2019年8月30日金曜日

内山先生の相対論

手元にある岩波全書の「相対性理論(内山龍雄)」は,1977年の出版である。自分がM2の年だ。同じ著者で裳華房の物理学選書の「一般相対性理論」は,1978年だからD1の年。理学部物理学科4回生で受講した内山先生の「相対論」は,特殊相対性理論がテーマだった。毎時間,熟練秘書の辻芳子さん(池田市にあった大教大の官舎近くにお住まいで,後に家族でハワイへ行ったときにもお世話になった)が,教卓にお茶を運んでくる。その後,内山先生がやおら登場してお茶を飲みながらノートなしで,黒板にさらさらと流れるようにゆっくり式を書きながら説明される。一点のよどみもない明確な論理で貫かれた名講義で,聞いているだけで相対論が完全に理解できたような錯覚が得られた。

さて,岩波全書の相対性理論であるが,序の最後で内山龍雄先生は次のように語っている。
たびたび述べるように,説明は平易でも,重要事項はほとんどもれなくとりあげてあるから,本書を読破したなら,相対性理論を理解したという自身をもってさしつかえない。本書は力学(変分原理を含む)と電磁気学の基礎知識さえあれば,必ず理解できる。もし本書を読んでも,これが理解できないようなら,もはや相対性理論を学ぶことはあきらめるべきであろう。
このフレーズは度々あちらこちらで取り上げられ話題になるが,内山先生の講義の受講者としては宜なるかなと思っていた。

しかし今回,これまで未読だった岩波全書後半の一般相対論の部分を読み始めて,この意見を撤回する。内山先生,ちょっと,これだけだと難しくないですか。たぶん「君の勉強不足だろう,わはは」で終了する。122pの接続係数 Γ の定義で,計量テンソルの g の微分は誤植された x でなく,u だと気付くのにしばらく悩み,130pの計量テンソルの性質のところでひっかかった。裳華房の一般相対性理論をみると,ちゃんと導出方法が書いてあったので,問題なく理解できたが,全書版だけこれを推理するのは自分には難しかった。

P. S. 本日は内山先生(1916.8.28-1990.8.30)の命日であり,龍雄先生の冒険(窮理舎)の発売日だった。

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