囲が決まっているのだが,本尊の向きとこの四方を護持する関係で実際の方位は異なる場合もあるようだ(見張りのお坊さんに尋ねてみた応答からの推測)。

その後,再建された中金堂にも回ってみたが,こちらは着飾った新婚外国人カップルがプロカメラマンを従えて中金堂を背景に記念スチール写真の撮影会をやっているような状況で,これはこれで大変雰囲気にマッチしていたが,中に収められた江戸時代の釈迦如来座像などは今一つだった。国宝木造四天王立像や重要文化財薬王・薬上菩薩立像なども再建された中金堂の空間の雰囲気になじめず,残念な状況だった。


写真:南円堂と北円堂(撮影 2019.11.05)

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