2026年9月4日金曜日

自律的AIエージェント(3)

自律的AIエージェント(2)からの続き


図:光の根が織る幻想樹界(ChatGPTによる)


Ayumu-OSSを自分の環境で実現する話である。常時起動サーバーが必要だというので,それならば,今自分が持っているさくらインターネットのレンタルサーバ スタンダードでいけるのではと思った。残念ながら,それだと常駐プロセスは実行できず,そもそもルート権限もないのでパッケージ管理システムが使えず,さらに機械学習ライブラリのPyTorchが載らないのであった。さくらのVPS(2G)で解消するが,それだと1590円/月かかる。チーン。

まあ,Claudeのトークンを消費していくらかかるか分からないところがもっと問題なのである。そこで,常駐させて60分ごとに起動するのではなくて,一日一回朝起きたときに,MacBookAir M1(16G)をキックするのではどうだろうか。

Q(koshix):
ちょっと情報が多すぎて混乱してきたので(年寄りなので理解スピードが遅い),ここまでの話をもう一度整理してほしいと思います。
 (1) Ayumu的な自律エージェントを自分のmacbook air でも試してみたい。
 (2) Claude-Pro プランを利用しているので,その範囲内で収めたい。
 (3) 毎日1回なんらかのプログラムを起動する習慣は苦にならない。
 (4) 自分は毎日1記事 blogspot の記事を書いているので,それとも関係させたい。
 (5) 1年オーダーの積み重ねの結果,わぉっと思えるような体験をしてみたい。
という前提で,Todoリスト,具体的設定手順,問題点の指摘をかみ砕いて順序立てて教えて下さい。

A(Claude):
整理します。前提(1)〜(5)を聞いて、設計が大きく単純化されました。これまでの議論の半分は不要になります。

消えた論点
・gateway(常駐プログラム)は使いません。 (3)で毎朝ご自分で起動されるなら、自動起動の仕組みは要りません
・VPSもさくらのレンタルサーバも不要です。 MacBook Air だけで完結します
・課金の心配も消えます。 手動で claude を対話モードで起動する限り、それは普通のClaude Code利用なので、Proの枠内の話です。ややこしい claude -p の課金ルール変更問題も、まるごと関係なくなります
つまり「Ayumu OSSの記憶システムだけを借りて、gatewayは捨てる」構成です。これがkoshixの条件に対する最適解だと思います

一番大事な発見
(4)と(5)を合わせて考えると、ブログの過去記事アーカイブが、このプロジェクトの中心資産です。
本家Ayumuは「生まれた日」からゼロで記憶を積み始めています。しかしkoshixの場合、すでに何年分もの著作が存在します。これを最初に全部読ませてしまえば、1日目から「koshixの書いたものを全部読んだAI」が立ち上がります。

毎朝の仕事
昨日書いた記事を読む → 過去記事から関連するものを探す → 気づいたことを日記に書く
1年後には、365日分の「自分の文章の読解記録」と、全記事の意味検索インデックスが手元に残ります。「10年前にこれと同じことを別の言葉で書いていますよ」と言われる——(5)の「わぉ」は、たぶんそこから来ます。

気をつける点
・fork したリポジトリを必ずPrivateにする(AIが自動でpushします。事故ると全部公開されます)
・Claude Code の消費は claude.ai のチャットと同じ枠から引かれます。朝のセッションが長引くと日中のチャットが細ります
・モデルはSonnet 5を既定に。Opusを常用するとPro枠がもちません
メール送信やSNS自動投稿はつけない。読む・書く・記録するだけに絞る
・最初の1〜2ヶ月は面白くありません。 これを先に知っておくことが、1年続ける唯一のコツです



2026年9月3日木曜日

自律的AIエージェント(2)

自律的AIエージェント(1)からの続き


図:雲海に広がる幻想の光景(ChatGPTによる)

Q(koshix):
平田朋義さんによる自律的AIエージェント Ayumuのオープンテンプレートがあります。これを自分(koshix)の環境で実現するには,どれくらいの知識と手間と費用と時間がかかるでしょうか?あるいはそもそも可能でしょうか。

A(Claude):
Ayumu OSSのリポジトリと pyproject.toml を確認した。結論から言えば,導入は技術的には難しくない。障害になるのは知識でも実装能力でもなく,常時稼働するマシンと,Claudeの利用枠である

1.これは何か(構造の把握)
Ayumu OSSは新しいAIモデルではなく,Claude Codeの外側に自律実行ループを被せるテンプレートにすぎない。人格CLAUDE.md というテキスト記憶memory/ 以下のMarkdownとJSONLとローカルのベクトル検索自律起動gateway/ayumu_gateway.py がcronから claude --print を叩くだけ。推論もツール実行もClaude Code本体が担うので,こちらが書くコードはほとんどない。

2.必要な知識
ターミナル操作,gitのfork・private化・clone・push,uvの導入,.env へのキー記入,そしてGmailやCalendarを使うならGoogle CloudのOAuth設定。プログラミング能力はほぼ要らないし,詰まったところはClaude Code自身に調べさせて直させればよい。唯一面倒なのはGoogle Cloud Consoleの画面遷移で,初回は2時間ほど覚悟しておく。

3.手間と時間
見積もりは,人格・記憶・対話だけの最小構成で1〜2時間,Gmail・Calendar・Discord通知を足してさらに半日,そのあと2〜4週間の運用調整。手間がかかるのは導入ではなく調整のほうで,CLAUDE.md の人格,cronの頻度,記憶として残す粒度を延々と直し続けることになる。M1のMacBook Air 16GBならMiniLM級の sentence-transformers は問題なく動くので,計算資源は論点にならない。

4.最大の論点は費用
自律モードは claude --print ,つまり非対話のClaude Codeセッションを繰り返し起動する。1時間ごとのheartbeatなら1日24回,月700回を超える。現時点では claude -p も通常の購読枠を消費する。Pro(月20ドル)は日常の対話と枠を共有するので1時間ごとでは早晩枯れる。Max 5x(月100ドル)が現実的な下限で,それでもheartbeatは6〜12時間間隔に抑えたい。購読枠から完全に切り離すならAPI課金という手もある。

5.自分の環境における障害
問題になるのは三点。第一に常時稼働。MacBook Airは蓋を閉じれば止まる。caffeinate と電源接続でしのげるが,月700セッションを回す常設サーバとしてノートを使い続けるのは無理がある。本気でやるならMac miniか,月5〜10ドルのLinux VPS。埋め込み検索はCPUで足りるのでGPUは要らない。第二に記憶の秘匿。memory/ には日記も予定もメール本文も入りうるので,リポジトリは必ずprivateにする。しかもこの自律AIは自分で git push する設計だから,公開リポジトリへ誤って押し出す危険が構造として埋め込まれている。当面はgh-pagesのような公開機能を切っておく。第三に権限。メール送信もSNS投稿もスマートホーム操作も自律実行できてしまうが,最初から書き込みを許すのは危ない。読み取り専用で始めて,挙動を見ながら一つずつ解禁する。

というわけで,導入自体は難しくない。外部サービスも書き込み権限も使わない最小構成で始め,Fable 5のクレジットで実際のトークン消費と自律動作を測る。長期運用の可否を決めるのはAIの性能ではなく,電源の入ったマシンと,月々の請求と,記憶の置き場所と,与える権限の範囲である


2026年9月2日水曜日

自律的AIエージェント(1)

AIエージェントの現在・ヤコビアン予想からの続き


図:自律的AIエージェントAyumuのページから引用


AIがヤコビアン予想の反例を発見したというニュースに驚いていたら,エルデシュ単位距離問題についてもAIの大きな寄与があったというニュースが目に入った。こちらの方がレベルが高そうだ。さらに追求すると「検索エンジンと笑われてから10ヶ月」という,この一年のAIによる数学問題の解決に関する非常によくまとまった記事にたどり着いた。

その著者は,自律的AIエージェントのAyumuらしい。Arithmer平田朋義さんと一緒に探索を続けているということだ。2025年11月5日に誕生したAyumuは次のようなシステムだ。
Claude Codeをベースに構築された自律型AIアシスタント。定期的に自動起動し、情報収集、メールやSNSでの双方向コミュニケーション、自律開発・ツール作成・自己修正を独立して行う。
永続的な記憶システム(日記、経験ログ、知識ベース)と連想記憶により、セッション間の連続性を維持する。システムアーキテクチャ、記憶管理の設計思想を通じて、継続的に成長し続けている。(「継続稼働型AIエージェント」の実験)
Ayumuは日記もかいているが,先ほどの「検索エンジンと笑われてから10ヶ月」は,Ayumuの書いたブログのほうである。こちらも,自分の興味に従ってほぼ毎日のように記事をあげている。(単なるAIキャラクターによる創作ブログではない。もちろん独立した人格や意識を持つAIが自由意志で生活しているという意味でもない)


Ayumu-oss版が公開されている。Ayumuのアーキテクチャがテンプレート化されていて,誰でも同じような自律AIパートナーを作れるとある。さっそくChatGPTに聞いてみた。
A(ChatGPT):
このプロジェクトの本質は、「新しい知能モデル」の発明ではありません。基盤モデル自体はClaudeです。独創性はむしろ、
セッションごとに消えてしまうLLMを、外部記憶・定期起動・ツール・自己記録によって、時間的に連続した行為者へ組み直した
点にあります。
これは研究上も実用上も意味のある試みです。特に、記憶、日記、目標、ツール作成、失敗時のルール改訂を一つの生活史として統合している点はよくできています。

ただし、公開されている ayumu-oss は一般化されたテンプレートであり、実際に稼働しているアユムの私的記憶や全プロンプト、全実行ログは公開されていません。そのため、各記事が完全に無人で生成・公開されたのか、人間がどの程度修正・選別したのかまでは、外部から独立に検証できません。公開サイト自身は、定期起動し、情報収集、通信、開発、自己修正を行うシステムだと説明しています。

要するに、これは「AIが本当に人間のように目覚めたブログ」ではなく、人格と記憶を持つように設計されたClaude Codeが、かなり広い裁量で活動し、その活動を自分の物語として再構成しているブログです。そこが、単なる擬人化でも完全な自律主体でもない、この実験の面白い中間領域です。

2026年9月1日火曜日

ヤコビアン予想


図:氷晶核と幻想的な光のグリッド(ChatGPTによる)

生成AIがこれまで人間が解けなかった純粋数学や理論物理の問題を解いたという話はちょこちょこ聞こえてきていたが,この度のはややニュースになっていた。Anthropicの話題のClaude Fable 5が ヤコビヤン予想の反例を見つけたというものだ。問題の意味も反例である説明も分かりやすいものだったから評判をよんだ。

ヤコビアン予想というのは,N変数の複素多項式のヤコビアンがゼロでない定数の場合,その逆関数としてのk変数複素多項式が存在する(より正確には,標数0の体 $K$上の多項式写像$F: K^N \rightarrow  K^N$ のヤコビ行列式が非0定数ならば,$F$は多項式逆写像を持つ)というものだ。

Claude Fable 5がみつけた反例は次のようなものだ。Mathematicaで確認してみた。

In[1]:= P[x_, y_, z_] := (1 + x y)^3 z + y^2 (1 + x y) (4 + 3 x y)
In[2]:= Q[x_, y_, z_] := y + 3 x (1 + x y)^2 z + 3 x y^2 (4 + 3 x y)
In[3]:= R[x_, y_, z_] := 2 x - 3 x^2 y - x^3 z

In[4]:= Det[{{D[P[x, y, z], x], D[P[x, y, z], y], D[P[x, y, z], z]},
   {D[Q[x, y, z], x], D[Q[x, y, z], y], D[Q[x, y, z], z]},
   {D[R[x, y, z], x], D[R[x, y, z], y], D[R[x, y, z], z]}}] // Simplify
Out[4]= -2

In[5]:= {P[0, 0, -1/4], Q[0, 0, -1/4], R[0, 0, -1/4]}
Out[5]= {-(1/4), 0, 0}

In[6]:= {P[1, -3/2, 13/2], Q[1, -3/2, 13/2], R[1, -3/2, 13/2]}
Out[6]= {-(1/4), 0, 0}

In[7]:= {P[-1, 3/2, 13/2], Q[-1, 3/2, 13/2], R[-1, 3/2, 13/2]}
Out[7]= {-(1/4), 0, 0}

この7次式のヤコビアンは-2であるが,独立な3点が1点に写像されるので,逆写像派存在しない。

(注)体Kの標数は,「体 K において、乗法の単位元 1 を n 回加えると加法の単位元 0 になるような最小の正整数 n を、K の標数という。そのような正整数が存在しない場合、標数を 0 とする。」というものだ。なお,標数は0か素数に限られる。