2019年7月2日火曜日

地には平和を

今月のNHKの100分 de名著は,小松左京スペシャルだ。ナビゲーターは宮崎哲弥。この番組のMCの伊集院光は,これまで見た回では,かなり的確なコメントをしていておもしろかった。ただ,彼はSFについてはあまり知らないような様子だった。初回の昨日は「地には平和を」,第1回のハヤカワ・SFコンテストの努力賞である。ちなみにこのときの入選は該当作なしで,佳作として,眉村卓の「下級アイデアマン」など3作が選ばれている。また,1962年の第2回には小松左京の「お茶漬けの味」が,半村良の「収穫」とともに,入選(第3席)になっている。

「地には平和を」を含む小松左京の第一短編集は,ハヤカワ・SFシリーズ(銀背)から出ており,自分が中学生のときに読んでいる(ちなみに小松左京の短編集で最初に購入したのは「日本売ります」)。番組の中では,「戦争はなかった」という短編についてもふれられていた。小松左京には他にも戦争と関係した作品が多い,というか1960年代の日本SFシーンに出てくる作品群は,高度経済成長の躁状態を支えると同時に,その裏側にどこか重いテーマが秘められている。もちろん,一般の日本文学はほとんどそんなトーンだったわけだが。

星新一の「白い服の男」はそういう戦争テーマSFの主要短編の1つであるが,「戦争はなかった」と同じような発想が含まれている。星新一の多くの短編の中でも強く印象に残ったものの一つだ。小松左京の「戦争はなかった」は読んでいたのだろうか,こちらのほうは,はっきりした記憶がない。

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